第35.5話 おまけ回 アルマとメアリー
ピヨヒコが男湯のサウナで我慢対決をしてた間の女湯の様子になります。
おまけ回なので会話のみの進行です。
脱衣場で服を脱ぎ、湯あみのタオルを巻いて女湯に入る女子3人。
男女はタイル壁で隔てられていて、ピヨヒコは右隣の男湯だ。
画面の少女もこの場には居ない、プレイヤーの知り得ない情報だ。
「キャー♪」
「ほら、ネムちゃん湯船に入る前に体を洗って」
「スゴい、おっきいねー」
「この施設は王族や来客専用ですから大きいですね」
「あれ?」
「どうかしましたか、ネムさん?」
「ピヨピコは~?」
「ふぇ!?」
「この露天風呂は混浴ではないので、勇者様は右隣の男湯の方ですね」
「そうなんだ……」
「え、なんでそんな悲しそうな顔をしてるの……?」
「だって一緒の方が賑やかで楽しいよ?」
「えぇ!? だ、ダメですよそんなの」
「どうして?」
「え、それは、その、とにかくダメなんです!」
「むー」
「アルマさんは裸を見られるのが恥ずかしいので、それで勇者様が配慮して一緒に入らないんですよ、勇者様は優しいお方ですからね」
「ちょっと、メアリー!?」
「そっか、わかったー」
「え、それで納得するの……?」
「ネムさん、取り敢えず体を洗うのでこちらに来てください」
「むー、自分で洗えるよー」
サバー……
「ネムちゃんの翼、白くてとても綺麗ですけど、濡れても大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ、飛ぶのが大変だから濡れてたり雨のときは飛びたくないけど」
わしゃわしゃ……
「翼の先は普通に人族と変わらない手なんですね、本で読んで一応知ってましたけど、私も直接見るのは初めてでした」
「飛ばない時は羽を小さくも出来るよ、それにネムは手先も器用だぞー」
「ハーピアと交流した事は今まで無かったので、そこまで詳しくは知りませんでした、種族特性で歌が得意とか本では読みましたけど」
「踊りとお歌も好きだよ♪」
「この辺だとあまりハーピアは見ないですよね、エルフ族と同じで森を拠点にしている印象はありますけど」
「私もそんなイメージはありますね、そう言えばあの人も歌は上手かったですね、歌詞の内容は酷かったですが……」
「むー、何か目がしみるー」
「あ、ネムちゃん、シャンプーする時は目を閉じないとダメですよ」
バシャバシャ……
「むぅ? あ、メアリー、ありがとー」
「いえ、シャンプーハットも用意しておけば良かったですね、失念してました」
「この新しい石鹸やタオルとかもメアリーが用意してくれたものなんでしょう? 充分に助かりますよ、ありがとうございます」
「いえ、これも私の役目なので、アルマさんが気にする事ではないですよ」
「メアリー嬉しそうー」
「!」
「ふふ、メアリーも今は一緒にお風呂に入るように勇者様からも言われてるんですから、あんまり気を張らないで大きなお風呂を楽しみましょう」
「……わかりました」
「髪は洗ったからもうお風呂に入ってもいい?」
「まだ身体を洗ってないからダメですよ」
「むー……む?」
「どうしたんですかネムちゃん?」
「タオル撒いてたら洗えないから脱ぐよ」
「そ、そうですね、でも洗ったらまた巻いてくださいね」
「えー? 面倒くさいー」
「ネムさん脱衣場でもタオルを巻くの嫌がってましたからね」
「アルマは?」
「え?」
「アルマも身体を洗うならタオル外そうよー」
グイグイー……
「あ、ちょっと、そんなに引っ張らないで、脱げちゃいますから、メアリー、ネムちゃんを止めてください」
「もう、ダメですよー」
「あ、ありがとう、メアリー……」
「ネムさんの言う通りです、恥ずかしがってないで身体を洗う時くらいはちゃんとタオルを脱いでください」
「え、そっち!?」
「そうだそうだ、とりゃー♪」
バサッ、ポロリ
「きゃあ」
「わー、アルマのおっぱい大きくて綺麗ー」
