ギフト
だいぶ日にちが空いてしまって……自分でも前の流れを思い出すのに時間がかかってしまいました。
前回までで、崖を好奇心で降りていったリンクス&ウッドの話が一段落していて、ここから崖の上に残ったエイル&ルウォの話が始まります。
この世界での「悪意」について少し掘り下げられたらいいなぁと思っています。
時間軸は、崖を下っていったリンクス&ウッドを見送って、「どうする?私たちも降りる?」とルウォに相談した後です。
「こっちはこっちで当たりみたいね」
逃げる?戦う?捕まってみる?
って言ってました。
またお付き合いいただけたら嬉しいです。
「お嬢ちゃん、こんなところで何をしているんだい?」
ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべ男は訪ねる。その声からは親切心など感じられない。
「旅をしていたのです。そうしたらこの先から声が聞こえたような気がして……」
ひとまずそれっぽいことを言っておく。
男は、……男だと思われるそれらは、悪意に染まりすぎてもはや姿が見えない。
声によって複数人いることはわかっても、何人いるのかまではわからなかった。
どうやったらここまで穢れを溜められる?
本来ならこんなことになる前に吸い出されるはずなのに……。
近づきたくないなぁ……。
「その先には何もないよ。そこはね、降りたら2度と帰れない危ない道なんだよ。」
ウッドと同じことを言っている。
地元の人間か?
「俺たちについておいで。街まで連れていってやるよ」
男の言葉に「そりゃあいいな」と、周りの男達がこちらに一歩踏み出す。あいつがリーダー格だろうか?
ルウォが男達を威嚇するように地面を蹴った。
ここで彼らを蹴散らすのは容易いだろう
……でも……隊長が求める情報はこの先にある……気がする。
ならばすることは1つだ。
「ルウォ、この人達に付いていこう」
ブルルルルルルっと不満げな声を漏らし彼は動かない。
「おっかねぇもんに乗ってんなぁ。危なくてしょうがねぇや。もっと扱いやすい馬をやるからよ、言うこと聞かねぇやつなんて乗り換えちまえよ!」
「そうそう、そいつは俺達が躾てやるからよ!家畜はなぁ!こうやって!躾るんだよ!」
不意に近づいてきた黒い塊がルウォの身体におもいっきり打撃を加えたようだ。
パシンっと鞭打つような音がしてルウォがいきり立った。
こいつらバカなの!?!?
ルウォがただの馬ではないことが見えてない!?!?それとも死にたいの!?!?
エイルは振り落とされないよう、怒り狂う親友の首にすがり付き、必死になだめた。
誇り高きユニコーンにそんなことをしたらどうなるかなんて考えずともわかるものじゃないの!?!?
嘶きいきり立つルウォを彼らはケラケラと笑っている。
それは、ルウォに鞭打った男が蹴り殺されても変わらなかった。
血を噴き上げながら蹴り飛ばされる男を見て黒い影達は変わらずケラケラと笑っている。
何を考えているの?仲間が蹴鞠のように蹴り回されて憤りや痛みを感じないの?
例え情がなくとも人間が……いや、人間でなくとも生き物が、打撲によって原型を変えられる姿を見てなんとも思わないなんてことある!?
この男はこの人達から嫌われていたのだろうか?嫌なやつが滅多打ちにされて喜んでいるとか?
しかし、男達の笑い声は、心の底から面白くて笑っているようにも、無理して笑っているようにも感じられなかった。
機械が定められたきっかけで作業をするように、ルウォが男に攻撃を加える度ケラケラと笑い声が上がった。
もしかして、彼らは……何も考えていない?
余程ルウォの方が男に向ける感情が強い。あまりの空虚さに気味が悪くなった。
「ルウォ、もうやめて。これ以上やったら……」
もう、きっと死んでる。
だってルウォが彼に触れてもあの黒いモヤの記憶が流れてこない……
いや?まって……?彼から穢れが流れてきた記憶がない。
ルウォが代わってくれた?いや、ルウォに穢れが溜まっている様子もない。
最初の一撃で即死だった?
いや、だとしてもだ。ルウォに鞭打った時ですら穢れが流れてこんで来ないなんてありうるのだろうか?
それに……これだけの至近距離に姿が見えないほどの穢れを纏った人間がいて何も視えないなんてこと……ある……の?
何かがおかしい……。この人達は本当に人間……なの?




