第36話 再開
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謎のゲーム【ワンダークエスト】ジャンルはRPGだ。
久し振りに訪ねてきた叔父から弟が駄々を捏ねて半ば強引に譲って貰ったゲームなのだが、設定が細かく面倒だからと途中で投げ出したので、そのセーブデータを姉である私が引き継いで遊んでいたのだが……このゲームは何処か変だ。
主人公である勇者を操作して世界の平和の為に魔王を討伐する。そんなよくある定番な物語なのだが、何故かこのゲームの主人公は【プレイヤー】である私の事を認識しているようなのだ。
メインクエストを進めていたら、何か唐突に論争バトルとか言う訳の分からない茶番が始まって、その最中に主人公が考えてる事を思考メッセージで伝えて来て、唐突に”操られている”とか、心の中でいきなり語りだした。
このゲームの主人公はどうやらプレイヤーに操られている事を実感しながら冒険している設定らしい。
しかもその事に対して何の説明や言及が無いまま、ストーリーが進行している。
ゲームのキャラがプレイヤーとコミュニケーションを取ってくるジャンルとかもあるにはあるけど、キモい人面魚の育成ゲームって訳でもないし、そもそもRPGにそんな要素が必要なのだろうか?
いや、それにしたってゲームの根幹的なシステムなんだし普通は最初に何かしら説明とかはあるはずでしょ? 最初に遊んでた弟も何か変な主人公だとは言ってたけど、特にそんな説明はなかったみたいだし、細かい設定に対していちいち説明も多いのに、何で一番重要そうなシステムの説明がそのままスルーされているの?
そう思いつつも、それでも奇抜な設定なんだと受け入れて楽しみながら遊んでいたのだが、この主人公は私が"女"であり、しかも"年下の少女"だと特定して語り掛けて来たのだ。
私も来年には15才になるし、そんなに年齢設定の変わらない主人公に少女とか呼ばれるのに少し抵抗感もあるんだけど……
それは取り敢えず置いといて、これはどう考えてもおかしい。
まるで主人公の背後を追従しながら私の姿を映している画面でもあるかの様に、背後を振り向きこちらを観ながら、知り合いか友人、もしくは相棒? にでも話し掛ける感じで、主人公のピヨヒコは思考を念じて語り掛けてきたのだ。
しかもお風呂イベントでは、おっきしたモノを自信満々に見せ付けてきて、それに対して戸惑っていたら『そんなにジロジロと覗くなよ、エッチな少女だな、でもお年頃なんだしそう言うのに興味はあるよな、俺もその気持ちは良く分かる』などとメッセージで伝えてきて、まるでこちらの表情や感情すら認識してるかの様に、この主人公は言い放った。
「はぁ!? そんな粗末なモノ、私だって好き好んで見た訳じゃないわよ!!」
そう思わずゲームのキャラに対して、こちらも本気で返事をしてしまうくらい、自然な感じで対話が成立していて困惑した。
流石に直接ボイス付きで話し掛けられてはいないけど、何なのこのゲームは?
ゲームなら声を当てる声優さんが居るはずだし、もしそれでこちらの様子を認識して喋り掛けて来てたら、それはもはやゲームの域を越えている気がする。
もしかしたら声優なんて存在しないで、ゲームのキャラクターが自分で思考して話してたりして? そう感じるくらい自然に仲間同士で質問や無駄話、雑談とかもそれこそマップの移動中や、戦闘中にも関わらず始まるから驚いた。
それに声に関してはもう1つ違和感がある。
それは主人公の名前をプレイヤーが任意で決めたにも関わらず、それに対応してちゃんとボイス付きで名前を呼んでいるのだ。
あまりにも自然な感じだったので、普通に気付かずスルーしてたけど、それってどう考えても変でしょ!?
ゲームによっては人工ボイスで、入力した名前を呼ぶ場合もあるにはあるけど、仲間のネムに至っては元の名前を弄って”ピヨピコ”と愛称で呼んでいたし。
ネームドカードのプロフィールにまで反映されていたから違和感は感じていた。
ここまで遊んだ感じだと、本当に人が喋っている様にしか聞こえなかったけど、それも踏まえるとアフレコじゃあり得ないような会話も何気に多いのだ。
そう言えばマルクスもピヨピコとか呼んで煽ってたし、それにその蔑称に対して明らかに主人公が不満に感じているような描写もあった気がする。
もしかして勝手に変な名前を付けられて、内心では憤慨してたりもするのか?
