第34話 ドキドキお風呂イベント 中編
お風呂回は下ネタ表現と微エロ要素を多分に含みます
ので苦手な方には申し訳ないですが、ご了承ください。
図書室から個室に向かいその後、離れにある大浴場に向かった。
その一行で済む説明なのに、ここまで来るのに何か時間が掛かった気がする。
「ふーむ、これか? メアリーが言ってた入浴専用の装備って? 普通のタオルだけど、でも確かにこれがあれば大事な所は守れるし、それだけで安心感があるな」
メアリーの説明だとこの浴場施設は入り口が男女に分かれていて脱衣場があり、そこで着ている装備を脱いでから“湯あみのタオル”があるので、それで大切な箇所を守りつつ、脱衣場の奥の大きな浴場で温かい湯に浸かれるようだ。
女性用のもあるようだが、これと同じで下だけ隠す感じなのか? でもそれだと上が丸見えだが、おそらく同時に隠せるバスタオルっぽい感じだとは思うけど……
ムクッ
いかん、想像したら身体のある箇所が反応してしまった。
アルマは少し小柄だが豊満なおっぱいの持ち主でスタイルも良いし、ネムもまだペッタンこだけど美少女だし、案内してくれたメアリーも可愛い印象でマルクスの護衛も兼任してるだけありメイド服の上からでも分かる鍛えられた健康的な身体でスタイルも良かったし胸もそれなりに大きかった。
同世代のうら若い女性のタオル一枚の姿を想像すれば男なら反応しちゃうよな。
ムクムクッ
それに後から合流するかもしれないと言っていた司書のエマさんも、ほんわかした雰囲気だけど、大人の魅力あふれる肉感的な身体をしていたし。
ムクリッ
秘書のシルビアも小柄だが制服をピシッと着こなしてスタイルは良かった。
この人は正直苦手意識もあるからあまり好みではないけど、それでも実は怖がりだったり、嫉妬深いがそれだけ一途だったりと、ギャップでの可愛さは感じたから打ち解ければ印象も変わるかもしれない。
いや打ち解けるって、別にそんな深い関係を望んでいる訳ではないが。
と言うかシルビアってマルクスの愛人? ではないか、マルクスは独身と言っていたし、秘書だけど同時に恋人とかだったりするのかもしれない。
マルクスの女遊びを咎めてるように見えて、明らかに他の女性に対して嫉妬してるような感じだったし、二人はそういう淫らな大人の関係なのだろうか?
ムクッ?
5人の中なら俺は正直エマさんが一番好みだけど、心を許してる相手はやっぱりアルマだな。
別に恋愛対象としては見てないけど、でも普通に可愛いし、好きかと聞かれたら好きだと答えられるくらいには大切な存在だとは想っている。
けど何処かシルビアにも似た"狂気"を秘めている感じもあるし、お菓子の件では面倒な女って印象もあるにはあるけどな……
シュン……
そ、それでも年上だし信頼は出来るし便りになるし、俺よりも大人の女性だ。
それにアルマも普段は理性的だけど、案外そういう行為に興味はありそうだし、と言うかあるからな、ククリコの店では興味津々にじっくりと見られたし。
まああれはスライムローションの影響もあったとは思うけど、俺も何か変な気分だったし。それに例の貴婦人のミランダも、何か凄くて色々とヤバかった……
ムクムクッ
あとマルクスの話だと、この国で二年間一緒に過ごした同世代の女性も居るようだし、記憶はないけどどんな関係だったんだろう?
性格や容姿とか少し気になるけど、大人っぽい感じかな? もしかしたら初恋の相手だったり、恋人関係とかの可能性もあったりはするのかも?
いや、幼いピヨヒコ少年は何か内気な性格って印象だし、今の俺もそこまで恋愛に積極的ではないから普通に家族みたいな感覚だったかもしれないけど、その辺は全然覚えていないからよく分からないな。
ムクッ?
それと先代の勇者も何か女性同士で、”キャッキャウフフ”してたみたいだけど、どんな女性だったんだろう? ブックルの話を聞いた感じだと何となく可愛らしい印象はあるけど、それに仲間の賢者と風呂場で一体どんな行為をしてたんだか……
と言うか、女性同士の場合ってどうやって一緒に致すの?
