魔法とキャラバン
次の日、私はタルカたちとキャラバンがお店を出している一角へ向かった。街中はまるでお祭りのように飾り付けられ、通りにはたくさんキャラバンのテントが並んでいた。
「リディー、はぐれないようにしないと。」
「わかってる。子供じゃないんだから…。」
(みたことないものがいっぱい。)
「何をあげよう。」
「何が?」
「感謝祭の贈り物だよ。それを買いに来たんだろ?」
(………そうだ……忘れてた!)
「リディーも誰かにあげるのか?」
「えっ、ええもちろん。」
(タルカにはまだ黙っておこう。……でも感謝祭って何をあげるのが一般的?)
「タルカは誰にあげるの?」
「この前もいったけど…俺は…両親にかな。」
(家族かぁ…。)
「家族には一般的には身につけるものをあげるんだ。」
「なんでもいいの?」
「ああ、あれとか。」とタルカはシルクのスカーフを指さした。
(私は何にしよう…お父様には……そうだ。)
お父様は公務の際にスカーフを使うからと、私はタルカが指さしたスカーフを買った。
「毎度あり。」
「おじさんこのキャラバンの中でアクセサリーを売ってるところってない?」
「うーん、いろいろあるが…一番後ろの店がオススメだな。」
「一番後ろね!ありがとう。」
「タルカ、こっちこっち。」
キャラバンのテントを覗くと色とりどりの宝石類がはめこまれたアクセサリーが売られていた。
「これ素敵!」(お母様の目の色にそっくり。)
「おっ、お嬢ちゃん感謝祭の贈り物かい?」
「うん、この髪どめなんてステキかなって。」
「お目が高い。それはロフスト産の石をはめんこだ品だ。」
「ロフストと言えば、サファイアで有名なところだ。」
(へぇー、デザインも気に入ったし……これいいかも。)
「じゃあ、これください。」
「毎度あり、250シリングだ。」
「はい。」
「ありがとう。そうだせっかくプレゼントするなら箱にいれてあげよう。少し待ってて。」と店主はテントの奥へと入っていった。
「タルカはどうするの?」
「…これなんてどうだろう。」とタルカは紫の石がはめ込まれた指輪を手にとった。
「これもステキね。」
(タルカの母親であるアルセーラの髪色によくにている。)
「いいんじゃない?」
「そうか?じゃあ、これにしよう。」
「お待たせ。こんな感じでいいかな?」とおじさんはテントの中から現れてラッピングしてくれた箱を見せた。
「うん、いい感じ。」
「おじさん、これとこれを頼む。」とタルカは先程の指輪と隣にあったサクの花がデザインされた髪飾りを指差した。
「これの、指輪かぁ…真ん中に魔性石がはめこまれているから…450シリングだ。こっちの髪飾りは250シリングだよ。」
「タルカ…魔性石って?」
「魔法は杖を通すことで、魔力を流しやくすくなり呪文の制度も上がるが、魔性石は杖がなくても魔力をためて魔法を使うことができるんだ。」
(なるほど…魔法=電気みたいなものだとすると、杖=電化製品、魔性石=電池みたいなものかな?)
「魔性石は貴重品で、前の持ち主が魔法や魔力を込めていることもあるから…少し扱いが難しい時もあるけど。」
「これは売り物だし掘ってすぐの魔性石を加工したから魔力は込められていないよ。」とおじさんが嘘をつくなと言わんばかりにため息をつきながら首を横にふった。
「だけど…450シリングかぁ…。髪飾りも買いたいし…。」
(日本円だと4500円ぐらいか……子どもが買うにしては少しお高め……。)
「どうするのタルカ?」
「……これにするって決めたし、お願いします。」
「はい、ありがとさん。……じゃあこれも箱に包んであげよう。」とまたおじさんはまたテントの奥へと消えていった。
「買い物も終わったし、そろそろ帰る?」
「そうだな。」
「ところでタルカさん…あの髪飾りはどなたに?」
「知り合いだよ。知り合い。お、お前に関係ないだろ?」
(タルカにそんな相手いたっけ?……帰ったらそれとなくシャレアンテに聞いてみようかな?)
「ふ~ん。」
「な、うそは言ってないぞ。本当に知り合いだから。」
「ま、そういうことにしておきましょう!」とニヤニヤ顔で私が言うと、タルカは怒ってプイと横を向いた。
(タルカ…耳まで真っ赤!分かりやすいなぁ~。まぁ、あんまりいじってもかわいそうだし…このくらいで。)
「そう言えば、ロジエールにも来てもらったのに何もなかったね。」
「何もなかったんだからいいことじゃないか。護衛なんてそんなものさ。」
「そっか、そうだよね!」
「お待たせ…はいこれ。」
「おじさん、わざわざありがとう。」
「こちらこそ、買ってくれてありがとう。」
「じゃあ、そろそろ帰りましょう!」
私はくるりと向きを帰ると歩き出した。
「今日は買い物に付き合ってくれてありがとう。ってあれ?」
振り替えると、少し離れたところでタルカとロジエールは考え込むようにしてたっていた。
「どうしたのタルカ?」
「ああ、前方が少し騒がしくないかと思って。」
「…」
「ロジエールも感じる?」
「ああ。」
するとまもなくしてキャラバンの前方から悲鳴のような声が聞こえ、皆が逃げるように道を開けた。
(どうしたんだろう?)
皆がどいたところだけ一本の道のようになり、道の先から「た、た、助けてくれ、止まらないんだ。」と叫びながら荒々しい蹄の音とともに荷馬車がまっすぐこちらに向かってきていた。