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お父様の執務室ー本と領主ー

(身分を隠していたこともきちんと謝りたいし…)

「お父様、私がナティーたちを送ります。」

「…わかった。キールはここに残るように。イレーヌよろしく頼む。」

「はい。」と言って私はナティーたちと執務室を離れた。



「ごめんなさい。皆さん…身分をあかすとよくないと思って…。」

「いえ、それ相応の事情があったみたいですから致し方ありません。しかし…身分上きちんとした挨拶や言葉遣いの方がよろしいですか?」

「いえ、身分は今後もできるだけ隠すつもりですし…貴族言葉は疲れるので…」と私はナティーさんをちらっと見る。

「わかりました。」とナティーさんは微笑んだ。



それから、私は城で使っている馬車を呼ぶよう使用人に指示を出し、御者にチップを渡してそれぞれの家に運ぶよう伝えた。



「あ、あのナティーさん…」

「はい…?」

「実は…この間のアロマオイルの件…日数の関係もあり…蒸留水になりそうなんです。」

「日数の関係ですか?」

「はい、つけておくのに時間がかかるらしくて…とりあえず試供品として蒸留水を作ることになりそうなんですが…いかがでしょう?」



私は恐る恐るナティーを見上げた。ナティーは一度考え込むようにして「実物を見て判断させてください。」と静かに答えた。

「わかりました。とりあえず…2日後に蒸留水を作ることになっているので…よろしくお願いします。」

「わかりました。では、お店で待っていますね。」と言って馬車に乗り込んでみんなは城をあとにした。



(とりあえず試供品を作ってみないと…。)



ナティーたちを送り出したあとに、私は再びお父様の執務室へと向かった。執務室に向かった理由はあの《12の月の由来と史記について》がどうなったか気になったからだ。



「失礼致します。お父様、イレーヌでございます。入室してもよろしいでしょうか?」

「かまわない、入ってきなさい。」とお父様の声がして私は執務室へと入った。



「どうかしたのか?」

「いえ、先程の本がどのようになったか気になってしまって?」

「先程の本か…キールとも相談したが燃やしたよ。」

「そうですか…。それは、少し残念です。あの本は挿し絵がきれいだったので。」



(でも、私がお父様の立場だったら燃やしていただろう…。)



「すまない。だが、あの本は…この国にあってはならないものだ…。」とお父様は真剣な眼差しで答えた。

そう、あの本の存在は王家内部の争いの火種なりかねない。王家には次期王として後を継ぐことが決まっている長男以外にも7人の子供がいるからだ。

(異母兄弟を含めて7人ってどんだけ。)



そして、そのなかには王子だけではなく姫もいる。もし、これをきにマレーヌ女王の伝説にしたがい姫が後継者に名乗りを上げたら大変なことになる。だから、本そのものを燃やすことにしたのだろう。



「いえ、私がお父様の立場だったら同じようにいたしましたから…。仕方のないことです。」

「すまない。」とお父様は申し訳なさそうにうつむいた。

「いえ……。執務の邪魔になってはいけないので、失礼します。」と言って私は貴族らしい笑みをうかべながら執務室をあとにした。



(ラブライフってありきたりなゲームだったから最後までプレーしていないけど…こんな本の話あったかな?それとも、別ルートのやつ…?もし、私が来たことで少しずつ変化が起きていたらどうしよう…。)




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