ピヨヒコはそんな女性陣の湯あみのタオル姿を想像し、更には如何わしい妄想をして悶々して、遂にはおっきした。
ビィィン!!
「あ、やばい……し、鎮まれ、俺のマイコニッド!」
ムクッ?
男性専用の脱衣場だし今は他に人も居ないし、大事な箇所はタオルで隠しているから勃起しても別に問題はないけど、取り敢えずお風呂だ、お風呂。温かいお湯にゆっくりと浸かれば昂った気分も落ち着くはずだ。
そう思いピヨヒコは装備を脱いでタオル一枚になり、後ろを振り向く。
するとそこには、宙に浮かぶ画面とその中にはうら若い少女の姿があった。
「あ、忘れてた」
《ちょっ、いきなり振り向くなぁ! しかも何か大きくしてるし!?》
「……まあいいや、どうにもならないし、前は隠せてるから大丈夫だな」
《はぁ!? なにその反応!!》
タオルで隠してたけど大きく張ったテントを見られた。
少女も頬を赤らめて慌てているけど、常に一緒なので別に見られてもいいやって気分にはなってるな。それに昼にも既に一度見られているし、何か怒ってるようだから一応念じて謝っておくけど、あまりジロジロ見ないようには促しておこう。
届けこの思い、むむむ……
画面の少女もスラッとした体型に長いストレートの黒髪で、普通に可愛い容姿なんだけど、年下だからか特には何とも思わないな。それに胸もちっさいし。
薄い生地の部屋着で、両手で何か握りながらこちらを見てるけど、油断してるのか脚を大きく開いたり胡座を掻いたりしてるから、たまにチラチラと下着が見える事もあるけど、俺のマイコニッドも特に興味は示さないな。
ネムもだけど、どうやら自分は年下の女子にはそこまで反応しないようだ。
それにこの画面の少女は基本的にはスルーしてる相手だしな。
「さーて、そんな事よりお風呂だ、お風呂♪」
《なぁ!?》
◇
なんなのよコイツ!? 私の事をまるで相手にもしてないように扱って!
しかもあまりジロジロ見るなですって? こっちだって好きでそんな粗末なモノ見たい訳じゃないわよ、何がむむむ、だ、むむむで念じると届くのか? 私の事をバカにしてるの!?
むむむ、私はプレイヤーだぞ、分かってるの? 生殺与奪の権利を持ってるんだぞ!? やろうと思えば極悪人プレイやひたすらダンジョンの壁に向かって歩いてぶつかるとかも出来るんだからね? あまり舐めてると処すよ!?
それに私もアンタとそんなに歳も変わらない女子なんだぞ、警戒はしてたけど、お風呂に入る前からいきなりそんな無警戒で振り向かないでよ、油断したわ!!
桜子はピヨヒコの態度に不満を感じるも、タオルの中のおっきしたマモノを想像して頬を赤く染めた。
「ああ、もう、何でこんな細部までリアルに作り込んでるのよ!!」
ハァ、でもこの主人公からしたらプレイヤーを認識してたとしても私が男か女か分からないのか? お風呂を楽しみにしてたみたいだし、ここで変な行動させるのも興醒めだからこのまま普通にイベントを進めるかな……一応、謝ってはいたし。
それにピヨヒコには後でたっぷりと操られている実感を味わってもらう事になる予定だからね、それまでせいぜいお風呂を楽しむと良いわ。
今夜は寝かせないんだからね? て、何かその言い方だと少し如何わしい感じにも聞こえるけど、べ、別にそう言う変な意味じゃないからね!?
「……ハァ、何か調子が狂うなぁ」
それと湯あみのタオルはそのまま所持品に加わったけど、これはこのまま貰っても良いのかな? まあ防御力は皆無だけど。
と言うか今更だけど装備とかもちゃんとキャラに反映されるんだなこのゲーム。
会話の流れでアルマとかもローブや帽子を勝手に着たり脱いだりもしてるけど、イベントに合わせているだけで、実際にはそのまま装備してる状態なのかな?
