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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第3話「出て行け!西岡十太郎!!」
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襲撃を受けたガレオン船から45分。

ギリギリで砂嵐を避け、三人は聖夏の誘導で砦に辿り着いた。


背後では、巨大な砂埃が巻き上がり、突風が吹き始めている。

空が徐々に暗く曇り、小石がパラパラと降り注ぐ。

砂嵐の中なら5分と持たず人間は、ミンチになる。


「なんだこれ!?」


十太郎が声を上げた。

高橋、高本も目を丸くする。


サバンナの曠野に突如、砦が姿を見せた。

こんなものは、ルート構築の調査で発見していない。


おそらく自分たちで作ったのだろう。

砂嵐を避け、PKヘヴンの襲撃をも撃退する砦を。


「しゃしゃしゃっ。

 PKヘヴンがカズラク=シャディザール間ルートに張り付いてるから。

 ここに要塞を作ろう!!」


聖夏は、乗っていた大鷹を飼育小屋に向かわせると地面に降りた。


チョコレート色の豊満な身体が黄金のビキニアーマーに包まれている。

腰には、巨大なレイピアが吊ってあり、黄金の装飾に宝石がちりばめられていた。

十太郎の視線も思わず胸の谷間、V字パンツに吸い込まれる。


「で、誰?」


聖夏が三人を誰何すいかする。


高橋たかはしつばさ。」


高本たかもと文華あやか。」


「西岡十太郎です。」


(黒武夜桜です。)


夜桜の自己紹介だけは、十太郎にしか聞こえていない。


「あ~…。

 先頭集団のことよく知らないけど。

 恩を売っておきますんで、覚えといてくださいねっ!?」


聖夏は、敬礼をした。

ニカッと笑う。


「綾瀬に良く言っておく。

 そっちも今度は、綾瀬クランを頼ってね。」


高橋がそう答えた。


「しゃしゃしゃ。

 ようこそ、ようこそ、細川クランに。」


砦の門が開き、四人を迎え入れた。


中には、それなりの空間があり、砂嵐を避ける事が出来る。

井戸が掘られているのが水源の確保に役立っていた。


「なるほど…。

 これでこんな場所に避難場所を作れた訳だ。」


岩戸、徳川、綾瀬。

先頭集団がルート構築にどれほど苦心したか。

その時、こんな場所は、候補になかった。


細川クランは、オアシスや砂嵐を避けられる地形を無視している。

そんなものに頼らず、自分で砦を作って西進しているらしい。


「悪いけど。

 水の補給は、金も貰ってもお断りだよ。

 一応、限りがあるんでね。」


と急に聖夏は、バツの悪いことを言う。

しかしもっともな意見だ。


ところがそれを非難する声がどこからか飛んで来た。


「安藤さん。

 それは、阿漕なやり方です。」


そういって奥からセーラー服の男子生徒が現れた。

髪も肌も玉のように磨き上げられているが骨格は、誤魔化せない。

何よりスカートの前が明らかに膨らんでいた。


「ここまで招いておいて。

 補給は、お断りというのは、心象が悪いじゃないですか。」


氷を削って作られた彫像のように美しい。

しかし男だ。


「おっ。

 テメーがリーダーか?

 器が違うねえ。」


夜桜が手を叩いてそう言った。


「お褒めの言葉、どうも。」


セーラー服の男子は、恥ずかしそうに笑った。


彼が細川ほそかわ頼母たのも

細川クランのリーダーであり、新しいルート構築を目指している。


「PKクランは、いまや共通の敵。

 私が言いたいことは、それです。」


彼がそう言うと三人も揃って頷いた。


「特にPKヘヴンは、現状最大のPKを目的とした集団です。

 他のPKクランを集め、大々的な行動を始めています。

 多くの人が迷惑を被っている。」


「待った。」


高橋が手を前に突き出して話を制する。


「まさかPKヘヴンと戦争でもするって?

 そのために私たちに声をかけた?」


「………できれば。」


細川は、残念そうに腰に拳を着いた。

大小の日本刀が閂差かんぬきざしでぶら下がっている。


閂差しは、刀の差し方の一つだ。


一般的な鶺鴒せきれい差しは、すぐに差せ、動き易い。

対する閂差しは、刀を水平に差すので周りにぶつかることもあった。


それでもいざという時に刀を素早く抜ける。

という利点から武芸に自信のある者が好んだとされる。


しかし何といっても邪魔だ。

これは、実力に自信がないと痛い目に会う。

武士にとって空威張りでは、すまないからだ。


武張ぶばった奴には、見えないが。

 そうでもないのか?」


夜桜が眉をつり上げ、挑発的に口の端を曲げた。

細川もにわかに殺気立つ。


「そんな殺気立たないでください。

 ……何も力で脅すつもりなんかないんですから。」


(オイ、夜桜…!

 こんなところで喧嘩しないでくれ。)


十太郎が言った。

喧嘩は、夜桜の趣味みたいなものだ。


(分かってるよ。

 ちょっとふざけただけじゃねえか。)


そう言って夜桜は、笑うが本心でどうだが…。


ともかくここで答えは出せない。

しかし遠からずそういう流れになるだろう。

高橋も十太郎もそう思った。




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