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第42話 王城攻略戦・2F

 後は寝るだけだったのに、少女の判断で深夜の城内を探索する事になった。

 巡回する衛兵を避けながら徘徊してお城の備品や食材を漁り、悪事を重ねた。

 ついに本性を表した少女に憤りを感じつつもどうにかお城の二階に到達した。


 何で俺はこんな深夜にこんな侵入者みたいな真似をしてるんだろう……


 ブォン、ブォン


 視線の先にはランタンの光を剣のように振り回し廊下を進んでくる衛兵が居る。灯りに照らされない以上はこちらに気付かないようだが、その隙のない巡回を見ると鬼気迫る迫力があり、仕事熱心なのがこちらにも伝わってくる。


 いや、本当にどうしてこんな状況になってるんだろうか……


 強く念じる事でコミニケーションも取れるようになり、絆を深めて仲良くなれると思っていたらこの有様である。

 漁り行為に関しては盗賊の職業ポイントを稼いでるんだと、これまでの行動から何となく理解はしてるけど、全く躊躇が無いのは如何なものだろう。


 やっぱり操っている俺の事など意にも関せずと言う事なのだろうか?

 この少女にとって俺はただの操り人形って事か? いや、薄々は感じてたけど、ちょっと扱いが酷く無い? 少女に対する好感度がどんどん下がってるんだけど。


 好感度なんて元々そんなに高くないけど、今はもう猜疑心でいっぱいだよ?


 しかもさっきなんて階段の踊り場で唐突に元の装備に着替えさせられたし。

 宿舎のロッカーから拝借してまで変装したのに、衛兵の格好じゃダメなのか?

 一階の衛兵は欺けたんだから、二階も変装した方が安全な気はするのだが……


 とは言え見つからずにここまで進んでるし何かしらの意味はあるんだろうけど、それでもあまり信用は出来ない。

 それにやっぱり何か変な”既視感”もあるし、記憶はハッキリしないけど、もはや気のせいでは済まないくらい似たような体験を何度かしている気がする。


 デジャブってこんな頻繁に起こるものだっけ?

 いや、これってもしかして、でもそんな事まで起こり得るのか?


 色々と解せないのだが、思考しながらも身体は勝手に動いた。二階は中央の吹き抜けの大ホールを囲むように廊下と部屋が連なっていて、回の字のような構造なのだが、正面の右端に三階への階段がある。

 しかし一階の両端の階段を上がり直ぐ中央にある”謁見の間”の前には衛兵が立ち塞がってるのでこのままでは進めなかった。


 二階には左の階段から上がったので、またしても大回りに迂回する必要がある。

 それならば右の階段から上がれば良かったとも思うが、どうやら向こうの階段の前には待ち構えている衛兵が居るようで、付近の巡回もその衛兵がしてるようだ。


 つまりはこの衛兵を通り抜けないと三階へは進めない。


 しかし少女の指示は的確で迷う事なく迂回して、巡回する衛兵を避けながら奥に図書室のある廊下を進み、突き当たりを左に曲がり奥の通路を通り、右側の廊下に差し掛かった。

 右の廊下の現在地は図書室と対面に位置していて、展望ラウンジになっているのだが、深夜なので部屋は既に施錠されて入れないようだ。


 つまりは隠れる場所が殆ど無い状態で、右の通路の正面にある三階に上がる階段を目指さなければならない。

 残す衛兵は視線の先に居る階段の前を巡回する1人だけなのだが、以前にも挑んだけど、反復横跳びで通せんぼしてくるヤバい衛兵だ。


 先程までは階段の前で身構えてたのに、今は右の通路を往復して巡回している。

 こちらに気が付いてるとしか思えない行動なのだが、本当に見えてないのか?


 一定の間隔で廊下を巡回してくるのだが、視界をカバーするかのように携帯用のランタンを、ブォン、ブォン、と左右に振り回しながら突き進んでくる。


 さながら”ライトセーバー”とでも言うべきか、しかもディレイ行動までして来るのでタイミングが測りずらく、これを抜けるのは流石に少女でも厳しいとは思う。

 そして図書室の付近まで後退すると巡回ルートから外れるのか引き返すのだが、その背後を追い掛けると勘が鋭いのか、振り向き再びこちらに向かってくる。


 画面の少女も警戒して距離を取っていたので、何とか灯りに照らされないようには隠れているが、この衛兵を切り抜けて三階の階段に進むのは至難の業だろう。


 迫ってくる際に通路に面する部屋の中でやり過ごせば、通り過ぎたタイミングで抜けられる可能性はあるけど、深夜だからか部屋は既に全て施錠されている。


 この手詰まりの状況で少女はどうするつもりなんだろう?


