襲撃後
「お嬢様!お嬢様!」
「…な…に?」
私は大きく叫ぶ声に起こされるように目覚めた。
「お嬢様!」と頭に包帯を巻いたロジエールが心配そうに私を抱き抱えていた。
「ロジエール……?」
「よかった。本当によかった。」とロジエールは安堵の表情を浮かべながら、私の肩をぎゅと握った。
「私……あのあと……。」
「あのあと、お嬢様は気を失ってその場に倒れこんだんだ。俺は御者の人に治療してもらって……それから、倒れ混んでいるお嬢様のもとに…………俺の力不足で……。」とロジエールは歯を食い縛り、悔しそうな顔をした。
「ロジエールのせいではありません。あのとき、ロジエールがかばってくれなけば私は死んでいたかもしれませんでした。あなたが私の命を救ってくれたのよ……ありがとうロジエール。」と私はロジエールのほほにそっと手をやった。
その時、ロジエールの目からすっと一筋の涙がこぼれていた。
「ああ。」と涙をこらえながら、彼は私の存在を確かめるかのように、私の手に自身の手を重ねた。そして、静かに目を閉じ「約束は守ったよ。」とぽそっと呟いた。
「何かいった?」私にはその言葉が聞こえず聞き返したが、彼は「いえ、何も……。」といって静かに私を地面へおろしてくれた。
「それより………ロジエール…………ここはどこ?」
(まだ、敵がいるかもしれないし……。)
「ここは、検問所近くの森のなかです。」と見知らぬ人物がロジエールの隣にたっていた。その人は、軍服のような格好で腰には剣が刺さっている。
(……敵ではないよね?)
「ちなみに敵の動向を心配されているかもしれませんが、全員縛りあげましたので大丈夫です!」
(誰……?ていうか心読まれてる?)
「あの……。」
「はっ、失礼しました。お初にお目にかかります。私はこの領地で領主の近衛隊長を勤めるアメロと申します。以後お見知りおきを…。」とアメロは深々とお辞儀をした。
「こいつは俺の学友だったやつで、タルカにはこいつに緊急事態を知らせるために動いてもらったんだ。」
(……そういえば!)
「それで、……タルカは?」と私は思わずアメロの服をつかんでしまった。
「無事に追っ手を振り払い我々の元に来ました。今は戦闘の怪我の治療ため検問所の方にいます。」とアメロはにっこり微笑みながら、検問所のある方角に目を向けた。「そう。よかった!」私はホッと胸を撫で下ろすと、「失礼しました。」と服からそっと手をはなし、手を後ろに組み換えた。
(つい、つかんじゃったけど……恥ずかし!)
そして、その恥ずかしさをまぎらわすために、私は周りを見渡した。そこには、縄で縛り上げられた男たちがにらむようにこちらをみていた。




