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兄の陰

今日はハマカ視点です。楽しんで読んでいただけたらと思います。

「部外者が口を出すべきではないと思うけど………少し言い過ぎでは?」

「ハマカさん………いいんです、あのくらい言わないと。」

「でも、この商品たち良くできていますよ。売り物として出してもいいくらいに。」

「良くできていて当然なんです。それはサライナが、兄のシライナと一緒に作ったものですから。」

そう呟くサラエの背中は少し寂しげだった。



「さっきもいってたけどお兄さんって…。」

「ああ、二年前に病気で……。俺の妻も同じ病気だったんです。」

「そうなんですか。」

「兄のシライナはいい職人でした。ガラス細工を作らせたらここいらの職人の中ではピカいちだったんです。ですが4年前に病気が見つかって、少しでもサライナに俺の技術をって無理して付き合って……。」と大切そうにガラス瓶を胸に抱えた。



「サライナさんはあなたに少しでも認めて欲しいと思っているんじゃないんですか?」

「サライナの気持ちもわかります。だけどあいつは俺やシライナを越える存在でなくてはなりません。シライナや俺と比べられる分、技術を高めないといけないんです。もっと高い技術をシライナのように…。」



(お父さんの方が追い込まれている?)


「私も同じでした。」

「…えっ?」

「私も、学生時代そうだったんです。先生からは最優秀とったんだからこれくらいできて当然でしょとか、友だちからもこんな簡単な問題最優秀に聞いたら悪いよとか。私よりも最優秀、最優秀って最優秀が先にきてて。それが窮屈で!」



「………俺も、シライナほどの職人を育て上げたんだからサライナもそうなるだろってまわりに……俺は周りの期待に応えないとって…どんどんサライナにつらくあたるようになって……。」と複雑な表情をしていた。



「…………私はその時に逃げちゃったんです。……気持ちが持たないって……周りからはもったいないって何度も言われたけど……この期待に応える自信がないって言ったら…当時の薬師科の担当教授がわかったって笑顔でいってくれて…少し肩のにがおりたっていうか…。」



「話すべきなんですかね。あの子と……真剣に向き合うべきなんですかねサライナと。」

「ええ、あなたの気持ちを知れば…サライナ君もきっとわかってくれるわ。」

「サライナは、女ですよ。」

「えっ、でも…おんな?ごめんなさい。格好からてっきり男の子だとばかり。」

「いえ、よくあることですから……職人の世界は厳しくて当然ですから。」とサラエは苦笑した。



(サライナはズボンだったし、髪の毛も短かったからてっきり……。女の子だったなんて……。)



ドアの音がしてリディーに肩をさすられながら、泣きはらしたような顔のサライナが店に入ってきた。



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