表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第2話「くたばれ!ゾンビドラゴン!!」
31/213

仮メンバー




翌日。


綾瀬は、すぐに10人ぐらい人を引っ張って来た。

これには、岩戸も目を丸くする。


「どういう魔法を使ったんだ?」


夜桜が十太郎の身体で綾瀬に訊いた。


「ああ…。

 次の街までの探索を合同で進めようって話を持ちかけた。

 ついでに気が合ったら新クランを立ち上げるとね。」


綾瀬は、そう言って顎を手で揉んで集まった顔ぶれを見ている。

これは、事前に根回ししてたな。


「じゃあ、3~4人ぐらいの小集団に別れて。

 そしたらオアシス、避難場所を探してくれ。

 これまでの地図情報をスマホに配る!」


岩戸がそう言って仮メンバーたちに指示を与えていく。


「どうもー。」


チャラ男風の男子高校生がスマホを手に微笑んだ。

岩戸は、この手の人種が嫌いで隠しもしない。

だが相手も軽蔑の目で睨む岩戸を冷ややかに鼻で笑っていた。


阿尻あじり露蓮ロレン

岩戸とは、違う意味で他の冒険者をリードしている男。


見た目こそギャル男だが、あちこちの小ダンジョンを攻略。

貴重なアイテムや装備、呪文を回収。

また能力値パラ上昇報酬(ボーナス)を得る神殿や祠などを発見していた。


彼に言わせれば西に進むことだけ考えている岩戸は、いずれ行き詰る。

そう考えていた。


彼の目的は、地図情報だけだ。

各地に隠された小ダンジョンの財宝やアイテムは、早い者勝ちだ。

次の街へのルートなど急いで構築する必要はない。


「おっ。

 こいつら、マジでオアシスと砂嵐の避難場所しか探してないね。」


阿尻は、そう呟いて薄ら笑いを浮かべた。

彼の仲間もニヤニヤしている。

彼らは、早速、街から出て探索を始めた。


また1人、岩戸から地図情報をスマホで受け取る。


「おーほほほほ!

 ごめんあそばせ。」


古い漫画に出てくるような金髪縦ロールのお嬢様。

後に徳川クランを作る徳川とくがわ龍外りゅうがいだ。


「うわーっ。

 結構、探索進んでるね…。」


高橋たかはしつばさ。

高校バレー部の期待の新人で中学時代から知られた選手。

後に綾瀬の立ち上げた新クランのメンバーとなっている。


「………なんとか頑張ってクランに入れて貰わないと。」


ポニーテールの女子生徒が拳を握って気合いを入れる。

《ソードマン》の山下やました瞳美ひとみだ。


「このチャンスに新クランに潜り込もうっと。」


友達とそういって話し合っているのは、田村たむらユズキ。


「あの綾瀬って男子にアピれば良いンだよね?」


と友達の木戸きど鳴奈めいなもはしゃいでいた。


早速、二人は、綾瀬のところに駆けてくる。

目を輝かせた二人は、猛烈なアピール攻勢を開始した。


「あのーっ!

 私たち、新クランになんとしても入れて欲しいんです!!」


「そうそう!!」


ガッツく田村と木戸に夜桜は、笑いが止まらなかった。

十太郎は、苦笑いしている。


(くくく…ひゃひゃひゃ!!

 バァーカ!!

 綾瀬は、女に興味ねえんだよォ!!)


(やめろよ…。

 俺の顔まで笑って来ちゃうだろ?)


と頭の中で言いながら十太郎は、身体の主導権を必死にコントロールしていた。

油断すると凄く悪い顔で大笑いしてしまうだろう。


「はははは!!!

 ゴメン、俺、体育会系だから体育会系の奴と組みたいな!!」


そう言って綾瀬は、大笑いした。

彼にそう告げられ、田村と木戸が揃って答える。


「あー。

 それなら私、卓球部でー。」


「私は、陸上部ーう。」


田村と木戸がアピールするが綾瀬は、首を横に振る。


「悪いね、ガールズ!!!

 俺がいう運動部ってのは、俺と同じステージ…!!

