魔方陣と帰還
「アルセーラ、そんなに怒っても仕方ありません。」
「ですが姫様!」
「現状では、この方法以外ないのですから……。」
私自身も考えてみたが、ロジエールやアメロの案を聞き入れるかしないと思う。馬車は先程の襲撃で後輪が壊されて走れる状況じゃないし、皆怪我をおっているので、しっかりと医療体制が整っている城へ早く帰還すべきだ。
「ロジエール、手錠はしっかりとしてくださいね。」
「はい、そこはぬかりなく。」
「このようなお願いを聞き入れてもらって感謝いたします。」
「アメロ、あなたには本当に世話になりました。」
「いえ。借りを返しただけですのでおきになさらず。」とアメロはにっこりほほえんだ。
(目が笑っているようで、笑っていない……この人……表と裏がありそう。)
その後、アメロの部下たちによって円の中央に手錠をした盗賊達が並べられ円の外側に私や御者、アルセーラ達が並んだ。
「すまないなアメロ、世話になった。」
「いえ、私が受けた恩に比べれば……。」とアメロは笑ったあとで兵士に位置につくよう命じた。兵士たちは角のところにそれぞれたち地面に手をつけ呪文を唱え始めた。
(すごい……魔方陣が光だした。)
最初は何もなかった魔方陣は、次第に紫色の光をおびながら輝き始めた。そして、魔方陣の星形のような形がくるくると回転し始めながらどんどんと光が上へと上がってきた。
「それでは。」とアメロが頭を下げてお辞儀をしたとたん光が一気に頭まで上がり、目の前が真っ白になった。気がつくと、私達は先程までいた部屋とそっくりな石造りの部屋にいた。
(帰ってきた……のかな?)
周りを見るとそこには見慣れた顔があった。
「お母様、お父様。」
「イレーヌ!」
二人は私のもとに走りよってきて、目のはしに涙をためながら私を抱き締めた。私は二人と抱き合いながら、いつの間にか涙を流していた。「私のイレーヌ無事でよかった。」とお母様は優しく私の頭を撫でてくれた。