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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第3話「出て行け!西岡十太郎!!」
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情報




「ほう。

 今は、どこのクランにも所属してないんですか?」


と細川。


「ええ。」


十太郎は早速、細川に相談した。

彼は、戦力を欲しているようだし、良い返事が期待できる。

しかし夜桜は、あまり乗り気じゃない。


(会って間もない奴に声かけるなって。

 ちょっと焦り過ぎじゃない?)


ガラにもなく慎重だ。


(あんま必死だと安く見られる…。)


しかし十太郎は、機会を逃したくない。


「………正直、人手は欲しい。

 けれど私の目的は、分かってますよね?」


細川は、細い顎を撫でながら十太郎を見つめて訊いた。


「PKヘヴンとの戦争か。」


十太郎がそう言うと細川は、席を立つ。

砂嵐が止んだらしい。

鎧戸を開け、外を確かめた。


「砂嵐が止んだようです。

 カズラクかタナスル、コロヴァ。

 ひとつ前の街に戻るなら下の二人と一緒に出立してください。」


どうも誘いをかけてくる割りに細川は、乗り気じゃない。

なんだろう、この感じ。


「さっきは、そっちから誘って来たのに。

 なんで今は、そんなお断りって感じになるの?」


「私が手を組みたいのは、クランで個人じゃないから。」


細川は、そう言って髪の毛を指に巻きつけた。

要するにスパイの侵入を恐れているらしい。


「気を悪くするでしょうけど。

 ハッキリ言って西岡君の経緯だとPKヘヴンに入りそうなんです。

 岩戸クランを追い出されて彼らを憎んでないと言えます?」


なるほど。

身軽な人間は、安心できない。

クランという所属があるから信用できる訳だ。


「今、そんな気持ちがなくても。

 PKヘヴンは、そういう気持ちにさせようとする。

 そんな手口で仲間を増やしてます。」


細川は、そう言って目を伏せ、首を左右に振る。

連中を軽蔑し、また憐れんでいるようだった。


「……先を越された連中や。

 除け者扱いされた人間の復讐心を刺激してか。」


そう言う十太郎もやるせない感情が沸き起こって来た。

ドブ底みたいな話だ。

ゲロゲロだ。


「さっきの話ですけど。」


十太郎は、話題を変える。


「はい?」


細川は、長い髪を手で背中にやっていった。


「タナスルやコロヴァに着いて教えて欲しい。

 そんな街は、岩戸クランは、話してなかった。」


十太郎が質問すると細川は、顎を揉みながら考えた。


「その岩戸という人を私は、知らないけど。

 ……情報をコントロールしてるのかも知れないね。」


そう言って細川は、細い指で頬を撫でた。

意味深に瞳がギラリと光る。


「タナスルは、カズラクの南にある。

 ………ここ。」


そう言って細川は、スマホを操作した。

地図アプリに”タナスル”というマークが着いている。


「コロヴァは、こっち。」


これもカズラクの近くある街だ。

まったく知らなかった。


「気前よく教えてくれるね。」


十太郎は、ちょっとビックリした。

細川は、あっけらかんと答える。


「位置見ただけで行けるほど楽じゃないし。

 途中で結構、枯れ谷があるんだ。」


長い時間をかけて川が大地を浸食して作った谷だ。

それでカズラクから見えないんだろう。


「だから真っ直ぐ進んでも辿り着けないしね。

 オークみたいなデカい人型のモンスターも出るんだ。

 あと人喰い人種(グール)の集落がいっぱい。」


「オークと人喰い族って一緒じゃないの?」


と十太郎が訊く。


オークは、知らないが人喰い族は、見たことがある。

ゴリラみたいに前屈みで病的に痩せ、不潔な姿をしていた。


「……やっぱり、そう思う?

 ウチのクランにうるさいのが居てね。」


といって細川も困ったように笑った。


「羽の生えたグレムリンは、見た?」


「いや、知らない。」


「かなり怖い敵だから注意してね。

 もしタナスルやコロヴァに行くならだけど。」


ある程度、情報を貰って十太郎は、細川に礼を言った。


「ありがとう。

 砂嵐をやり過ごすだけじゃなくて情報まで。」


情報は、この未知の部分が多い異世界で重要だ。

その貴重さは、十太郎も骨身にしみている。


「西岡君が次のクランに入ったらまたおいで。」


そして今度こそ、PKヘヴンを潰そう!

と細川の顔に書いてあった。

きっと彼は、自分が思う以上に感情が顔に出る。


「しゃしゃしゃ!

 じゃあの!!」


聖夏も手を振って三人との別れを惜しんでいた。


細川クランは、建材を運び出し、次の拠点構築に向かう。

次々にネットワークを広げ、曠野を縄張りにするつもりだ。


(このままだと細川が気に入らない奴は、締め出されるぞ?)


夜桜は、ちょっと危険な感じに眉をひそめる。


(う~ん。

 流石にそんなことしたら次は、細川が敵視されて潰れるでしょ?)


十太郎は、そう答えた。


この広大なサバンナを支配できるとは、思えない。

要所を抑えれば出来るとしても何のメリットもない。


ともかく十太郎、高橋、高本は、砦を後にした。




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