まあ別に戦闘シーンとかではないし問題はないけど、描写がいちいち細かいな。
それにまだ予備の防具は持ってないからよく分からないけど、これ城下町とかで装備を脱いだり、変更したらどうなるんだろう?
メニュー画面を開いている間は"ポーズ"が掛かってるから着替えシーンまで会話に反映されないとは思うけど。
街中でいきなり着替えたりしたら、アルマとか何かしら反応はするのかな?
流石にないと思うけど、それに一応インナー装備までは外せないみたいだし。
その辺は他のゲームでもよくある仕様だけど、でもこのゲームは油断ならない。
イベント次第では今回みたいに勝手に装備を脱いだりする描写もありそうだ。
ちなみに湯あみのタオルは脱衣場のロッカーの前に移動したら、勝手に主人公が脱ぎ出して装備が変更された。
こんな感じで強制的なイベント演出も何気に多いんだけど、主人公の脱衣シーンなんて別に見せなくても良いんだけど。
サービスシーンって可愛い女性キャラで見せたりするものなんじゃないの?
しかもピヨヒコもこちらを全く意識してない感じで平然と脱ぎ出したから、何か本当に背後から覗き見してる感覚になって、少し変な気分になったんだけど。
「……それにしても大きかったな、そんなところで"勇者らしさ"をアピールしないでよ、ゲームとは言えグラフィックは妙にリアルだから少しドキドキしたわ」
このゲーム、本当によく規制とかに引っ掛からずにそのまま発売出来たな。
◇
カポーン……
銭湯みたいな施設だと思ったけど、天井が無く吹き抜けになっていて露天風呂のような感じだ。
でも女湯とはタイル壁で隔てられているので混浴ではないけど、それでも天井は空いてるので、もしかしたら向こうの声とかも聞こえるかもしれない。
そんな事を考えながら壁面にやたらと沢山積んで置いてあった手桶を1つ取り、風呂からお湯をすくい身体を洗う。湯船に入る前に身体を洗うのはマナーだしな。
石鹸やシャンプーなども、来客用にちゃんと備え付けてあるようだ。
バシャー
お湯は程よい熱さで、夜の暗さが湯気の白さを際立たせている。お城の敷地を囲む外壁にこの浴場施設の壁も面しているのだが、正面の外壁がガラス張りになっていて、外の景色も堪能できる。それに高台にお城が建っているからガラス面に密着しなければ外部から覗かれる心配もまずなさそうだ。
ワシャワシャ……
「おお、何だこのシャンプー、スゴい泡立つ」
位置的には北区の王国管理区の方向に面しているので図書室とは逆方向の景色になるけど、夜の城下町の灯りが闇夜に灯る蛍のようで、何処か幻想的な夜景だ。
それに何処か懐かしい感覚もあるな。懐かしいと感じたのは10歳の誕生日にもこの大きなお風呂には入った記憶があるからだ。
だけど何故か女の人と一緒に入った記憶もうっすらあるんだけど、それに他にももう1人、女の子が居たような? もしかしてその当時は女湯の方にでも入ったのだろうか? いや10歳でそれはアウトなのでは!?
ムクッ?
「……石鹸も何か良い匂いだな、ククリコのお店で扱ってるやつかな?」
身体を洗う用の生地の柔らかい新品のタオルまで置いてあるのでメアリーが用意してくれたのかもしれない。至れり尽くせりだ、現状だとお風呂は滅多に入れないだろうし、この機会に身体の垢を徹底的に洗い流すとしよう。
ゴシゴシッ、モコモコ
そんな事を考えながら10歳の誕生日の記憶を更に思い起こす。
誰と入ったんだっけ? よく思い出せないけど、湯船に浸かっていたら途中から入って来たような? それで子供ながらにその女性の裸に興奮しておっきしてそれをもう1人の女の子にも見られて、恥ずかしい気分になってそのまま逆上せて……
ムクムクッ
「キァー♪」
「ほらネムちゃん……に入る前に……を洗って」
「スゴい、おっきいねー」
「この……は王族や……専用です……大きいですね」
ビクゥッ!!
