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お父様の執務室ーナティーとナラクー

「しかし、身分で付き合う人たちを決めるのが…。それに、子女の教育だって…。」とお母様はうつむいた。




「リディア、これは父親としての意見だが私も交流を続けるべきだと考えている。確かに、貴族としての教養は大切だ。だから…イレーヌ、これからはきちんと子女教育を受けるよう努力しなさい。何かの時間を削ればいいのだから。我慢することも大切だ。」



(確かに、我が儘言っててもしょうがないし、お父様は譲歩してくれている。)



「わかりました。」

「リディア、イレーヌも受け入れてくれたからきちんと日取りを決めて教育を行いなさい。」

「…確かにそうですね。わかりました。」と言ってお母様は静かに目を閉じた。

「これで、話は終わりだ。イレーヌはここに残り、リディアはさがりなさい。キール入って来なさい。」

「わかりました。」と言ってキールが入って来た。

お母様は静かに席をたち執務室をあとにする。



(ここに残れって…何かあるのかな?)



「さて、イレーヌ。先程は話が途切れるから確認はしなかったが、そなたは平民から借りた本の内容から王家の秘密を知った…それで正しいか?」

「はい、お父様。」というとお父様は少し考えてこんだ。



「それはまずい。…平民が王家の秘密を知っているなんて…。」

(そう、私のような身分のものでも処刑されてしまう世界だ…平民ならばおそらく…。)

「しかし、私が本をお借りした人はその国の文字が読めないと…」

(…古い言葉でかかれていたから。ナラクじいさんも幼い頃に知り合いの人から習った文字だって言ってたし…)



「では、文字を教えた人物と本を借りた人物は別にいるのだな?」

「はい。大通りで店を営むナティーと貧民街に住むナラクです。」

「キール、そのものをこちらに呼びなさい。」

(あれ?貧民という言葉にお母様ほど拒否感を示してない…。以外…。)

「わかりました。」

「イレーヌそなたは残るように…。」



数分後、お父様の呼び掛けに正装に身をつつんだナティーさんと杖をつきながらよろよろと歩くナラクじいさんだがやってきた。キールに促されて執務室へと入った二人は立て膝をつきながら頭を下げた。



「こちらがナティー様で、こちらがナラク様です。」とキールがいうと、ナラクとナティーは息ピッタリに「お初にお目にかかります。サクの花が春の彩りを添えるこのよき日に出会いがあったことを尊王ギーラント様に感謝の意を捧げます。」と挨拶をした。

その後、お父様が胸に手をあて「イダート王国に反映を!」と尊王への忠誠のポーズをとった。



(お父様はあくまで、イダート王国のいち領主だから王家の名前が出てくる挨拶の時でも、臣下としての忠誠を態度で示す。……貴族の挨拶ってめんどくさいのよね…。)



「キール、お二方を席へ」

「はい、旦那様。」と言ってお父様が席をすすめ、二人は執務室へとおかれている客用のソファーに座った。



「さて、そなたらは私の娘と親しい間柄だと聞いている。」とお父様が言うと二人は私の方へと視線を向けた。

(ナラクじいさんビックリした顔をしている。さすがはナティーさん…顔色ひとつ変えていない。)



基本的に身分の高い人と話すときは相手が許すまでは頭をあげてはいけないと言われている。緊張からか頭を下げていたからか、二人は私がここにいることに気づいていなかったようだ。



「お久しぶりです。ナティー、ナラク…私が身分を隠していたことにたいして申し訳なく思っています。」

「そんな滅相もない。イレーヌ様が私たちに気を止めていただけるだけでも…感謝申し上げます。」とナティーがにこやかな笑顔でそう言った。



「さて、今回呼び出したのはイレーヌが借りていた本についてだ。」

「本でございますか?」

「あの、《12の月の由来と史記について》というタイトルの本です。確か一冊しかないと…」

「あっ、あの本でございますか?はい確かに使われている文字も古く、読むことができなかったので写本等はしていませんが…」

「どこから入手したものかわかるか?」とお父様がいうとナティーさんは考え混むようにして一度空中をみあげた。



「あの本は確か…行商として諸国をまわっていたさいに入手したものかと…思います。」

「そうか、その本をイレーヌが大変気に入ったと申しておってな…こちらで買い取りたいのだが…」

(まぁ…そうなるよね。王家のことなんて言えないし…。)



「承知しました。側仕えのカタフに持って来させましょう。カタフを呼んでもよろしいですか?」

「別に構わぬ。」

ナティーは外で待っていたカタフを呼び、本を持ってくるように指示をだした。

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