杖と魔力
「こちらに腕をはめて頂けますか?」
リヒトが持ってきたのは家庭用の血圧計のような見た目の装置だった。
(前世のおばちゃん家にもあったけど……これで血圧計をはかるとか?)
「これは魔力計測のための機械です。どの程度魔力があるかわかります。腕にはめたら魔力を込めるイメージをしてください。」
リヒトに言われたように腕に機械をはめた。
(魔力を込める?どうすれば魔力、魔力……。)と困っているとタルカが「腕に力を込めるようなイメージをもってください。」とアドバイスをくれた。わたしは力こぶをつくるときの要領で腕にぐっとちからを込めた。
(おお、針が動いてる。)
力を込めた瞬間機械の針がゆっくりと動き出した。
みるみるうちに針が左から右へと動き、ふりきれる寸前で針が止まった。
「これは……。」と周囲の人々が一斉に驚いた。
(えっ、何なんか悪いことした?)
「イレーヌ様は人より魔力が多い傾向にあります。」
「そうなの?」
「ええ、この国では魔力をもとに身分が決められています。そのため、魔力が一番低い順から平民、下級貴族、中級貴族、上級貴族、領主、王族となっているのですが、イレーヌ様は王族に匹敵するほどの魔力をお持ちのご様子です。」
(知らなかった私ってそんなに魔力が多いのか……。)
「まれに、下の身分の人間の中で魔力量の多いお子様が生まれることもあると聞いたことがありますが……。」
「そうなんですか。」
「ええ、でもこれでどの杖であっても使いこなせることがわかりました。」
「えっ?」
「杖にはそれぞれ特徴があります。まず植物性の杖は魔力は流しやすいですが大がかりな魔法には不向きですそのため、魔力の少ない平民や学園に通う学生に向いています。」
「じゃあ、タルカのも学生向けの杖なんですね。」
「さようでございます。」
「次に骨などから作られた杖です。これは魔力は流しににくいですが、上級魔法など高度な魔法を扱うのに向いています。そのため上級貴族や領主様など魔力の量が比較的多い方におすすめです。」
「じゃあ……お父様やお母様も?」
「おそらくそうかと……そして最後に魔性石でできた杖ですが、これは魔力を流しやすく上級魔法などの高度な魔法を扱うことも可能です。」
「えっ、じゃあ魔性石でできた杖でいいのでは?」
「それはそうなのですが……魔性石でできた杖は稀少でめったに手に入りませんし、値段もそれ相応に……。」
(なるほど超高級品てわけね。)
「それを考えて……」とリヒトは後ろにある棚から箱を2本とりだした。
「これはドネル・コルビジェ社の杖です。一本がケンタウルスの骨に魔性石を練り込んだもの。もう一本はシュテルムという魔木に魔性石の粉を調合して作られたものです。」
「なるほど」
リヒトは箱をあけて中身を取り出した。
(どちらも見た目はそんなに変わらないはね……。)
「ここに分銅をおきますので杖に魔力をこめながら上にあげてみてください。」とリヒトは理科の実験で使うような小さな分銅を私の目の前においた。
「魔力を込める……。」
私は先程の要領で魔力を杖に流した。一本目の植物でできた杖は魔力も流しやすく、分銅の扱いもしやすかった。しかし、扱いやすすぎたのか私の魔力量が多かったのか、、魔力を込めた瞬間に分銅は後ろの方に吹っ飛んでしまった。
(結構魔力の扱いって難しいのね……。)
もう一本の骨でできた方は植物より魔力が流しにくく少し抵抗を感じた。しかし、先ほどよりもすんなりと魔力を操ることができた。
「骨でできた杖の方が少し扱いにくいと思います。ですが思っていたほど扱いにくくはありません。」
リヒトはその感想を聞いて少し考えたあと「まさか……。」と呟いた。そして、店の一番奥にある鍵のかかった扉を開けると古びた木の箱を持ってきた。
今日は少し長めの文書です。杖の話はまだまだ続きますのでお楽しみに。感想、レビュー、評価もお願いします。他の作品もあるのでよかったら読んでください。