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50.極寒都市

 極寒都市『フォーレ』。『ヴァーメリア帝国』の首都であり、大陸では最も北に位置している。

 その寒さのために、一年を通してほぼ止まない雪が特徴的だ。

 だが、その天候によって他国からの侵略者を阻み、独自の繁栄を続けていた。


「――次代の皇帝は決まった。もう、ここに用はない」


 マスクで顔を覆った大男が言う。

 その姿はまるで獣のようで、一歩進むごとにズシン、と大きな足音が鳴る。

 隣を歩く少女は逆に小柄で、極寒の地だと言うのに随分と薄い生地の服装に身を包んでいた。


「リーシア・ヴァーメリア――魔導師としても優秀だし、いいのではないかしら。魔法研究にも精を出すようだし、まさに『魔究同盟まきゅうどうめい』の意に沿った優秀な王だと思うけれど」

「うむ、その通り。選定されるべきは、王になるべき存在だ。リンヴルムでもそろそろ、次代の王が決まる頃だったか」

「ああ、それならさっき連絡がきたわ。確か、フレア・リンヴルムが王に決まったとか」


 少女の言葉を聞くと、ピタリと大男は動きを止める。そして、ただ一言、


「……よくはないな」


 本当に、納得のいかない様子で呟いた。


「あら、そうなの? リンヴルムには詳しくないけれど」

「フレア・リンヴルムは魔力をほとんど身体に有しない者だ。かの者が王になれば、将来的にリンヴルム王国の衰退を招く可能性がある。魔法が扱えない者が、魔法を理解できない者が――正しく、国を動かせるはずもない」

「魔究同盟の意に沿わない……そういうことね」

「リンヴルムにはキリクがいたな。連絡を取れ、我々も向かう」

「あら、あいつに協力するってこと? 素直に応じるかしら」

「応じないのであれば、こちらは勝手にやらせてもらう。フレア・リンヴルムは王に相応しい者ではない……許可も下りるだろう」

「――待て、侵入者共」


 声を掛けられ、振り返る。

 そこには、騎士の正装をした男が剣を構えていた。


「ベイル・セイファー、帝国最強の騎士か」

「私を知っているか。ならば、話は早い――この国の裏でこそこそと動いている連中には気付いていた。何を企んでいるか分からんが、これ以上好きにはさせん」

「あらあら、中々に鋭い男ね。どうするの?」

「やめておけ、我々はもうこの国を去る。ベイル・セイファー、お前はリーシア・ヴァーメリアの傍に仕え、彼女を支えてやるといい」


 ベイルの言葉に介することなく、大男はその場を去ろうとする。

 だが、それをベイルは止めようと動き出した。ピタリと、背中に剣先をあてがい、


「私は待てと言ったぞ」

「俺はやめておけ、と忠告した」

「動くなよ、動けばこのまま背中から突き殺す」

「やってみ――」


 大男が言い終える前に、ベイルは背中から剣を思い切り突き刺した――だが、大男は倒れることもなく、ゆっくりと振り返る。

 突き刺さった剣は抜けず、ベイルは呆然と大男を見上げた。


「お前……一体――」


 今度は、ベイルが言い終える前に、大男がベイルの頭を殴り飛ばす。

 ぐるぐると首は回転しながら宙を舞い、銀世界に鮮血が舞った。


「赤色に塗られた雪って綺麗ね。でも、こいつは殺してよかったの?」

「我々のことなど考えず、この国のことだけを考えていればよかったのだ。所詮、帝国最強と言っても――人間レベルでしかない。中途半端な強さは、判断を鈍らせるいい例だ。我々との、レベルの違いを見誤ったのだから」


 すでに大男の傷は癒えつつあった。

 ベイルの遺体はその場に残され、徐々に雪に埋もれていく。

 後に帝国における騎士殺し事件として発展することになるが、その犯人が向かった先は、遥か遠く離れたリンヴルム王国だ。

こちらはお久しぶりですが、ちょくちょく2章の更新していきます。

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