幕間 RPGの世界で目覚めたが、どうやら我の役割は魔王らしい。
魔王サイドの前日譚になります。
この世界は闇に覆われている。全部自分が原因なのだが。
「はぁ、どうしてこんな事になったんだろうか……」
ここは天空に悠々と浮かぶ、浮遊島に聳え立つ”魔王城”の執務室。
【魔王タナトス】は自身の今の置かれている状況を整理していた。
どうやらここは”ワンダークエスト”と呼ばれる”ゲーム”の世界らしい。
ジャンルはロールプレイングゲーム、RPGとも称されているようだ。
我はそのゲームに登場するキャラクターの一人だ。
そしてどうやら我の役割は【魔王】と呼ばれる存在なのだ。
「いや、ゲームの世界とか言われても全く理解が出来ないのだが……」
そしてその”使命”は魔族の王としてこの世界に君臨し、その力で魔物を使役し、この大地に悪意を蔓延らせ、そこに住む人々を恐怖のどん底に陥れ、土地を奪い、蹂躙して、そして世界を征服する。
……のだが、それは表向きの目的らしい。
本当の使命は【勇者】と呼ばれるこのゲームの【主人公】をこの魔王城の玉座でひたすら待ち続け、迎え討ち、そして最終的にはその勇者に倒されて”消滅”する。
それが魔王として我に課せられた使命らしい。
「いや納得できるかーい!!」
ビシッ!!
魔王タナトスは独りノリツッコミをして憤慨した。
誰の意思によってこの世界が創られたのかは分からないが、こんな不条理な事があるだろうか。
我は傀儡ではない、ちゃんと考えて行動し、自分の意思を持っている。
「こんな理不尽な使命など知った事かぁ!!」
ビシッ、ビシッ! シュッシュッシュッ
しかもそれだけではない。
我に与えられた力を駆使して、魔力を媒体に”魔物”と呼ばれる存在を生み出し、使役して、更には勇者の強さに合わせて適度なバランスに調整して、各地に配置し差し向け、勇者とその仲間たちの成長を促す。
そして更にもう1つの与えられた力で、勇者のパーティーが訪れるダンジョンを生成して、同じく適度なバランスに調整して管理し、やってきた勇者一向を生かさず殺さず程よい感じで迎えなくてはならないらしい。
とは言えもちろん緊張感は必要だ。時には罠や謎解きなどの大掛かりな仕掛けも施して、ダンジョン探索が単調にならないよう創意工夫する。
しかし罠だらけのダンジョンなど誰も挑みたくはないだろう。そこでダンジョン特産の貴重なアイテムを”宝箱”に詰め込み、然りげ無く配置してパーティーの装備の強化にも協力しないといけない。
そしてそんな飴と鞭を使い分け”試練”を与えつつも、最終的にはこちらが倒されなければならないのだ……
「いや知らんがな、なーんで自分を討伐しに来る相手をこちらが手厚く支援しないといかんのだぁ!!」
シュッシュッシュッ、ブォン!
「……ハァ、ハァ」
そうは思いつつも、魔王として与えられた使命を放棄する事は出来ないようで、自分の意思では断固拒否したいのだが、何故か抗えない。
それが自分の”存在意義”ならば、例え自身の”消滅”が最終的な目的だとしても、それに従うしかないのだ。
この世界は魔王に厳しい。
既に舞台は整っている。この世界は程よい感じに侵攻され、闇に覆われている。
この世界で生活する人々はこの魔王と呼ばれる我に畏怖し恐怖し、それでも抗いながら暮らしている。
それがまた【モブ】と呼ばれる者達の、この世界においての”役割”なのだ。
世間ではその与えられた使命を"神のお告げ"だの【天啓】などとも呼び、崇めている者達すら居るようなのだが、魔王である我ですらその忌々しい【天啓の楔】には抗えないのだ。
我が使役する魔物や、我に服従し付き従う同胞の”魔族”以外の【勇者サイド】と称される人族や、他の種族に関しては我とて管轄外ではあるのだが、最終的な目標は皆一緒で、主人公である勇者を育て、導き、このゲームを”クリア”する事だ。
その為に皆が各々に課せられた使命に従い、与えられた役目を果たしている。
ただ、いくつか問題がある。
その1つがこのゲームがまだ”準備期間”だと言う事だ。
話によると、どうやら勇者サイドの地盤がまだ整っていないらしい。
なので今はまだお披露目は出来ないとか聞かされた。
「いや、お披露目ってなんじゃい!?」
魔王タナトスは困惑した。
我の方はもう何年も前から自分の使命を理解してそれを果たす為に色々と準備をしてきたのにも関わらず、勇者の方は”主人公”として目覚めていないらしい。
どうやら我がこの世界に”復活”して、魔王としての使命を与えられたのと同時にその勇者がこの世界に産まれ落ちたらしいのだが……
復活とか言われても我にその記憶はないのだが。
聞いた話によると過去にも我は一度勇者と対峙して敗れて、長い間この魔王城の深部に”封印”されていたとか。つまりはこの茶番のような”ゲーム”が過去にも既に行われたと言う事なのだろうか?
