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第35話 ドキドキお風呂イベント 後編

 サウナで偶然この国の第一王子で亡き父の親友でもあるグラウスと遭遇した。

 お互い無言のまま我慢大会になり、緊張もしたが良い汗を掻いた。

 でも背後から何かねっとりとしたいやらしい視線を感じたので不快だった。


 グラウスと話した後、大きな湯船を1人で独占して極楽気分だったピヨヒコ。

 しかしエマさんの乱入で女湯の方は騒がしく、ついつい耳を傾けてしまう。


 カポーン……


「やっぱりアルマさんの胸は……いですよね、う……しい」

「メア……まで、そんなにジロジロ見ないでください、それとエマさん、タ……を返して」


「だったらそんな湯船で……座りになって胸を隠さな……ここまで取りに来てくださいよ、そしたら返しますよ」

「恥ずかし……ら嫌です、もう、勝手に脱……なんて酷いです」


「アルマ、おっきいよねー」

「え、ちょっ、……ちゃんまで、そんなに……くり観ないで」


「触ってみてもいい?」

「え、だ、……です」


「むー」

「でも分かります、ア……さんの胸はそれだけ魅力的ですからね、それにタオルが外……気が付きましたけど、湯……浮いてないです?」


「ちょっ、……リー、何でそんなところまでじっ……観察してるんですか!?」

「アルマすごい、羨ましい……」


「ネムちゃんも……になればきっと大きくなりますよー」

「ほんと?」


「まあアルマさん程では……かもしれませんが、ネムちゃんは美少女……できっと素敵で……な大人になりますよ」

「そうかなー?」


 むに…


「むー」

「ネムさんは気になるお年頃なんですね、私もそんなに……くはないので気持ちは分かりますけど、エマさんも何気に大きいですし」


「そんなに悲観しなくても……ちゃんはまだまだ成長期なんですから、背伸びしなくても大丈夫ですよ、それに小さくても……はありますからね」

「じゅよー?」


「ちょっと、……さん、ネムちゃんに変な事を吹き込まないでください」

「えへ、ゴメンなさい」


「本当に大きいですよね、それに柔……そうですし、私はどちらかと言えば筋肉質なので、アルマさんが羨ましいです」

「えっ、え!?」


「メアリーだってスタイルが良くて……的だし、張りがあって形も良いじゃないですか、私なんて図書室に籠りがちだから油断してると、お腹のお肉とか大変な事になっちゃいますよ」

「エマのお腹はどんな感じ? ……触ってみてもいい?」


「え? そ、それは私もちょっと恥ずかしいと言うか~」

「だめ?」


「あ、あう、そう言われると少し断りずらいですが……わ、わかりました、こんなお腹で良ければ、ちょっとなら触ってもいいですよ」

「わーい♪」


 ザバー……


「あ、ネムさんが湯船から上がって身体を洗っていたエマさんの方に行きましたよ、とても嬉しそうです」

「? 何かやたら具体的に説明しますね、メアリー」


 むにゅ~……


「って、ネムちゃん、そんなにがっつり抱き付かないでくださいよ、くすぐったいですから」

「……何かぷにゅぷにゅしてて柔らかくてエマの身体、気持ちいいね」


「そうですか? あんまり嬉しくないですけど、あっ……ちょっと、だ、ダメですよ、それにそこはお腹じゃないですから、そんな色々と触られたら……あと羽根が擦れてなんか……あっ……ちょっ、そこは……っ」

「ネムも、もっとおっきくなりたいー」


 むにむにむに……むにゅ……


「……だめっ、あ……あっ、あんっ」

「え、え? ちょっと、ネムちゃん!?」


「思いっきり揉んでますね、何かとても如何わしいです、ネムさん的にはお腹ではなく身体に触っても良いかを聞いてたのかもしれないですね、見てると私も少し変な気分になっちゃいそうです」


 カポーン……


 いやいや何してるのネム!? と言うか俺も何してるの!? さっきまで湯船に入っていたのに、気が付いたら壁に耳を当てて女湯の声を聞いてるんだけど!? 

 しかも何か途中から明らかに声がよく聞こえるし、なんだこれ!?


「……あっ、んっ……ネムちゃん、そんなに激しくされると、んっ……やんっ」


 それに何かエマさんの喘ぎ声がヤバいんだけど、聞いてて良いのかこれ!?


 ムクムクッ?


 原因に思い当たり背後の少女を観てみると、少女もなにやら少し興奮した様子で頬を赤らめて耳を傾けているんだけど……いや、ちょっと、なにやってんの!?


     ◇


「私もビックリだよ、思わずヘッドホンを挿してテレビの音を消したわ……」


 思ってたよりも内容が過激で驚いてるんだけど、"キャッキャウフフ"ってこんな感じなの? もっとガールズトークみたいのが聞けると思っていたんだけど。


 それにこの声、声優さんとかはよく分からないけど、なにこれ、ヤバくない。

 迫真の演技なんだけどちょっとエッチ過ぎない?

