会合
「岩戸ボーイを協力させればPKヘヴンを叩くのは訳ない。」
綾瀬がいった。
岩戸に綺羅羅が接触する3日前。
今回の冒険の初日のことだ。
十太郎と細川の誘いにより各クランが集合した。
”紳士同盟”と銘打った対PKヘヴン陣営の集会だ。
場所は、細川クラン第19砦。
シャディザール近郊にあり、鉄鉱石を多く産する重要拠点だ。
このため現地民の傭兵を揃えてある。
青黒い髭の遊牧民たちが砦のあちこちを守っている。
さながらアラビアンナイトの40人の盗賊といった感じだ。
「はあ!!?
あの糞ムカつく野郎なんか要らねえ!!!」
前田が喚いた。
見るからに暴力が好きという顔をしている。
100kgのヘビー級ボクサーの綾瀬が小さく見える巨漢だ。
(この脳タリンが英語の詩を訳したのかな?)
この巨漢を目にして夜桜も思わず冷静になってしまう。
確かにこの220cmの巨漢が勉強机に向かうのは、想像できない。
「この同盟は、俺が盟主だ!!!
俺の戦力を有効に使うために作戦を立てろ!!!」
と前田は、喚いた。
一同、完全に無視する。
「………まあ、確かに頭だけは、評価していますわ。
おーほほほほ!!」
徳川も綾瀬に賛同する。
十太郎を含め、特にこの3人は、岩戸のことをよく知っている。
彼の頭脳を利用するのは、大賛成だ。
「待ってくれへん?
余は、そんな作戦に賛同できへんで。」
真っ白な髪、真っ白な装備、真っ白な肌。
何もかも白一色の少女、久我が発言した。
「余共の目的は、団結してPKヘヴンを威嚇することやろ?
本格的に戦争するなら余は、同盟を降りるで?」
「あら、怖いんですの?
どうぞお逃げなさいな。
予が公の分も働いて見せますわ。」
徳川は、そういって哄笑した。
久我は、その閉ざされた両目から殺気を放つ。
「余は、敵を恐れて逃げる訳やあらへん。
戦争は、無駄や言うとるだけやで。」
「おーほほほほ!!
負け惜しみ。」
「徳川さん、挑発しないで。」
十太郎が注意すると徳川は、黄金の髪を指に巻きつけて胸を反らした。
「で。
問題は、ひとつありますわ。
岩戸をどうやって説得いたしますの?」
ここで急に前田が立ち上がった。
「問題はねえ!!!
俺が殴って殴って殴って…!!!
全部、解決だぜ!!!」
そう喚いた前田が唾を飛ばす。
一同、一斉に顔を拭いた。
「………前田君。
君は、もう帰って良いですよ。
結論は、後日、お伝えします。」
我慢できなくなった細川がピクピク震えながら言った。
「なんだ!?
帰って良いのか!?
じゃあ、後でお前らの作戦を俺に教えてくれよ!?」
そう言って前田は、帰っていった。
彼のクランのメンバーも彼に続く。
しばらくの沈黙。
「死ね、あの糞野郎ォォォォッッッ!!!」
細川が怒鳴った。
この部屋にいる全員が飛び上がりそうになる。
「爬虫類の糞を固めて作ったような蛆虫がッッッ!!!
私の顔に唾までかけやがってッッッ!!!
電気椅子に縛って東京湾に沈めてやろうかッッッ!!?」
鬼のような形相で細川が暴れる。
両手に刀を握り、椅子や机を斬りつけている。
「………やはり細川は、狂人の血筋ですわね。」
目を細めた徳川が小声で呟いた。
それは、運良く誰の耳にも届かなかったらしい。
彼のクランの幹部たちは、この癇癪を何度も見ているのだろう。
怯えているがそこまで驚いていない。
「総裁…。
お平らに。」
細川クランの一人が細川に声をかける。
すると細川は、静かになって着座した。
「失礼。
皆さんの前で………。」
細川は、いつも通りお淑やかな雰囲気に戻った。
おずおずと目を伏せて赤面する。
「それはそうと。
実戦での指揮は、僕が取るってことでいいか?」
天龍寺織部正がいった。
彼女は、クランのリーダーだがそれほど戦うのが強くない。
どちらかというと指揮に専念するタイプだ。
「あら。
それは、この戦争の責任を引き受けるということですの?」
徳川がせせら笑うように言った。
しかし天龍寺は、余裕をもって静かに答える。
「僕は、そっちの方が貢献できる。
それは、僕の役目だ。」
確かに名うての冒険者ばかりだ。
負けるとは、考えたくないし十分に勝機がある気がする。
しかしその自信は、どこから来るのか。
「それは、岩戸君が来るまで待ったらどうだろ?
たぶん彼も手を上げるんじゃないかな。」
そう十太郎が言うと綾瀬と徳川は、揃って首を横に振った。
「はっはっはっは…。
いや、岩戸ボーイは、引き受けないね。」
「おーほほほほ!!
