親子とガラス瓶
「親父…」
「すまなかった。」
「えっ…。」
「シライナのような職人を育てないとって……お前に厳しくあたって……負担ばかりかけて……本当にダメな父親だな。」
頭を下げるサラエをサライナがそっと触れた。
「あたしの方こそ……親父の気持ちを知っているつもりで知らなかった。私を見てって思ったんだ……シライナ兄さんではなく私の技術を…。親父ごめんね。……私自分ばかりで知ろうとしなかった親父のこと……。」とサライナは優しくサラエを抱き締めた抱き合っている二人の目にはうっすらと涙が見えた。
(ああ、親子っていいなぁ。)
「これからも二人でこの工房を……頑張っていこう。」
「うん。私ももっとがんばるから。」と涙を流しながら笑顔で抱き合う二人に感動にし、こっちまで泣きそうになってしまった。
「………あっ、そうだ…仕事。……親父…お客様。」
「はっ………ハマカさんすみませんでした。こんなことに巻き込んで。」
(えっ、そこで?せっかくの感動シーンだったのに…。でもそこが職人らしい………のかな?)
「いえ、丸くおさまってよかったです。ねぇ、タルカ君、リディーちゃん。」
「ええ。」と二人でうなずいた。
「さぁ、仕事、仕事!」とハマカは切り替えるように手をパンパンとならした。
「実はね……さっきサラエさんと話していたんだけどこんなのはどうかって…。」
サラエさんがガラス瓶を出してくれた。
「うわぁー綺麗。」
出してくれたガラス瓶は細長い形で、真ん中の辺りが少し膨らんでおりキャップにローズの飾りがついていた。
「これなら何をいれてるかわかるし、かわいいから貴族とかのお金持ちにも好まれるかなって!」
「いい………素敵だと思います。」
「じゃあ、形はこれで。数はローズウォーターの量がはっきりしてから……契約などの書類手続きも後日でもいいですか?」
「ええ、かまいません。」
(ハマカさんはお店を経営しているし…こういうとき助かる!)
「それでは、また後日に…今日は本当にありがとうございました。」
「いえ、それではまた。」と言って私たちは店を出た。
「それで…あの子はどうなったの?」
「あの子?」
「あの市場の…」
「ああ!あの子ならなんとかなりました。」
「なんとかって?」
(本当のことを言うわけにはいかないし…。)
「えーっと、親御さんが後から来てくれたのでなんとかなりましたけど……。」
「………そう、親御さんと一緒だったら大丈夫ね。」
(なんとかごまかせた?)
「ハマカ、やっと帰ってきた。」
「おばさん、…蒸留水…指示通りにうまくいった?」
「ああ、なんとか……大変だったけど。」
「そっか良かった。……ガラス瓶の注文はなんとかできそう。」
「そうかい。じゃあギルド長との話し合いは解決したんだね。」
「なんとかね。」といいながらハマカさんはローズウォーターのでき具合を見に行った。
「あんたたちも1日大変だったね。」
「いえ、楽しかったです。」と私が笑顔で言うとそばにいたタルカが大きくうなずいた。
「ご褒美があるから、ここで手を洗いな!」
(ここで?何もないけど…。)
おばさんは自らの杖をだして「シュティーフイル」と唱えると手が洗ったあとのように綺麗になった。
(あんだけ土ぼこりがついていたはずなのに)と私は手を何度も見返した。
「そんなに見ても汚れはついていないよ。」とクスクス笑うラニーの横で、タルカは自分の杖をだして「シュティーフィル」と唱えていた。
親子の絆……いいですね。私も親子の姿を想像すると胸が熱くなります。まだまだ話は続くので楽しんで読んでくれると嬉しいです。レビューや感想もお待ちしてます。