 エマの声優さんはプロ意識が強いの? それともお仕事を選べない感じ!?  

 家族や恋人を人質にでも取られているの? 解放してあげて!?


 べ、別に私はエッチぃ展開とかを期待したり、求めてる訳ではないんだけど。

 いや、で、でもプレイヤーとしては出来る選択肢は試してみたいじゃない? 

 だから貯めていた盗賊の職業ポイントを解禁して【盗み聞き】を取得したの。


 このスキルがあれば聴覚に補正が付いて周囲の声を聞き耳したり、壁越しに耳を当てて聞けば向こうの声がよく聞き取れて、情報収集に使えるとかスキルツリーの説明文にあったから……それで試してみただけなのよ。


 だから別にエッチな展開を期待してた訳じゃないからね、てかピヨヒコそんな目で私を見るな、お前だって湯船で女湯に耳を傾けてたくせに、反応してまた大きくしてたのも知ってるんだからな!?


 それに、壁際にわざとらしく置いてあるアレってそういう意味だよね。


     ◇


「ネムちゃん、そんな事しちゃダメですよ」

「あ、アルマ」


「あ、アルマさん、助けに来てくれたんですか? すみません」

「タオルを取り戻しに来ただけです、返してください」


「えぇ、と言うかそんな両手で隠さなくても良いじゃないですか、しかも隠しきれてないですし、何か逆に卑猥に見えますよ?」

「怒りますよ?」


「……ゴメンなさい、久し振りに大浴場を使えたのでちょっと羽目を外して調子に乗っちゃいました、てへっ」

「やっぱりアルマも大きい、ズルい~」


「ネ、ネムちゃんまで、そんなに見ないでください」

「むー」


「まあでも、そこまで凄い巨乳って訳ではなくて、小柄な割には程よく大きくて、悪目立ちしてる感じですよね、周囲の視線とか気になりそうだし大変そうです」

「……っ」


「見られて恥ずかしいのか、アルマさんは取り戻したタオルを即座に装備しちゃいましたね、ネムさんは注意されたけどまだエマさんに抱き付いたままです」

「いや、だからメアリーは何でそんな詳しく状況を説明してる感じなの!?」


「えへへ、何か懐かれちゃいましたねー」

「だってエマの身体、何か暖かくておかあさんみたいで懐かしいんだもん」


「!?」


「……アルマさん」

「いえ、私も詳しい事は……」


「えっと、ネムちゃん、ご両親は」

「もういないよ?」


「それは魔王軍の侵攻で? あ、ごめんなさい、もし思い出したくない事とかなら云わなくてもいいですから……」

「えっと、よく覚えてないけど、おかあさんの事は何となく覚えてるよ、とっても暖かくて、優しく包んでくれて、それにお姉ちゃん達も居て、他にもいっぱい仲間が居たけど、それから確か……あれ?」


「だ、大丈夫ですから、ネムちゃんには今は私達が居ますから」

「そ、そうですよ、それにもう私もネムちゃんの仲間ですからねー」


「おかあさん……」

「わ、私の事をおかあさんだと思ってくれても良いですから、遠慮せずにいっぱい甘えてくださいねー」


「……ぐすん」

「ネムちゃん」


 チュパ


「ネムちゃん?」


 チュパチュパ


「ちょっ、え? ダメです、そこは吸ってもまだ何も出ないですから、おかあさんと思って良いとは言いましたけどぉ……あっ、んっ……まって……っ」


「な、ななな!?」

「スゴい大胆な事をしますね、私も流石に見ていてドキドキしちゃいます、アルマさんも戸惑いつつもその様子をじっくり見て赤面しています」


 カポーン……


 いやいや何してるのネム!? 吸ってるってナニを!? それに俺は何でさっきから壁際に大量に置いてあった湯桶を逆さまに並べてピラミッド型の階段を作ろうとしてるの!? もしかしてこれを足場にして壁の向こうを覗くつもりか!?


 原因に思い当たり背後の少女を見てみると、私が悪い訳じゃない、そんな粗かさまに配置してある大量の湯桶が悪いんだ! とでも云いたそうな顔をしていた……

 いや、嘘でしょ!? 本当に女湯を覗くつもりなの!?


 ああ、そんな事を考えてる内にも身体が勝手に動いて完成してしまった。

 何か立派な手桶のピラミッドが出来てしまった!!


     ◇


「文句ならこのゲームを開発した奴に言いなさいよ、私は悪くないもん」


 ふんだ、私の事を蔑ろにした報いよ。女性陣の好感度を下げてあげるわ。

 アルマの好感度が変な方向に上がって本当にヤンデレ化されても困るし丁度良いから女性キャラ全員に少し嫌われなさい! むむむ? 何やら止めて、とか念じてきてるけどどんな展開になるか気になるから却下だ、ここは敢えて強制行動だ!!


 と言うかネムは何してるの? 何となくは察したけど、大丈夫なのこれ?

 このゲーム、シナリオ担当の性癖とか反映されてない?

 浴場で欲情したとかで掛けてるつもり? 馬鹿なの? ヤバくない!?


