キャラバンとバッジ
「おじさん手伝います。」
「でも…。」
「商品を並べるだけでも。」
「そうかい…。」と力なさげにおじさんは答えた。
「ねぇ、あなたたちも手伝ってくれない?」
(三人では無理だと思うし……。)
私は周りで見ていた野次馬に声をかけた。
「なんで俺たちが…。」
「まぁ、こんなかわいい子がお願いしてるんだから、手伝ってあげろよ……な?」
「ちょ、ちょっと………俺は…………ハァー、わかったよ……。」
自主的に手伝う私達の姿を見て少しずつだが、人が集まり手伝う人も増えてきた。「まず荷車をどかそう。」とロジエールの掛け声のもと男たちが荷車をどかしてくれて、私やタルカはぐちゃぐちゃになった商品棚をもう一度組み上げていった。
(元通りにはならないけど…少しでも。)
コツコツと片付けていくとなんとか店としてみられるほどになったのだ。
「ありがとう…助かった。……君たちは関係ないのに…。」
「いえ、人助けするのは当たり前ですから。」
「………お礼にこれを。」
「これは?」
「魔性石がついたペンダントだよ。あまりランクの高いものじゃないけど。少しの間守りの魔法を使える。」
「いいの?」
「ああ、お礼だ。」
「もらったら?」と周りにいた人達が薦めてくれた。
「……そうだね。ありがとうおじさん。」
私は、おじさんからペンダントを受け取っると、離れて見ていたロジエールのところに走っていった。
「どうしたんだそのペンダント?」
「おじさんがお礼にってくれたの。」
「姫によくにあってる。」
「その姫って…なんか恥ずかしい。」
「そうか?ピッタリだと思ったんだけど…。」
「…それはおいといて、ロジエールのおかげでかたずけもできたし助かったよ。」
「その事なんだが…馬を引いていた男がいなくなってるんだ……。」
「えっ?」
「気分が悪かったみたいだから、脇に寝かせたんだけど……。」
「………気分が良くなったとか?」
「………わかんない。こういう考えるのは苦手なんだ。前は得意なやつがいたんだけど…俺の。」とロジエールは苦笑していた。
(なんかロジエール………悲しそう。)
その時正午を告げる鐘の音が聞こえた。
「リディそろそろ帰らないと…。」
「そうね。お母様のこともあるし……城へ帰りましょう。」
「ああ、その方がいい。」と私達は城へと向かった。
「今日は疲れた。」
「ああ、色んなことがあったからな。」
「ロジエール、タルカ二人ともお疲れ様でした。」
わたしはキャラバンで買ったバッジを二人に渡した。
「こんなものいつの間に?」
「少し早いけど感謝祭の贈り物だよ。さっきのアクセサリーの店でね買ったの!」
バッジは真ん中に誠実さを表すグリーンと清廉さを表す水色の石が嵌め込まれていた。
「俺にも…なんか悪いな。」
「今日付き合ってくれたお礼…感謝祭は周りの人にもあげるんでしょ?」
「………そうだったな。………。」とロジエールが微笑んだ。
「えっ、なんかいった?」
「いや、お前の母の小さい頃にそっくりだっていったんだ。」
「じゃあ、私は将来あんな感じに?」
「あんな感じって?」とロジエールがニヤニヤしながら聞いてきた。
「ちなみに奥様が怒るのは、お前がレッスンに参加しないからだぞ。」
毎度のことだが、タルカから厳しめのお言葉をいただきキャラバンの見学を終えた。