いや、湯船の事だよね!? てかやっぱり女湯の声が聞こえるのか……
アルマとメアリーの声はそこまで明確には聞こえないけど、はしゃいでいるからかネムの声は聞き取り易いな、何か台詞とタイミングが絶妙でビックリしたわ!
男女を隔てるタイルの壁面に鏡や石鹸などが置いてあるからそこで身体を洗ってたけど、耳を澄ませたり、壁際に近寄らなければそこまで声は聞こえないかな?
盗み聞きしてる気分にもなるし、取り敢えずなるべく意識しないようにしよう。
キャッキャッ♪
何かネムがはしゃいでいる声が聞こえる。暖かいお湯は好きだと言っていたし、大きなお風呂にテンションが上がってるのかもしれないな。
俺も当時の年齢だとちょうど今のネムくらいじゃないか?
そう考えたら異性と一緒にお風呂に入るのは、やっぱり普通にアウトだよな。
まあよく覚えてないし過ぎ去りし過去の記憶だ、今は再び訪れた大きなお風呂を楽しむとしよう。
「……おっと、ここもちゃんと洗わないとな」
ゴシゴシ、ワシャワシャ、キュッキュ
ムクー♪
《……コイツまた私の存在を完全に忘れているな》
壁の上面にはライトが設置されていて浴場全体を照らしている。
月明かりもあるのでそこまで暗く感じないが、どうやらこの灯りも魔法を使った魔道具みたいだ。探索や移動を考えると魔法のカンテラとかも今後は必要だな。
画面の少女もその辺は理解してるとは思うけど、所持金は足りてないけど必要なものは色々とある感じだ。ネムのアウター防具も早めに買わないとだしな。
バシャー……
「ふぅ、風魔法も良いけどやっぱりお湯で髪や身体を洗うとスッキリするな」
メアリーが言っていたサウナは、男女を隔てたタイル壁とは反対側に木造造りの壁とドアがあるからその中のようだ。湿気にも強い木材を使ってるのか丈夫な造りで大きめのガラスも張ってあるので外からでもその中の様子が分かる仕様だ。
露天風呂の左側に備え付けの縦長な簡易部屋が設置してある印象だな。
「何か湯気で曇っていて中の様子がよく見えないな? 少し違和感を感じるけど、身体も洗い終わったし湯船に入る前に先にサウナを試してみるかな」
ザバー……キャッキャッ♪
耳を澄ませると女湯の方から身体を洗ってるような音とか声も聞こえる。
邪念を振り払う為にもサウナで汗を流そう。
そう思いピヨヒコはサウナ室のドアを開けて中に入る。
「おわっ、熱気と湯気がスゴい、それにやっぱり中はかなり熱いな」
室内には熱を帯びた不思議な石が設置されていて、それに備え付けられてる水を掛ける事で室温や湿度を調整してるようだ。
これも火の魔法を使った魔道具なのかもしれないけど、熱気がある湯気と蒸気に包まれて如何にもサウナ風呂って感じだな。
「……」
湯気の熱量に耐えながら壁面と一体型になっている木の長椅子に腰掛ける。
熱いから目を閉じて物思いにでも更けつつ、サウナを堪能するとしよう。
心頭を滅却すれば火もまた涼し、だ!
