使用人として
時間軸としては物語より1年ほど前のお話です。
今日はプールスの視点で書きました。しばらくはプールスの視点で物語を書きたいと思います。旅と王都編については少し日程が開きます(………すみません少しお待ちください。)
感想、レビュー等を書いてくれると嬉しいです。
「はぇ~でっかいお屋敷だ。」
私がこの領主様のお屋敷で働くことになったのは、今から3週間前のことである。
「すまないプールス。今うちには学園に通わせてやれるだけの金がない。」
「いいよ、この家の様子をみてればわかるし……。」
(本当は行きたかったけど……。両親に無理は言えない。)
私は自分に言い聞かせるように「仕方ないよ。父さん」といいながら、頭を下げる父の肩を叩き母の顔を見た。
「母さん。」
「少しでもいい仕事先を…と思ってね。親戚にお願いしたらこれが……。」と母は一枚の紙を手渡した。
「これは……王都の使用人として働くことって……これおばさんから?」
「ええ、どうやらずいぶんと頑張ってくれたみたいで……どうする?好きにしていいのよ。」
(こんな田舎にいても仕事なんてないし、村の人と結婚してもこんな村幸せになるなんて思えない……。)
「母さん、私いくよ。」
「わかったわ…………寂しくなるわね。」と母は悲しそうに微笑んだ。
それから母と父は領主のところで働くからとなけなしのお金を使い、新しいワンピースと靴を買ってくれた。
(私はここで頑張って働かないと……お給金が出たら田舎の両親のところに行きたい。)
「あの……新しくここで働くことになったものですが……。」
「紹介状とかはお持ちですか?」
「はい、えっと……ここに。」と私はおばさんの手紙に同封されていた紹介状を門番に見せた。
「確かに、キール様の印が押してありますね。少々お待ちください。」
(門番の人入っていっちゃったけど……大丈夫かな?)
それから10分ぐらいして、門番の兵士とともに眼鏡をかけた女性がやって来た。
「こんにちは、私は使用人の人事などを任されているシビアといいます。」
「セルビアさんですか?こんにちは。」
「シビアです。名前を間違えないでください。」
「ごごめんなさい。」
「そんなに謝らないでいいです。それより……」
(最初の挨拶でミスをしちゃった……どうしよう……。)
「あの……ナターシャ村から来ましたプールスといいます。……?」
(あれ?シビアさんは?)
私がお辞儀をして顔をあげるとシビアさんはすでに門をくぐり屋敷の玄関に入っていた。
「何をしているのです。早くこちらへ。」
「は、はい。」
「今はとても忙しい時期です。タルカ様もおらず……奥さま付きのアルセーラ様はイレーヌ様の世話をされていて……。」
シビアさんによると普段お嬢様の従者をしているタルカという男の子が学園に行ったため、母親のアルセーラがイレーヌ様の世話をしているそうだ。
「そうなんですか……。」
「今、城では人が足らない状況です。皆が休みをとる時期ですし…アルセーラ様が本来の仕事から離れているので……」
かつかつと靴音をさせながらしゃべっていたシビアが止まってこちらを向いた。
「なので、あなたにもすぐに仕事に取りかかってもらいます。」
「わかりました。」
(来て早速仕事……いいところを見せないと。)
「早速ですが、使用人部屋で制服に着替えてランドリールームに行きなさい。」
(使用人部屋とランドリールームね。)
「使用人部屋はそこの突き当たりを右です。ランドリールームは西棟にあるので……。」
(使用人部屋はそこの突き当たりを右……ランドリールームは……)
「何をしてるのはやく行きなさい。」とシビアは急かすように手をふった。
(ずいぶんとせっちかな人……それほど忙しいってことなのかな。)
私は先ほど言われた使用人部屋を目指して歩き出した。
(どうしよう……迷った。次の角を右?それともその奥を右?)
声をかけようにも、使用人達は皆忙しく動き周りとても声をかけられそうな雰囲気ではない。
(とりあえず……部屋を開けてみる?シビアさんの話だとここら辺だったと思うし……。)
私は思いきっていちばんちかくにあった扉を開けた。
(えっと……?)
そこには同い年くらいの女の子がいたのだ。