     ◇


 むむむ、ダメだ、念じてるのに聞き受けない。身体が手桶の階段を徐々に登っていく。壁際は段差にもなっているしタイル壁の高さは3メートルまでは無さそうだからピラミッドの最上段まで登れば、頭くらいなら何とか届きそうだけど……


 しかし、覗いてもしバレたら女性陣から【覗き魔】の称号が与えられるかも。

 そんな不名誉な称号は要らないんだが!? とか考えていたらもう届いたし。


「!!」


 目を瞑る発想などはないのか、ピヨヒコは操られるがままに女湯を覗き見た。

 するとそこには、湯船に浸かった裸のメアリーの姿があった。


 あれ、他の3人は? あ、そうか下か、姿見の鏡や身体を洗う石鹸の場所は丁度この男女を隔てるタイル壁に面してるし厚さもそれなりにあるから覗くには上半身を少し前に乗り出して、上から見下ろす必要があるのか! ぐぬぬ、無念。


 チュパチュパ、チュパチュパ……


「っ……ん、あっ、あっ、んっ……やぁん」

「ネ、ネムちゃん、そんなところを、そんな大胆に、ハァハァ」


 確かに下の方からは何やら如何わしいエッチな声が聞こえてくる。

 それに何かアルマの興奮した息遣いとかも聞こえる。


 ()クリッ……

 

 そんな3人の様子も気にはなるが、ピヨヒコは湯船に居るメアリーから目を離せなくなって注目してしまう。


「じぃー……」


 メアリーは湯あみのタオルも装備してなくて、生まれたままの姿だ。でも肩まで湯船に浸かっているので下の方までは見えないし、上の方も湯気で隠れているのでそこまでハッキリとは見えない。


 それにまだバレてはいないので、このまま戻れば……


 そう考えながらも、ピヨヒコはまるで壁から顔を出した巨人が如く身体から蒸気を上げて、そのまま暫くメアリーの姿を覗き見してしまった。


「!?」


 すると、その視線に気が付いたメアリーと目が合った。

 あ、しまった、見つかった!!


「……っ」


 メアリーは流石に予想してなかった状況なのか、驚いて咄嗟に胸元を隠した。

 しかしその後、顔を赤らめつつも自分の口元に人差し指を当てて、しぃー、と、黙っててあげますから慌てないでください、と合図を送ってる様な仕草をした。


 こちらの身勝手な覗きに対して何て寛容で優しい対応なのだろうか。

 流石は優秀なメイドさんだ。


 許されたピヨヒコもそれに反応して黙ってコクコクと頷く。


 ここで騒がれたら今後ずっと覗き魔のレッテルを貼られる。

 ピヨヒコはメアリーの気遣いに心から感謝して、慎重に手桶のピラミッドの階段から降りるつもりだった、しかしメアリーがその前に予想外の行動をする。


 ザバー……


「ふぁ!?」

「……ほらネムさん、2人ともスゴく恥ずかしがって戸惑ってますよ、突然そんな卑猥な事を無理やりされたらネムさんだって嫌でしょ?」


「む?」

「あっ、メアリー……はぁ、はぁ、んっ」


「お母さんの事を思い出したのかも知れませんが、懐かしいからってもう赤ちゃんじゃないんですから、それにネムさんは大人なんでしょう?

「……」


「それともネム"ちゃん"はまだお子様なんですかね?」

「むー」


「それにアルマさんも、そんな興味津々にじっくり見てないで止めないと」

「ふぇ!?」


「……馴れ馴れしい事されるのはネムも嫌いなのに、それなのにエマが嫌がる事をして、ごめんなさい」

「え、あの、私はその、そんなに嫌じゃなかったと言うか……あ、いや、コホン、だからそんなにネムちゃんが謝らなくても大丈夫ですよ、突然でちょっとビックリはしましたけど、私は平気ですから、気にしなくてもいいですよー」


 いや、ちょっとじゃなくて、かなりビックリだよ!?


 ちょっとメアリーさん? 俺が覗いているのに気が付きながら何で自ら湯船から出てるの? 見えちゃうよ、と言うか見えてるから、色々と見えちゃってるよ!?


 湯気で細部までハッキリとは見えないけど、それでもメアリーの一糸纏わぬ裸体が視線の先にある。護衛として身体を鍛えているからスタイルは良く、それでいてとても健康的で張りのある胸、くびれた腰回りに……それにその可愛らしい容姿も相まって、すごく魅力的に感じる……ゴクリッ


 メアリーの大胆な行動にピヨヒコは戸惑い焦りつつも鼓動が高鳴るのを感じる。

 と言うか何その恍惚とした意味深な表情は!?


 明らかにこちらを意識して身体を見せつけながら、それでいて何処か照れつつも口元は微笑んでいて、濡れた身体と髪が艶やかで、何かドキドキするんだけど。


 いや、湯船から出るならちゃんと前を隠して? せめて湯浴みのタオルで大事なところくらいは隠そうよ、それともわざと見せつけて俺の事を挑発してるのか!?


