合流
2日後。
岩戸たちが細川第19砦に現れた。
紳士同盟への返答として岩戸は、細川に面会する。
先に戻った綺羅羅は、十太郎たちに合流していた。
今、綾瀬たちと共に南方の探索に向かっている。
天龍寺、久我もそれぞれシャディザール周辺の探索に出た。
ジョーも綾瀬も、こんな会議ごっこに興味はない。
だから徳川や細川、十太郎に押し付けることにした。
「西岡君は、どうします?」
徳川が十太郎に訊いた。
もちろん岩戸と顔を合わせるのは、気まずいだろという話だ。
「いいや。
これから一緒に戦う訳だし。」
十太郎は、そう答えた。
こうして彼は、細川、徳川と並んでテーブルに着く。
スマホで時間を確認していると岩戸が会議場に現れた。
「………僕の頭脳を借りたいと。」
岩戸は、平然とそう切り出した。
思わず徳川は、顔がにやける。
細川が丁寧な言葉遣いで応じる。
「はい。
PKヘヴンを壊滅させるには、彼らの拠点を潰さなければなりません。
蓄えた装備や資金を奪えば再配置されても無力化できるはずです。」
「……既に目星が着いているんだ。」
岩戸は、そう言って地図情報を送って来る。
これまでPKヘヴンの襲撃があった場所から彼らの行動を分析。
拠点やその配置のおおまかな予想図を既に岩戸は、準備していた。
「あら。
仕事が早いですこと。」
徳川は、目を瞬かせた。
しかし岩戸は、得意げになることもなく苛立っていた。
「オイオイ…。
これまで誰も連中の襲撃を記録してないのか?
これで良くも全面戦争なんて大騒ぎできたもんだな。」
実際、岩戸頼みなのは、細川をはじめ誰も否定しなかった。
彼が率いる岩戸クランは、まさに頭脳なのだ。
「じゃあ、地図情報は、譲った。
俺たちは、戦闘には直接関与しないから。
そのつもりで。」
そう言って岩戸は、退散しようとする。
すぐに細川クランのメンバーが引き留めた。
「待ってください。
敵は、千人を超えるという情報です。
岩戸クランの戦力を同盟に加えて下さい。」
「放してくれ!」
岩戸は、そう言って制止を振り解こうとする。
そこに十太郎が口を出した。
「欲しいのは何だ?」
岩戸がここまで来て帰ろうとするのは、引き留めて欲しいからだ。
その上でこちらが何かを差し出すことを期待している。
要するに強請りだ。
徳川は、呆れたように溜め息を吐く。
黙ったままの細川は、何か考えているようだ。
「………そうだな。」
岩戸は、テーブルの方に戻ってくる。
しかし席には、座ることなく一方的に捲し立てていた。
「まず俺は、こんな茶番には反対だった。
だがお前たちの同盟が侮れないモノとなった今。
反対の立場を取る事が危険だと判断した。
俺がここに来た理由は、それだけだ。
まったくお前たちの企てに共感する点は一つもない。
次に───」
「よほど自分の能力を高く評価していますのね。」
徳川は、小さな声で呟いた。
まだ岩戸は、演説をぶっている。
「何しろ情報がまだまだ足りない。
PKヘヴンの脅威を取り除くという目的を鑑みて、作戦は完璧でなければならない。
お前たちは、俺の手足となってまず敵の情報収集に移れ。
奴らの全てを水槽の魚でも覗くように掴んだ時だ。
あらゆる場所でいつでも奴らの襲撃を事前に察知し、撃退する。
そして奴らが逆に追われ、こちらが自由に攻撃できる立場になった時に。
奴らも他の冒険者の妨害など、もう出来ないと思い知るだろう。
それほど徹底的にこの戦いをやり抜く覚悟が。
お前たちにはあるのか?」
どうやら彼の頭脳が必要だと呼び掛けられた事は、予想以上の効果を及ぼした。
岩戸の自尊心を思った以上に肥大化させたものらしい。
十太郎たちは、ほとほとウンザリした。
「まだ話し足りないのかしら。」
小声でそう言った徳川は、苦笑した。
十太郎も追従笑いする。
「ははは。
よっぽど気分が良いんだろうね……。」
「具体的に何が要求なのですか?」
そう細川が切り出した。
心底、演説に付き合い切れなくなったらしい。
「敵のデータだよ。
分かった?」
この男を引き込んだのは、失敗かも知れない。
3人は、自分たちの認識の甘さに直面した。