     ◇


「はぁ、これやっぱり突っ込んで通り抜けるのは難しそうだよなぁ……」


 前回はタイミングをみて潜り抜けようと思ったら突然ランタンの旋回速度が速くなって灯りに触れちゃったけど、もっとギリギリのタイミングを狙えば抜けられそうな手応えはあった。何度か挑めば対応は出来そうだけどチャンスは限られてる。


 と言うか図書室の位置まで戻れば一応は引き返すのか……

 前回は迫り来る圧に耐え兼ねて挑んだら見つかったけど、でも引き返し際の追跡だとどのみち階段の前でそのまま振り向かれて捕まりそうだし、結局はタイミングを見極めて突っ込むしかないのかな?


 変装して質問に答える方法もあるにはあるけど、そっちが正攻法だったりする?

 でも内容的に面倒そうな質問だったし、2回間違えると変装がバレたのだ。


 しかも兵士の心得10か条の5番目は? とかふざけた内容の問題が選択形式で出てきたんだけど、そんなの知るか!!

 変装して宿舎やお城の一階で衛兵と会話すればヒントを貰える感じなんだけど、内容を覚えるのも面倒だし、正解しても三階に上がれるとは限らないから却下だ。


 他の手段としては盗賊の解錠スキル【鍵開け】を覚えて、部屋の鍵を開けてやり過ごすとかも考えたけど、鍵開けするには”ロックピック”的な消耗アイテムが必要なようで、今の現状だと持ってない。


 もしかしたら道具屋とかで売ってた可能性はあるけど、普通に見逃してた。

 ポーション類はククリコの店でも買えたからまだ立ち寄ってすらいなかったので何処かで拾えないかとお城の一階を探索して漁ったけど結局は見つからなかった。


 うーん、ここまで来て準備不足で詰まったかな……まあ挑んでみるしかないか。


     ◇


 迫り来る衛兵を廊下の端で身構える。タイミングを見極めて通り抜けるようだ。

 少女の判断なのだが俺もこのまま捕まると咎められるだろうから、不本意ながら全力で挑む。それに個人的にもこの衛兵には何か負けたくない。


 やり過ごす方法も俺は思い付いたけど、それを少女に伝える前に身体が動いた。


『今だ!』


 自分の意志と少女の判断がリンクするような、絶妙なタイミングでランタンの光を避けて衛兵の真横を抜ける事が出来た。

 普通に考えたらこんなの絶対に見られてるとは思うけど、今までのルールに従うなら灯りに照らされなければバレないはず。


 大丈夫だ、視線は感じない。後はこのままこの衛兵が折り返して来る前に階段まで突き進めば……


 ブォン!


 しかし衛兵は何かを感じ取ったのか、ピヨヒコが通り過ぎたと同時に身体を旋回させ、まるで”回転切り”の如くランタンを振り回した。


 そして敢えなく灯りに照らされて見つかった。


「誰だ、止まれ! おお、これは勇者様でしたか、申し訳ないですが深夜に城内を徘徊するのは遠慮して頂きたい、どうかお部屋にお戻りください」

「あ、はい、ごめんなさい」


 ああ、やっぱり今回もダメだったか……ん? 今回もって何だ?


 プォン!


 そんな事を思ったら、それと同時に視界が暗転した。何か覚えのある感覚だ。

 そして気が付くと、そこはメアリーに案内された一階の客室だった。


「えぇ!?」

《あーもう、だから何なのよあの動きはぁ!!》


 ギルドの宿屋で寝た時みたいに唐突に瞬間移動したんだけど、え、なにこれ!?

 突然の出来事に困惑して背後の少女を見てみると、さっきの衛兵に見つかった事に憤慨してる様子で、特にこの状況を疑問には思ってないようだ。


 それにやっぱり既視感がある。確かこの後もまた何度か挑んで、それでメアリーが部屋にやってきて、注意勧告されて、何故か添い寝の提案をされて……


「思い……出した!!」


 カチッ、プツン


 一連の出来事を思い出したのと同時に再び意識を刈り取られた。

 そして気が付くと、視線の先には徐々に迫り来る衛兵の姿があった。


「……は?」


 えっと、何これ? 確かさっきまで……いや、確か画面の少女の判断でこの迫り来る衛兵を切り抜けて、お城の三階に向かう途中だったっけ?


