血による誓い
「そうですか、それは良かった。」
リヒトはほっとしたような表情をした。
そして、付いてきたネッケルと値段の交渉に入った。
「この値段でお願いしたいと思っています。」
「この値段でよろしいのですか?」
「ええ、それが売り主からの条件だったので………店としてもそれでお願いできたらと………。」
「意外にすんなり決まるものね!」
「普段はもっと値段交渉などをするのですが……今回は事情も事情ということで……。」
「タルカの時ももめたの?」
「ええ、値段の交渉はおこないましたよ。杖はこだわれば値段もそこそこするので……。」
「そうなんだ。」(そんなにするなんて思わなかった。)
ネッケルとリヒトの値段交渉も終わり、ネッケルが持ってきた書類に値段を書き記し、二人は契約魔術をかけるため魔導印を押した。
「お嬢様……これで契約成立です。あとは……血による誓いをおこなうだけですね。」
「そうなんだけど……私は血による誓いの内容を知らないのよ。」
今まで杖を使ったことがないのでどのような儀式か理解してない。
「簡単な儀式です。指のどこかに小さな傷を作り血を杖にたらしながら魔力をそそぎます。」
(なんか、わかるようなわからないような不思議な儀式ね。)
「では、この上に杖をおいてください。」とリヒトは一枚の黒い紙を広げた。その紙はちょうどノートパソコンくらいのサイズで中央には白い文字で魔方陣のようなものがかかれていた。
「確認をしたいのだが……。」
「ええ、もちろん。」
タルカは魔方陣が書かれた紙を隅々まで調べ始めた。
「タルカは何をしているの?」と私は小声でそばにいたロジエールに尋ねた。
「魔方陣に変な式がないかを調べているんです。魔方陣はいわば魔法契約の一種なので、結んでしまうと簡単に破ることはできません。そのため、あらかじめチェックをしておくのです。」
「なるほど!」
数分後、調べていたタルカが大きく息をはいて「いいだろう」と言った。魔方陣に描かれている細かな呪文などの確認をしていたせいか、顔が疲れて見えるのは私だけだろうか。
「お嬢様大丈夫かと思います。」
「わかりました。」私は魔方陣の上にそっと杖をおき、針でキズをつけた指から血を垂らした。
(血を垂らしたあとは魔力だけど………魔力をこめる……魔力をこめる……どうやってやるの?)
「ねぇ、タルカ……魔力って……。」
「お嬢様、大丈夫です。もうすでに魔力はそそがれています。」
「どういうこと?」
「血の中にはその人自身が体内に持つ魔力のうち数%が微量に含まれているのです。ですから、血を規定量垂らすことが大切です。」とタルカは杖を指差した。
「うわぁ……色が……。」
血を垂らした杖は透き通るような白から血が乾いたような薄い朱色のような色に変化し、その色が濃くなっていくのと同時に魔方陣の図が少しずつ消えていっているのがわかった。
「これで終わり?」
「ええ、魔方陣が全部消えて杖が完璧に染まっていれば完成です。」
「うわぁ、色が木のような色になった……。」
魔方陣の上におかれていた杖は透き通るような白色から赤茶色のような色に変化し、紙に書かれた魔方陣は完全に消え去った。
「魔性石は、他の素材と比べて特に血に染まりやすい特徴があります。そのため、このような色に変化したのではないでしょうか……。」とリヒトが言ったが、確かに契約を結んだ後の杖は長年使ってきた道具のようにすっと手に馴染み、強い結びつきのようなものを感じた。
血による誓いのところは考えにくいだいざいのところだったので、書くのが少し大変でしたが、なんとか書き上げることができました。このあともまだまだ続きますので、よろしくお願いします。
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