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1話 棄てられた萌えるゴミ

 「えっ、私追放ですか!? なんで!?」


 絶賛大流行中のVRMMO『ブレイブダスト・オンライン』の世界、その世界の中心で一人のプレイヤーが今まさに棄てられようとしていた。

 

 

 「当然だろっ!

 何で自分の魔法で毎回燃えて死ぬ奴をクランメンバーに残さなきゃいけねーんだよ!

 顔が可愛いから温情で残してやったからいいもののつ上がりやがって!

 お前なんか『燃えるゴミ』だ! 『燃えるゴミ』!!!!」


 追放されている最中の少女は赤色の髪を揺らしながら涙を堪えているが、追放する側の騎士姿の男はそれに構わずさらに責め立てていく。

 その容赦のなさはこれまで溜まりきった不満をここぞとばかりにぶつけているかのようである。



 「大体【炎魔法】しか覚えてない時点で使いにくいやつって言われてただろうに、それに加えて炎耐性もマイナスときた。

 相手に攻撃魔法が届く前に自分が死ぬような魔法使いが他にいるか? いや居ないだろ!

 このクランじゃなくて他のクランに行っても同じこと言われるだろうからさっさと『ブレイブダストーオンライン』を辞めて勉強でもした方が身になるぜ!」


 「でっ、でもあなただけの権利で追放するなんてできないはずです!

 他のメンバー全員の承諾がないt」


 「あるぞ」


 「えっ……?」



 追放されようとしている魔法使いの少女は追放されまいと知り得る知識で反論を試みたが、その途中で言葉を遮られてしまい衝撃の真実を伝えられたのだ。

 少女はクランメンバー全員からの信頼を失い、今この場で追放を宣言されていたのだと!


 それを聞いた少女は顔面蒼白になり、その一方で騎士の男は清々したと言わんばかりにウインドウ画面を宙に呼び出して【メンバーを追放する】とかかれたボタンに指をかけようとしていた。



 「だからあると言っているんだ! そう、お前はクランメンバー全員から見放されたんだよ!

 自分のステータスでも見直してみな!

 これまで俺らがどれだけそのスキルを見込んで介護してきたのかお前は気づいていないだろうが、一人で戦ってみたらよ~く実感できるはずだ!

 お前は一人だとな~んにも出来ない『燃えるゴミ』だってな!

 じゃーな!」


 「えっ、ちょっ!?」


 そして最後に言いたいことを全て言い切った騎士の男は少女の反論を聞くつもりはないようで、そのまま【メンバーを追放する】というボタンを押し少女をシステム的にクランハウスから追い出していったのだった。



 ……そして、これが『萌えるゴミ』と呼ばれる魔法少女【ラビ】の終わりと始まりであった。

 




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


キャラクター名:ラビッシュ


●性別:女性

●種族:ヒューマン

●ジョブ:魔法使い

●レベル:48

●ステータス

筋力:28

防御:26

知力:184

精神:192

敏捷:34

器用:81


●スキル

【炎魔法LV68】


●ジョブスキル

【★属性耐性『炎』-9999】←←←←←原因

【高速魔法『炎』】

【増大魔法『炎』】

【省力魔法『炎』】

【拡大魔法『炎』】








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 「トホホ……まさか頼りにしてたクランから追放されちゃうなんて思ってなかったよ……

 これからどうしよう……」


 身寄りの無くなってしまった【ラビ】は頭を抱えながら、口から魂が飛び出てきそうなほど憔悴した状態で西洋風の町並みの都市『エーラルド』を歩いていた。

 端から見ても何かに悩んでいる様子は一目瞭然の【ラビ】であったが、とある事情から他のプレイヤーたちに敬遠されているため手を差しのべてくれるような者は誰一人現れなかった。



 「……とりあえず一人でも戦えるか試しに行ってみようかな!

 『私はソロプレイヤーだ』……とか言って格好つけれたら最高だしクランなんて入らなくても何とかなるかも!」


 【ラビ】は自分の実力を信じてモンスターを倒すことで失った自信を取り戻そうとしていた。

 そのため今歩いていた都市『エーラルド』の城門から門番に声をかけて出ていくと、人気の無さそうな森へと歩みを進めていった。

 都市の近くということもあって森に入るまでモンスターに出会うこと無く進むことが出来ていたがここからは人の領域ではなく魔の領域。

 そこに一歩でも足を踏み入れたら襲われるのを覚悟したということであり……



 「来たね! 『ポイズンスパイダー』!

