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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第2話「くたばれ!ゾンビドラゴン!!」
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欺瞞




「つ、疲れた。」


早朝、十太郎は、やっと家に帰り付いた。


徹夜オールでカラオケセックスさせられてヘロヘロだ。

夜桜が知り合った名前も知らない女子に代わる代わる相手させられて。


(真面目だねえ。)


夜桜が笑う。

十太郎は、怒った。


(ふざけんなよ、テメー。

 今から学校じゃねえか。)


十太郎は、家に帰ると着替えてそのまま学校にトンボ返りだ。

重い足取りでなんとか駅に着く。


「もうだめ…。」


電車を降り、よろよろと歩き出した。

2時間目の授業にようやく顔を出す。


「西岡君、来たのか。」


世界史の相良そうら先生が眉をひそめていった。

十太郎は、頭を下げると素早く自分の席に着座した。


「す、すいません。

 ちょっと寝坊しましたー。」


十太郎が座ると相良先生は、咳払いして授業を再開する。


「んんっ、えーっ。

 ……世界四大文明というのはー。」


しかし結局、十太郎は、そのまま眠り始めてしまった。




「オラ。

 起きろ、テメー。」


「ああ?

 夜桜か。」


十太郎が目を覚ますと真っ青な空が見えた。

ここは、《スケロスの窖》だ。


「うわあ…!?

 ってことは、放課後まで寝てたのか俺!?」


十太郎は、驚いて顔を両手で抑えた。


「安心しろ。

 ちゃんと私が授業出てやったから。」


と答えて夜桜が笑った。

一層、十太郎は、呻くようにぼやいた。


「だから心配なんだよ~。

 あああ~~~。」


狼狽える十太郎を夜桜は、嘲笑する。


「ひゃひゃひゃひゃひゃ…。

 葉月の奴は、可愛かったなァ。

 あのデカい乳は、格別の…。」


「お前ええッッッ!!!」


十太郎は、夜桜に素早く殴りかかった。

普段なら見せない本気の怒りだ。


ただし全く効かなかったのだろう。

夜桜は、拳を顔で受けても平然としていた。


「………()んだよ?」


殴られて嬉しそうに夜桜は、訊いた。

十太郎は、急にいつも通り大人しくなっていく。


「じょ、冗談でもそんなこと…ッ。

 ………殴ってゴメン。」


「ひゃひゃ…。

 別に痛いのは、嫌いじゃない。

 今度、殴っても良いぜ。」


「やめろよ。」


夜桜が十太郎の身体の中に戻る。

正直、二人でいるより、この合体してるところを見られる方が不味いよな。


「………っしょと。」


ここは、カズラクの校外だ。

前回の冒険で最後、十太郎たちは、野営していた。


「来たか、西岡君。」


岩戸が剣と盾の手入れをしている。


乙倉、中野、宗像、藤田。

他のメンバーも冒険再開の準備を始めていた。


「俺たちは、ちょっと周囲の警戒に当たる。

 君は、急いで遅れを取り戻してくれ。」


岩戸は、そう言って準備が手付かずの十太郎を急かした。

十太郎も急いで皆に追い付こうと装備の点検、状況の確認をする。


「ご、ごめん…!」


「手、貸した方が?」


乙倉が岩戸にいった。

しかし岩戸は、首を横に振る。


「ダメだ。

 この異世界には、24時間の空白を置いて飛ばされる。

 直前の状況を思い出し、感覚を取り戻させないと危険だ。


 だから装備点検や出発の準備は、自分でやるべきだ。

 何かあった時、誰のせいにもしてはならない。」


岩戸は、そういってサバンナに踏み出した。

他のメンバーも敵がいないか確認しに出ていく。


「すまんな、西岡君。」


乙倉も十太郎に声をかけてから離れる。


15分後。

準備を済ませた十太郎が岩戸に手を振る。


声をかけるのは、禁止されていた。

それが食人種やゴブリン、モンスターや猛獣を呼び寄せることもあるからだ。


(ライオンがそっちにいるぞ。)