 よし、それならばこちらも遠慮なくじっくり見せて貰おうじゃないか。

 ピヨヒコは自分勝手な解釈で、メアリーに対する覗き行為を正当化した。


「じぃー……」

「……っ」


 そんなピヨヒコに視姦されて、メアリーは平然を装いながらも頬を赤く染める。

 そして羞恥に耐え切れなくなり、然りげ無く自分の手で局部を隠した。

 その仕草が女性らしさを更に引き立てて、何か色っぽくてエッチな感じがする。


 ムククッ(呼んだ)


 いやまて、お前の出番じゃないから落ち着け、マイマイコニッド!


 ぐらぐら……


 あ、ヤバい、動揺したらバランスが、手桶のピラミッドが崩れる、耐えろ!

 何とかバランスを保つんだ、ここで崩したら他の3人にも覗きがバレる!!


 ガラガラガラ、ガッシャーン!!


 ピヨヒコの願い叶わず、手桶のピラミッドは騒音を立てて瓦解した。


「ふぇ!?」

「え、なんです今の音!? 何か隣りの男湯から聞こえて来ましたよ!?」


「む? ピヨピコそっちにいるのー?」

「勇者様、だ、大丈夫ですか!」


「痛たた……いや、大丈夫だ、身体を洗っていて、その、積んでいた手桶を取ろうとしたら崩れてきて、それで大きな音を立ててしまった、驚かせたならすまない」


 壁越しからメアリーが心配そうに話し掛けて来たけど、ピヨヒコは咄嗟の機転で誤魔化す事にした。手桶は元々積み重なってはいたから、これなら欺けるはずだ!


《いや、誤魔化す前にまず前を隠しなさいよ!!》

「ぬ?」


 何か背後からそのような声が聞こえて自分の状態を確認したら、転倒した拍子に湯あみのタオルが取れて前が丸出しの状態だった。

 しかも今の女湯でのやり取りに興奮してたから、スゴく元気な状態だ。


 画面の少女は顔を真っ赤にしながらも俺のおっきしたマモノをガン見している。


 とは言っても俺は被害者だぞ、そんなジロジロ見るなよ、エッチな少女だな。

 行動させたのはそもそもそっちだろ、俺は悪くない! むむむ、届けこの思い。


《なっ!?》


「え、もしかしてこれ、声とか男湯にも聞こえる感じなんですか?」

「天井は吹き抜けですから、壁際であまり騒いでいると聞こえちゃいますね」


「えぇー? 私もお仕事を頑張った労いで深夜とかに利用するので、男湯に男性が入っていない時間帯が多くてあまり意識してませんでしたけど、もしかしてさっきのやり取りとか勇者様にも聞かれてましたかね? その、変な声とか……っ」


 エマは自分がどんな声を上げていたのか思い出すと恥ずかしい気分になった。

 壁越しに問い詰められたピヨヒコは、焦りつつも更に誤魔化す事にした。


「あ、いや、俺もさっきまでサウナを利用していて出たばかりだから、何か話し声みたいなのは少し聞こえてたけど、詳しい内容までは聞き取れてないから……だ、大丈夫だよ」

「そ、そうなんですか? 何か疑わしいですけど、まさか壁に耳を当ててこちらの声とかは聞いてないですよね? いや、油断して騒いでいた私達もいけなかったんですけど……それにあんな声まで、もしそうなら何かスゴく恥ずかしいです」


「え、いや、まさか、そんな事は決して、ネムが湯船から出てエマさんに抱き付いたり、アルマが取られたタオルを取り戻したりとか、それにそんな変な喘ぎ声とかは全然、聞こえてないよ!?」

「ふぇぇ!?」


「あ、ほら、白状しましたよ!?」

「しまった、口が滑った!!」


 エマに指摘されたピヨヒコは焦り、石鹸に足を滑らせるが如く口を滑らせた。

 グラウスの名前の際もだが、どうやら自分は嘘を吐くのが苦手なようだ。


「勇者様は嘘が下手ですね、ばっちり聞いてるじゃないですか、エッチ! と言うか何でそんな具体的な事まで知ってるんです、ま、まさか覗いてたんじゃ!?」

「コホン、エマさん、それは私が男湯に配慮せずにそのように話してしまったからかと、それにあれだけ騒いでたら嫌でも聞こえてしまいますから、勇者様も健全な殿方なんですから……不可抗力なのではないでしょうか?」


「た、確かに、そう言われるとそうかもですけどー」

「ピヨピコはエッチなの?」


「そうですよ、可愛い顔してるけど狼なんです、とってもエッチなんですよー」

「そうなのかー」


「あ、メアリーが何かさっきから丁寧に説明口調だったのって、もしかして男湯に状況を知らせる為にそんな風に喋ってたんですか!?」

「なんの事です? 私は分かりませんけど」


「くっ、白々しい……」

「ピヨピコもこっちに来ればー?」


「え、いいの!? あ、いや、ゴホン、それは遠慮しとくよ、取り敢えず俺の方は大丈夫だから、邪魔したならゴメン」

「ちょっ、ネムちゃん!? あ、いえ、こちらこそ騒がしくしてゴメンなさい」


 カポーン……


 メアリーのフォローもあり女湯を覗いたのは他の3人には何とかバレずに済んだようだ。

 ピヨヒコは手桶を元の位置に戻して、タオルを回収してから湯船に戻り、危機を回避した事に安堵する。

 と言うかネムには羞恥心とか無いのか? ハーピアは混浴とか裸を見られる事に抵抗がない種族なのだろうか?