 本当にそうだっただろうか?


 またしても不思議な喪失感があるのだが、身体はまた勝手に動き出し、衛兵から一旦距離を取る。そして図書室の辺りまで後退して身構える。

 背後の少女を見てみると、この状況をどう切り抜けるか考えている様子だ。


 ……やっぱり何かおかしい。


 これはこの少女が何かしてるのか? どうしよう、このままだとまた無策で突っ込む感じになるんじゃ……そしたらまたこの場面から繰り返すのか? と言うか、既に何度も……何かそんな気がしてきた。


 ザワザワ……


 理解し難い繰り返しの既視感に不安を感じたピヨヒコは、意を決して画面の少女に”打開策”を念じて伝える事にした。どうか無視しないで聞いて欲しい、むむむ!


     ◇


「え、なにこれ? 隠し部屋があるからそこを使え?」


 ズルだとは自覚してるけど、右の廊下の手前でセーブして、挑んでは見つかってリセットを繰り返していたのだが、三度目で突然変化が起きた。


 今度こそと思ってたらピヨヒコが、思考メッセージで呼び掛けて来たのだ。

 その内容に驚いたけど、疑いつつも指示された行動をしてみる事にした。


 まずは少し距離を取り、図書室から折り返して戻っていく衛兵に見つからないように追従しながら、そして右の廊下の壁際にある、手前の”ランプ”を調べてみた。


 すると『ボフンッ!』と突如、謎の扉が現れた。


 言われた通り本当に隠し部屋があった。てかこんなの知らなかったんだけど。

 取り敢えずピヨヒコに催促されたのでそのまま部屋に入ってみた。

 すると部屋にはいくつか宝箱が置いてあるのだが既に開けられた形跡があった。


 あ、これもしかしてあれか? 弟が遊んでた時に既に探索して見つけた感じ? それならピヨヒコがこの仕掛けを知っていたとしても不自然ではないけど……


 いや、それを私に伝えてくる地点でかなり不自然ではあるけど。

 引き継ぎプレイだから私はこんな隠し部屋があるのは知らなかったけど、その事をピヨヒコも周知してる感じで伝えてきたし。


 と言う事は、途中でプレイヤーが代わった事も理解してるって事になるのかな?

 もしそうならかなり不気味なんだけど、何か少し鳥肌が立ってきた。


 と、取り敢えずこの部屋を利用すれば衛兵をやり過ごす事も出来そうだ。

 隠し部屋を事前に知ってる前提なら、これが正規ルートっぽいし。 


 無茶な難易度もそれなら納得は出来るけど、まさかその手段をピヨヒコが教えてくるとは思わなかった。これやっぱり私の行動に憤りを感じて、攻略法を教えてきた感じだよね……いや、でもそれなら何で最初から念じてこなかったんだろう?


 今回に限って唐突に思考メッセージを飛ばしてきたのには何か理由があるの? 

 もしかして、リセットしてもピヨヒコはそのまま”記憶を維持”してたりする?


 それならこのタイミングでいきなり念じて来たのも納得は出来るけど。

 ゲームの仕様でオートセーブされるとは弟に聞いたけど、そんな事ある!?


 改めてゲーム画面を見てみると、ピヨヒコが背後を振り向きこちらを観ている。

 何かを訴えかけようとしてる様子で、何かスゴイ気まずい……と言うか怖い。


 ……まさか、あの時の事も覚えてたりする?


 それにもしかしてまた何か喋りかけてくる!? 何度か繰り返しループしてる事に対して、疑念を抱いて私に不満を感じてたりする?

 いや、本当に自我があるなら、操られてる事を不満には感じてるだろうけど。


 その予感が的中したのか、少し怯えつつ身構えていたら、再びピヨヒコが念じて語り掛けて来た。


『むむむ、えっと、取り敢えずちゃんと自己紹介とかもしてなかったけど、俺の事を背後から操作して、操ってるのは君で間違いないよな?』


 ですって、うわぁ、これ何て返答すればいいの!? 選択肢とかは特に出てないんだけど、肯定するにしてもどうやって伝えればいいの?

 こっちも強く念じれば届くとは思えないし、やっぱりコントローラーのマイクに向かって話し掛ける感じ? どうしよう、どうしよう、どうしよう!