予も同感ですわ…。」
「なんで?」
十太郎が訊くと徳川が答える。
「一度、失敗してから自分が出てくる方が主導権を握り易いからですわ。
そもそも彼は、PKヘヴンとの戦争に否定的ですし…。
ここに来て自分が指導的な立場に就くのは、滑稽じゃないかしら。」
そう言われると十太郎も腑に落ちる。
これまで反対して来たのに態度を変えるのは難しいだろう。
特に岩戸の傲慢な振る舞いから言ってそれはない。
「それに彼に将器は、ありませんわ。
岩戸は所詮、十露盤と文机で功を為す類。
一軍の将として立つ器量など持ち合わせていませんもの!」
徳川がそう評すると天龍寺が問うた。
「なるほど。
しかし高名な武将を祖に持つ徳川さんは、どうか。
貴方は、将たる器量をお持ちなのでは?」
彼女の問いに徳川は、率直に応じた。
「予に軍才はございません。」
「何でもいいさ。」
十太郎が発言する。
「俺たちは、これに人生が掛かってる訳じゃない。
やっぱり、ああすれば良かったとかお前に任せるべきじゃなかったとか。
そういうのは、この際、抜きにしてさ。」
各クランのリーダーたちは、おおむねこの意見を尊重した。
最初から責任を押し付け合っては、話が進まない。
もっとも何かあった時に責任を押し付けられるのは、細川だ。
彼のクランが抱える武器や資金があるから皆、損失を恐れる心配がない。
勿論、この点は、細川にも了解させている。
つまり1度敗れても2戦、3戦する備えがある。
「はっはっはっはっはっはっは…!」
綾瀬が高笑いした。
「西岡ボーイの意見は、尊重する。
基本的にその通りだが、俺としては、必ず勝ちたい。
これは、負けるのが我慢ならないからだ。」
「それは、そうやね。」
久我は、それだけ言って席を立った。
「流れで決まったけど戦争すると決まった以上、全力で協力する。
余は、もともとあの連中が好かんしね。」
久我と彼女のクランが砦を離れていった。
話し合いは、終わった。
他のクランも次々に席を立つ。
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《!》Topics
紳士同盟総覧
モブキャラは、名前を書略
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岩戸泰臣
クラス:『ホワイトナイト』 Lv19
乙倉主水
クラス:『ダークマージ』 Lv20
中野博雄
クラス:『ハイプリースト』 Lv18
宗像清彦
クラス:『カタフラクト』 Lv18
藤田伊織
クラス:『レンジャー』 Lv24
横山掃部
クラス:『プリースト』 Lv14
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岩戸クラン(6名)
リーダーは、岩戸泰臣でバランスを重視し、様々な職業を揃えた。
現在、藤田が急に実力を伸ばしている。
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綾瀬愛直
クラス:『ホワイトナイト』 Lv24
青柳円四郎
クラス:『レンジャー』 Lv20
高橋つばさ
クラス:『ホワイトナイト』 Lv20
大暮ちか
クラス:『ホワイトナイト』 Lv21
相田ハルト
クラス:『ホワイトナイト』 Lv19
高本文華
クラス:『ホワイトナイト』 Lv20
(7)
クラス:『フェニックスライダー』 Lv20
(8)
クラス:『ブラックナイト』 Lv19
(9)
クラス:『ダークマージ』 Lv20
(10)
クラス:『ダークマージ』 Lv19
(11)
クラス:『レンジャー』 Lv21
(12)
クラス:『ベアラー』 Lv20
(13)
クラス:『ベアラー』 Lv20
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綾瀬クラン(13名)
リーダーは、綾瀬愛直で全国区の運動部員ばかりに声をかけている。
他のクランを吸収し、人数を大幅に増やしている。
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西岡十太郎
クラス:『ハイプリースト』 Lv16
ジョー・マクフェアノール
クラス:『ガンマスター』 Lv22
結城壮馬
クラス:『ウォーリア』 Lv20
倉橋葉月
クラス:『ウォーリア』 Lv18
北村アリス
クラス:『ダークマージ』 Lv20
牧野ルンル
クラス:『キングコープス』 Lv24
高坂天村
クラス:『ソードマスター』 Lv20
浦島月愛
クラス:『カタフラクト』 Lv16
晴海綺羅羅
クラス:『ブラックナイト』 Lv20
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西岡クラン(9名)
元のリーダーは、ジョーだがなし崩し的に十太郎がリーダーに昇格した。
次エリアのパランディスに到達し、飛躍的にレベルを上げまくっている。
単純に戦力だけなら先頭集団で最強といえるかも知れない…?
