会議
「皆定刻通りだな。それでは王都までの付き添いなどについての話し合いを始めよう。」
今はイレーヌが王都に行くまでの護衛プランの確認などをおこなう会議の真っ最中だ。
「それにしても、お嬢様にはもう少し側近を増やして欲しいものです。」
「仕方がありませんよアルセーラ。イレーヌ様はまだ5歳で御披露目前ですし……貴族は御披露目後に側近を選びますから。」
「側近の話はおいといて、今は護衛プランを練るべきだろう。」
「ええ、ロジエールのいう通りです。しかし、護衛役がロジエール一人なんて……彼の負担が大きすぎます。王都までは何日もかかかるので……。」
「タルカ……俺は大丈夫だよ。中央の時もそんな任務につくこともあったし。」
(俺としてはこの男をあまり信用していない。)
いきなり奥さまの紹介でイレーヌの側近に入った男だ。イレーヌに忠誠心があるわけでも、イレーヌを本気で守ろうとしているわけでもない。
(どうせ、金目当てじゃないのか。)と俺が考え事をしていると、右隣に座っていたシャレアンテが俺の服を引っ張った。
「兄さま、兄さま。」
「なんだシャレアンテ?」
「シャレアンテがいます。シャレアンテがお嬢様を守ってみせます。」とシャレアンテは自信満々に胸を張った。
「気持ちはありがたいのだが……少し無理があると思うぞシャレアンテ。」
実際に杖をもたず魔力や武具の使い方を知らないシャレアンテが守れると信じるものはここにはいないだろう。
「そうなのですか……。」
(なんか捨てられた犬のようだ………。)
「そう落ち込むななんとかなる。」と俺はシャレアンテの頭を撫でた。
「ロジエール以外の護衛も検討しよう。夜に代わりがいた方がいいだろう。」
「ええ、お願いします。」
「それから……学用品を買いに行くだけでも色々な店をまわる。店の情報も知っておきたい。」と父上はテーブルに王都の地図を広げた。
「杖の店はここ…教科書などのお店はここです。」
「そうか……俺の頃とそんなに変わっていないな。」
「でもイレーヌ様はすぐに色々なところを見に行ってしまうので、離れないように言わないと。」
「そうだな、タルカ。………シャレアンテはイレーヌ様から目を離さないように。」
「はい、キール様。」
(シャレアンテだったら手を繋ぐとかの方法もありそうだけど………従者だからって嫌がるかも。)
「王都までのルート作成はロジエールにまかせたい。早急にルートの確認と書類の作成をしてくれ。」
「わかった。」
「タルカ……シャレアンテにやることリストを渡しておきなさい。アルセーラがいるからなんとかなるとは思うが……。シャレアンテは付き添いもはじめてだからな。」
「はい、父上。」
「本当に大変な旅路になりそうです。」とアルセーラは再びため息をついた。
「話は以上だ。王都に行くまでに日数がないから各自速急に取りかかってくれ。」
「わかりました。」
一同はそう返事をすると一斉に席を立った。
「シャレアンテ……後で打ち合わせをしよう。」
「シャレアンテだって従者のはしくれです。付き添いぐらいできます。」
「でもイレーヌ様の情報は共有しておいた方がいいだろう?」
「わかりました。」
「俺の大切な主人を任せるんだ。しっかり頼むぞ。」
俺はシャレアンテの頭をくしゃくしゃと撫でた。
今日はタルカ視点のお話です。頑張ろうとしているシャレアンテが少しかわいかったですね。(個人的にはシャレアンテ押しです。)イレーヌの王都見学まだまだ道のりは遠いです。
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