     ◇


 挨拶のつもりで少し牽制しつつ、念じて質問したけど何か狼狽えてるな。


 これ画面の少女からしたら予想外の出来事だって事なのか? まあ今までお互いに殆ど無視して来たのに、いきなり核心をつく質問をされたら戸惑うとは思うが。


 うーん、どうするかな、そもそも俺の方は念じて伝える事は出来るけど少女から何かしら語り掛けてきたり、念じて思考を飛ばしてきたりはしないんだよな。

 表情で感情を読み取ったり、たまに何か喋ったりはするけど、殆ど独り言だし。


 もしかしてこの少女は画面を通して俺に見られてる自覚が無かった感じか?


 それなら動揺してるのも納得だけど、と言う事は多分、風呂場で話し掛けた時も俺の声が聴こえつつ無視していた可能性はあるよな……

 こっちの声が聞こえてないなら状況を理解出来ない場面も絶対にあった筈だし。


 それまで俺に見られてるとは思わなくて、話し掛けられたから戸惑ってたなら、無視したのも頷けるし、と言うか俺の方も正直かなり気まずい気分なんだけど。


「……」

《……》


 深夜の静寂も相まって、暫しの沈黙がお互い気まずい空気をより一層強調する。


 えっと、そうだ、少女から話し掛けるのが嫌なら肯定なら頷いて、否定なら首を左右に振ってくれ、そうすれば最低限のコミニケーションは取れる。


 強く念じてそう提案してみた。すると理解したのか画面の少女は警戒しつつも、コクコクと首を縦に振った。


 おお、やった、伝わった。そしてやっぱり少女が俺を操ってるのが確定した。

 まあ今更だからそれは今は置いておくけど、取り敢えずこれは聞いておこう。


『えっと、もしかして君は時間を遡る、もしくはやり直す能力を使えるのか?』

《!?》


 すると画面の少女はその質問に対して驚いて、困惑している様子だ。


 これは答えを聞くまでもなさそうだな、何か余計に気まずい空気になったけど、どうしよう……どんな能力で繰り返してるかは分からないけど、この場でこれ以上追求してもいい感じなのか? 画面を見ると、何かかなり悩んでいる感じだけど。


 う〜ん、沈黙が気まずいから取り敢えず今はこの件は保留にしよう。


 むむむ、と念じてそう伝えた。すると少女も頷いてそれに同意した。

 それと今の状況を打開する為にも、こちらの意見はしっかりと述べよう。


 個人的には今からでも引き返してベッドで寝たいんだけど、もうこれ以上は罪を重ねるのは止めにしないか? と言うかせめて漁り行為だけでも控えてくれない?


 むむむ……すると少女は首を左右に振って強く否定された。うん、知ってた。


 おのれ、やっぱり俺に配慮なんか微塵もしてくれないスタンスなのかよ!!


     ◇


 ピヨヒコが戸惑ってるこちらに配慮してイエスかノーを首を振って伝えるように提案してきたので、不審に思いつつそれに応じた……と言うかヤバくない!?


 何これ? 仮にピヨヒコが高性能なAIだとしても、状況に合わせて向こうから指示を出してきたりするものなの? 中に人が居ると疑うレベルなんだけど。


 しかも頷いたら何か意思の疎通が出来た事を喜んでる感じだし、やっぱり背後に画面でも浮いていて、それでお互いの様子とか筒抜けな感じなの?

 何か見られてると思うとスゴく恥ずかしいんだけど、何なのよこのゲーム!?


 別にエッチな視線とかは感じないけど薄い生地の部屋着で胡座を掻いてたので、気まずい気分になり足を閉じていたら、また何か思考メッセージで訴えてきた。


 えっと、なになに? え、時間をループする能力を使えるのか、ですって!?


 予想はしてたけど、いきなり核心を突かれて困惑した。

 と言うかピヨヒコも思った以上に勘が鋭いな。リセットしても記憶が引き継がれるなら流石に違和感を感じるかもしれないけど、疑念に感じたとしても直接それをプレイヤーである私に聞いてくるとは……


 うーん、どうしよう、これ素直に肯定しても良いものなのかな。


 頷いたらどうやって行使してるかとか追求されそうだし、それにこれ下手な事を伝えたら、ピヨヒコの精神に悪影響を与え兼ねないんじゃないかな?