最近はナビゲーションシステムとか、人工知能も飛躍的に進化してボイスも実際の人の声と変わらないくらい精巧だったりはするし、人工AIが歌った曲も人気があり数も多いけど、このゲームにもそんなシステムを搭載しているのだろうか?
一時期ネットやテレビで【歌姫】とも称賛された正体不明の歌い手が、実は人工ボイスを搭載した高性能AIで、世間を騒がせたりとかもした。
流石に歌詞や楽曲を考えた人は他に居たようだけど、声の調整はそのAIが自分でその曲調に合わせて思考して歌っているらしい。
声の質もちゃんと個性があって、そのAIの声だとハッキリ分かるくらい印象的で、しかもどんな音域でも出せて、どんな曲のテンポにも問題なく合わせられて、更には息継ぎまでも再現されていた。
私もネットやテレビで何度も聞いた事はあるけど、違和感もなく自然な感じで、スゴく綺麗な歌声だった。
最初はネットから徐々に話題になって、謎の歌姫と人気が爆発して絶賛された。その歌声はまるで本当に"魂"があるかのように人々を感動させて、ファンを集め、世界的に人気になったけど、実は高性能AIが歌っていると正体が明かされた後は賛否両論あって、更に話題になりつつも炎上とかもしたらしい。
それでも結果的には認められて、今ではその歌姫以外の人工知能の歌い手とかも次々と発表されて【AIドール】シリーズなどとも呼ばれ、まるで本物のアイドル扱いなのだが、その人工AI達はどんな気持ちで歌ってるんだろう。
ただプログラムに従ってるだけなのかな? それとも自分で思考して何かを想い感情を込めて歌っているのだろうか?
しかも歌だけじゃなくて最近はトーク番組とかにも専用のアバターで出演して、流暢な会話の受け応えをしながら、本当に生きているかのように笑ったりもしていたので驚いた。いや、あれ絶対に中に人が居るだろ、と疑ってはいるのだが。
更にはAIドール及び人工知能の人権を認めさせようと活動する団体とかも居るらしいのだが、正直そこまで興味はないので詳しくは知らない。
このゲームのキャラもそれと同じくらい自然な感じで会話してるから、もしそのレベルの技術がゲームに組み込まれているとしたら、本当に声優さんなんて居ない可能性もありそうだけど。
し、しかもイベントによっては、あんな欲情的なエッチな声まで……
「ゴホン、話が脱線したけど、その『ワンダークエスト』ってゲームは、とにかく謎が多くて不思議で、変なゲームって事なのよ!」
「ふーん、何か面白そうだねー」
「いや、私の今の説明を聞いてその感想なの!?」
同じ中学の親友にその話を伝えた。一時期は離れ離れだったけど幼い頃から面識があって離れてた期間もアプリやオンラインゲームを通じて交流している関係で、今もネットを繋いでお互いの顔を見ながら通話中だ。
名前は翠ちゃん。私は信用してるし、おっとりほんわかしたマイペースな性格なので接していると何処か癒される。
ゲームの趣味や好みも合うので、お互い気兼ねなく色々と話せる相手だ。
「え、だってゲームのキャラと対話しながら遊べるんでしょ? 一緒に冒険してる感じがして楽しそうじゃない」
「うーん、確かに楽しいけど、見られながら遊ぶって嫌じゃない?」
「ゲームのキャラなんだし別に気にしなくても良いとは思うけどな、それに観てるのはお互い様なんだし、おあいこでしょ?」
「それはそうだけど、いや、そもそも相手がゲームのキャラって時点で色々と変なんだけど、それにどうやってこっちを認識してるのかもよく分からないし」
「普通に考えたら桜ちゃんが言ってたようにゲーム機のカメラとか?」
「その可能性はあるけど、設定してあるアバターとかのプライバシーフィルターも関係なくこっちの姿を観察してるんだよね、それで何か気味が悪くて」
「桜ちゃんの設定アバター可愛いよね、実況動画とかはもう上げないの?」
「あ、あれはパ、父親の影響でちょっと興味本意で投稿した感じだし、恥ずかしいからもうやらないよ、それに私は喋りもそんなに達者じゃないもん」
