お見舞い
今日もひきつづきタルカ視点です。
「失礼します。タルカ様」とフーディが慌てた様子で入ってきて俺にそっと耳打ちをした。
「実は……。」
「何!?アマーリアが。」
「はい、お見舞いのためにとすでに玄関に来ていまして……入れてもよろしいでしょうか?」
アマーリアは以前私がお見舞いしたキャピレット家の人間だ。彼女の誠実さや貴族としての立ち居振舞いに、彼女を婚約者にしたいと父にお願いしていた。
(だけど……。)
「なぜアマーリアは俺が帰還したことを知っているのだ?」と俺は声を押さえながらフーディに聞いた。昨日帰還した俺たちの情報を、地領の貴族が知っているのはいくらなんでもおかしい…誰かが情報を流したとしか思えない。
「おそらく……キール様かと。」
(確かに父上ならやりそうだが……なんてことをしてくれたんだ。)と俺は心のなかでひとり父に怒っていた。
(ここで、イレーヌと会うのはまずい。)
恋愛話が嫌いな女子なんていないだろう、もしイレーヌがアマーリアと会えば根掘り葉掘り聞くのは目に見えている。
俺の心のなかで天使と悪魔が声をあげる。
(悪魔:ここでイレーヌにあってもいいのか?絶対根掘り葉掘り聞かれ、気持ち的に恥ずかしさで耐えられないぞ。)
(天使:相手は地領の貴族、雑に扱えば婚約話が……。)
俺は声の声を聞いた上で自分が恥をかく選択肢を選ばざるをえなかった。
(だってそれしか選択肢がないだろう?)
「わかった……あげてくれ。」と俺はため息をつきながらフーディに指示を送った。
「何かあったの?」
「いや……イレーヌ様…今から見舞い客が今から入って来ますが……。」
「……うんいいんじゃない?何か問題?」とイレーヌはフーディがいれてくれたお茶を飲みながらクッキーを食べた。
「……。」俺は額に妙な汗をかきながら少し緊張していた。
(なんか母上に彼女を紹介する気分だ。)
数分後、フーディがノックをして「アマーリア様が参られました。」とゆっくり扉をあけた。