集合
数日後…。
岩戸の計画は、大きな暗礁に乗り上げた。
次の街シャディザールの位置は、おおよそ分かった。
しかしゾンビドラゴンを迂回するルートは、どんどん遠回りになる。
というか実態としてゾンビドラゴンも移動している。
これでは、迂回しようとしてもキリがない。
また問題のゾンビドラゴンは、予想以上に強い。
この3週間、15回挑んで芳しい報告がない。
「方針を変える!」
岩戸は、苛立ちながらいった。
他のメンバーも心底、ウンザリしている。
「レベリングだ。
移動とゾンビドラゴンとの戦闘で1回分の冒険を費やす!
これじゃ何も出来やしない…!!」
「ひゃッ…はは。
これだけ負けてからそれは、ねえだろ?」
夜桜が軽口を叩いた。
岩戸以外の4人の表情が一瞬で凍り付く。
「………確かに西岡君のいう通りだ。
俺が先走り過ぎたせいで無駄な時間を浪費した。」
「いや、そうは言っても収穫はあったぜ。」
夜桜が十太郎の身体で話し続ける。
「たぶん、あのゾンビドラゴン。
このメンバーがレベルを上げてもどうこうできる感じじゃねえ。
空も飛ぶし広範囲に広がる攻撃がある。
おまけにこっちの動きを学習し、対応して来やがる。
なまなかな作戦や力押しは、通用しねえ。」
夜桜の話を聞いていた岩戸が一層、苛立つ。
顔をピクピクと痙攣させて喚き始めた。
「そんなこと、分かって。」
だが岩戸が反論すると夜桜が黙らせた。
拳で岩戸の腹を軽く小突く。
「黙ってろ。」
ゾンビドラゴンの恐怖の200倍の震えが岩戸に走った。
夜桜の暗くぎらつく眼光、その恐怖が岩戸を黙らせた。
「………ッ!!」
「お前も見ただろ?
ペシュカネルの近郊で雑魚共がゴブリンとダンスパーティーしてるのを。
ただでさえバチクソカスみたいな経験値を奪い合ってよォ。
このまま時間がかかると経験値の元が他の連中に吸われる。
どんどん後ろの連中がここに追い付いて来てるんだからな。
今からレベリングなんて効率よく進められねえんだ。
ボケた対策立ててる場合か。
早く進みたきゃ、もっと現実的な対応を選べ。
要するに他の連中と協力しろ。
もう出し抜くとか先んじるなんて形に拘るな。」
反論は、どこからもなかった。
夜桜の提案は、恐らくもっとも簡潔かつ芳醇な可能性を持つ選択だ。
勿論、ここから詰めていくべき点は多い。
どれほどの仲間をさらに集めて挑むのか。
そしてそれらをどう指揮し、どう戦うのか。
具体的な点に関しては何も定まっていない。
「………い、言いたいことは終わったか?
西岡君、具体的なことを一つぐらい言ってみろ。」
岩戸の唇が震えている。
はっきり零れる涙が見えた。
夜桜は、女悪魔の笑いを見せる。
「そんなモンは、お前が考えれば良いんだ。
………頭、良いんだろ?
でなきゃお前は、マジで威張ってるだけのカスだろォが。」
こうして戦力増を具体的に進めることになった。
レベリングではなく単純に頭数を増やす。
早速、岩戸は、綾瀬と徳川に声をかけた。
現在、仮メンバー扱いで信用に足ると判断したメンツだ。
「阿尻は?」
宗像が訊いた。
岩戸は、不愉快そうに首を横に振った。
「あんな見るからに馬鹿そうな連中…。
俺は、一緒に戦いたくないね。」
これだ。
十太郎たちは、顔を見合わせる。
「話は聞いたぜ。
ゾンビドラゴンを倒して西に抜けるんだって?」
早速、綾瀬が到着した。
この3週間で彼の望むメンツが揃っている。
「この人数なら抜けるだろう。
ワクワクして来たな!」
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《!》Topics
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綾瀬愛直
クラス:『ナイト』 Lv10
青柳円四郎
クラス:『アーチャー』 Lv9
高橋つばさ
クラス:『ナイト』 Lv8
大暮ちか
クラス:『ナイト』 Lv8
相田ハルト
クラス:『ナイト』 Lv8
高本文華
クラス:『ナイト』 Lv8
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「なッ!?」
綾瀬は、嬉しそうに十太郎にいった。
困ったように十太郎も相槌を返す。
「あ、え?