「はぁ〜、身体の芯がポカポカしてきて汗が噴き出してくる、思ったよりも湿気と湯気がスゴいけど、いやはや、これは気持ち良いな~」
「……そうか」
「それにしてもこのサウナは常にこんなに熱が籠ってるのかな? 他にも客人とか王族関係者が使うとは言っていたけど……あ、そうか、外気との温度差でガラスがこんなに曇ってたのか、それで何か違和感を感じたのかも」
「……まあ今は俺が使っていたからな」
「王族関係者と言えば、この国の騎士団長でもあり第一王子様は危険を顧みず自ら前線に赴いて兵を率いて魔王軍と戦うとか聞いたけど、本当にスゴいよなぁ」
「!」
「いやでも時期国王になる人物だろうし何かあったら一大事なんじゃないのか? それでも勇猛果敢に敵軍と戦う姿は民衆の希望にもなるし、俺も憧れるけどなぁ」
「……」
「それに何かメアリーの話だとこの国で五本の指に入る実力だとか、一体何レベルくらいなんだろう? それと父親のジークフルドとも無二の親友だったらしいけど英雄と呼ばれた父親はどのくらいのレベルだったんだ? ……30くらいかな?」
「……俺はレベル48で、ジークは確か当時でレベル50だった気がするが」
「ああ、でも名前、名前がやっぱり出てこない、俺との関係的にはマルクスと同じで"伯父"に当たる人物なんだし流石に覚えてないとか失礼だよな……えっと確か、グラムとかグラスとかそんな感じだったとは思うんだけど……グラコスだっけ?」
「……グラウスだ」
「ああ、それだ、グラウス! 良かった思い出した、ありがとう……って!?」
「……思い出したなら良かったよ、ピヨヒコ君」
声の聞こえた方向を見ると、そこには見覚えのある男性が隣に座っていた。
そう、二階の廊下で部下を引き連れてすれ違ったこの国の第一王子でありながら王国騎士団の団長でもある【グラウス】その人だ。
◇
「……ごくりっ」
ハッ、いけない、思った以上に凄い肉体の中年のグラウスに見惚れていた!!
ピヨヒコと同じでタオルで前は隠してるけど、筋肉がスゴい、腹筋が割れてる、そして渋い大人の雰囲気を纏っていて何かドキドキする。個人的にはありかも!?
背後の画面から勝手にグラウスを推し認定するプレイヤーの桜子。
まだ開化させていないが、腐魔法の適性を秘めている14歳の女子だ。
それにしてもこのタイミングで遭遇か。いつか対面するとは思ってたけど、てかレベル48に50か、吟遊詩人のベオルフが確か35だったから、予想の範疇ではあるけど、おそらく四天魔族やラスボスの魔王に挑む基準にはなるんだろうなぁ。
それにもしかして、マルクスと同じく勇者として認められればグラウスも名簿に載る感じなのかも?
まあまだギルドで名簿の確認はしてないから、マルクスも本当に仲間に出来るのかもよく分からないけど、51人も候補が居るなら可能性は十分にありそうだ。
既に強化済みの星5レジェンダリーキャラって印象だけど、もし認められて名簿に載ってガチャで引き当てたら使ってみたいキャラではあるかな。
見た目も渋くてカッコいいし、所持している装備もかなり強いだろうしな。
それにしてもピヨヒコなんで気が付かないかな、普通に座ってて驚いたけど話し掛けようと思ったら勝手に座って一人言を始めたし……まあ面白い展開にはなったけど、と言うかまた私の存在を忘れて身体を入念に洗っていたし。
背中越しで泡だらけだったから細部までよくは見えなかったけど、全く勘弁して欲しいわ。
◇
「……」
「……」
サウナ室に男が2人、熱気で汗が噴き出すも両者とも無言だ。グラウスはまるで動かない石像のように微動だにしない。いや、石像はそもそも動かないのだが。
これはもしかして試されているのだろうか? マルクスも何度かこちらを試す様な事をしていたし、ふむ、ならばこの勝負、受けてやろうじゃないか!
