ピトーネ
御者は箱から一枚ずつ紙を取り出し読み上げ、開票の結果馬車での移動となった。
「ロジエール結果が出たので私たちは護衛計画をねりましょう。」
「仕方がない。あとのことは………ネッケル任せた。」といい、二人は会議室をあとにした。
「さぁ、また忙しくなりますね。」とアルセーラは勢いよく席をたった。
「忙しく………なぜですか?」
「シャレアンテ………お嬢様が移動されるのだ。旅の支度をととえなければいけないだろう?」
「……そうですね………タルカ兄さま、僕もお手伝いします。」とくしゃと笑うシャレアンテの頭を撫でながら、「よろしく頼む。」といった。
それからは再び旅の支度を急ピッチで整えた。
「今日の会議で決まったことだとはいえ、いつでも動けるようにしておかなければ………。」
「タルカ………イレーヌ様の着替えがありません。」
「おそらくランドリールームにあるかと……。」
「もしかして……今から洗濯ですか?」
「イレーヌ様が到着されてからすぐに洗濯物をランドリールームに運んだのですでに洗濯は終えてるはずです。」
「さすが私の息子………やはりあなたは……。」
「アルセーラ?」
「いえ、洗濯物をランドリールームからとってきていただけるかしら?」
「わかりました。」と僕はイレーヌ様の部屋をあとにした。
(えっとランドリールームは確か……。)
「タルカじゃないですか。」
(誰だ?)
そこには僕より少し背の高い少年がたっていた。
「どこかでお会いしましたか?」
「ずっとロジエールの近くにいたじゃないですか。」
(ロジエールのそばに……ということは……。)
「あなたは……御者の………。」
(普段フードで顔を隠しているから気がつかなかった。)
「まだ名乗っていませんでしたね。ピトーネと言います。以後お見知りおきください。」
「こちらこそ改めてよろしく。」と僕たちは固く握手をかわした。
「すまないが………頼まれていることがあって……。」
「ああ、すみません。あの最後に一つだけいいですか?」
「ええ、なんですか?」
「ロジエールのことを許してあげてください。」とピトーネは申し訳なさそうに微笑んだ。
「何のことですか?」
「今日の言い争っていた件です。」
「ああ、あれは考え方の違いですから……。どちらも真剣にイレーヌ様のことを思っての意見だと思うし……。」
「そういってくれると……ありがとうございます。」とピトーネは深々と頭を下げた。