夜桜が忠告した。

灌木の陰に若い雄ライオンがいる。

十太郎は、警戒しつつ、素早く通り抜けた。


(別に向こうもこっちを襲う気はないが気を着けろ。

 不用意に刺激するんじゃないぞ。)


(ありがとう。)


「ちッ。

 ………いつも君が最後だ。」


岩戸が厳しい事を言う。

十太郎は、下唇を噛んで固唾を飲んだ。


「ご、ごめん。」


岩戸が剣を掲げて集合の合図をすると一同が集まる。


「皆、今日の方針を説明する。」


岩戸以外の5人は、互いに目で表情を伺う。

一様に口を真一文字に結んでいる。


「次の街の名は、シャディザール。

 今日までの調査によっておおよそのルート選定が済んだ。


 しかしこれは、欺瞞だ。」


岩戸の言葉に全員が困惑する。


「欺瞞?

 本当の計画は、別にあるっていうのか…ッ?」


中野が質問すると岩戸は、せせら笑うように答えた。


「当たり前だろう。

 良く分からない馬鹿どもを探索に参加させてるんだ。」


阿尻ら、仮メンバーの連中に本当の計画は、明かせない。

特に綾瀬は、ほぼ確実に新クランを立ち上げる段階まで漕ぎ着けた。


「これが俺の考えたルートだ。」


岩戸は、皆にデータを送る。

それは、これまでの探索から結んだルートより遥かに短い。


「待て!

 このルートは…!!」


十太郎が狼狽えたように声を上げる。

岩戸は、勝ち誇ったように微笑した。


「そう!!

 ゾンビドラゴンの発見された地点を通過する!!」


徳川龍外のグループは、カズラクとシャディザールの間に大きな敵を発見した。

その外見から”ゾンビドラゴン”と仮称される爬行する巨大生物だ。


この敵に対する3度の攻撃に失敗。

岩戸は、この地域を大きく迂回するルートの探索を進めていたはずだった。


しかしルートが伸びれば食料や水などの物資確保が困難になる。

単純に時間がかかる以上に様々な問題が立ち塞がっていた。


「この迂回ルートは、大きな負担がかかる。

 でも解消するのは、簡単なことだ。

 邪魔な敵を倒せば良い。


 ここは、開かれた世界(オープンワールド)形式だからボス戦みたいな関門チェックポイントも無視できる。

 だが無視せず突破した方が利口だと分かった以上、迂回はしない。」


「待て、岩戸君。」


宗像が首を左右に振りながら反対した。


「このメンバーでやるのか?」


「当たり前だ。

 他の連中には、迂回ルートを探索させている。」


岩戸は、スマホをしまって話を続ける。


「もしゾンビドラゴンを倒せなければ迂回ルートしかない。

 迂回ルートは、次善の保険なんだ。

 決して手を抜いておくことはない。


 それに最短ルートが構築された後、それは俺たちだけが抑えるべきだ。

 この事は、ここにいる人間だけが知っていればいい。

 他の馬鹿どもに分かち合う様な馬鹿なことなどしない!」


二重の策謀という訳だ。


失敗すれば迂回ルートを万全に仕上げる必要がある。

だから他のメンバーには、そちらを進めさせる。


進めさせておいて忙殺し、自分たちだけが最短ルートを独占する。


「いいかい?

 新しい街を拠点とし、周辺を探索してアイテムを早く手に入れること。

 それは、この冒険において何よりも重要だ。


 だから他の連中を出し抜く。

 分かるかい、西岡君?」


急に岩戸は、十太郎にそういった。

驚いた十太郎は、目を丸くして答える。


「え?

 ………分かるけど。」


「そうか。

 君は、結構なお人よしだからねえ。」


それだけ言って岩戸は、彼が認める仲間たちを見渡した。

皆、不安があるようだが口には出さない。


「じゃあ、行こうか。」


岩戸がそう言って先頭を歩く。

6人は、無言で曠野に足を踏み出した。




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