沈黙に耐え兼ねたピヨヒコは、勝手な思い込みで我慢対決をする事にした。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
《いや、何か話せよ!》
ぐっ、背後の少女が会話を催促してくる。だって何か気まずいんだもん。
なんだろうこの感覚、そうだ厳格な印象のある父親と重なるんだ。ぐぬぬ、何を喋ったら良いんだ? マルクスの時は別に緊張とかはしなかったのに、何かスゴい重圧を感じて身体が萎縮する。俺のマイマイコニッドも怯えてすっかり縮こまってしまった、別に怖いとかではないんだけど……
シュン……
寡黙な雰囲気に飲み込まれて言葉が出ない。しかも忘れてた名前を当の本人から聞く事になるとは、なんたる不覚!! しかしこのままでは話が進まない。ここは1つ、思い切って例の話を切り出そう。
「あの」
「……?」
「いやその、マルクス……様には話したのですが、実は――」
ピヨヒコは疑うべき容疑者の1人にも関わらず、記憶喪失の件をグラウスに素直に話した。普通に対話をしても相手は父の親友だ、こちらの事もよく知っていると思われる、なので"ボロ"が出る前に打ち明ける事にした。
もちろん記憶の雫を使った犯人の可能性はあるので警戒は怠らない。
なるべく手短に、言葉を選びつつも相手の反応を確認するが特に怪しい素振りはない、と言うかこの第一王子様、表情が変わらないから全く思考が読めない。
ポーカーフェイスと言うよりはそう言う性格なんだろうけど、何かやっぱり緊張するな。飄々とした女誑しのマルクスと兄弟とは思えないのだが、でもどこか似た雰囲気はあるかも? 取り敢えず記憶に関して分かってる事をグラウスに伝えた。
もちろん画面の少女の話はしてないが、反応を見ても見えてはいないようだし、今更だけど、やっぱりこの背後の画面は俺にしか認識されないようだ。
「……そうか」
「でも勇者としての使命は強く感じてます、マルクスにも言われたけど、焦らずに自分の出来る事をしていくつもりです、そしていつか魔王を倒します!」
「……ああ、そうだな、取り敢えずそんなに畏まらなくても良いぞ、俺の事も気軽にグラウスと呼び捨てにしてくれて構わん」
「え、あ……でも」
「……また名前を忘れられても嫌だからな、呼び捨てなら覚えるだろう?」
「!!」
「……」
「あ、いや、それは……そう、記憶の雫の影響で、それでグラウスの名前も忘れてしまって、だから決してこのお城で会って会釈した後にアルマに名前を一度聞いたのにその後で普通に忘れてしまい、そのまま思い出せなかった訳ではないんだ!」
「……そうなのか?」
「あ、何か自分で余計な事まで自白したかも!?」
「……いや冗談のつもりだったんだが、そんなに緊張するな」
「うぐ……わ、分かった」
「……取り敢えず表に出るか?」
「え? 表に出ろ!? もしかして勇者としての実力を測る為に決闘を望んでいるのか!? いや、しかしいくら何でも今の俺の実力じゃ……」
「……決闘か、まあそれはいつか機会があればにしよう、取り敢えずこのサウナから出ようか、汗もだいぶ掻いただろう? あまり無理すると脱水症状を引き起こすからな」
「あ、表に出ろってサウナの事か、確かに緊張してたのもあって少しクラクラして来たかも……」
ピヨヒコは促されるままサウナから出た。グラウスも少し遅れてから出てくる。
火の始末をしていたみたいだが、緊張して汗もたっぷり流したし、俺もサウナはもういいな。
天井が吹き抜けなので、外の少し肌寒い外気が火照った肌を冷やす。
「ふあぁぁ、何か夜風が気持ち良いな」
「……そうか、それとこれを飲むと良い」
そう言うとグラウスは何もない空間から冷たい飲み水を出してくれた。
確かに喉も渇いてたので、ピヨヒコはそれを素直に受け取り飲み干す。
ゴクゴクッ
「ぷはぁ、生き返る、ありがとう、グラウスは空間魔法が使えるんだな」
「……ああ、君の固有スキル程ではないがね」
「……そ、そうか」
「……話すなら湯船に浸かろうか」
当たり前のようにストレージの事も知ってたところを見ると、やはり自分の事もそれなりに詳しいようだ。それに今の感じだと記憶を失う前のピヨヒコは、自分の意思でストレージを使用してたって事か……?
それならもしかして俺も自力でストレージを使えたりもするのかな?