「父娘の親子コラボ実況とか面白かったのになぁ」
「あれは私の黒歴史だから掘り返すのは止めて」
ゲーム実況も今では更に進化して気軽にゲーム内で【仮想アバター】を作成して素顔を隠しながらリアルタイムで生配信も出来るようになり、専用の動画サイトはゲーム実況で溢れかえっている。
ゲーム機内部のカメラを通じてこちらの動きや表情なども読み取り、それを設定したアバターで見せたり、そのままアバターの姿で集まってフレンドルームを建てて雑談したり、フレンド同士で一緒にゲームを遊んだりも出来るのだ。
リアルの私生活の背景も【プライバシーフィルター】で非表示にしたり、自分で設定したハウスを表示する事も出来るし、それに声もある程度は変えられるし喋りが苦手な人は、翻訳機能でテキストチャット表示も出来るので割と気楽に遊べる。
パーツを組み合わせるだけで、自分の好きな感じに仮想アバターをカスタマイズして、その人の個性がそのまま反映される。
「翠ちゃんのアバターもデザインはカッコいいじゃん、それに男性アバターだから声も変えて性別も隠してるし、何気に警戒心とか強いよね」
「ふっふっふっ、ネットは危険がいっぱいだから用心は大事なのです」
「まあ私も動物がベースだから性別は一応隠してるけどね」
「でも桜ちゃん声はそのままだから女の子ってバレバレだよね、それにお父さんの影響もあってゲーム界隈だと何気に人気者じゃない?」
「それに関しては気にしない様にしてるけどね、変なメールとか来ても無視だし」
「流石は桜ちゃん、鋼のメンタルだね」
「そのポジティブ思考を持ってしてもこのゲームは何か不気味に感じるんだよ」
「別に誰かに強要されてる訳じゃないし桜ちゃんが無理だと感じるなら、そのままゲームを止めるのもありだとは思うけどね、話を聞いた感じだとまだストーリーも序盤みたいだし、もし辞めるなら私が代わりに引き継いでも良いよ?」
「うーん、確かにそうなんだけど、それだと何か負けた気がすると言うか……てか然りげ無く引き継ぎの交渉して来たし、まだ悩んでるし元々は叔父さんから譲って貰ったやつだから又貸しっぽくなるし流石にあげないよ」
「桜ちゃんゲームはやり込み派だからね、ランキング自慢とかもしてたし」
「良いじゃんそのくらい、達成感を共感して欲しかったんだもん、それにこの前のイベントでは活躍もしたんだし、もっと私を褒めろー」
「はいはい、えらいえらい♪」
実際ゲームの方もこの数年でかなり進化している。
バーチャルリアリティーの技術も躍進したから、今ではバーチャルリアリティの世界を体験出来る専用のゲーム機とかも開発されて、色々と面白い体感系のゲームとかも出てたりする。
自分で設定したキャラクターになりきって世界中の対戦相手と戦える格闘ゲームなどもあり、ランキング争いが白熱していて、プレイ動画とかも含めて人気だ。
もちろんRPGもあって、実際に身体を動かす感覚でファンタジーの世界を体験しながら冒険して、魔物と戦いクエストを攻略するみたいなゲームもあったりする。
両親の影響もあり私もそのゲームを遊んではいるけど、ゲームを遊んでいる間は身体が無防備な状態になるからイマイチ慣れなくて、私はそこまでハマってはいない。それに神経を使うから普通のゲームよりも精神的にも何か疲れるし。
仮想と現実がごっちゃになるとかで世間では問題視もされたけど、今では学校の授業の教材や職業訓練、ネット関連の仕事などでも活用されて、何だかんだ恩恵も色々あるので【バーチャルリアルダイブオンライン】のシステムはゲームに限らずそれなりに普及して来てはいる。
そんなご時世だから技術的には不可能ではないかもしれないけど、その最先端のゲームですら基本的にはプレイヤー同士の会話で成り立ってるから、NPCがあそこまで流暢にリアルな感じで喋ったりはしなかった。
そんなこんなで翠ちゃんやゲームのフレンドさん、気が向いた時には弟のとしをとも色々なゲームを遊びつつ、合間を見てワンダークエストを遊んでいた感じだ。