「そうですね、とっても妬ましいです、あ、間違えました、羨ましいです」
「もう、2人とも、そんなにじろじろ見ないでください!」
「恥ずかしいなら泡で隠せば良いじゃないですか」
「あわあわー?」
「あ、その手がありました、ナイスアイデアです」
「冗談のつもりで言ったんですが……まあ良いですけど」
ゴシゴシ、キュッ、キュッ……モコモコ……
「良いにおいだねー」
「この石鹸やシャンプーはククリコさんのお店のですね、泡立ちも良くて高品質ですから、ポーション類も含めてあのお店の商品はお城でも重宝されていますね」
「ククリコ?」
「私の知り合いですよ、ネムちゃんも機会があれば後で紹介しますね」
「ん、わかったー」
「美容関連の商品とかも充実してますよね、健康に良い各種ハーブも売ってますから貴族や貴婦人の間でもあのお店のリピーターは多いですし」
「……そうですね」
「それに男女の夜の営みに使える商品とかも売ってますし、何か"エルフの秘薬"とか言うスゴい効能の非売品もあるとか、噂で聞いた事があります」
「イトナミー?」
「ゲフンゲフン、そ、それより、ネムちゃんは翼もですけどお肌も透き通るように白くてすごく綺麗ですよね、それに髪も薄い金色で何か神秘的ですし、初めて見た時は【天使】みたいにも感じました」
「テンシ?」
「そう言う種族が昔は居たらしいですよ、背中に白い翼が生えて【神の遣い】とも云われていたみたいです」
「ふーん?」
「それと対比する背中に黒い羽を生やした【悪魔】と言う種族も居たようですが、私も古い文献で読んだ知識なので本当かどうかは分かりませんけど、カルマの天秤もこの2種族が起源になってるとは云われてますね」
「お伽噺とかの部類ですよね、私も子供の頃に聞いたことはありますが」
「まあそうですね、他にも【人間】と呼ばれる【人族】とは違う、似た種族も居たようですが、その昔に滅びたとも云われてますね」
「ニンゲン?」
「ええ、太古の昔に同じ種族同士で争いを繰り返し滅びの道を歩んで、神の怒りに触れたとか、それに魔法も使えなかったようです」
「何か方舟が出てくるやつでしたっけ、私も本で読んだ記憶はあります」
「むー、むずかしいのは良くわからないー」
「まあ、ネムちゃんも興味を持ったら調べてみれば良いですよ、お城の図書室には色々と面白いものもありますし、私も知ってる事なら教えますので」
「あ、それなら風の魔法を覚えたいー」
「魔法ですか」
「うん、さっきのブワァァッ……って風がまとうのとかスゴかった」
「使える魔法は個人の適性にもよりますけど、勇者様もまだちゃんと適性は調べてないと言ってたので、後ほど魔導修道院にも寄るとは思いますよ?」
「直ぐには使えないのー?」
「ネムちゃんもその時に一緒に適性を調べれば使える魔法とかは分かりますね」
「適性……わかった、もしネムも風の適性があったらその時は色々おしえてね」
「ええ、私で良ければ、基礎の魔法なら魔導書も手に入りやすいですから」
「メアリーも魔法は使えるの?」
「風の適性は私も一応ありますけど、魔法職ではないので使っても補助的な感じですね、それに使いこなすには専用のタリスマンも必要にはなりますし」
「2人とも風の適性があってズルいー」
「エルフが種族特性で風の魔法が得意なんですけど、ハーピアも風の流れを読んで空を飛ぶ種族なら、おそらく風の適性はありそうですけどね」
「そっか、それならネムも使えるね」
「まあ確定ではないですけど、個人差もあるので」
「むー……む?」
モコモコ……
「アルマ何かモコモコして羊みたい」
「え?」
「綺麗な肌と髪はアルマさんも同じじゃないですか、それを泡で隠す何てもったいないです」
「えぇ?」
ザバー……
「身体も洗ったから先にお風呂に入るね」
「あ、ちゃんとタオルは巻いてくださいね」
「むー、モコモコヒツジのアルマは何か口煩いー」
「な!?」
「わー、アルマが怒った、逃げろー……」
ザバァーン……
