市場での騒動
「リディーちゃん、はやく!」
「は~い」私はハマカに呼ばれ足早にギルドを出た。
「タルカ君もいるわね!さぁ、じゃあいきましょう。」
「いくってどこに?」
「決まってるじゃない、職人街よ。ここの通りを真っ直ぐ行って、マーケットを抜けた先にあるわ!」
「…どれぐらいかかりますか?」
「まぁ、15分ぐらいかな…。」
(良かった、たくさん歩かなくて。)
私たちは、職人街に向けて歩きだした。いつも通っている道を一本奥に入ると、マーケットとよばれている市場にたどり着いた。
(いつも、ここを通るけど相変わらずにぎやか!)
マーケットにはところ狭しとお店がならび、雑貨から食料品まで色々なものが売っていた。商人や客の声があちらこちらから聞こえてくる。
「うわー、すごい。」
「リディー遅れるな。」とタルカが私の手をつかんだ。
「…。」
「迷子になるだろう!」
「わかってる。ちょっと見てただけじゃない。」
「お前がいなくなって困るのは…」
「はい、はい、わかりましたよ。」と私は大きなため息をつきながらタルカの手を握った。
その時だった、前方から「ふざけんな、この野郎❗」と怒鳴り声が聞こえてきた。
「リディー行っては…」というタルカの声にきにもとめず、私はその声のする方向に向けて走りだした。
(何があったのかしら、気になる。)
声のするところにつくとすでに人混みができていた。
(このときは、小さいからだに感謝ね!)
私は小さな体をいかしてするすると大人達の足元を通り抜けた。(あと少し…出れた。)
人混みを抜けると、真ん中でよく行く商店のおじさんと男の子が言い争いをしていた。
(なんかあったのかしら?あの明るいおじさんが見るからに怒っているし…)
「こいつ、ふざけるな!」
「何が、俺は何にもしてねぇ。」
「俺が騙されると思ったのか…。」
「…。プッ」
男の子はおじさんに向かって唾をはいたのと同時に「…この」とおじさんが腕振り上げた。
「ストーップ。」
(うわー、まず…思わず叫んじゃったけど、みんなの視線がこっちを向いてるよ。)
「や、ヤッホー、おじさん。どうしたの?」
(痛いやつだと思われた?)
「どうしたもこうしたもないよ、こいつ俺の店の商品を騙しとろうとしたんだ。」
「どういうこと?」
「1つしか、代金払っていないのに、3つ持っていこうとしたんだよ。正直に話せば許してやるって言ってるのに…。」
「だから、俺はやってねっていってるだろ!はなせよ!」
「はなすか、お前は門番隊に引き渡す。」
「…。離せ、離せよ!」
「離すわけないだろう!この詐欺しめ!」とおじさんは怒鳴った。
(見たところ痩せていて栄養状態もよくなさそう。着ているものもボロボロだし…。)
「おじさん、お代いくら?」
「そんなことしても意味…。」
「いくら?私が払うよ。」
(今手元には、100シリングあるから…大丈夫なはず。)
「彼のためにならない。ここで逃がしてもまた…。」
「おじさん、いくら?」私はおじさんの目を真っ直ぐ見つめながら言った。
「はぁー、60シリングだ。」
「60シリングねぇ。はい。」
「確かに、ちょうど。リディーちゃんに感謝しなよ。」とおじさんはつかんでいる手を離した。
(えっ、なんでにらまれるの?)
「お礼なんか言わねぇから。」
(えーと、なんで逆切れ…?助けてあげたのに…。)
「や、やっと…リディー…どんな状況?」
「タルカ…。助けて。」
「えっと…?」
(どうして、こうなるの?)