 私の方も核心を突く質問があるんだけど、もしかしてこの主人公って……


 その世界が【ゲーム】だとは理解してないんじゃないの?


 この手のストーリーだと最大級のネタバレ的な要素になると思うし、これ私から直接ピヨヒコに『お前は私が遊んでるゲームのキャラなんだよ』とか言ったら駄目なやつだよね? いや、伝えたらどうなるのか少し気にはなるけど……


 ちょっと慎重にはなった方が良さそうな案件ではあるけど、どうしよう。

 そんな事を思案してたら沈黙に耐え兼ねたピヨヒコが取り敢えずこの件は保留にしようと提案して来たので、それに同意して頷く。


 私としても楽しくゲームを遊ぶ為にもあまり踏み込んだ話題は今はしたくない。


 そして更にこの状況に対して、もう眠いから部屋に戻って寝ようと云ってきた。

 はぁ? ここまで来て何を言ってるのよ、そんなの却下だ却下!!

 添い寝イベントをリセットしてまで苦労して進めたのにここで諦めてたまるか。


 それにいくら意思があったとしてもプレイヤーがゲームのキャラに対して弱気になって従うなんて何か屈したみたいで嫌だし。眠いならこれでも飲んでなさい。


 ピヨヒコの要望に応えてストレージから昼に買ったアイテムを選択して使った。


 盗み行為に関してもやっぱり思うところはあったみたいだけど、どのみちアルマやネム達と一緒の時は好感度にも影響しそうだし一応は控える予定だよ。これでも他のゲームを遊ぶ時よりは、ずっと配慮はしてるつもりなんだぞ。


 それよりも攻略法が見つかったならこの隠し部屋を活用して挑むわよ。

 あ、でも念の為に一応ここでまたセーブはしておこう。リセットに関しては使わないで済むなら基本的には私も使うつもりはないけど、今後も状況次第かな。


     ◇


 何かストレージからアイテムを取り出して渡して来たんだけど、何だっけこれ?

 ポーションっぽいけど、操られるままにそれを飲み干す。

 すると眠気が吹き飛び、何か気分が高揚して昂ってきた。え、なにこれスゴい。


 ムクー!!


 ピヨヒコは使い所を逃していた”活性ポーション”の効果により気力が全快した。


 こんなの飲んだら逆に寝れなくなりそうなんだけど……何故か俺のマイコニッドまで元気になったし。何か危ない素材とか混入されてない!?

 ヤバい、何か画面の少女が妙に可愛く見えてきた。正気に戻らないと!!


 ピヨヒコは装備してた理性の腕輪の効果で性欲をなんとか抑制した。

 個人的にはこの少女にまだ色々と聞きたい事もあるのだが、身体が動き出す。


 隠し部屋から廊下を覗くと奥から衛兵が徐々に差し迫ってくる。突如現れたこの隠し部屋に気が付かれたらそれまでだけど、どうやら大丈夫なようだ。通り過ぎてそこそこ離れたタイミングで部屋から抜け出し、そのまま階段に向かう。


 スタタタッ……よし、これなら行けるか、なっ!?


 ヤバい、余裕かと思ったら何か背後から凄まじいプレッシャーを感じる!!

 これ絶対に衛兵が切り返して迫って来てる。何故かそんな気がする。


 しかし背後を確認する余裕がないので、猛ダッシュで階段まで駆け抜けよう。

 もし見つかったらまた例の繰り返しが起きる。それは流石にもう嫌だ!!


「うおぉぉ、ファイトー!」


           シュタタタタタタタッーー!!