「ああ、そんな勢いよく走って、それに湯船で泳いじゃ……」
「ワーイ♪」
バシャバシャバシャ……
「こんなに大きなお風呂はあまり入る機会もありませんからね、はしゃぐのも仕方ないですよ、それにネム"ちゃん"はまだ子供なんですから」
「さっきまで"さん"付けだったのに"ちゃん"付けになっちゃいましたね……」
チャポン……
「むー、ネムは子どもじゃない、もう大人だー」
「そうですね、ネムさんは大人ですから、お風呂ではしゃいで泳いだりしませんよね、子供じゃないんですから、もちろん知ってますよー」
「む?」
「何か言いくるめが"あの人"みたいで少し嫌なんですけど……あ、でもネムちゃんが泳ぐのを止めてしかもタオルまで巻いてくれました、スゴい」
「むー……ブクブク……」
「別に咎めてる訳ではないので、ネムちゃんの自由に楽しんでいいですよ」
「わかった、でももう泳ぐのは止めるねー」
「ネム"さん"は賢くて良い子ですね、流石です」
「えへへー♪」
「本当に、気遣いとかも出来るし、優しい子ですよね、それに比べて私なんて……お菓子を独り占めするような真似をして、意地汚くて卑しくてそれこそ子供みたいに泣きじゃくって……」
ぷにゅ……
「ひゃ!?」
「子供はそんな立派なものは持ってないですよ、それに何時までも落ち込んでたら勇者様にも愛想を尽かされちゃいますよ?」
「それは、嫌ですけど……」
「……」
「……ぐすん」
「はぁ、もう、ほらいつまでもメソメソしないで、ネムさんを見習ってください、お菓子に限らず失敗した時や駄目な事だと感じているなら、反省して次に生かせば良いんですよ、マルクス様だって自分が憎まれ役を買ってまで見直す機会を与えて下さったんですから」
「……そう、ですね」
ツツー……
「ひゃいっ!?」
「それにしても本当に綺麗な肌ですよね、白くてきめ細やかで、それに柔らかくて、うらめしい」
「い、いきなり背中を指でなぞらないでください、さっきも胸を指で突然つついてビックリするじゃないですか、あともしかして”恨めしい”って言いました!?」
「”羨ましい”って言ったんですよ、髪もふわふわした淡いピンク色で可愛らしいですし、私は紫掛かった黒髪なのでアルマさんの薄い髪色に少し憧れます」
「むぅ、メアリーだってサラサラした綺麗な髪じゃないですか」
「綺麗……そうでしょうか?」
「ええ、それに身体も健康的で引き締まった感じなので私の方こそ羨ましいです、私は運動もそこまで得意ではないですから、敏捷性もそんなに高くはないですし」
「……」
「それと私は髪質は柔らかいですが癖っ毛なので朝とかお手入れが結構大変なんですよ、それにこの胸もですけど妙に目立つから良い事なんてそんなにないですし、て、もしかして照れてるんですか!?」
「!!」
「メアリーって褒められる事に慣れてないですよね、ふふっ、何か可愛いです」
「……っ」
「あれ、もしかして怒っちゃいました?」
ザバー……
「ひゃん!?」
「ほら、いつまでそんな泡で全身ガードしてるんですか、魔羊じゃないんですからそろそろ私達も湯船に入りましょう」
「もう、だからビックリするから止めて、何も言わずにいきなりお湯を掛けないでくださいよ!」
「じぃー……」
「な、何ですか、どこを見て……」
「下もピンクなんですね、当然と言えば当然ですが、それに薄くて、何かとってもエッチな感じに見えます」
「ふぇ!?」
「わー、アルマさんが怒りました、逃げろー」
「あ、ちょっと、待ちなさい、メアリー!」
カポーン……
「ふぅ、良いお湯ですね」
「……そうですね」
「まだ怒ってるんですか?」
「いえ、あ、いや怒ってますけどぉ」
「もしかして、まだ落ち込んでるんですか?」
「いえ、メアリーにも諭されましたので、もうそこまでは」
「それなら良いですけど、ネムさんも大人しくお風呂に入ってますね」
「うん、お外を見てるとキラキラしててキレイ♪」