ああ、楽しみですねー。」
「ボクシング、野球、バレー、水泳、柔道、陸上短距離走…。
全国強豪校の選手ばかり集めたのは、分かるけど。
ほとんど全員が《ナイト》っていうのは、どういうことだい?」
岩戸が呆れたように右眉をつり上げて言った。
「はっはっはっはっは!!!
お互いに同じ職業ならアドバイスし合えるじゃないか!!!」
そう答えて綾瀬は、腰に両手を着き胸を張って笑う。
だが岩戸は、呆れたように首を横に振って手を広げた。
「そう。
……君のクランだ。
君が思うようにすればいい。」
「ああ…。」
綾瀬は、短く答えるだけだった。
綾瀬は、あーだこーだ反論する気はない。
すでに岩戸に共感して貰おうとも思わないし、評価して貰う必要もない。
もう自分が決め、自分で歩むことができる立場になったからだ。
綾瀬は、仲間たちに向き直って声を張り上げた。
「さあ、皆ーっ。
今回は、俺たちにとって栄えある独立の日だ!
ゾンビドラゴン、キッチリ倒していこうぜっ!!」
「おっし!!!」
「シャアアア!!!」
「おー!!!」
「うっし!!!」
「はいッ!!!」
体育会系らしい溌溂とした返事が返って来た。
岩戸は、不愉快そうに目を細めている。
「叫べばどうにかなるとでも?」
嫌味を呟いて首を横に振って歩いて行く。
そんな彼にクランの仲間も続く。
もちろん円陣も掛け声もない。
集合場所から出発する岩戸に綾瀬が声をかける。
「なあ。
徳川さんは、どうした?」
綾瀬クランは、ほぼ全員が騎乗していた。
歩くのは、《アーチャー》の青柳だけだ。
本来、《ナイト》は、クラスチェンジと同時に乗馬技術を習得できる。
岩戸は、他の仲間に合わせて歩いているが。
これによって騎馬突撃もできる。
もちろん人数が増えれば相乗効果も増すだろう。
非常に強力な切り札で、これをチーム戦術の要とするのは、面白い。
「そこにいるよ。」
岩戸は、綾瀬の質問に答えて顎をしゃくった。
そこには、確かに徳川が居た。
「おーほほほほ!
集合場所がちょっと手狭だったものですから。」
大通りで待っていた彼女の後ろには、20人ぐらいの人だかりが出来ている。
なんだこの人数は。
「この方々は、日本人ではございません。
現地民の《ベアラー》ですわ。」
《ベアラー》。
つまり荷運びということか。
確かに20人の男女は、背中に巨大な荷物を背負っていた。
水や食料を運ばせるために雇ったのか。
一同、徳川のスケールの大きな準備に驚くと同時に複雑な感情を抱く。
理屈は、分かる。
だが奴隷を雇うというのは…。
誰もが現代人らしい嫌悪感を覚えていた。
「………じゃあ、君だけか?」
岩戸が不快感を露わにする。
戦うのは、徳川一人じゃ話が違う。
しかし徳川は、哄笑で返答した。
「おーほほほほ!!」
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《!》Topics
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徳川龍外
クラス:『ソードマン』 Lv10
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「予の強さ。
皆様にお見せ致しましょう…!!」
徳川は、そういって自信満々だ。
早速、岩戸は、スマホでステータス画面を確認している。
「………《ソードマン》…。
………なんだ、このステータス推移は…。」
徳川が自慢する通り、岩戸は、その数値に驚いた。
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《!》Topics
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徳川龍外の初期値
クラス:『ソルジャー』 Lv:1
生命 74
魔力 5
筋力 32
持久 30
知力 22
精神 22
技量 32
敏捷 31
生命…だいたい初期値は、60前後で58~73で推移
魔力…だいたい初期値は、5で3~7の間を推移
他の能力値…だいたい27か28で22~32で推移
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徳川龍外の初期値
クラス:『ソルジャー』 Lv:5
生命 102
魔力 17
筋力 48
持久 46
知力 38
精神 38
技量 48
敏捷 47
※ここで一端、《ナイト》にクラスチェンジする
《ナイト》のクラスチェンジ条件:筋力45 持久44