でもお風呂のイベントでは流石に不気味にも感じたし、内心かなり怖かったので記憶を封印してこのゲームを暫く止めていたのだが、なんだかんだ既に三ヶ月以上はそのまま放置している状態だったりする。
その間に学校のテスト期間や、部活などもあり色々と忙しかったし、他に遊んでいるゲームの大型アプデや、期間限定イベントとかも重なり、そっちに専念してたらそのまま存在をすっかり忘れていた。
このままワンダークエストを辞めようかとも考えたけど、何となく気にはなっていたので、友人の翠ちゃんに思い出したかの様に相談した感じだ。
「……それじゃ色々と話を聞いてくれてありがとね」
「大丈夫だよー、こっちのゲームに参加する時は気楽に声を掛けてね、桜ちゃんが居ると心強いから他のギルメンさん達も何人か一緒に遊びたがっていたし、夜には雑談部屋も建ってるから、気が向いたらお話とかもしよ」
「うーん、雑談部屋か、自分の父親が同じギルドに居るからぶっちゃけ少し抵抗感があるんだけど、まあイベントに合わせて、ちょくちょくそっちにも顔を出すとは思うから、その時はよろしくね」
「了解だよ、またねー♪」
季節は春を過ぎ、梅雨が明けて今は夏休み。
放置していた合間に、このワンダークエストの事もちょっと調べてみた。
攻略サイトとか総評でネタバレするのが嫌なので、普段はあまりネット検索などはしないのだが、としをが言っていた通り、検索してもそれらしい情報が出て来なかったので、少なくとも正式に販売されているゲームではないようだ。
まあ内容的にも性的でアウトな表現も含まれてたのでそうだとは思ってたけど。
ゲームを譲ってくれた叔父さんなら詳しい事情を知ってそうだが、滅多に訪ねては来ないし連絡先も知らない。
それに問い詰めて多分もすっ惚けられる気がする。
叔父さんはママの弟なんだけど、ゲームに関わる仕事をしてるらしいから、もしかしたら勤めている会社で作っている、未発表の新作のゲームとかの可能性もあるのかな? いや、でもそれなら弟が駄々を捏ねて欲しがったからって譲らないとは思うけど、取り敢えずワゴンセールの中古で買ったと言っていたのは嘘だろう。
それにママも叔父さんと同じく、ゲーム関連のプログラムの仕事をしてるので、それで開発中のゲームのサンプルとかを持って来て、それを弟に見つかり強奪された感じなのかも? と言う事は元々は私の両親に”テストプレイヤー”として遊んで貰う予定だったとか? その可能性もありそうではあるけど……
でも一応ちゃんとしたパッケージも付いてたし、既に完成品のゲームなら事前に開発情報とかネットで検索すれば少しは出るんじゃないだろうか?
ママに聞けば何か知っている可能性はありそうだけど、変なイベントとか内容を伝えたら、最悪このゲームを没収されそうだから少し迷ってる。
それに既に三ヶ月も放置しているけど、両親とも特に何も言っては来ないし。
まあ私の推測でしかないから、本当に叔父が偶然セールで買った中古ゲームが、たまたま謎仕様だった可能性もあるにはあるけど。
いや、そんな世間で認定されてない中古ゲーム、何処で売ってるってんだよ。
もし事情を知りつつ黙認してるならこのまま遊んでも問題はないんだろうけど、こんな年齢規制すら配慮していないゲームを、まだ中学生の私が遊んだら駄目とか言われる可能性の方が高そうだし、出来たらこのまま内緒にはしておきたい。
不可思議なゲームシステムだが面白いとは思うし、存在を忘れて暫く放置してたけど、ストーリーの続きも気になるから、また遊びたいって気持ちはある。
それに翠ちゃんも『普段は即決する性格なのに悩んでるって事は、そのゲームをクリアしたい気持ちもあるって事でしょ?』と、背中を押す言葉も掛けてくれた。
実は再開する切っ掛けが欲しくて相談した節もあったから素直に嬉しかった。
何か引き継ぐ提案もされたけど、きっと冗談だろう……冗談だよね?
