祭りの役割
カムペの中心にいるのはエイルだ。
エイルとルウォがカムペを生み出していた。
「なんで……?」
だって……エイルも、ルウォも、味方……だよね?モンスターを倒してたよね……?
今、目の前でモンスターを生み出している彼女は……何???
ウッドには訳がわからなかった。少女の身体から次々と黒いもやが現れ、やがて、カムペの形をなす。
ぽろり、ぽろり、と、彼女の身体から現れるカムペは討伐部隊のみんなを無差別に襲っていた。
「彼女は穢れを祓う力があるとされていますが、その実、彼女の持つ力は穢れを吸い取る力なのです」
カパーはフードを外しつつ答えた。大勢の前でフードを外している姿にウッドは驚いた。
「多少であればルウォの加護で浄化されますが、カムペとの戦闘は彼女らのキャパシティを越えるものだったのでしょう。
受け止めきれなかった穢れは、このように外へ解き放たれます。彼らを止めるには全て吐き出してもらう他ないのですよ。」
カパーは狐のような細い目を開き、赤い目をあらわにした。
深紅の長い髪と赤い耳飾りが揺れる。爬虫類を思わせる大きな口は口角が上がっていて始終笑っているように見えた。
「行きますよ」
そういってカパーは馬の腹を蹴ると、戦場のど真ん中に繰り出した。
突然現れたカパーを仕留めようとカムペ達はカパーを仰ぎ見た。するとその瞬間カムペ達は動きを止めた。
その隙に他の者らが片っ端から切り伏せていく。
「名前を呼んで!」
カパーがウッドに鋭く指示を出した。
「カパー……さん……?」
「ワタクシではなく!!!」
「ル……ルウォ……?」
「……。……。」
カパーは少し黙っていたが、やがて、お気付きではなかったのですね。と、いうと馬を操りながら続けた。
「いいですか、貴方には今、ルウォの加護がついています。ユニコーンの加護には様々な効果がありますが、その中でも浄化の力を使っていただきたいのです。」
「浄化の力?」
「穢れを祓い、穢れから守る力です。今、彼女らは闇の中にいます。名を呼び、貴方が道標となるのです。できますね?」
「わかんないけど、わかった!!!オレやってみるよ!」
「その意気です。では、戻りますよ!」
カパーは広範囲に広がるカムペ達に満遍なく術をかけていたが、ウッドの決意と共に中心地へと戻ってきた。
「ルウォ!!!エイル!!!」
ウッドが2人の名を呼ぶとぽわぽわとウッドの身体から白銀の光が漏れだし始めた。
「続けて!!!」
カパーは手綱を裁きながら、カムペ達の動きを封じている。
「ルウォ!!!エイル!!!」
ウッドの身体から出た光がルウォの身体に触れると、黒いもやの色が一瞬薄くなった。
ルウォはブルブルと身震いすると、ウッド目掛けて突進してきた。
頭を下げ、しっかりと角をウッドの心臓へ向けたルウォはひとっ飛びで懐へ飛び込んで来た。
「くっ!!!」
カパーが手綱を引き愛馬をいきり立たせる。嘶きながら前肢を高く上げた栗毛の相棒は、カパーの思惑通り下からルウォの気道を強かに蹴り上げた。
ゆらりとルウォの巨体が揺れ身体からカムペが溢れ出る。
「カスターニア!!!」
主人の声に下ろしかけていた前肢を無理矢理持ち上げ、身体を捻ってカムペを躱す。
カパーは、栗毛の愛馬がカムペの毒に触れなかったことに安堵しつつその場から距離を取った。




