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次の村へ

いつもの儀式のように畑の真ん中へ座すと、祈りを捧げる。


祝詞が畑を覆い光に包まれる……嘘でしょ?もう、穢れてる……。


畑で行われる儀式は村人全員を集めて見せている。畑の周辺に入りきらない人々はカパーが儀式の記憶を映像として直接魔法で届けていた。


カパーと村長で事前に行われた打ち合わせにより、畑にはすでに種子が撒かれているらしい。


ルウォの蹄には、例の小瓶が仕込まれており、彼が歩く度、少しずつ中身が零れ出るようになっていた。


ルウォは、ランダムに、しかし、意味ありげに、図を描くように僅かな法則性をもって畑全体を練り歩く。


ルウォが全ての土を踏み終えた後、少女は聖歌を歌い上げた。


聖歌に意味なんてない。ただ、いつもと違うことをしろと指示を受けたから歌っただけだ。


にもかかわらず、みるみるうちに畑からは芽が出はじめ、やがて、たわわに実りをつけた。


嘘でしょ……?これ……私の力じゃ……ないよね?


村人からは、歓喜の絶叫が上がった。


「皆さん、ご覧いただけましたでしょうか?これが、我らの誇る『聖女』の力!『聖獣』の加護!」


カパーが魔法で声を直接届け、村人を煽る。


「皆さんの見た魔物を産む聖女は、魔物が見せた幻影でしょう!惑わされないでください。本物の『聖女』は我らと共に!!!」


うぉぉぉぉぁぉぉぉぉぉ!!!!!

と歓声があがる。


「奇跡だ!!!」


「聖女様ばんざーい!」


「聖獣様ばんざーい!!!」


「聖女の御業に祝福あれ!!!」


「モンスター共に騙されるなんて!!!

申し訳ありませんでした!聖女様!!!」


「聖女は我らと共に!!!」


「我らは聖女と共に!!!」


口々に『聖女』を褒め称える声が上がった。それでも……素直に喜べない自分がいる。


安堵よりも拭いきれない違和感が、彼女を苛んでいた。


信じて……いいんだよね……?隊長……。


歓喜に叫ぶ村人の間を抜け、広場へ戻ると既に出立の準備が出来ていた。


「それでは、皆さん、我々は次の村へ行かねばなりません。またお会いできるときまで、どうか、お元気で!」


カパーが村人への最後の発信を終えると木門がギギギギギギと開きはじめる。


遠くから砂煙が上がるのが見える。村に到達したときよりもずっとずっと濃い砂煙だ。


どうして?滞在の間に討伐部隊が数を減らしてたのよね?


エイルの中にある違和感が少しずつ大きくなっていく。


疑惑は晴れた筈なのに……どうして?どうして、こんな、逃げるように去らねばならないの?


「さぁ、皆さん、一気に抜けますよ!護衛部隊の皆さん、手筈通りに!よろしいですね?」


カパーの魔法による一斉送信だ。


次の村に行くにはこの平原を抜けて……それから……。


いつもの癖で、この先の段取りに意識をとられたエイルは、そのまま違和感を手放した。


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