主人公もあんなんだけど悪人ではないし別に嫌いではない。
いや、でも私の事を蔑ろにして無視してるのはちょっとムカつくけど。
まあ頻繁に背後を振り向いて思考メッセージで語りかけられても困惑するから、コミニケーションを取れるとしても、今くらいの距離感が良さそうではあるかな。
「はぁ、読み終わっちゃた、面白かった」
と言う訳で久し振りに続きを遊ぼうと思っていたんだけど、残念ながら今は弟が別のゲームを遊んでる最中だったので、漫画を読みつつ時間を潰していた。
「オレはまだ読んで無いからネタバレは禁止なん」
「だったら速くセーブしてゲームを止めて交代してよ」
「やだよ、それに今はオンライン繋いで遊んでる途中だし」
「まあいいけど、夜になったらゲーム機を借りにくるからそのつもりでね」
「ん、わかった」
「それじゃ私は取り敢えず自分の部屋に戻るとするわ」
漫画も読み終わったので弟のとしをにそう伝えて子供部屋を後にする。
夏休み中なので話し合いで個々で遊ぶ時間帯を決めて、ゲーム機本体を貸し借りする取り決めをしたので、夜になったら自室でゆっくり遊ぶ予定だ。
それにその方が私も安心して遊ぶ事が出来るしな。
まだ小学生の弟には刺激が強い内容も含まれていたのでワンダークエストは私の部屋で預かる事にした。
セーブデータが1枠しかなかったのも幸いして弟も渋々ながらそれを了承した。
1つのハード本体を貸し借りしながら遊ぶのは少し面倒だけど、私の自室は元々は父親の部屋だったので、それなりにゲームを遊ぶ環境は整っている。
因みに私のパパ……ゲフン、父親の方は、ガチのゲーマーだったりする。
しかもジャンルを問わずに色々なゲームを遊んでいる悪食プレイヤーだ。
新旧問わず据え置きゲームから携帯ゲーム、PCのゲームに、更にはクソゲーにまで手を出している。もちろん最新のリアルダイブのゲームも遊んでいる。
流石にソシャゲまで全て網羅はしてないとは思うけど、それでもゲームに人生を捧げていると言っても良いくらい、どっぷりと頭から足の爪先まで”ゲームの沼”に浸かっている変人なのだ。
ワンダークエストを遊ぶ為のゲーム機本体も本当は父親のがもう一台あるけど、仕事で使っているから貸してくれとは流石に言いづらい。職業を敢えて言うなら、ゲーム配信者と言うか、ゲーム廃人者と言うか……本人はプロゲーマーを自称しているけど、実際そのくらいプレイスキルを持っている。
若い頃から動画サイトにゲームの実況動画や、ノーミス縛りなどのプレイ動画など上げていて、そこそこ人気もありその収益でそこそこ稼いでもいるのだが、とは言え別に尊敬とかはしていない。
ママには内緒で、深夜に隠れてエロゲーとかも遊んでるのを私は知っている。
私がまだ小学生で、エロい事など知りもしなかった頃に、弟と隠れんぼをしていて父の部屋のベットの下に隠れたら、何か色々と見てはいけないものを発見した。
最初はこれが何なのかよく分からなかったけど、ネットで色々と検索するようになってからは、そういうものもあるんだと子供ながらに少し興味を持った。
その後、父親が深夜に電気を消した部屋でヘッドホンを着けて、エロゲーを遊んでるのを目撃した。
まだ小学生だった当時はめっちゃ楽しそうにエロゲーを遊んでいるパパのその姿を見て、結構なトラウマになったものだ。
しかし強かな私はそれをママに黙っている代わりに父の部屋を乗っ取り、中学になったのと同時に自室を手に入れた。別に脅した訳ではない、ただの交渉だ。
深夜に父のベットの下に隠れて覗き見してたのだが、何か突然ゴソゴソしだしたから流石に私も焦ったけど、あの場をよく切り抜けたと当時の自分を褒めたい。
てかママもその辺の理解はあると思うから、別に隠れてコソコソしなければ良いとも思ったけど、何か弱みを見せたくないとか訳の分からない事を言っていた。