「ハァ、危なかった」


 いや、でもメアリーは何で覗かれた事に気付きつつ擁護してくれたんだろう?

 自分の意思じゃなかったにしても騒がれて罵られる可能性もあったのに。それにあんな、俺に見られてるのを知りながら自分から身体を見せてきて……ゴクリッ


 ピヨヒコはメアリーの裸体を思い出すと、再び鼓動が高鳴り興奮してきた。

 それにサウナで汗を掻いたのもあり、逆上せたのか頭がクラクラしてきた。


 グラウスに飲み水は貰ったけど、また喉も渇いた気がする。


「あ、ダメだ、そろそろ上がりたいかも……」


 画面の少女も自分の行いを反省したのか、それを承諾したように湯船から出る。

 このまま男湯にいつまでも俺が入っていると、気兼ねなく4人で女子トークとかもしずらいだろうし、配慮する意味でも先に上がろう。


 それと無言で上がってまた聞き耳を立てていると思われるのも嫌なので一応女湯に向かって声を掛ける事にした。


「コホン、えっと、アルマ、俺は先に上がるからゆっくり会話とか楽しんでくれ」

「……え、あ、はい、わかりました、私達もそろそろ上がるかもですが、お部屋に戻るなら暗いので気を付けてくださいね」


「ああ、ありがとう、そうするよ」


 流石はアルマだ、こっちの気遣いまでしてくれて有難いな。

 そんな事を考えつつ上がり際にも女湯から声が聞こえたので少し耳を傾ける。


「私達もそろそろ上がります?」

「ええ、まだ色々と楽しいお話ししましょうよ、それにまだ私は湯船にも浸かってないんですよ?」


「そう言えばそうでしたね、でもそれは私達には関係ないんじゃ」

「メアリーまで酷いです、何か他に用事でもあるんですか?」


「え、いえ、そんな事はありませんが……」

「もしかして勇者様の後を追って湯上がり姿をアピールしたりして?」


「ふぇ!? そ、そんなのダメです、やっぱりもう少しお風呂を楽しみましょう」

「……分かりました、ネムさんの事も任されていますので2人に合わせますね」


「ネムちゃんもまだ大丈夫ですよね? それにサウナも試してないなら汗を流せば眠気もスッキリしますよー」

「サウナー?」


「ええ、それと脱衣場にはちゃんと冷たい水とか湯上がりに飲む美味しい飲み物もあるので、喉が渇いたら無理せず飲んで良いですからねー」

「おー♪」


「あ、そうでした、勇者様」

「!?」


 俺が聞き耳してたのを見透かす様に、メアリーが壁越しに話し掛けてきた。

 返事をしずらい状況だが、仕方ないのでそれに返答する。


「えっと、なにかなメアリー?」

「聞こえていたかも知れませんが、脱衣場の休憩スペースに飲み物も用意されていますので、自由に飲んでくださいね」


「ああ、わかった、身体を洗う為の石鹸やシャンプー、新しいタオルとかも色々と用意してくれてありがとう、メアリー」

「!!」


 そう返答したら何だか最後、驚いたような反応をしてるようにも感じたけど……

 まあいいか、取り敢えずドキドキお風呂イベントもこれで終わりだな。


 キャッキャッ♪


 なにやら女湯の方では楽しそうな会話とかもまだ聞こえるけど、あまり長風呂して逆上せないようには気を付けて欲しいところだ。


 特にネムはまだ幼いし思った以上に相手に気を遣ったりもするから皆に合わせて我慢とかしなければ良いけど、まあアルマとメアリーが居るし、エマさんもその辺はちゃんと配慮とか出来るだろうから大丈夫かな。