取り敢えず促されたので、身体をお湯で流してから湯船に浸かる事にした。
女湯の方からも何やら話し声とかも聞こえたが、グラウスの前で女湯に耳を傾ける何て事は出来ないので、こちらの会話に集中しよう。
「はぁ、良い湯だな、身体が温まる、大きな露天風呂だし夜景も最高だな」
「……気に入ったなら良かった、俺も風呂は好きでよく此処を使っているよ」
「記憶はそんなにないけど、グラウスは俺の父親のジークフルドとは親友だったんだよな? 父はどんな人物だったんだ? 幼い頃の俺の記憶だと厳格だけど強さと優しさを兼ね備えた印象ではあるんだけど、正直少し怖いイメージもあるな」
「……ふむ、そうだな」
そう質問するとグラウスは幼い頃の父の事や自分の妹アリシアと父の関係性など詳しく教えてくれた。
どうやら同盟国同士で幼い頃からの知り合いだったらしく、幼馴染みでもあり、ライバルのような関係だったらしい。お互い切磋琢磨しスキルを磨き、認め合っていたようだ。
それに付き添う母のアリシア、父のジークフルドとは反発しあったりもしたが、次第に若い2人は惹かれ合うようになったとか。
兄としては嬉しくもあり少し複雑な気持ちでもあったらしい。
どうやら2人は元々許嫁の関係だったようで、アリシアは親同士の意向で勝手に決められた婚約者のジークフルドの事を最初は嫌っていたりもしたそうだ。
その話を聞いても自分の記憶の中の父や母の印象とはイマイチ結び付かなかったけど、おそらくその話の内容は記憶を無くす前のピヨヒコも知らなかった事なんだと思う。
知らなかった両親の一面を知れて、ちょっと嬉しい気持ちになった。
と言うか無口な印象だけど、グラウスも語り出すと口数が増えて聞いていて少し戸惑ったが、別にそこまで極端に口下手って訳ではないようだ。
「……記憶の雫が原因だとしても俺ではないし、もしそうだとしても話を聞く限りだと俺も身内を無闇に疑いたくはないな」
「そうか、分かった、マルクスにも伝えたけど何か切っ掛けとかがあれば思い出すみたいだし焦らず思い出すとするよ、両親の事を色々と教えてくれてありがとう」
「……いや、俺も君とちゃんと話せて良かったよ」
「えっと、グラウスから見て、記憶を失う前の俺はどんな印象だった?」
「……そうだな、この王国で暮らし始めた頃はどこか怯えた印象はあったな、まあそれも仕方ないが、ジークもその時期の君との接し方には少し悩んでいたな」
「そうなのか、母を失い魔物や魔族に対する恐怖の気持ちも強かったし、慣れない環境に戸惑ってたとかもあったとは思うけど……」
「……そうか、それでもジークは父親として君の事は大切にしていたよ、もし自分に何かあった時には君の事を頼むとも云われていた」
「……」
「……それに大規模侵攻のその後の二年間、教会で暮らしてた時期にも君には何度か会ったが、その時は落ち着いてはいたが何処か心に闇を抱えてるようには見えたな、それを表には出さなかったが、妹も君のことを心配してたよ」
「……そ、そうか、すまない、その頃の記憶は朧げでよく覚えてないんだ」
また然り気無く情報が出たな。マルクスは”とある施設”と言ってたけど教会か、それに妹って事は、お姫様だよね? 記憶はないけど母親の妹なんだし、この国のお姫様とも交流があったって事か。
と言っても関係的には叔母になるんだし、それなりに年上だとは思うけど。
いやでも第三王子はまだ6歳とも云ってたし、もしかしたらまだ若いのかも?