 つまり全国大会でベスト8に入るような個人選手やチームなのさ!!!」


これまた極端な概念だな。


「もちろん俺と一緒に組みたいという人は、拒まないよ!?

 でも今日一日でも俺と組めるかな!!!」


綾瀬は、ボクシング部だがヘビー級選手だ。

いわゆるフェザー級とかとは、世界が違う。

体重90kg以上の世界だ。


その肉体は、どう考えても現代日本の高校生ではない。

このまま古代ローマのコロシアムに紛れ込んでも違和感ない。

そしてこの肉体は、ボディビルで作られたものではない。


「ねえ、二人とも。

 本当に綾瀬の体力は、凄いんだ。

 まあ、今日ついていけば分かるよ。」


といって十太郎が一応、助言した。


個人の集中力は、スマホで見られるステータス画面に現れない。

能力値化されていない個々人の素養は、実際に相対して理解できる。

もっとも見ても何も分からないレベルの人間も大勢いる。


もちろん二人は、言われて引き下がることはしなかった。

ただし、もちろん次の日には、現れなかったが…。




こんな調子で綾瀬と岩戸に着いていける人間は、限られている。

それでも日を追うごとに人数は、減るどころか増え続けていった。


「へえ。

 結構、人が来るねえ!」


阿尻が十太郎に声をかけて来た。

この手の男子が苦手なのは、十太郎も岩戸と同じだ。


しかし十太郎の中には、夜桜がいる。

夜桜が阿尻と普通に接しているので彼も十太郎に話しかけてくる。

まさか二重人格だとは、なかなか思い付かないものだ。


「あ、阿尻君…。」


「へへへ、そんな嫌がんないでよ。

 それより、何か面白い話ない?」


阿尻の目的は、小ダンジョンの探索だ。

何か不自然な地形、遺跡の痕跡。

そういう話を欲しがっていた。


しかしこの時、岩戸クランは、そういった情報を知らない。

必死に西に向かうことだけを考えていた。


「え?

 ああ、この辺にでっかい石像があったって。

 藤田さんのグループが見つけて来た。」


十太郎は、何一つ疑わずにスマホを見せる。

写真では、幾つか3mぐらいの石像が倒れていた。

その景色を見て阿尻は、ニヤリとする。


「へえ。

 何かの目印になるかなァ。」


「ああ…。

 こっちの大岩とかどうだ?

 上で女にブチ込むと最高に気持ち良いぜ。」


夜桜が軽口を叩く。

この豹変に阿尻の仲間は、少し驚いていた。


「そういうのも、またゆっくり話そうぜ。」


阿尻は、それだけ言って退散した。


小ダンジョンのシステムは、まだ広く知られていない。

しかし情報にとって鮮度は、命だ。

早速、写真と地図情報を頼りに向かうことにする。


「おい。」


岩戸が阿尻たちを引き留める。


一瞬、阿尻の顔に焦りが浮かぶ。

しかし顔面に命令を与え、普段通りを装わせた。


「なんですか、岩戸君。」


「お前ら、別のグループが探索し終わった場所を調べ過ぎじゃないか?

 俺たちは、次の街に向かうルートを探してるんだぜ。」


岩戸は、そういって阿尻が提出した情報にケチを着けた。

地図を埋めるのが目的なのに、これでは困るという訳だ。


「すんません。

 でも、情報の少ないところで死んだりしたら効率悪いでしょ?

 だから既存の情報を頼りに探してるんで…。」


「ちッ。

 余計な知恵を使わなくて良いんだ。

 お前らは、黒いところを突っ走って地図を埋めれば良いんだよ。」


岩戸は、そう言って阿尻を叱責する。

それは、どう考えても相手を人間扱いしていない。


「あまりに非協力的だと出て行ってもらうぞ。」


最後に捨て台詞を吐いて岩戸は、阿尻たちの前を去った。

そしてまた別にグループに口出ししている。


「ふん!

 ………お前の顔から血の気が引くのも、そう遠くねえんだぜ。」


阿尻は、ニヤリと笑って仲間たちと出発した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