「此処は城壁に面してガラス張りになってますので、城下町の様子とかも見下ろせますから、それにこの時間だと町の灯りが夜を照らして何か幻想的ですよね」
「ピヨピコもお外を見てるのかな?」
「どうでしょうね? 流石に男湯の様子を覗く訳にもいきませんし、でもおそらくは、それにお風呂を楽しんでいると思いますよ」
「ですね、勇者様も何かお風呂は好きみたいでしたから」
「そっかー」
「アルマさんは勇者様の事にお詳しいんですね」
「え? いや、たまたまそんな会話をしただけですよ、記憶喪失の事もあったので色々と変な質問とかもされたので……」
「変な質問?」
「あのですね、ごにょごにょ……」
「ああ、それは、ちょっとデリカシーに掛けてますね」
「でしょう? それにお菓子の時もあんなズケズケと、まあ私が悪いんですけど、それにしたって言い方ってものをもう少し考えて欲しかったです」
「アルマさん、何か思った以上に勇者様の事を好きになってますよね」
「ふぇ!? そ、そんな事は……」
「ありますよね? 本当は"好きな相手"にお菓子の事で問い詰められて責められたからあんなに泣きじゃくるほど気落ちしたんでしょう?」
「そ、それは……」
「それに食事の時も私が勇者様の事を見ていたら、あらか様に頬を膨らませて嫉妬していましたし、アルマさんの反応が面白くて半分冗談でからかってたのですが」
「え!?」
「周りの人達もその様子を見て気が付いていた感じでしたし、もしかしたら勇者様も既にアルマさんの気持ちに気が付いてるかもですね、何気に鋭い方ですから」
「えぇ!?」
「少なくともエマさんは気が付いてましたし、そんな発言もしてましたよ」
「そ、そうなんですか? でも私は別に嫉妬なんて……」
「私にはそう見えましたけど?」
「ネムも見てて思ったー」
「ネ、ネムちゃんまで!?」
「アルマ何かほっぺをふくらませてリスみたいだった」
「え、そっち!?」
「まあ、勇者様のサポートが天啓に与えられた使命なのは存じてますけど、立場上あまり深い関係になると色々と大変だとは思いますよ」
「ぷぅ、メアリーだって勇者様に色目とか使ってたくせに、それに勇者様だって、他の女性に優しくしてあんな事まで……」
「アルマまたリスみたいー」
「ええ、だって私も勇者様の事は気になりますからね、それに使命で言うなら私も切っ掛けがあれば仲間として一緒に冒険する事も可能ではありますから、その時は誠心誠意お仕えしてご奉仕させて貰いますよ」
「なっ!?」
「まあ以前に会った時はギスギスした雰囲気で近寄り難い印象でしたけど、ですが話を真剣に聞いている様子や、剣を交えてみて印象が変わりました、【天啓の楔】に囚われていない本来の勇者様はきっとあんな感じなんですね」
「……メアリーは記憶を無くす前の勇者様と会ったことがあるんですね」
「ええ、まあ幼い頃に一度だけ、それと称号の儀式の際にもお話はしましたけど、と言うかアルマさんの方が寧ろ会ったことはあるのでは?」
「……いえ、私は、意図的に避けてたのもありますけど直接会って話したのは私も幼い頃に何回かだけですよ、なので記憶喪失の事も、最初はそこまで違和感は感じませんでしたし……常識知らずな人だなぁ、とは思いましたけど」
「アルマさんは勇者様との関係を伝えるつもりはないんですか?」
「それは別に自分から云う必要はないですから、それにいつか知られる事ですし」
「まあ別にそこまで気にしなくても良いとは思いますけど、でも応援はしたくないので、私も積極的に勇者様にアプローチはしますけどね、他に気になる殿方も特には居ないですし、恋をすると女は綺麗になるとも教わりましたので」
「ふぇ!?」
「寧ろ邪魔しますよ、アルマさんは私の恋のライバルですから」
「いや、そんな宣言されても、あ、もしかしてそれであんな事を言ったの!?」
「何の事ですか、私には分かりませんね」
「もう、突然私に話を振るからビックリしましたよ」
「ああ、そっちの話ですか」