 毒を使う厄介なモンスターとして有名だけど……

 私の【炎魔法】が弱点の虫モンスターなら一人でも倒せるはず!

 いくよ、【バーニア】!」


 【ラビ】は唯一覚えている【炎魔法】のスキルツリーに存在する中でも特に扱いやすいと言われている魔法【バーニア】を発動した。

 すると【ラビ】が前に差し出した手の前に赤色の魔法陣が現れ、火の粉が寄ってくるかのようにして魔力が集約されていく。

 これが魔法発動の予兆であり、【ラビ】もここから放たれる魔法……【バーニア】が『ポイズンスパイダー』を焼き焦がしていくことを脳内でシミュレーションしながら照準を合わせていた。

 その気配に気がついた『ポイズンスパイダー』は【ラビ】を襲撃者として認めたようで、毒が練り込まれた糸を【ラビ】へと放ってきたのだ!



 「うわっ、攻撃してきた!?

 でも、私の【バーニア】で糸ごと燃やし尽くしてあげる!」


 そして魔力が集まりきったことを確認した【ラビ】は糸と『ポイズンスパイダー』が一直線になるようにして集まった魔力を解き放っていった!

 すると……









 「ぶあっふん!?

 か、身体が燃えていっちゃう!?

 あっ、糸が私に毒を……っ!

 回復が間に合わないよ~!!!」


 【ラビ】が放った炎魔法【バーニア】は前方に飛んでいく前にもっとも身近にあった可燃性の者……つまり【ラビ】へと引火し自爆することとなったのだ!

 そして阻むものがなくなった『ポイズンスパイダー』が放った毒糸はそのまま【ラビ】へと巻き付いていき、その身体を毒で蝕んでいった。


 回復しようと試みる【ラビ】であったが、自らが放った炎魔法【バーニア】のダメージとその追加効果の延焼で継続ダメージ、そして毒糸による蝕毒ダメージも合わさって回復は焼け石に水。

 そして、だめ押しに……



 「ああっ、虫さん来ないでっ!?

 ……ぎゃっふんっ!」


 抵抗してこない襲撃者を格好の獲物と見定めた『ポイズンスパイダー』は体当たりで残りわずかだった【ラビ】の体力を削りきっていったのだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 「ま、まだ一人で戦えないと決まったわけではっ!?」


 『ポイズンスパイダー』によって無惨な死を向かえてしまった【ラビ】は『エーラルド』へと死に戻りしていた。

 現実であれば復活など出来ないがこれはVRMMO、ゲームなのである。

 だからこそ何も出来ずに死んでしまったはずの【ラビ】は直前にいた都市へと送還されたのだ!

 これを『死に戻り』と言う。


 そんな死に戻りを経験した【ラビ】は自らが一人では戦えないという現実から目を背けようとしばらくその場で地面と向き合いながら葛藤していたが、やがてそのままでは何も変わらないと気づいてしまったのでふと立ち上がった。



 「……私と組んでくれる人を探そう!

 前のクランでも可愛いからってすぐに入れてくれたし、きっと今回もすぐ見つかるはず!」


 そんな甘い期待を脳裏に浮かべながら腕自慢のプレイヤーが集う冒険者ギルドへと足を運んでいった。

 そして仲間募集の貼り紙を掲示板に貼って、その隣でどや顔をしながら腕を組んでこれから一緒に冒険する仲間が誰になるのか視線を泳がせていく。

 その貼り紙には自分のステータスが記されており、それを見た他のプレイヤーが声をかけるという仕組みとなっているのだ。

 


 だがしかし……

 五分後……

 

 「早く来ないかな~」



 十分後……


 「そろそろかな~」



 一時間後……


 「んんっ!?」



 二時間後……


 「おかしいなぁ……」



 三時間後……


 「これはまさか……」



 四時間後……


 「私って」



 五時間三十分後……


 「拾う人がいない……『燃えるゴミ』ってそういうこと!?」





 自分の【炎魔法】で燃えてしまう魔法少女【ラビ】はこの時初めて自らの境遇を正しく認識したのであった!

 気づくまでが遅すぎる……

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