我自身はその封印が解かれてこの世界で目覚め、魔王と言う誰もやりたがらないようなとんでもない使命を与えられて憤慨しているのだが、過去に封印された魔王が我自身なのか、それとも別の”何者”なのかは分からない。
封印されていたのは事実らしいから、過去の魔王も我自身なのかもしれないが、過去は過去だ、思い出せない事を気にしたってしょうがない。
だってその当時の記憶なんて、我にはこれっぽっちもないんじゃもん!
まあ既に300年以上も前の話らしいのだが、目覚めてから時間はあったので、この魔王城や、大陸の各所にある遺跡などに残された遺産や文献などの情報を集め過去に何があったか調べてそれなりには理解したが、それはさほど重要ではない。
問題なのは今、我が目覚めてから既に10年以上が過ぎているという事だ。
このゲームの物語を紡ぐには、勇者を含めた登場人物それぞれに関係性が必要だとかバックグラウンドは重要だとか、そんな話も何度か聞かされたが……
「いや、そんなのは向こうの都合であって我には関係ないんじゃないか?」
既に”天啓”により勇者の使命を授けられた人物は特定している。
その生い立ちや家族構成、人間関係など、それらの情報も我に忠実な魔族の幹部を送り込み、ある程度は把握している。
自身の使命を果たす為にも情報収集は大事だからな。
とは言えまだ幼子の勇者にこちらから出来る事など殆どない。
それにこの”ゲーム”はまだ始まってすらいないと念押しされて、現状だと我から手出しが出来ない状態なのだ。前に一度やらかしてるからコチラも強くは言えず、勇者がこのゲームの主人公として目覚めるのを今か今かと待ち焦がれているのだが未だその時は来ていない。
噂によると勇者が16歳の誕生日を迎えたら、このクソッタレな物語も本格的に動き出すらしいのだが、それでもまだ三年以上も先の話だ。
いや、勇者が主人公として目覚めたら最終的には我が消滅する結末なんだから、本音を言えばそのままずっと始まらなくても良いのだが、我に与えられた使命が、天啓の楔が、それを許さないのだ。
「ズズー……ふぅ」
それに他にも何やら問題があるらしい。
それは【プレイヤー】と呼ばれる存在だ。
この世界はゲームである。ならばそれを遊ぶ者が居るのだが、それがプレイヤーと呼ばれているらしい。
そのプレイヤーがこのゲームの主人公である勇者をこの世界の外から操作して、クエストを進め、仲間を集めて共に成長し、最終的には魔王であるこの我を倒す。
それがこの世界の真理なのだ。
「……ハァ」
そんな説明をされたのだが、納得出来ないし理解が追い付かない。
そもそも外の世界ってなんじゃい? この世界がゲームだとか言われても実感も湧かないし訳が分からん、そんなの”はい”そうですかと素直に受け入れられるか。
それに操作してって事は、このゲームの主人公である勇者は自分の意志とは関係なくそのプレイヤーとやらに操られるって事になるのか? もしそうなら我の使命も大概じゃが、勇者は勇者でかなり不憫な境遇だとは思うのじゃが……全く、何でこんな事態になっているのか。
「あ、魔王様、またサボってるんですか?」
魔王タナトスが深いため息を吐き、苦悩していると声を掛けられた。
声を掛けられた方を見下ろして見てみると、そこにはファンタジーな世界観にはそぐわない、近未来的な雰囲気の格好をした女性が立っていた。
何で我がこんな事を知ってるかと言えば、全てこの女に教えられたからだ。
名前は【マキナ】と言うらしく、この世界で”管理者”と呼ばれる存在らしい。
我が魔王として目覚めた時に目の前に立っていて、この世界の理や、魔王としての使命や心得などを聞いてもいないのに色々と教えてきた。
どういう存在なのか詳しくは知らんが、どうやらこの世界を管理して、調整し、経過を観測するのが目的なようで、他にも似たような”役割”を担った仲間も何人か居るらしい。