「え、何の事だと思ったんです?」
「いや、私が勇者様のお背中を流すと言った方かと……」
「あ、そうだ、それもありました、あまり露骨な誘惑は止めてください、勇者様もあんな事を言われたら戸惑うじゃないですか」
「半分冗談のつもりだったんですが……それに断られましたけどね、しかも悩みもせずに即決で、鎧の時もですけど、全く相手をされてないと感じたので流石の私も少し傷付きました」
「まあ勇者様はあんな感じでも、その辺は意外としっかりしてますからね」
「でも紳士な対応だったので嬉しかったです、食事の際にも私の事まで気にかけてくれたので……と、コホン、少し喋り過ぎました」
「確かに、恋のライバルと宣言した相手にそこまで伝えなくても……まあ優しい人ですよね、と言うか、メアリーって思ったよりも純情なんですね」
「!!」
「でも武器を褒められて惚れるとか、正直"チョロい"気もしますけど」
「……チョロいのはお互い様ですけどね、それに私はまだそこまで本気って訳ではありませんから、からかい半分なので」
「なっ!?」
「それよりアルマさんだって再会してたったの"3日"でもう恋に落ちてるじゃないですか、何か切っ掛けでもあったんですか?」
「そ、それは……」
「なになに、ピヨピコの話? ネムも聞きたいー」
「え、あの……」
「切っ掛けじゃないにしても、冒険の話とかは私も知りたいですね」
「それじゃあ、少しだけ、ごにょごにょ……」
カポーン……
「つまりその巨大なスライムとの戦闘で勇者様の誠意を感じたと、それに記憶喪失の件も自分を信じて打ち明けてくれたので嬉しかったと……」
「えっと、まあ、そんな感じです……」
「アルマはピヨピコの事が好きなんだねー」
「そ、それは、その……はい」
「ネムも好きだよー」
「え!?」
「ご飯くれるし、やさしいからピヨピコの事は好きだよ♪」
「あ、そう言う意味での好きですか」
「反応を見るとまだ何か隠してそうな感じですが、別にそこまで深くは追求しませんけど、少し気になりますね」
「そ、そんにゃ事は、にゃい、ないですよ!」
「ヒツジにリスの次は、ネコ?」
「コホン、と、とにかくあまり露骨な誘惑は控えてくださいね、勇者様には魔王を倒す"使命"があるんですから」
「……」
「どうしたんですか?」
「使命って何なんですかね……」
「そ、それは……」
「使命とはこの世界の理で神から天啓として与えられたもの、そう言い聞かされて私は育ちました、確かに自分の中には果たすべき使命があります、それは分かっているんですけど、でもこれが自分の意志によるものではないとも感じていて……」
「……」
「それに勇者様も天啓の楔に振り回されたから、魔王軍の幹部に狙われて、両親を失い、あんなに余裕がない状態になって、挙げ句の果てに自分の記憶まで……」
「むー?」
「私もそれは感じてますけど、でも使命を果たす事こそが自分の存在意義なので、私自身もその為に今まで努力してきたつもりですから……それに、勇者様を支えたいって気持ちは、天啓によって与えられたものではなく、自分で考えて感じている本心でもありますから、その気持ちまで否定はしたくないです、たとえ使命が誰かに与えられたものだとしても、私は"私"ですから」
「そう、ですよね……」
「使命ってなぁに?」
「え? えっと、ネムちゃんも感じてる筈ですが、自分の中にある与えられた役目と言うか、使命感と言うか、何かそんなよく分からない気持ちの事です」
「む?」
「そう言う気持ちとか、やらないとって強制されるような感覚とか……感じた事はありません?」
「むー、難しいのはよく分からないー」
「あ、ネムちゃん」
パチャパチャ
「行っちゃいましたね、まあ中には使命感など感じずに自然と自分の役目を果たして、それが当たり前だと感じてる人も多いようですけど」
「そうみたいですね、ククリコとかもあまり使命とか気にしてない感じですし」
「でも最近だと天啓に否定的な意見とかもありますよね」
