杖と予言
「これは私がまだ若い頃とある名工が手掛けた杖です。とても貴重な魔性石が使われています。」とリヒトはそっと木の箱を開けた。中には、透き通るような白でできた杖が入っていた。
「これは……。」
「これは魔力の高いあなたのような人のために作られたものです。同じものは二つとないでしょう。」
「ですが、先程の話だと私よりも王族の方が魔力が高いから、王族に売った方がよいのではないでしょうか?」と私は首をかしげながらそういった。
リヒトはにっこりと微笑みながら、再び杖をみた。
「私はこれをある人から譲ってもらいました。そしてその人は私にこういったのです。じきに魔力の高い女の子がこの国のどこかで生まれます。その子にこの杖がわたせるよう管理してくださいと……。私はその女の子があなたであると今確信しました。魔力量があれほど多い人間は早々いません。」とリヒトは自信満々にこう答えた。
「そんなこと言われても……もしかしたら違う人かも知れませんよ……。」
「いえ、私の直感は外れたことがありません。」
(えっ、最後は直感だのみかーい。)と一人で心のなかでツッコミながら私は再び杖を見た。透きとおるような白い杖はキラキラと宝石のような輝きをはなっていた。
「キレ~。」と私が目を輝かせて杖を見つめる一方で、タルカはリヒトに「ですが、これほどの杖ならば血による誓いをすでに終わらせているのではありませんか?」と疑問をなげかけた。
(そういえば………所有者がわかるように血による誓いを行うってタルカがいっていたような……。)
「それは大丈夫だと思います。」とあまりにもリヒトが自信満々にいうので、ついつい「なぜ?」といってしまった。「実は……あまり知られていないことですが……血による誓いをたてたあと、杖はそのものの血や魔力に依存します。そのため、その杖の所有者以外は杖を使えないのです。」
「なるほど……。」(初知り!)
「しかし、この杖はわたしの魔力でも使うことができました。そのため、血による誓いをたてていないのではないかと考えられます。」
(そういうことね!)
「この杖は前の所有者の意向でその女の子が買いやすいように安い値段で取引するよう制約も受けています。私は、あなたにこの杖を託したい……どうでしょうイレーヌ様………受け取ってくれますか?」
「私でいいのであれば……ぜひお願いします。」と私はにっこりと微笑んだ。
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