他の管理者には会ったことはないのだが、各々に成すべき役目があって、魔王として君臨する我の”サポート”をするのが主に彼女に与えられた”使命”だそうだ。
まだ主人公として勇者は目覚めてはいないが、魔物の生成やバランス調整、各地のダンジョンの管理、それに我が魔王軍に抵抗する敵国の冒険者どもの相手などもしなくてはいけないので、シナリオの進行に関わらず、我は何かと忙しいのだ。
そして勇者が主人公として目覚めた後も、その動向を把握しつつも成長を促し、最終的にこの魔王城まで辿り着いた際には【ラスボス】として手厚く迎え討つ。
もちろん手加減などはしない、闘う以上は我かて全力を持って与えられた使命を果たすつもりだ。そうでなくてはここまで苦難の試練を乗り越えて来た勇者一向もそのプレイヤーとやらも面白くはないじゃろうしな。
その為にも力を与えた配下を適所に配置し、この大陸の勢力図を調整している。
細かい判断はその配下達に委ねてはいるし、勇者サイドの冒険者の中にも一筋縄ではいかない連中も居るので時には思わぬ事態も起きるのだが、流石にそれら全てを把握して拮抗するように調整する事など、我とて出来るはずもない。
それらの補助をしてくれるのが、この自称管理人のマキナなのだ。
「……チッ」
「あ、また舌打ちなんかして、感じ悪いですよ魔王様」
「ええぃ、五月蝿い、既に今日の魔物の生成に出現地域の指定の業務は済ませて、部下に指示を出したわ、今は休憩中じゃい、おやつくらいゆっくり食べさせろ」
「大型ダンジョンの管理がまだ残ってるじゃないですか、あまり長く放置してると思わぬ事態が起きて大変な事になりますよ、ダンジョンの生成に管理は基本的には魔王様の仕事なんですから、ちゃんとしてくださいね」
「モグモグ、全部のダンジョンの管理など出来んわ、魔物が増えると勝手に小型のダンジョンまで生成されるし、そんなの我の知った事か!」
「またそんな事を言って、職務怠慢じゃないですか」
「ぐぬぬ、目の行き届かない場所はちゃんと我に従う幹部と部下の魔族に一任しておるわい、そもそも数が多すぎるんじゃい」
「大型ダンジョンなんてたかだか13箇所くらいじゃないですか、それにこの前なんて魔王様が管轄している終盤のダンジョンでスライムが増殖し過ぎて大変だったんですから、それに最近は小型のダンジョンでも魔物が溢れてスタンビードが起きているって報告もあるんですよ」
「そ、そんなの知らんわ、てか13箇所って少なくないからな? 大体まだ勇者も主人公として目覚めてないのにダンジョンばかり構ってたって意味ないわ、しかも折角作ったダンジョンも勝手に冒険者共に荒らされる始末だし、我が知恵を絞って考えた仕掛けや罠も勝手に解かれて我とて憤慨しとるんじゃい! 挙句の果てには設置した宝箱まで持っていかれる始末なんじゃぞ!!」
「それはまあ、冒険者達にも生活は有りますからね、それも踏まえて管理するのが魔王様のお仕事なんですから、しっかりしてくれないと困ります」
「そんな雑多な冒険者達の生活や生死までイチイチ気にしてられるか、我がせっせと生み出した魔物達を素材や食材として狩られてるだけでも忌々しいと言うのに、魔物の供給を止めないだけでも寧ろ感謝して欲しいわ!」
「魔王様だってその恩恵はあるでしょう、今食べてるおやつのケーキや紅茶だって元々は敵対する王国がレシピを考案したものなんですから、食事のバリエーションだってこの数年で大分充実したじゃないですか」
「た、確かにそれはそうじゃが、それだって我がそうなる様に魔物の特性を考えて供給しとるからじゃし、そのくらいの恩恵は当然じゃろが、それにこれっぽっちのお菓子じゃ全然足りんわ」
「魔王様はこのゲームのラスボスですし、身体もそれなりに大きいですからね」
「うーむ、図体がデカくても色々と不便なんだが、魔王としての威厳は確かに必要じゃしな、天啓の楔の制約で、我自身は魔王城から殆ど出られないのがツラいが」