 眠気とかも気にしてくれてたみたいだし、流石は大人の女性だと感心した。


 身体もしっかり洗えたしゆっくりお湯にも入れたし、それに父の友人でもあったグラウスとも話す事が出来て良かった。

 記憶は殆ど無いのだが、両親の昔の話を聞けたのは個人的には何か嬉しかった。


 ピヨヒコはそんな事を考えつつ脱衣場の休憩スペースに向かう事にした。

 浴場の入り口に大きめのタオルが置いてあったので濡れた髪と身体を拭いた。

 そして着替える前にメアリーに教えて貰った冷たい飲み物を飲むことにした。


 休憩スペースには、飲料水などを入れる専用の冷蔵庫が設置されていた。

 どうやら氷魔法を利用した魔道具のようだ。ドアが透明なガラスになっていて、外からでも中身が確認出来て便利だ。中には色々な種類の飲み物が置いてある。


「お、コーヒー牛乳に、フルーツ牛乳まである、スゴい」


 記憶は無くしてもこの手の名前は覚えてるんだよな、それに何かこの世界に無いような物とかの事も知っていたりするし、よく分からない記憶喪失だよなぁ……


 ピヨヒコは腰に手を当てて身体を逸らし、勢いよくコーヒー牛乳を飲み干す。


「ゴク、ゴク、ゴク、ぷはぁー」


 ああ”ー、キンキンに冷えたコーヒー牛乳が逆上せて火照った身体と、渇いた喉を一気に潤し浸透する。


「はぁぁ、悪魔的な美味しさだぁ、大きなお風呂は本当に最高だな」


 美味しかったし折角の機会なのでフルーツ牛乳も一本貰うとしよう。


 飲み終わった瓶を置くテーブルもちゃんと用意されていて、既に空の瓶が置いてあったので、先に風呂を上がった第一王子のグラウスが飲んだやつかもしれない。


 本当に至れり尽くせだな。蓋を開けるとフルーツ牛乳の甘い匂いが漂う。

 今度は思考スキルを発動させて、振り返りながら味わいつつ飲むとしよう。


 それにしても10歳の誕生日の時もだが、この風呂は何かドキドキする事がよく起きる。当時の記憶は朧気だけど、確かお風呂で逆上せて、ぼー、として、その後も個室で休んで寝てたら、誰かが部屋に訪ねて来て、それでそれから……うーん?


 ダメだ、よく思い出せない。

 それにおねしょした記憶なんて思い出したくもないし別にどうでもいいか。


 それより今回のお風呂だ。グラウスとの遭遇も含めて色々とドキドキした。

 何が一番ヤバかったって、それはもちろんメアリーの裸体、もだけどエマさんの喘ぎ声だな。

 あの時もし身体を乗り出して壁の下を覗いていたら一体どんな光景が広がっていたんだろう。想像するだけでスゴく興奮する。


 ムクッ


 会話の流れから察すると、エマさんは湯あみのタオルも装備してなかったみたいだし、それにネムに身体を触られて更には”吸われた”とか言ってたし。

 ネムが母親を思い浮かべて吸うって事はやっぱりアレしかないよな……ゴクリッ


 てか10歳でそれはどうなの? ハーピアの10歳は大人じゃなかったの!?


 エマさんの大人の魅力と溢れる母性に幼児退行でもしたのだろうか? それなら分からなくもないけどな、本音を云えば俺も吸っていいなら吸ってみたいし。


 それにあの声、美人でおっとりした印象のエマさんがあんなに乱れたエッチな声を出すなんて……声のみだったけど、それが逆に想像力を掻き立てられて、聞いていて何かすごくドキドキした。


 ムクリッ


 自分はどうやらネムや背後の少女みたいな年下よりも、エマさんみたいな大人の女性に魅力を感じるようだ。

 いや、でも別にマルクスが言ったように母性に飢えている訳ではないしマザコンじゃないぞ。同世代の女性もちゃんと好きだからな?


 ムクッ?


 それにアルマも湯あみのタオルを取り返していたみたいだけど、その前は大事なところを手で隠して、隠し切れずに見えていたとエマさんが言ってたけど、確かに手で隠すって何かそれだけでエロく見えるかも……それに他の女性も称賛していたアルマの特長とも言えるあの大きなおっぱい。


 直接は見てはいないけど、その柔らかい感触は俺も一応、知っている。


 ムクムクー


 うん無理だわ、もし覗いてた場合を想像したらまた身体が反応してしまった。

 しかも3人がこちらに気が付いて、恥ずかしがる姿まで想像してしまった。


 ネムは正直どんな反応をするのか予想が付かないけど、吸われてる姿を見られて驚いて顔を真っ赤にするエマさんに、湯あみのタオル姿で慌てながら恥ずかしがるアルマとか、裸じゃないにしてもそれだけで眼福だし……ゴクリッ


「あー、やっぱりちょっと見たかったな、いや、覗きは絶対ダメだけどさ」


 危険を侵してあそこまで行動したなら、ちょっとだけでも覗けば良かったと少し後悔はしてるけど、でもバレた時のリスクを考えると止めておいて正解だよな。


 取り敢えず咎めずに許してくれたメアリーには本当に感謝しかない。


 それに何度か状況を説明するような話し方もしていたけど、あれってもしかして俺が壁越しで”聞き耳”を立ててたのに気が付いてた感じなのだろうか?

 マルクスの護衛なら気配を察知するスキルとか使えてもおかしくはないし。


 流石は優秀なメイドさんだな、それに何故か裸まで見せてくれたし。


 濡れた裸体が色っぽかったけど、状況的に俺も焦っていたのでそこまでエロくは感じなかったけど、あ、いやでも何かこちらの視線に反応してモジモジして、赤面しながら手で隠して恥ずかしがっていたから、やっぱりかなりエロかったかも。


 それに、なんというか、スゴく綺麗だった。


 ビィィン!!


