考察と食事
「本日はお疲れのご様子ですので、ごゆるりとおくつろぎください。」
「ありがとう爺。」
「ご夕食の支度が整いましたらおよびいたします。」
と言って使用人たちは部屋から出ていった。
(今日は疲れた。朝もはやかったかし………。)
と私はベッドに横になりながら目を閉じた。
(私を狙う理由………やっぱり身代金とか?)
悪役令嬢となった私を狙うのはわかるが、今はそこまで危害を加えているわけでもない。また、私は今のところ一人っ子だから次期領主をかけた争いとも違う。
(じゃあ………なんなんだろう………?)
この国は、王家が中心としてできており、その下に一定の領地を持つ領主がいる。そして、領主は王家の許可をえて領地を納めている。そのため、王家の力は絶対的なのだ。
(昔、王家の人間にはむかった人がいたってあったけど……その当時の反逆者は全員処刑されたって本にあったし………ただ単にゲームの中に入ったわけではなく、この世界のオリジナルストーリーとか?)
ゲームの中にはいなかったキャラクターもいる様子なので、一概にすべてゲームと一緒というわけではないのかもしれない。
(そもそも、イレーヌの人生なんてゲームにはなかったし……。)
私が知るイレーヌは主人公と自分の婚約者である王子の関係に嫉妬し、主人公や周りの人間たちに嫌がらせをした結果処刑された令嬢という情報だけである。
(以外とイレーヌの情報って少ないのよね………。)
転生直後から色々な本を読んだがあまりこれといった情報はなかった。
(私自身が考えて行動しなければならないということかしら…………結果は神のみぞしるってことか。)
どのみち、うまくいかなかったら死刑だからなんとかしなければならない。
(私の人生は前途多難だ………。)と考えているとこんこんとノックの音が聞こえた。
「失礼します。夕食の準備が整いましてございます。」
「わかったわ。今いく。」と私は食堂に向かった。食堂では私一人分のご飯が用意されていた。
「みんなは?」
「みんなとは?……ロジエール様たちのことですか?」
「アルセーラたちの姿が見えないのだけど……。」
「皆様は、従者用の食堂でご飲食なされています。」
「タルカは?」
「タルカ様はお嬢様の部屋を出たあと明日の買い物のために準備をしておいでです。」
「そう……。」といいながら私は席についた。
城での食事はお父様たちと一緒だったし、宿屋での食事はロジエールたちと一緒だった。なぜだかさみしい気持ちになり、がらんとした広い食堂を見渡す。毒味が終わったあとのさめてしまった食事は、はまるで私の心を写しているようだった。
(一人ってこんなに………なんかさみしいな。)
そんな気持ちを抱きながら私は静かに食事をすませた。