 焦ったピヨヒコは全力で走った。そして見事に三階への階段に到達した。


     ◇


「やった、ついに三階まで来れた、普通に嬉しい!」


 結構ギリギリだった。隠し部屋から出た途端に衛兵が反転して迫って来たし。

 画面的には私も見えなかったけど、衛兵が振り向くイベント演出が入って、何か鬼気迫る効果音が流れて、背後から徐々に迫って来てるのが分かった。


 さながら巨大なサメにでも追い掛けられて襲われているような緊迫感だった。

 方向キーを押しっぱなしだったけど、あと少しで灯りに照らされる所をピヨヒコがダッシュで階段まで駆け上がり、寸前の所で何とか追っ手を振り切った。


 少し疑問は感じたけど、取り敢えず難関クリアだ。


 画面が切り替わり追って来た衛兵もどうやら三階までは上がってこないようだ。

 ピヨヒコも背後を気にしてたけど追って来てないのを確認して警戒を解いた。


 そして辿り着いた三階には、巡回する衛兵はどうやら居ないようだ。

 まあ王族がプライベートを過ごす階層みたいだし、気を遣って普段からそこまで厳重な警備はしてないのかもしれない。

 第三王女様も何か部屋から勝手に抜け出して探し物をしてたみたいだし。


 それだけ下の階層を巡回する衛兵は多かったけど、ゲームのイベント的にも盗み聞きとか出来る感じなら、メタ読みだけどそんな予想はしてた。


 少し慎重すぎるかもだけど、ここでまた一応セーブはしておくかな。帰りはまあ見つかったとしても部屋に戻されるだけなら詰む事はないでしょ。

 いや、でも三階から降りてあの衛兵に見つかったら流石に咎められるのかな?


 それならセーブはしない方が良いかも? こんな時にセーブ枠が2つあれば便利なんだけど、うーん、取り敢えずは様子見するか。

 隠し部屋からなら、例えやり直したとしてもそこまで苦労しないだろうし。


 それにしてもあの衛兵は強敵だった。確かメアリーが衛兵長に注意して来るように指示されたとか言ってたから、もしかしたらあの兵士が衛兵長だったのかな?

 1人だけ色違いの衛兵の装備で強そうだったし、何か特別な感じはしたな……


「と言うかピヨヒコ、自力で走れるなら最初から全力で走れよ!!」


 思わず不満を口にしたら、画面のピヨヒコは何かスゴく不服そうな表情だ。

 いや、なによその顔は!? そう思いつつも怖いので視線を逸らす。サッ


 てか不服なのはこっちよ、何なのよさっきのダッシュは!? 普通に走れるのに今まで敢えて走らなかったって事?


 城下町とかの移動でも走らなかったから、そう言う仕様なんだと諦めてたけど、もしかして走るかどうかの判断は主人公の気分次第なの!?


 しかもダラダラとアルマと雑談しながら歩いてさ、突発的に起こる会話イベントばかりでさっぱり進行しないから、その点に関しては本当に不満だったんだけど。


 走ろうと思えば普通に走れるなら、移動の時ももっとシャキシャキと走ってよ!


 そんな事を考えてたらピヨヒコが思考をメッセージで伝えてきた……なになに?

 やっと三階まで辿り着いたのに、深夜にあまり大声を出すな、ですって!?


「もう、何なのよコイツ、ムカつく!!」


 と言うか私の声もやっぱりコントローラーのマイクを通して認識されてるのか。

 本当に何なのよこのゲームは!!


     ◇


 あーもう、またそんな大声を出して、王族にバレたらどうするんだよ!

 それに何がムカつくだよ、ムカついてるのは寧ろこっちの方だ!!


 訳も分からずに操られて行動を勝手に決められるし、しかも今もそうだけど変な行動ばかりさせられるし、おまけにもっと速く走れだ!?

 城下町を全力疾走で移動してたら町の住民から好奇な視線を浴びせられるわ!!


 例の少年もそうだったけど、背後から走れよって空気が伝わって来て何かスゴく嫌だったんだけど、操られながらも移動の際に走るかどうかの判断は、自分で決められたので抵抗行動で、絶対に走らないと密かに反抗してたのだ。


 さっきのは状況的に走るしかなかったけど、普段からそんな走ってられるか。

 それにあんな広い城下町、最初に情報収集で歩き廻ったけど普通に疲れるわ!!


 という訳で、今後もなるべく走らないように抵抗するからそのつもりで。


 むむむ〜!!


 そう強く念じて意思表示したら、少女にめっちゃ睨まれた。何かスゴく怖かったので、咄嗟に視線を逸らした。ササッ


 それによく考えたら背後の画面は俺にしか認識されてないみたいだし、それなら少女が大声で喋ったとしても、他の人に聞かれる事はないのかも?


 それならアルマ達が居る時でも少女と対話は出来そうだな。俺も強く念じれば、黙ったまま思考を伝えられるし、まあ少女が応じてくれるか何とも言えないけど。


 取り敢えず目的地である三階の王室に着いたけど、どうするつもりなんだろう。

 と言うかこの少女は本当に何者なんだ? 一体何が目的なんだろう?


 そう疑問に思っていたら、唐突に部屋の中から複数の人の気配を感じた。


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