「その為に私が色々とサポートしてるんですよ、魔王城から自由気ままに魔王様が出歩いたら世界が大変な事になるんですから、ワガママを言ったら駄目ですよ」
「いや流石にそんな正体を明かして敵国にいきなり攻め込んだりはしないが、天啓の制約が色々とキツくないか? このままじゃ運動不足になりそうなんじゃが」
「浮遊島の範囲内なら出歩いても良いですから、散歩くらいは可能ですよ」
「既に朝の日課にしとるわ、それだってずっと同じ風景だと飽きてもくるわい」
「知ってますよ、まあ退屈なのは私も同意なんですが、それでも魔族を束ねる王として恥じない行動を心掛けて下さいよ、偉大なる魔王様が配下の魔族や下々の者に舐められたら駄目ですからね」
「アヤツ等も一応、天啓の制約で我に忠誠を誓ってはいるが基本的には自由奔放な奴等だからな、何か制約が機能してないのか、我に歯向かったり、従わない魔族も中にはおるし、正直あまり信用は出来ん」
「またそんな事を言って、そんなんだから幹部の方にまで愚痴や陰口を言われるんですよ、勇者パーティーが攻めてくる前に魔族の離反や反旗なんて起きたら、洒落にもなりませんからね?」
「ふん、不満や陰口なんて気にしてたら10年間も魔王なんて役職は務まらんわ、中には魔王の座を狙う不逞の輩まで居たが、そんな逆賊は我の力でねじ伏せて返り討ちじゃし、従わない魔族なんてこの領域から追放じゃい!」
シュッシュッシュッ
魔王タナトスは得意げにシャドウボクシングをした。
「魔物や魔族の人達の配置は任せてますけど、職権濫用じゃないですか」
「いや、だってこの前なんて我の寝首を狙って来た輩までおったからな! 夜襲を仕掛けてくる同胞とか信用できんし、我かて正当防衛で排除するしかないわい!」
「そんな事もありましたね、それだけ魔王様の威厳が低迷してるんですかね」
「全く部下の教育がなっていないな、いや我がそこまで管理出来るか!! それをサポートするのがお主の役目じゃろうが、あ、何で目を逸らしてるんじゃ!?」
「そんな横柄な態度だからまだ準備期間なのに、勝手に魔族の幹部の方が暴走するんじゃないですか、魔王様が丹精込めて生み出した、”我の考えた最強の魔物”とか言って自我自賛していたダークネスドラゴンを連れ出して、部下まで引き連れて
勇者の拠点になるはずだった王国を勝手に襲撃しちゃったんですよ?」
「な、なんでそんな過去の出来事を蒸し返すんじゃい!!」
「だってそのせいで本来なら勇者側の要所になるはずだった王国を壊滅にまで追い込んじゃったんじゃないですか」
「あ、あれは別に我のせいではないぞ!? そもそもそんな指示は出してないし、べリアルの奴が勝手に暴走して勘違いした結果だろうが!」
「それは魔王様がちゃんと情報伝達や管理が出来てない結果じゃないですか、自分の怠慢を部下のせいにしちゃダメですよ」
「ぐぬぅ、言わせておけば、愚痴愚痴と口煩い、暴走したべリアルはちゃんと無限牢獄に処して反省中だからもうあんな手違いは起きんわい、可愛がって育てた最強の黒龍を勇者の父親に倒された挙句、武具の素材にされて我かて怒っておるわい」
「べリアルさん、ちょっと張り切りすぎちゃう傾向がありましたからね、悪い子ではないんですけど、魔王様の為を思っての行動だったとは思うのですが……」
「いや、だってアイツ我の育てたドラゴンを勝手に我が物顔で乗り回してたんよ、魔王軍の脅威を人間共に示すとか唐突に言い出して、背に乗ってまるで竜騎士だとでも言わんばかりに、我かて本当はもっと自由に出歩いてドラゴンとかにも乗ってみたいのにさぁ、事もあろうに我に自慢して見せびらかして来たからねアイツ!」
「ですから魔王様が自由にドラゴンに乗って外に出歩いたら世界が余計に混乱するから駄目ですよ、ちゃんと勇者様をこの魔王城の玉座で待ち続けてくださいね」
「だったら早くその勇者様とやらを主人公として目覚めさせろよ!」
「そっちは私の管轄外なのでどうにもなりませんね、それにベリアルさんの暴走のせいで大幅にシナリオを改変する事にもなったので、私達が文句を言える立場ではないですし」
