貧民街と情報屋
「ハァ、ハァ、なんでタルカは髪の毛の位置がわかるの?」(髪の毛一本ってわたしは全然見えない。)
「それは、俺の魔力で操っているからです。魔力の方向を読み取れば…。」
私たちは髪の毛を追いかけて、あばら家が立ち並ぶところへとやって来た。
(ここって…。)
「イレー…うっ。」
(タルカすごいあせ、顔色も悪そう…。)
「いやぁ、イレー…リディーじゃないか。どうしたこんなところで?」
(やっぱり…ここはナラクじいさんの家がある貧民街…。ってことは…。)
「ナラクじいさん。ちょっと人探しを…。タルカ大丈夫?」
「ハァ、ハァ、ちょ…ちょっと魔力を使いすぎただけで…。」とタルカはその場にしゃがみこんだ。
(探索魔法は相当な魔力を使うのね…タルカの様子を見るとこれ以上の探索魔法は使えない。あと少しなのに…。)
「人探しかぁ…じゃあとっておきのやつを紹介してやる。ついておいで。」
「私は行けるけど…タルカは…無」
「大丈夫です、いけます。」とタルカは壁を支えに立ち上がった。そして、ナラクは私たちを連れて貧民街の奥にある小屋へと向かった。
「おい、ラフティーヌおるか?たのみたいことがあるじゃんが…。」
「なんだ、ナラクじじいかぁ。」
「じじいとはなんじゃいじじいとは、せっかく客を…。おっとそうじゃった、リディーとタルカじゃあ。」
ラフティーヌと呼ばれた男性は前髪が目にかかるぐらい長く、ひょろひょろで痩せこけていた。
「ふーん。」
(なんなのこの値踏みするような視線…前髪で目は見えないけど。)
「こいつは、ラフティーヌといって腕利きの情報屋じゃあ。」
「情報屋…?」
「ここではどんな情報だって扱っている。例えば君のポケットに平民の小娘が持つのに不自然な金額の小銭が入っていることとか…その坊やが魔力切れをおこしかけていることとか……すべてだ。」とラフティーヌはにと不適な笑みを浮かべた。
(…私、ポケットのことなんて…ていうかあ、なんでタルカが魔力切れを起こしていることを。こいつ何者?)
「いいねぇ、その警戒心に満ちた視線。それでどうするの?雇うの雇わないの?ナラクじじいの紹介なら安くしとくよ。お代は、500シリングでどう?いて!」
「もうちょっと安くせんかまったく吹っ掛けおって。」
「吹っ掛けてねぇーて、魔力を使うし…それなりに報酬がほしいって何が悪い。この暴力じじい。」
「なんじゃと…。」
(タルカの様子だともう探索魔法は使えないし…)
「わかったわ、お願い。」
「まいどあり…それで何を調べる?」
「男の子を探しているの外見はグレーの髪に茶色の目…体は痩せていたかしら。」
「アバウトだなー。もっとなんかないの…ってないから俺雇っているのか。」
(この空気少し苦手かも…。)
「外で待ってて、お代分はきっちり働くから。」
「えっ、なんで?」
「それは、企業秘密。」といってラフティーヌは私たちを小屋の外へと追い出した。数分後に小屋の中から出てきたラフティーヌの手には地図のようなものが握られていた。
「ここにお探しの人はいるはずだ、なんかもう一人いるみたいだけど…まぁ、気にしないでしょ。」といって私に紙を渡した。
(どうやってやったの?なんで…小屋からてできてもいないのに…。)
「ほい。」
(ああ、お金ね!)
「ありがとう。」
「うわ、チップまでありがとう。次回もよろしく。」と手をふるラフティーヌを背に私たちは地図が指す建物へと向かった。