王族領
今回は少し長めです楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
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他の作品もあるので良ければのぞいてください。
「お嬢様起きてください。」とアルセーラに起こされた。あたりはまだ安全に太陽が登りきっておらず薄暗かった。
「う~ん、今何時?」
「まだ一の鐘も鳴っていません。」
(ということは……7時前。)
「すまない。昨日の襲撃があったから早く移動して王都にいくべきかと思って。」とロジエールは荷物をまとめながら言った。
「いえ、あなたのせいではありませんし………それより………あまり寝てないのでは?」
(ロジエールは昨日の一件からあまり睡眠をとっていないような気がする。)
あの襲撃の後数時間は警戒のために起きていたが、ロジエールが「寝た方がいい」と寝るように言ってくれたので、私達は数時間の仮眠をとったのだ。
「俺は大丈夫です。それより道中何があるかわかりませんからできるだけ急ぎましょう。」
「ええ。」
それから私達はあまり休むことはなく歩みを進めた。その結果当初の計画よりも早く王族領の入り口にたどり着いた。
「ここまで来れば安全だ。」とロジエールは肩の荷が降りたように言った。
「ここが王族領……。」
(すごい!)
王族領は白い壁でぐるりと囲まれ、中央には大きな扉があった。
「うちの領地とはだいぶ景観が違うわね。」
「ええ、王家の領地は先の内戦で王都を守るためにこのような壁を作ったのだと聞きました。」
(そんな話が本に書いてあったわね。)
大きな扉の前に到着すると中央の騎士団だろうか、胸から腰の辺りまである美しくきれいな装飾が施された鎧をまとった騎士らしき人物が声をかけてきた。
「止まれ。ここは王家の領地である。許可書を持ち合わせているか?」
「ああ、ユーフティーナ領領主オルバーン様の許可書だ。」
「確かに。では一応荷物を改めさせてもらう。」と中央の騎士達が私達の馬車や荷物などを調べた。
「問題なかろう。入場を許可する。」といわれ大きな門がギィーと音を立てながら開いた。
門の向こうはアッピア街道を彷彿とさせるような石畳の道が遠くまで続きあちらこちらに人々の家がたてられていた。
「うわぁ!すごい。」
(ローマみたい!)
「お嬢様あまり馬車から体を出さないように。」
「わかっています。」
(でも……大きなお屋敷や小さなお屋敷もあるけど……人があまりすんでないみたい。)
「ねぇ……この家々って……。」
「貴族のための館です。」
(やっぱり……。)
「大きいのは中央の貴族や地方の領主のための館などですね。中くらいのものには地方の上級貴族、小さなものは地方の中級貴族や下級貴族が住む屋敷です。」
「えっ、じゃあ一般の人達は?」
「ああ、庶民ですか……彼らは住む区画が違うのでここではありません。それにここは王都からすこし離れていますので……。」
「王都からすこし離れていては意味がないのではなくて?」
「多くの貴族は簡易魔方陣などが使えるので移動は簡単ですし、郊外の方が静かでいいのですよ。」
「そういうものなのですね。」と話していると石畳を走っていた馬車が歩を止めた。
「まさか……また。」とわたしは昨日の襲撃を思い出して身構えてしまったが、「いえ、これは目的の場所についたということですよ。」とアルセーラが微笑みながら言った。
そして、ゆっくりと馬車の扉が開き、ロジエールが私の手を引いて馬車から下ろしてくれた。
「ありがとうロジエール。」
「いえ。」
ロジエールにエスコートされながら玄関に向かうとタルカとネッケルなど複数の人物がおじぎをしながら私達の到着を待っていた。
「よくお越しくださいました………イレーヌ様。」
(うわぁ!タルカすごいくま……大丈夫かな?)
「タルカ、ネッケル。私のためにご苦労様でした。」
「いえ、お嬢様こそ長旅でお疲れのところ私達への気遣いありがとうございます。」とネッケルがお辞儀をしながらお礼を述べた。
「イレーヌ様、早速ではございますがお部屋の準備ができていますのでこちらに。」とわたしはタルカに案内され部家へと入った。
タルカが扉を閉め二人きりになったことを確認して私はタルカに話しかけようと近寄った。その瞬間タルカは私のことを抱き締めた。
「タルカ私……」
「襲撃があったことはロジエールから聞いた…………俺はお前がもしいなくなったらって………。」と強く抱きしめながら、泣くの必死にこらえるタルカの背中を私もぎゅと握り返した。
「タルカ………私はここにちゃんといるよ………大丈夫。」
「俺にとってお前は…………たった一人の主だから。」とふるえる声でそういったタルカの言葉に私は安堵からか気がつくと目の端から涙がこぼれていた。