「コク、コクッ、ゴクリッ、何ともドキドキするお風呂の時間だったな……ふぅ」


 お風呂イベントを振り返り満足したので思考スキルを解除した。考えを整理するのに便利だけど集中するからやっぱり少し疲れるな。

 それに具体的に思い出したら興奮して、マイコニッドがまた反応しちゃったし。


「まあ夜風にでも当たってれば自然と治まるかな、取り敢えずは着替えよっと」


 味わいながらフルーツ牛乳を飲み干したピヨヒコは、そのまま後ろを振り向く。


 するとそこには、顔を真っ赤にしてこちらを見ている、うら若い少女が居た。


「あ、また忘れてた……」

《もう、なんて事を考えてるのよ、変態! しかも今度は前も隠してないし!!》


「あえ?」


 そう言えば手桶のピラミッドから倒れた拍子にタオルが外れて、回収はしたけどそのまま装備するのを忘れていたかも、これは大変失礼しました……あれ?


 いや、でも待てよ? そもそも装備の着脱の決定権はこの少女にもあるんだし、脱げていたのを知りながら装備しなかったって事にもなるんじゃね?

 つまりこの少女は、着けて無いのを知りつつもタオルを装備し直さなかった?


 ムクッ?


 その理由はズバリ、大きくなった俺のマイマイコニッドに興味があったから?

 両手で前を隠しつつ、ピヨヒコは強く念じてその推測を少女にぶつけてみた。


《……っ!!》


 すると少女は、こちらから顔を背けてうつ向いて、耳まで真っ赤にしていた。


 明らかに動揺しているようだ。でも何か意外な反応なんだけど、もっと反論して怒ってくるかとも思ったから、そんな素直に恥ずかしがられると俺の方も何か段々と恥ずかしい気分になってくるんだけど!?


 別にこの少女に見られて興奮するとかそんな性癖はないけど、沈黙されると何か複雑な気分になる。

 いやでも別に俺もわざと見せてた訳じゃないからな、どうにもならないから諦めてるだけだし。


 反応を見るとどうやら推理が当たったようだけど、この少女もお年頃なんだし、俺と同じで異性の裸とかに興味はあるのだろう。

 サウナ室でグラウスと遭遇した時は、何か背後からねっとりとしたエロい視線で見られていた感覚もあるしな。


 でもその気持ちは俺も分かるから、そんなに気にするな。いや、でもやっぱり、あまりガン見されると俺も恥ずかしいから、そんなにジロジロとは見ないでね? 


 それらも含めてやんわりと念じて伝えておこう。届けこの思い、むむむ〜!


《はぁ!? 馬鹿じゃないの!? 私だってそんな粗末なモノ、好き好んで見てた訳じゃないわよ!!》


 おお、今度は反論してきた。やっぱりこの少女はこのくらい勇ましくないとな。

 あまりナヨナヨと可愛いらしい反応をされても、こっちも対応に困るしな。


 ピヨヒコは見られて恥ずかしかったけど、画面の中の少女の動揺した姿を見て、操られて覗きを強要させられた仕返しが少し出来た気分になり、満足した。


 そして満足したので着替える為に脱衣場のロッカーに向かうのだが……


 何故かそのままその場から身体が動かない。


「あれ、身体が前に進まないんだけど、これもしかして少女が放置してる!?」


 いや、嘘でしょ? 俺まだスッポンポンの状態なんだけど、まさかさっきの仕返しのつもりか? でもお互い様だよね!? そりゃ俺の方は別にそんな嫌な思いはしてないけどさ、寧ろ眼福だったから少し感謝すらしてたりもするけどさぁ!!


 画面越しに少女を観てみると、俯いて何かを考えているような様子だ。


 いや、ちょっとぉ!? せめて収納した湯あみのタオルだけでも巻かせてよ! 

 と言うかこんな半端な状況で放置プレイとか、勘弁して欲しいんだけどぉ!?


     ◇


「なんで? どうして……」


 どうしてこの主人公は、私が”女”だと知っているの!?


 ゲームの初期設定でプレイヤーの性別を記入する項目でもあったのだろうか?

 でもそれなら最初に遊んでいたのは弟なんだから”男”を選択するはずだし。


 しかも私が”年下の少女”だと特定して念じてきたんだけど!?


 それに私が考えている事まで推測してきたし。あ、いや、別にピヨヒコのおっきしたマモノが見たくて湯浴みのタオルを着けるのを忘れていた訳ではないけど。


 そもそもインナー装備は外せない仕様なんだからね、装備画面で確認すれば今もちゃんと装備して……ない!?


 え、何で!? と言うか【エクスカリバー】ってなに!?


 確認してみたらインナー装備の名前が変わってたんだけど、何よこれ?


 自分のモノは伝説の聖剣とでも言いたいの? 馬鹿じゃないの!?

