シビアとアレクセイ
「失礼します。お呼びですかお嬢様?」
「ええシビアさん、彼はアレクセイ…………使用人希望の方よ。」
「この子が使用人ですか?」とシビアは上から下へとアレクセイを見定めるように目を動かす。
彼は身なりもボロボロでやせ細り、とても使用人として貴族に仕える感じではない。
「人手が必要だと言っていたから………………。」
「それはそうですが………………使用人と言ってもここは領主の館なのですよ………………それを………………。」
雑務などをこなす下働きには下級貴族の娘などを使うのが一般的だ。領主の館は雇う使用人も゙多いが、貴族なども頻繁に出入りするので、下働きだろうと働く上で身分は重要な雇用の要素となりえる。
(最近は、少しずつ平民からも優秀な人材を集めていると言っていたけど……………………やっぱり………………難しいのかな………………でも………………。)
と私はまっすぐシビアを見つめ「何かあれば私が全責任を取るわ。」といった。
「お嬢様………………。」
「それに私が面倒を見る………………もし問題があるのなら私がお父さまに直談判するし。」といったところでシビアが大きなため息をついた。
「お嬢様は一度言いかけたらなかなか折れない人ですから………………………………わかりました。では、一ヶ月の仮雇用として雇わせていただきます。あなたの仕事ぶりを見て今後のことは検討いたしましょう。お嬢様も゙それでよろしいですよね?」
「ええ、それから………………もうひとりいるのだけど………………。」
「その方は今どちらに?」
「アレクセイの知り合いで………………後ほどここに……………。」
「わかりました、ではその方とは後ほどお会いするとして……………。」とシビアが手に持っていた木札を眺めていると、アレクセイの方からお腹のなる音がした。
「お嬢様……………貴族のご令嬢としてそれは……………。」
「私じゃないわよ。」とチラッとアレクセイを見ると、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらお腹を抑えていた。
「ここ何日も食べるものがなくて……。」
「わかりました。しかし、使用人の食堂でもこのような格好の人間を入れることはできません。まずは、体を拭き身なりを整えてから食事になりますが……………。」
「それよりも……………ソフィアが………………。」と自分のことよりもソフィアを気にするアレクセイに「ロジエール………………悪いんだけどソフィアを迎えに行ってくれないかしら?」
「でも………………俺が離れたら護衛役が………………。」
「それは大丈夫よ。私はお母様と今からレッスンだから……。」
お母様には領地の騎士の中でも選りすぐりのものが護衛としてつけられている。
「わかった。では、案内を頼めるかアレクセイ?」
「ああ、わかった。」
「私も、まだ仕事が残っていますので失礼いたします。」とシビア達3人は部屋を出ていった。