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徳川龍外
クラス:『ソードマスター』 Lv21
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徳川クラン(??名)
その全容を秘密にし、今回の同盟参加でも人数さえ明かされていない。
徳川は、自分一人で十分に戦力として働けると主張している。
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天龍寺織部正
クラス:『ホワイトナイト』 Lv15
山下瞳美
クラス:『ソードマスター』 Lv19
田村ユズキ
クラス:『レンジャー』 Lv19
木戸鳴奈
クラス:『レンジャー』 Lv19
(5)
クラス:『レンジャー』 Lv19
(6)
クラス:『レンジャー』 Lv20
(7)
クラス:『ハイプリースト』 Lv16
(8)
クラス:『ベアラー』 Lv20
(9)
クラス:『ベアラー』 Lv18
(10)
クラス:『ベアラー』 Lv20
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天龍寺クラン(10名)
リーダーは、天龍寺織部正だがあまり戦闘を得意としていない。
弓兵系中級職である《レンジャー》が多く遠距離戦を得意とし、機動力も高い。
山下、田村、木戸と岩戸クランから除籍したメンバーが混じっている。
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久我白亜
クラス:『サムライ』 Lv18
(2)
クラス:『サムライ』 Lv19
(3)
クラス:『ニンジャマスター』 Lv18
(4)
クラス:『ヴァルキリー』 Lv16
(5)
クラス:『プリースト』 Lv17
(6)
クラス:『ニンジャ』 Lv14
(7)
クラス:『ベアラー』 Lv11
(8)
クラス:『ベアラー』 Lv11
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久我クラン(8名)
リーダーは、久我で物理職を中心に編成し、接近戦を主眼に置く。
以前から岩戸クランに並ぶ攻略スピードを見せていた。
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前田左衛門左
クラス:『バーサーカー』 Lv12
荒井ミリア
クラス:『バーサーカー』 Lv11
(3)
クラス:『プリースト』 Lv11
(4)
クラス:『プリースト』 Lv10
(5)
クラス:『プリースト』 Lv12
(6)
クラス:『ベアラー』 Lv10
(7)
クラス:『ベアラー』 Lv9
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前田クラン(7名)
リーダーは、前田左衛門左。
最近、シャディザールに到達したクランだがレベルが異常に低い。
物凄い短期間でここまで到達したことは、特記に値する。
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細川頼母
クラス:『???』 Lv24
安藤聖夏
クラス:『フェニックスマスター』 Lv25
(3)
クラス:『スラールマネージャー』 Lv22
(4)
クラス:『ハイプリースト』 Lv20
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細川クラン(5000名)
リーダーは、細川頼母でほとんどが非戦闘員。
各地に砦や生産拠点を作り、防衛設備を利用して敵に対抗して来た。
ただある程度の戦力は、保有しており全く無力という訳ではない。
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徳川と十太郎が紅茶を飲んでいる。
会議の後、徳川に呼ばれたのだ。
「………ここだけの話ですわ。」
ティーカップをテーブルに戻して徳川が口を開いた。
十太郎もカップを置く。
「何?」
「伯、何か秘密がありますの?」
徳川の質問が意図するところは分かる。
黒武夜桜のことだ。
「何もないけど…。」
とりあえず話しても理解されないだろう。
こういう時に十太郎は、はぐらかすことに決めている。
「例えば紅茶を飲むとき。
伯、今日のは、ちょっと濃いと思ったでしょう?」
「えっ、ああ…。」
十太郎は、カップを見下ろした。
確かにそう思ったけど口には出さない。
「顔に出てますのよ。
もう一人の貴方は、紅茶の味なんか分かりませんわ。」
「もう一人のって………。
俺が二重人格だって言いたいの?」
十太郎は、かなり苦しい言訳を続けた。
彼には、誤魔化すしかないから仕方ないが。
「予を誤魔化そうとは、随分とご出世なさいましたわね。
でも予には、お見通しですわ。」
徳川は、威厳を持って話し始めた。
「偽らざることをお話致しますと伯を仲間に引き入れたい考えもありました。
けれど正体を見せない伯に全幅の信頼を置くことはできません。
それが伯を拒絶した理由ですわ。」
これには、十太郎も腹が立った。
徳川の言葉を鼻で笑う。
「ははッ。
身分が違うっていう話だったじゃないか。」
一度、話を止めて二人は、砦の外を眺める。
今、細川クランが作った庭園をクランのメンバーが手入れしている。
なんでも農作物を育てる実験と景観作りを兼ねているらしい。
今、《窖》で食べられるのは、干し肉や干し果物と土虫だけだ。
他の食べ物は、現地民から感染する寄生虫や細菌で中毒を起こす。
その上、結局、乾燥した食べ物ばかりで腹痛や気分が悪くなる者も多い。
冒険は、6~8日前後続き、酷い食事は、ストレスの原因になる。
よってここで食料を自給する実験を始めているのだという。
しかしまだ土作り、溜め池や水路の工事などまだまだ先の話だ。
やがて徳川が話を戻す。
「確かに伯と予共では、暮らし向きが違いますわ。
それを案じ、追い返したのは、伯のことを思いやった心算。
予は、伯を高く評価していましてよ?」
「そうかなぁ?」
十太郎は、信用ならないという顔でカップを取った。
もちろん徳川も十太郎からそういった反応が出てくることは、分かっていた。
特に感慨深くもなさそうに紅茶を飲み干す。
「今、信じて貰えるとは、思っていませんもの。
信じて貰う必要もありませんわ。
ただ、伯が覚えていればいいだけのこと。」




