湖畔のラッタ
「本当にいいところ、空気も美味しいし!」
「ええ、ここは私のオススメのところですから。」
「えっ?」
「前の主ともよくここで息抜きをしたものです。」
「そうなの?」
「ええ、その方がこの湖畔のそばでゆっくりと本を読む時間がすきで……。」とロジエールは楽しそうな顔をした。
「へぇー、ねぇ、前の主って……。」と話しているとがさがさと草むらの辺りから音がした。
「……お嬢様。」とロジエールが私を庇うように前にたった。
(まさか……刺客?)
私はのどの奥にたまった唾を一気に飲み込んだ。自分はここで殺されるのかと思ったらてが震えてきた。
「出てこい。」とロジエールが言うと、ウサギのようなネズミのような動物が二匹出てきた。
(……かわいい)
「こいつは……。」
「ラッタですね。」
「タルカ知ってるの?」
「ええ、常に夫婦で行動するので仲良し夫婦の象徴です。」
「へぇー。」(おしどり夫婦みたいな?)
(でもかわいい。)私が近づくと向こうからよってきて、私の肩に乗ってきた。
「こいつ人懐こいな。」
「あはかわいい、もふもふだぁ。」
ラッタは少し撫でてやると嬉しそうに目を細めた。
(かわいい、つれていきたいくらい。)
「そろそろ時間だなタルカ。」
「ええ、わかっています。さぁ、参りましょうお嬢様。」
「ええ、わかっています……でも。」
「飼うのは無理ですよ。」
(ですよね。)と大きなため息をつきながら私はラッタにお別れをして馬車に乗り込んだ。
「ロジエール馬車を動かしていいですか?」とタルカがロジエールに発車の許可をとった。
「……。」
「ロジエール?」
「……ああわるい、進めてくれ。」
「わかった。」といいタルカは御者に合図を出した。
「どうしたのロジエール?」
「……もし違ったらすまない、実は……」
「何ですかもったいつけて……もしかして。」
「ああ、つけられてるかもしれない。」
「何でそう思ったの?」
「ラッタのことですお嬢様。」
「ラッタ……ラッタがどうしたのですか?」ととうアルセーラに私は湖畔の出来事を話した。
「そんなことが……。」
「ええ、アルセーラは荷物番でいなかったので……。」
「考えてみたんだが……野生のラッタがあんなに人懐こいと思うか?」
「どう言うことです?」
「俺は野生のラッタにあったことがあるがあそこまで人懐こい個体はいなかった。」
「考えすぎということは?」
「ラッタは普段物静かな魔獣だが、この時期は子育てとか繁殖の影響で特に気が立っている時期なんだ……それが見ず知らずの人間の肩になんて…。あれは魔法で操られていたんじゃないかと思うんだ。それで説明がつく。」とロジエールは静かに目を外にやった。
「でだ、何のためにこんな場所でラッタを魔法で操る必要があるからだ。」
「刺客の見張りがたてた音をごまかすためにそばにいたラッタを魔法であやつった。」とタルカは静かに答えた。
「そんな…もしそれが事実だとしたらどうするのです?」と不安そうにアルセーラが私の肩をぎゅっと抱く。
「まだ、仮定の話だが……もし見張りがいた場合戦闘となるかもしれない。だから、向こうがことをおこすまでは静観だ。」
「そんな……逃げるとかできないんですか?」
「ああ、現状は難しい……が、勝ち目がないわけでもないんだ。」