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徳川龍外 Lv6の能力値
クラス:『ナイト』 Lv:6
生命 109
魔力 21
筋力 54
持久 52
知力 42
精神 42
技量 55
敏捷 53
※《ソードマン》にクラスチェンジする。
《ソードマン》のクラスチェンジ条件:技量50
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徳川龍外 Lv10(現在)の能力値
クラス:『ソードマン』 Lv:10
生命 140
魔力 33
筋力 86
持久 80
知力 54
精神 54
技量 87
敏捷 82
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CC条件で鍵となる能力値は、物理職なら筋力、魔法職が知力と精神。
この3種類のいずれかが45以上ならほとんどCC条件を満たすハズである。
そしてほとんどの場合、初期値は27~28が多い。
《ソルジャー》は、各能力値が4ずつ上昇するのでLv6でCCできるようになる。
逆に初期値で25を切るようだと、この最初のCCの機会を見逃す。
わずか1違うだけで1回分のCCが遅れる訳だ。
特に《ソードマン》の必要条件は、技量50。
条件となる能力値は、技量のみ。
他の職業が二項目あるのに対し、筋力や持久などは、含まれない。
それでもLv6でこの数値に達するのは、初期値で30以上が必須。
《ソードマン》は、他の下級職より入り口のやや狭い職業なのである。
もちろんLv7からでもCCできる。
しかし
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《!》Topics
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クラス:『ソードマン』
汎用クラス
「剣の道に生きる戦士。生涯を捧げ、剣の才を磨く求道者である。
その技量、他の者の追従を許さない。」
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クラスチェンジ条件:技量50
取得スキル:剣
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生命 +7
魔力 +3
筋力 +6~8
持久 +5~7
知力 +3
精神 +3
技量 +6~8
敏捷 +5~7
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《ソードマン》の能力値上昇は、他の下級職と一線を画す。
武器は、剣しか使えないが魅力的な職業だった。
(馬鹿か。
こんな数字で赤くなったり青くなったりしやがって。
やりようによっちゃ、こんなモン、幾らでも取り返せるぜ。
第一、ステータスが強さと結びつくわけじゃねえ。
実際の戦闘での動きや駆け引きは、別問題だ。)
夜桜は、そういって呆れ、大いに腐した。
確かに能力値の数字は、本人がもっとも集中した時に発揮される。
ゲームのキャラのように常に数字通りの戦闘力という訳ではない。
あくまで最高のパフォーマンスを数値化していた。
だが岩戸は、数字に信仰じみたモノを持っている。
数字やステータス画面に異常に拘っているのだ。
「こんなの初期値が高かっただけじゃないか…。」
十太郎も流石に呆れる。
徳川は、それを笑い飛ばした。
「おーほほほほ!
そんなの負け惜しみですわ!!
予のステータス画面に平伏しなさい!!」
だが綾瀬も苦笑いした。
「はっはっはっはっは…。
徳川ガール、その高笑いは、実戦で活躍してからにして貰おうか?」
その言葉は、幼稚園の頃から試合という戦いを潜り抜けた男の台詞だった。
「試合前に大きな口を叩いて、みっともない思いをした連中を。
それは、俺たちが良く見て来たからな…。」
綾瀬の周りに集まる運動部騎士団の目が燃えている。
日本でもトップクラスに負けず嫌いな連中だ。
勝負の前に勝ち誇られては、燃えない訳がない。
これには、徳川も威圧された。
「あら、そんな空威張りは、お互い様ですわ。
ステータスが本物であることを予がお見せしましょう。
その時、吠え面かくのは、そちらですわよ?」
一緒に戦う仲間だというのに。
この出発は、妙な張り合いから始まった。
「まあ、岩戸クランらしいけど。」
十太郎がそう言うと藤田が笑った。