「ああ、そう言えば、発明家気取りの変わり者の貴族とか、ファーラビット保守派のリーダーとか、そんな意思表示をしてる人も居るとかは聞いたことありますね」
「それにマルクス様も色々と思うところがあるようですし、私が使命に対して疑念を懐くようになった切っ掛けも、マルクス様の影響は大きいですし」
「まああの人はこの国の軍師でもあり魔王軍との戦いにおいても責任ある立場ですから、人一倍、使命感も感じているとは思いますし、天啓に対して疑問に思う事も多そうですよね……私もそんな感じの話はそれとなく聞かされた事はありますし、それに今回の説明の合間でもそれとなく思わせ振りな発言はしてましたからね」
「人を見る目はあるので誰かれ構わず風潮したりはしてませんけどね、この国には天啓を”神の啓示”だと崇めて、信仰してる人達も居ますし」
「ですね、まあ私は正直あの人には苦手意識とかも少しありますけど……」
「女性にだらしないお方ですからね、別に私も尊敬とかはしてないですが」
「あ、メアリーもそうなんですね」
「そりゃそうですよ、いい年をしてあれだけ多くの女性に色目を使って、シルビアさんは立場的にも盲信してる感じですけど、私はあんな中年オヤジ趣味じゃないですよ」
「そうなんですね、私はてっきりメアリーも、その、あの人の"毒牙"に掛かってるのかと思って少し心配だったのですが、シルビアさんの方は嫉妬心がこちらも見ていて分かるくらいでしたけど」
「私はまだ今年で16ですから、直接的にそう言う夜のお誘いとかはされていないですよ、気持ち悪い口説き文句とかは然り気無くよく言われますけど……」
「そ、そうなんですか、それなら良かった」
「それに純潔を捧げるならあんなオジサンよりも、勇者様の方が良いですからね」
「なっ!?」
「……冗談ですよ」
「ライバル宣言されましたし、全く冗談には聞こえないんですけど……」
「でも言いくるめでこっちから誘惑させるような誘導とかはされた事とかはありますね、それに枕伽の技とかも、ある程度は幼い頃から叩き込まれてはいますし」
「ふぇ!?」
「あ、マルクス様からではなくて、貴婦人や淑女の間でそう言う教育指導みたいのがあるのでそれで覚えた感じですけど、あの方とかそう言うのに熱心ですから」
「ああ、あの人ですか……何となく想像は付きます」
「第二王子という王族の立場もありますし、それに独身なので一般の女性からしたら騙されて誘惑したりもするんでしょうけどね、上手くいけば玉の輿ですし」
「何であの人は結婚しないんですかね? 子供も居ないみたいですし」
「コホン、それにあの人は自分からは誘わないで、相手の好意を利用するのが巧いですから、それで拗れた時は相手から誘って来たと言い訳にするんですよ」
「なにそれ、酷いですね……」
「屑ですよ屑、私の場合は意図がバレバレでしたので、虫を見るような不快な視線を向けたら、何か誤魔化して逃げて行きましたけど」
「女性に見境がないのは知ってましたが本当に酷いですね、最低だと思います」
「権力を振りかざして強引に迫って来て、無理やり犯されたりしないだけましですけどね、そんな事をされたら自慢のナイフで切り落としてやりますけど」
「切り落とすって……何を?」
「ナニに決まってるじゃないですか」
「えぇ!?」
「私の武器は護衛用と同時に護身用でもありますから、でもマルクス様もそんな事はしないですけどね、あんなでも民衆からの信望は厚いですし」
「そうですね、女誑しでも紳士的だから人気はあるんですよね、印象操作が巧いと言うか、あれで人懐っこい雰囲気とかもあるから余計にタチが悪いですよね」
「それにシルビアさんが手綱を付けて管理してる感じなので、最近はそこまで酷くはないようですし」
「そうなんですね、えっと、もしかして此処に来る前にシルビアさんの話をしてた時に濁してたのって……」
「それは、マルクス様のお部屋にもお風呂はあるので、ごにょごにょ……」
