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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第3話「出て行け!西岡十太郎!!」
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移動




(あのホモ。

 次会ったら血達磨にしてやる。)


(やめろって。)


十太郎は、頭の中で夜桜よるさくらにいった。


(綾瀬は、良い奴だよ?)


(お前のチンポ狙ってるだけだぜ?

 ああん、ああん、ああん!)


夜桜は、体をくねらせ、腰を振る。

十太郎は、嫌そうに睨んでいた。


(……ああ、ホモとかマジで勘弁して欲しいわ。)


そう言って夜桜は、震える肩を両手で抑える。


(女のお前には、関係ない心配だろ。)


(私が目を離した隙にられてねえだろうな?)


(お前こそ俺が目を離したら…。

 いろんな奴とってるだろ?)


(ひゃっひゃっひゃっひゃ…!)


夜桜は、女悪魔の笑いを上げた。

風も凍るような残忍な表情だ。


今、十太郎は、高橋、高本とサバンナを歩いている。

灌木と乾いた大地、限りない地平線がどこまでも続く。

何もかもが日本と正反対の環境だ。


遠くでゴブリンがライオンの餌食になっている。

食人族グールが裸足で走り回り、運のない冒険者を持ち帰っている。


「たすッ!

 助けてー!!」


男子生徒だ。

十太郎たちは、気にも留めない。


最近、初心者狩りすらできない低能者がわざとこういうことをする。

もちろん彼は、本当に困っているかも知れない。

だが一部の悪人が全体に不利益を撒き散らす悪循環を生む。


彼に罪はない。

しかし十太郎たちも警察や聖者ではない。

目に映る全ての人間を助ける義理はない。


「ガアアアアーッ!!」


ワイバーンが急降下してくる。

隙をついて十太郎たちの背後に襲い掛かった。


「来たッ!!」


十太郎は、神聖魔法で攻撃する。

《プリースト》だからといって全く戦えない訳じゃない。


むしろ十太郎は、攻撃にも積極的だった。

二人いるからと言って二人とも回復に撤するのも非能率だ。

状況に応じ、戦闘にも貢献する。


岩戸もそれを評価していた。

しかし彼にとってそれは、自分の指揮で成り立つもの。

十太郎個人の判断や働きと見做していなかったのだろう。


「流石、西岡ボーイ!

 やるねえ。」


高橋が両手で指を差す賞賛のポーズを取った。

十太郎は、ぺこりと頭を下げて含羞はにかむ。


「やっぱ魔法あると楽だわ。

 やっぱ《マージ》欲しいー。」


高本がそう言って剣の血を払う。


岩戸は、綾瀬のやり方を否定するが実際に効果はある。

高橋も高本も明らかにステータス以上の戦闘力を見せた。


Lv30でようやく倒せるはずのワイバーンを三人で仕留めている。

本来なら逃げるしかない相手だ。


だが


(雑魚共が。

 何たらたらやってんだ。)


夜桜は、悪態を突いている。

足の指が海の波のように順番に折れたり伸びたりする。


(この調子じゃ退屈で死にそうだ。

 馬でも何でも連れて来いよォ…。)


(馬の餌代まで出して貰ったら悪いよ。)


意外だろうが馬で進んでも人間で進んでも移動スピードは、変わらない。

むしろ人間の方が移動する速度が速かったりする。

しかしここは、地球ではなかった。


(やっぱ《フェニックスライダー》?

 あの鳥に乗る奴。

 お前、ああいうのに向いてれば良かったんだよな。)


夜桜は、そう言って夜空のような美しい長い髪を指で遊ばせる。

答えながら十太郎は、汗を拭って歩き続けた。


(お前こそ、ああいうのに向いてないじゃないか。)


(だーかーらー。

 お互いに欠点を補えて良かったじゃん。

 そっちの方がー。)


(ばーか。

 俺が眠くなったら鳥の上でお前は、どうするんだよ。)


(根性で起きてくださーい。)


(やっぱお前、感じ悪いわ。)


二人とも困ったように笑う。

別にお互いを必要として選んだわけじゃない。

強制的に結んだ関係だ。


だが、なかなか楽しい生活だと思う。

お互いに心底、悪い奴でもないと思っている。




十太郎たちは1日目、夜の休憩地点に到着する。


4日間で昼と夜、7回、水の補給と食事を摂る。

4日目には、カズラクに到着するので夜の分は、予定にない。

これは、カズラク=シャディザール間ルートとして各クランが確立したものだ。


「おっし!」


三人で分担して野営の準備を進める。

既に2ヶ月近い冒険をこなし、初心者丸出しの無様な失敗も少なくなった。


「あー。

 これ、嫌いなんだよね。」


高橋が嫌悪感を露わにする。

彼女の目線の先には、大きな白い芋虫が動いていた。


荷を軽くするため、携行食料の他に土虫を食う。

これは、この地域の倒木や地面を探せば簡単に見つかる。

数は豊富で真剣に探せば装備ナシでサバンナを抜けることも可能だろう。


「慣れれば平気だって。

 ほら。」


まるでポテトチップスを食べる気軽さで高本が口に放り込む。


恐るべきことにこの異世界で日本人が口にできる数少ない食料だ。

他は、例え調理済みでも食中毒や寄生虫の危険が伴う。

どうも現地民の身体から伝染するらしい。


このため地球から食べ物、飲み物を確保するというクランは、多い。

それ以外は、悪食に堪えるスキルを習得しているらしい。


考えようによっては、ゴブリンやワイバーンを食べる。

そんなまたとない好機にありつける。

好機かどうかは、個人の主観によって違うが。


砂嵐を避けるため、掘られた壕の中で寝泊まりする。

中には、糞みたいなクランもいて壕を埋めたり罠を仕掛ける。

しかし基本的に各クランが共有するべき立派な施設だ。


「じゃあ、俺は、あっちで寝るから。」


十太郎は、女子二人にそういって隣の壕に潜り込む。


我が家のように勝手知った穴だが油断できない。

急にダーツや槍が飛び出して来たことは、1度や2度じゃない。

本当にモンスターより人間の方が質が悪い。


(おお?

 なんだ、テメー。

 濡れ場は、ねえのか?)


夜桜が意地悪そうに囁く。

横になった十太郎は、恥ずかしそうにキッパリと断った。


(ないよ。)


(じゃあ、シコシコするのか?)


(黙っててくれ。)




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