帰還に向けて……。
3日間私は屋敷の外から出ることができなかったので、魔法の特訓をしていた。
「そう、そんな感じです。もう、コツはだいぶつかめましたね」
「ええ、私もやるときはやるんだから!」
最初は、でかい穴ぼこだらけだった水の壁も今ではほとんど穴が見当たらないほどまでになっていた。
「これである程度の敵であれば弾き返すことができるかと思います。」
「そうね。守りの魔力を高めることで私だけでなく、大切な人達も守ることができるもの。」
「そんなことを考えていらっしゃったのですか?」
「ええ、タルカに魔法を教えてもらった時から………。」
私は、いずれ死刑になるかもしれない身の上だ。どこでストーリーが変わり、いつ死刑宣告を受けるかもわからない。そんなとき、少しでもまわりの人々や自分を守ることができる知識をつけることも重要だ。
(前回の襲撃もストーリーのいっかんだったとしたら………本当に大切な人を守りたい。)
私にとって本当に大切な人とは、家族や私に使えてくれている従者であるタルカやシャレアンテ、下町の人々……ハマカさんやナティーさん達、お父様やお母様だ。それらを守れる人になりたいと思いこの魔法の特訓を始めた。
「タルカ……あなたには感謝しています。」
見ず知らずの世界に来て死刑が行われる未来を知ったときに絶望しかなかった。そこから、知識をつけるために本を読み、下町に通い色々な人とあって交流を深めることができた。そんなわたしのそばにはいつもタルカがいてくれたのだ。
「本当にありがとう。」
「お嬢様は………私にとって初めて仕えたいと思った人ですから。」
「これからもお願いします。」とあらためて感謝の言葉をのべると、タルカは嬉しそうに胸を二回叩き「おまかせください。」といった。
それから、2日後の早朝私は荷物をのせた馬車の前にたっていた。
「爺や使用人の皆には滞在中に本当に面倒をかけました。」
「いえ、領主の一族にお仕えできることこそが我々の幸せです。」と使用人達は深々とお辞儀をした。
「お嬢様そろそろ……。」
「ええ。」とシャレアンテに手をひかれ私は帰りの馬車に乗り込んだ。
今日から3日間かけて、領地に帰還する。襲撃のこともあるので、途中で1泊する以外は休みをあまりせずに一気に帰ることとなった。
「今日から3日の長い旅になります。道中お気をつけください。」
「ありがとう、皆も体には気をつけて。」といって私はロジエールに手で合図をだし、御者が馬を動かすために手綱をひいた。馬の大きな嘶きとともに、馬車はゆっくりと蹄の音を立てて走りだした。