「それはそうじゃが、全くベリアルの奴め、余計な事をしおってからに……」
「勝手な判断でまだ幼い勇者様を攫おうとして、部下を大勢引き連れてその王国を襲撃した挙句に撃退されて、しかも撤退の間際に勇者サイドのキーパーソンになるはずだった”聖女”である勇者様の母君様を代わりに拐って来ましたからね、流石の私もあの行動は予想出来ませんでしたよ」
「……ぐぬぬ」
「別に魔王様が悪い訳ではないですが、でも聖女様のポジションは元々のシナリオにも密接に関わってましたから、その後の処遇も含めて色々と改変するのは大変でしたからね、聖女様が理解のある人で良かったですよ」
「ゴホン、それは我かて予想外じゃったし先方にも悪いとは思ったが……でもその後のエレノアの件では彼方も余計な事をやらかしてるんだしお互い様じゃろうが」
「エレノアさんに関しては私も予想してなかった展開でしたけど、王国側と繋がりが出来たと思えば個人的には悪くない取り引きでしたけどね、魔石に関しては取り戻して無事に引き継ぐ事も出来ましたし」
「そうか、どのみち我は魔王城から出られないからその辺の事はお主に任せるしかないがの、まあシナリオに関しては管理者達で勝手に決めて好きにやってくれ」
「何か投げやりな言い方ですね、魔王様もラスボスとして君臨する立場なんですからもっとやる気を出してくださいよ」
「だって配下のくせにどいつもこいつも好き勝手に行動し過ぎなんじゃもん、嫌気も差すわ、何が天啓の楔じゃい、それともあれか? あの2人の行動はそれ自体が奴等に与えられた天啓による使命だったとでも言うのか!?」
「……」
「いや、そこで黙られると不安なんじゃが、シナリオ崩壊とか言っといて実はそう言う前提で最初から話が進んでるんじゃないだろうな?」
「……そんなことある訳ないじゃないですかー」
「何か怪しいの、まあじゃが正直ベリアルの暴走がシナリオにあそこまで影響するとは思わなかったが、そもそも魔族や魔物達はこの世界が”ゲーム”だとは知らないから、己の使命に従って勇者を倒す事に専念しておるんじゃろうがな、我が指揮し鼓舞しなくても魔王軍の士気は常にそこそこ高いし」
「もう、軽々しくこの世界がゲームなんて言っちゃだめですよ、その真実は基本的にはこの世界での禁則事項なんですから」
「お主以外に話そうとしても不可思議な強制力で云えないようにはされてるし問題ないじゃろ」
「まあそうなんですけど、取り敢えず定時連絡での話だと勇者サイドの方でも何かしら進展はありそうですが、プレイヤーの問題もあるので今は気長に準備をしつつ待つしかありませんね」
「そうか、そう言えばこんな時間にお主が顔を出すのは珍しい気もするが何か用事だったのか?」
「ああ、そうでした、大変なんですよ」
「大変?」
「その、今も話題に出てたベリアルさんが反省中にも関わらず無限牢獄を脱獄したとの事です」
「はぁ!? いや、でもあの牢を中から打ち破るなんていくら四天魔族のベリアルでも流石に無理じゃろ? 我がずっと封印されていた術式を応用してるんじゃし」
「おそらく誰かの差し金みたいですね、外から牢を開けられた形跡があったので」
「ふーむ、何となく察しは付いたが、それでベリアルの奴は今は何処に居るのだ、捕獲はしたんじゃろうな?」
「それが情報が錯綜してるのですが話によると、傷も癒えたし牢獄から出る許可を下してくれた魔王様に恩義を返す為にも、今度こそはいずれは魔王軍の脅威になりうる勇者を拐い、自分に深傷を負わせた勇者の父親とも再戦するとか意気込んで、更にはそれに同調した魔族や魔物の大軍を引き連れて、現在は勇者が滞在しているグランバニラ王国に進行中だとか……」
「はぁ!? 何をやっとるんじゃ、アイツはぁ!!」
その後、更なるシナリオの変更を余儀なくされたのだが、それはまた別のお話。
伏線回収に伴い少しだけ内容を改修しました。