 確かにかなり大きいとは思ったけど自慢してるの? あ、いや、別に他の男の人のそんな大きさとか、平均サイズとか、そんなのは知らないけど。


 それに何よ”ドキドキお風呂イベント”って、メインストーリー関連なのに初っ端から下ネタ満載な内容だったじゃないか!! マイコニッドって表現を誤魔化せばセーフだとでも思ってるの!? しかも何かマスコットみたいな扱いだったし。


 いや、それは今は置いといて、これはどう考えてもおかしい。


 この主人公はプレイヤーのみならず、明らかに操作してる私自身の事を認識してそれに合わせて本当に会話してるように念じている。何で私が恥ずかしそうな表情をしていた事をコイツは知っているの?


 それに何か私を見て【背後の少女】とかも思考メッセージで言っていたし。


 背後を見るって事は、ゲームの画面を映している【カメラ】を向こうも認識しているって事になるのか? いや、でもそれだと私の様子まで認識は出来ないのか。


 という事はもしかして主人公の背後に【追従する画面】でも浮かんでるの?


 なんなのよ、このゲーム!?


 ダメだ、混乱する、ちょっと冷静に考えて整理しよう。えっと、つまりその背後の画面を通じて、この主人公も私の今の姿とかを見て、認識……してる?


 いや無理、何か怖い。

 取り敢えず今日はもうセーブしてゲームを止めよう。


 そもそも私はエッチな展開を期待してゲームを遊んでいる訳じゃないんだから、何がその気持ちは分かるだ、分かられてたまるか!

 そりゃ思春期だから異性の裸とか、そう言う行為にも多少なり興味もあるけど、人の心を勝手に読むなし!!


「……何で私はこんなにドキドキして顔を赤らめてるのよ、もうなんなのよ」


 他のゲームと似たようなシステムも多いけど、奇抜な設定もあるしストーリーの続きも気にはなるけど、でもやっぱり怖い、何か変だし……


 だって主人公がプレイヤーの私の事を認識して念を送ってきて、それがシナリオの展開にまで組み込まれているんだよ!?


 これじゃまるで、私もこのゲームの”歯車”の1つみたいじゃない!


 もしかしてこのままシナリオを進めて行くと私って存在もゲームの中で解明されたりする感じなの? なによそれ、私はゲームのキャラじゃない!!


 確かプレイヤーがゲームキャラに認識されるアドベンチャーなら”ネタバレ”的な要素であった気もするけど、それだって決められたシナリオに沿ってる感じだし。


 このゲームは他のゲームとは明らかに違う、何処か異質だ。


 だって、主人公が思考を巡らせて自発的に発言するし、しかも仲間だけではなくプレイヤーの私に対しても”思考”をメッセージで伝えて語りかけて来たんだもん。


 もしかしたら元々そういう”コンセプト”のゲームシステムの可能性もあるけど、それにしたってゲームのキャラがプレイヤーを認識して自由に思考を伝えるとか、そんな事があり得るのだろうか?


 それはまるで、そのゲームの世界で本当に”生きている”みたいにすら感じる。


 それに生殺与奪の権利とか気軽に言ったけど、私の選択次第では本当に取り返しのつかないような悲惨な展開とかにもなるんじゃ……

 いや、所詮はゲームなんだし、それも含めて楽しめば良いとは思うんだけど。


 いざとなればリセットすれば良いんだし、それは分かってるんだけど。


 と言うか何でこの主人公は私の姿を認識してるの!? テレビに隠しカメラでも付いてるの? あ、でも本体に設置されているゲーム専用のカメラは一応付いてるけど、これ対応してたの? でも相手はゲームのキャラクターなんでしょ?


 しかも設定してある”仮想アバター”ではなく私の姿をちゃんと認識してるみたいだし、プライバシーフィルターが機能してないんだけど!?


 うん無理、ちょっと一旦落ち着こう、と言うか動揺してそのまま放置してた。


《じぃー……》


 ゲームの画面を観てみるとピヨヒコが何か云いたげな顔でこちらを観ていた。

 改めてよく見てみると、本当に生きているようにも思えてきた。

 それに思考メッセージでまた何やら訴えて来ているし、えっと、なになに?


 放置プレイするなって? ……うん、無視しよう。


 天性の”ポジティブスキル”を所持している桜子でも、受け入れ難い状況に対して困惑したので、セーブしてゲームを中断する事にした。


 取り敢えず気持ちが落ち着くまで放置するのもあリかもしれない。

 それともこのままゲームを辞めて、この主人公のように記憶を封印して、全てを忘れてしまうのもありなのかもしれない……うん、そうしよう!


 そうだ、私もお風呂にでも入ってスッキリしよう。

 いや、スッキリってそう言う意味じゃなくて、あ、いや、そうじゃなくて。


「ああ、もう調子が狂うぅ!!」


 それにしてもピヨヒコも手でアソコを隠してたけど、隠しきれてなくて何か本当に余計に卑猥に見えたんだけど……ゴクリっ、て、ナニを考えてるのよ、私は!?


 困惑しつつも悶々としていた桜子は、お風呂に入ってスッキリする事にした。


     ◇

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