まあリアルで不倫とかしてないなら、別に私としては問題ないから咎めたりはしてないけど。
これでもそういうエッチな事にはそれなりに理解はあるつもりだ。
しかしあのバレた時の慌てふためく父親のみっともない姿は、子供の私からしても見ていて情けなかった……いや、あまりオープン過ぎるのも困るけど。
そんな事もあり、父親の仕事とかはリアルの知り合いにはなるべく知られたくないのだが、翠ちゃんや一部のゲーマー仲間には周知の事柄なのだ。
それにコラボ実況以外にも父親も交えて一緒にネットでゲームを遊んだ事とかもあるし、と言うか今も遊んでるゲームで同じギルドに所属してるから、私の父親と翠ちゃんがフレンド同士だったりもするので、少し抵抗感があったりはする。
まあオンラインゲームは老若男女問わず気軽に遊べて、性格やプレイスタイルも十人十色だから面白かったりするんだけどね。別人になりきる事だって出来るし。
それに親としての義務はちゃんと果たしているし別に嫌ってはいない。
と言うか、どっちかと言えば仲は良い方だとは思うけど。
ゲームで接してる時はお互いに家族よりも友達の感覚の方が強い気がする。
ママの方はしっかりした性格なので、ズボラなパパの生活環境を注意しつつ支えている感じなのだが、なんだかんだで両親の仲も良いから家庭環境は悪くない。
その恩恵もあって私も幼い頃から、昔に流行ったレトロな王道RPGとかも実際に遊んだ事とかがある感じだ。なので色々なゲームの知識もそれなりにある。
ともあれ私の周りの人間関係はこんな感じなのだが、何か説明臭くなったけど、登場人物のバックグラウンドは重要だと、誰かが言っていたので仕方ないのだ。
そんな訳でだらだらと漫画を読んだり、宿題をしながら夏休みの1日を過ごしていたけど夜になり、ようやくゲームの続きを遊ぶ気になったので自室で起動する。
◇
「よーし、久し振りにガッツリ遊ぶかなー」
えっと確か、お風呂イベントが終わった後にセーブしたから、後は個室で寝れば次の日になると思うけど、その前にお城で探索出来そうな場所を調べてみるかな。
もしかしたら昼間だと入れなかった場所に侵入とか出来るかもしれないし、何かイベントが発生する可能性もありそうだし。
それにピヨヒコ1人の状態なら仲間のアルマ達の好感度を下げずに、アイテムを漁ったりも出来そうだしな。
あ、でもお城のアイテムは弟が既に大体は調べたのかな?
そんな事を考えながらゲーム画面を見て観ると、そこには……
デデドン!
フルチンの主人公が、不満そうにこちらを睨んでいた。
「!?」
ああ、そう言えばそうだった。
確かお風呂から上がって装備も着ないでそのまま放置してたんだった。
まさかそのまま三ヶ月以上も投げっぱなしにするとは思ってなかったけど、まあ過ぎた事だし仕方ないか、てかいきなりそんな粗末なモノをまた見せるな。
油断してたからビックリしたわ! 取り敢えず脱衣場で脱いだ装備を着ないと。
そう考えて主人公を操作しようと思ったのだが……
ゲームの中からこちらに訴えてくる声が聞こえた。
《おい、いくら何でも目の前に居るのに放置するなよな!!》
「にゃ!?」
ふぇ!? なに? 何か急に喋り掛けてきたんだけど、なにこれ? えぇ!?
色々と仮定はしてたけど、突然の事に焦り戸惑い、心臓の鼓動が高鳴る。
プレイヤーの桜子はピヨヒコのその台詞を聞いて”混乱状態”に陥った。
◇
この物語はコロナ禍が終息した世界線の少し近未来のお話。
桜子のモチベーションが回復したので復帰しましたが投稿
は不定期にはなるので気長に読んでもらえたら助かります。
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