「……この後、再び姿を現し勇者として名乗り出た時は、魔族や魔物に対して強い憎しみを露にして、確かに心に余裕が無かったようには俺も感じたな」
「……マルクスもそんな事を言ってたけど、消息不明だったらしい半年の間に何か心境の変化でもあった感じなのかもしれないな」
「……それでも勇者としてヤル気に満ちていたから俺としては嬉しくもあったが、怯えてた頃の君を見て、ジークは憂いてもいたからな」
「……ふむ?」
「……ジークは勇者としての天啓を受けた幼い君を導いて、責任感や使命感など、戦士としての自覚を持って欲しいと考えていたようだからな、君に取ってはそれが余計にプレッシャーになっていたのかもしれないが」
「……成る程」
もしかしたらそれで厳しい印象の父に対して抵抗感とかあったかもしれない。
「……そんなところだが、今の君は見た感じだと確かに憑き物が堕ちた感じはあるな、それに勇者としての自覚もあり、使命感も感じているようだし、記憶が無くて色々と不安もあるとは思うが、理性的だし落ち着いてるようには見えるよ」
「……そ、そうか」
「……それに記憶を無くす前は俺と話した事など殆ど無かったからな……今の君を見て正直少し驚いている」
「え、そうなの!?」
「……まあ俺もそんなに積極的に子供と話す性格ではないからな」
「……そうなのか、でも色々と教えてくれてありがとう、グラウス」
「……ああ、俺も君と話せて良かったよ、俺はそろそろ上がるからゆっくり湯船に浸かるといい」
「ん、分かった」
「……あと、それと」
「?」
「……出来たらアルマの事を気に掛けてやってくれ、あの子も臆病なところはあるが、自分の与えられた役目を果たそうと無理をする性格だから、あまり気負い過ぎないように君がよく見ていてくれれば、俺も少しは安心出来る」
「ああ、分かった、俺もアルマには支えられて何度も助けて貰っているからお互い様だが、アルマの事は何があっても絶対に守るよ」
「そうか、頼む」
そう言うとグラウスは湯船から上がり、出口に向かう。その身体には魔王軍との戦闘の激しさを物語るような無数の古傷があり、歴戦の戦士としての”強さ”を垣間見た気がした。口数は少なくとも背中で語る。そんなグラウスを凄くカッコいいと感じた。
グラウスの姿が見えなくなるのを確認してから一息つく。
手で湯を掬い、顔に浴びせて汗を流す。
パシャッ、ザバサバッ
「ぷっはー、やっぱり何か緊張したなぁ」
何か緊張のせいか途中から口癖が移って俺も台詞の最初に……を付けていたし。
それにアルマの事は俺も少し気負ってるとは思ったけど、グラウスもそう感じてはいたようだ。
幼い頃から交流もあるようだし、グラウスやマルクス達からすれば”娘”のような存在なのかも知れないな。
ふぅ、取り敢えずやっと湯を堪能する事も出来るから、ゆっくり浸かろう。
カポーン……
それにしても何気にアルマはお城で人気があるんだな。素直で一生懸命な性格だし、幼い頃から誰かの背中を付いて歩いていたとも言ってたから、大人から見たら健気な頑張りやさんにも見えるのかもしれないな。
勉強熱心で魔法にも精通していて、知識も豊富だし、とても優秀な魔術師だからそれだけ周りからの期待も大きいのだろう。
そう言えばエマさんも”妹”のように感じているとか言ってたっけ。いやでも確かあの時、何か少し言葉を濁してたような……
「あ、メアリーも一緒に入っ……ですね私も久し振りに……のお風呂には入りますけどやっぱり……て良いですよねー」
「あ、エマだー」
「ネムちゃん、私も来ましたよー」
「おー♪」
そんな事を考えていたら同時に女湯から声が聞こえてきた。どうやらエマさんも仕事が終わり合流したようだ。またしても何かタイミングが絶妙なんだけど。
途切れ途切れではあるが、否応なしにも会話が聞こえる、ならば耳を傾けよう。
ピヨヒコは1人なのをいい事に、遠慮や自重などなく女湯に聞き耳をした。
「……っ、ちょっ……マさん、タオル、タオルをちゃんと……てください」
「ア……さんなに言ってるんですか」
「ふぇ!?」
「お……に入るのにタオルで……を隠す何て邪……すよ、それにせっかくの大きな……風呂なんですからもっと開放的になりましょうよ、ほら……マさんも、女性同士なんですから、そんなに恥ずかしがらずに、タ……なんて脱いで下さい」
「言われ……ればそうですね、……脱ぎます」
「ネムも脱ぐー」
「ちょ……メアリーまで!?」
「さあさあアルマさんも、そんな……ルは取っちゃいましょうねー」
「ひゃっ、ちょっと、まって……」
ムクムクッ
あ、畏縮して縮こまっていた俺のマイコニッドがまた元気になった。




