登校
「………どいてー。」
十太郎が朝起きると義理の妹の足が顔の上に来ていた。
井嶋葵。
継母が再婚した継父の連れ子だ。
つまり十太郎とまったく血は、繋がっていない。
義妹は、十太郎にべったりで、ある日、何と無くキスされてしまった。
その次は、何と無くキス以上のことまでするようになった。
そしてズルズルと関係が続いている。
「おはよう、十太郎兄さん。」
もぞもぞと起き出した義妹が180度回転して十太郎の方に顔を向けた。
「ったく、なんて寝相だよ。
……葵、自分の部屋に行って着替えな。」
「きゃっ。」
そう言って十太郎は、義妹の尻を押してドアの方に追いやった。
自分も制服に着替え、義妹を急かし、一緒に下の階に向かう。
「十太郎、おはよう。」
台所では、義姉がのんびりしていた。
大学生というのは、本当に暇な身分らしい。
本人曰く、それなりに忙しいらしいのだが。
彼女は、宮澤メイ。
継母の連れ子でやっぱり十太郎と血縁関係はない。
実母の死後に実父が再婚したので義妹より付き合いが長い。
やはりというか義姉とも肉体関係がある。
子供の頃からいたずらされ、いい玩具である。
「ねえ。
学校、サボっちゃいなよ。
どっか遊びに行きたいな。」
といって義姉が十太郎に肌を寄せる。
十太郎は、無視して朝食のパンをやっつけていた。
(おう、良いな。
サボっちまおうぜッ!)
面白がって夜桜が追従した。
十太郎は、溜め息をついて拒絶する。
(そんなのダメだって。)
(はあ?
どうせおさらいだろ。)
夜桜が言いたいのは、授業内容が前回の繰り返しということだ。
新しく教わることがなく復習や補強をする。
(お前と義姉さんを一緒に遊ばせたら何するか。
分かったもんじゃない。)
「行ってきまーす。」
十太郎は、義姉から逃げるように家を出た。
義妹は、自転車で中学校に向かう。
十太郎の血の繋がった両親は、既に他界。
今の両親は、二人とも継親だ。
十太郎の実父は、継母と再婚してすぐに死んだ。
自殺だった。
理由は、分からない。
今の両親は、悪い人じゃない。
義姉、義妹ともに仲良くやっている。
しかし寂しいからか。
それとも恐ろしいからか。
義理の姉妹と関係を持ってしまったのは、自分だけが赤の他人という孤独からだ。
実際、考えると捕えようのない恐怖が頭から離れない。
自分だけが全く血縁のない子供で両親は、何と思っているのだろう。
十太郎は、自分がどことも接していない宙に浮いた存在だと感じていた。
「おはよう!」
駅で葉月に挨拶される。
瓶から噴き出す炭酸飲料みたいな溌溂とした元気だ。
その愛らしさも合わさって誰もが彼女に目を奪われる。
「お、おはよう。」
十太郎は、吸い寄せられるように彼女の身体を見た。
バスト120cm、ヒップ120cm。
4つの暴力的な膨らみが男子高校生の好奇心を擽る。
特にバイクショーツが肉肥りした腿を印象的に飾る。
駅まで自転車で来ているらしい。
高まった彼女の体温を隣で感じる。
「夏は、平気?」
明らかに頬を赤くしながら十太郎が誤魔化す。
葉月の顔も赤い。
「平気、平気っ。
慣れてるからね。」
二人は、そろって電車に乗り込む。
電車内で葉月は、べったりと十太郎に身体を寄せてくる。
正直言って十太郎は、男の物が辛い。
(うう…。
葉月、こんなの…。)
あの純真な幼馴染がすっかり年頃の女の子になって。
すっかり雌豹みたいに自分を狙ってくる。
「それでさー。」
「うん、うん。」
十太郎は、葉月の話に適当に相槌を返す。
頭の中にあるのは、あの異世界のこと。
彼女は、あの金属の封筒を見つけたのだろうか?
もしそうなら危険な目に会っていないだろうか心配だ。
(でも、いきなり話しても信じて貰えないだろうな。)
金属の封筒を開き、あの異世界
───《スケロスの窖》に飛ばされて現地で10日間過ごした。
それが気が付くと元の教室に戻されていた。
時計を確認していないがきっとこっちは、1分も経っていないだろう。
まさに白昼夢のような不思議な体験だった。
しかし金貨や宝石は、確かに手許にあった。
あの体験は、確かにあったのだ。
どこか時間の流れも隔絶した別の異空間のような場所で。
(訊いてみたらどうだ?)
夜桜がかなりいい加減そうな口調で提案する。
(やだよ。
急にあんな話しても信じて貰える訳ない。)
葉月のアピールを無視して十太郎は、鬱々とそんなことで悩んでいた。
豊満の上にも豊満な乳は、ずっと十太郎に押し付けられている。
「ねえ?
ちゃんと聞いてる?」
葉月が底光りする目で十太郎を睨んだ。
流石に上の空だと怒らせたらしい。
「ごご、ごめん。
ちょっと考えることがあって。」
それは、葉月に関係ない。
というよりむしろ葉月に関係ある話だ。
だが、打ち明ける気にならなかった。
「心の整理が着いたら話すよ。」
十太郎がそう答えると葉月は、途端に目を輝かせた。
「ええ、本当!?」
いったい何が彼女を喜ばせたのだろう。
少し十太郎も夜桜も怪訝に眉をひそめた。
「やっぱり覚えててくれた?
もし再会できたら結婚するってっ!」
うわあ、怖い。
子供の頃の約束!
十太郎も流石の夜桜も凍り付いた。
「引っ越しする前に約束したよね。
うん、もう覚えてくれてないなら私から話すね!
これって運命の再会ってことで良いよねっ!?」
そう目を輝かせて葉月は、語るのだった。
だが十太郎にとって寝耳に水だ。
「マジ?」
思わず夜桜が苦笑いして訊ねる。
「じゃあ、付き合うだけで良いから!」
葉月は、そう言って十太郎の膝を叩いた。
「デートしよう!
ね、ちょっとなんか言ってよっ!?」
目くるめく葉月のペースに十太郎は、頭がこんがらがって来た。
葉月は、美人だし男なら誰でも恋人に欲しい。
でもこっちが準備してない段階で告白を受けるのは、こんなに困るものなのか。
「じゃあ、土曜に遊ぼうか。」
ここで断り切れないのが十太郎だ。
「いいねっ!」
葉月が親指を立てて、ニカッと笑う。
軽そうなオレンジの短い髪と巨乳が揺れる。