「えぇ!?」
「もしかしたら今夜辺りも既にしてるんじゃないですかね、この後まだ用事があるとか言って一緒に退室しましたけど、どんな用なんだか」
「するって、その……」
「決まってるじゃないですか、それにシルビアさんが鋭い突っ込みをする時はあの人なりの合図だと私は思ってますので」
「そ、そうなんですか、何か大人の恋愛って感じはしますけど、見習いたくはないですね、と言うかシルビアさんの事も少し軽蔑しました……」
「まあ好きなもの同士なら別に良いんじゃないですかね、別に惚気とか聞かされる訳じゃないですし、勝手に駆け引きして、盛り上がって突き合ってろって感じですけどね」
「何かスゴいですよね……それだけ愛情が深いのかもしれませんけど、あの冷たい視線とか発言もですが、嫉妬心が漏れてて、見ていてちょっと怖かったです」
「……アルマさんがそれを言うんですか」
「え、なんですか、どういう意味です?」
「え、もしかして無自覚なんですか?」
「無自覚?」
「いえ、別にライバル相手に塩を贈る必要はないので私からは特に云うことはないですけど、何か勇者様が少し気の毒ですね」
「?」
「ハァ、とにかく色目と気遣いは別物ですから、それくらいは判断した方が良いとは思いますよ? あまり頬を膨らませていると嫌われますからね」
「えっと、何の事かはよく分かりませんが、色目と言えば少し気になった事があるんですけど」
「……なんですか?」
「えっと、その、もしかしてエマさんも……その、あの人とそういう関係だったりするんですかね? 何かそんな雰囲気も少し感じたんですけど」
「エマさんが、マルクス様とですか?」
「あの図書室にはよく通ってたので、昔からエマさんには色々とお世話にはなってるんですが……そう言う話とかはした事なかったので、少し気になって」
「ああ、あの人は……」
「何を楽しそうに2人で話してるんですかー?」
「!!」
「メアリーも一緒に入ってたんですね、私も久し振りにこのお風呂に入りますけどやっぱり広くて良いですよねー」
「あ、エマだー」
「ネムちゃん、私も来ましたよー」
「おー♪」
「エマさんお仕事お疲れ様です」
「いえいえ、メアリーもお疲れ様です」
「ちょっ、ちょっとエマさん、タオル、タオルをちゃんと巻いて下さい」
「アルマさんなに言ってるんですか」
「ふぇ!?」
「お風呂に入るのにタオルで身体を隠す何て邪道ですよ、それにせっかくの大きな露天風呂なんですからもっと開放的になりましょうよ、ほらアルマさんも女性同士なんですからそんなに恥ずかしがらずに、タオルなんて脱いで下さい」
「言われて見ればそうですね、私も脱ぎます」
「ネムも脱ぐー」
「ちょっとメアリーまで!?」
バサッ、バサッ
「さあさあアルマさんも、そんなタオル取っちゃいましょうねー」
「ひゃっ、ちょっと、まって……」
バサッ、ポロリ
「きゃあ」
「わー、アルマさんのおっぱい大きくて綺麗ですね、それにピンク色で……」
ムクムクッ
壁の向こうの男湯にはこの会話に耳を傾けている1人の健全な男子が居た。
その後、自分の意思とは関係なく壁に聞き耳を立てて、更には覗き行為まで強要される事になるのだが、この青年も今はまだその事を知らない。
ノクターンの方に、第17.5話 スライムローションを投稿しました。
本編の支障にならない程度ですが、R18版なので読む場合は自己判断で
お願いします。
それと書き貯めのストックが尽きたので今後は構成とか考えつつのんびり
不定期での投稿になります、申し訳ないですがご了承ください。
想定よりも早いタイミングで桜子がゲームに対して不信感を感じてしまった。
今後も行き当たりバッタリな展開になるとは思いますが宜しくお願い致します。
追記、桜子のモチベーションが尽きてたので記憶を封印して放置してました。
誤字脱字などのバグは大分潰したので、ぼちぼち気分次第で復帰するかもです。




