第33話 ドキドキお風呂イベント 前編
マルクス伯父さんに皆の前で10歳の誕生日におねしょした事をバラされた。
記憶を思い起こすとそれが事実であった事を確信してピヨヒコの心を抉る。
取り敢えずマルクスから聞ける情報は出揃ったのでお泊まりタイムだ。
二階の図書室から出て一階の階段に向かう。用意してくれた個室はどうやら一階にあるらしい。
メアリーが先導して案内してくれているが、廊下には見廻りの兵士とかも何人か居るようだ。魔法のランタンが付いているので城内はそこまで暗くはないが、もう夜も遅いので辺りは静寂に包まれ、その静けさがお城の独特な雰囲気を強調していてまるで幽霊でも出そうな感じだ。
幽霊と言えば、すっかり忘れてたけどそんな男も居たな。串焼きは取られたけどあのまま何処かに消えたようで音沙汰がない。
演奏も止まっているのでもしかしたら本当に帰ったのかもしれないが、実に平和で良いことだ。
ネムの事は責任を持って育てるので、草葉の陰から見守らなくて良いから安心して成仏してくれ。
ピヨヒコは心の中で念仏を唱えた。そこまで嫌悪感があるかと聞かれたら、まだそこまで交流してないので何とも言えないが、それでも奴はストーカー行為を平然と行う危険な男だ。それに串焼きを窃盗した容疑も依然として晴れてはいないので油断は出来ない、うん、やっぱりあの男は敵だ。
「着きました、ここが今夜泊まっていただくお部屋になります」
「え? ああ、ありがとう」
そんな事を考えながら歩いていたら部屋に付いたようだ。個室と言っても横並びの客室なようで、俺とアルマとネムの部屋を各々に用意してくれたらしい。
ブックルはネムと一緒に寝るようだが、性別的には男っぽいがまあ本だし問題ないだろう。理性的な性格だしあの吟遊詩人よりは遥かに信用は出来る。
「この後はお城の離れにあるお風呂にご案内致しますが、先に部屋で何かするならこのまま少し待ちますね」
「分かった、取り敢えず中の様子を確認しても良いかな? お風呂の前に鎧や装飾品のマントはここで外しても良さそうだし」
「もちろん構いませんよ、部屋には装備を掛けるハンガーラックも有りますので、もしご用の際はお申し付けください、それとベットの上に就寝用の部屋着も用意しましたので、もし必要ならお使い下さい」
「寝巻きまで? ああ、分かった、アルマとネムも部屋に装備とか置いていくなら準備する感じで、えっと、俺はこのまま手前の部屋で良いかな?」
「分かりました、私もローブと帽子は部屋に置いていきますね、そうですね、ネムちゃんとブックルさんはどっちの部屋が良いです?」
「選んでもいいの?」
「俺様は別に何処でも良いからネムに任せるゾ」
「ん、わかったー」
「ああ、右の手前の部屋が良いならそれでも良いぞ」
「じゃあネムとブックルはこっちの部屋ー」
「分かりました、それじゃあ私が残った部屋を使いますね」
「それなら俺はそのままこの部屋を使うよ、横並びだし中は同じだとは思うけど」
「そうですね、ここは客室専用の部屋なので、内装は同じタイプにはなりますね」
「親切な対応ありがとう、メアリー」
「勇者様、もし鎧を脱ぐのが大変ならお手伝いも致しますが」
「ふぇ!?」
「……いや、俺の着てる鎧はそこまで脱ぐのは手間でもないし大丈夫だよ、えっとネムの装備は見た感じインナーのみだよな?」
「そうだよ、ここで脱ぐ?」
「ふぁ!? いや、インナーは着てないと色々と危険だから、脱ぐなら脱衣場で、そう言えばネムは鞄とかも持ってなかったけど、予備の着替えとかは無いのか?」
「ないよー」
「そうか、仲間になったんだし今後の冒険を考えるとクエストに挑む前に最低でもアウターの防具とかは買う必要がありそうだな、それにアイテムポーチも貰った事だし個人用の回復ポーションも要るな」
「買ってくれるの?」
「必要な物はもちろん買うと思うけど、えっとネムは踊り子が職業になるのか? 鉄の鎧は重くて着れないと思うけど革製の胸当てとか装束なら装備出来そうかな」
「出来ると思うけど、でもお金が無いなら後回しでもいいよ?」
「うぐっ、確かに所持金はそこまで余裕は無いけど装備は最優先だしお金はネムが気にしないでも良いから、心配しなくて大丈夫だよ」
「そうなの? わかったー」
ネムはやっぱり良い子だな。
あの吟遊詩人は、まだ幼いネムに一体どんな生活を強いていたんだろう。
空腹も我慢してた感じだったし、もしかして食事もまともに与えてない感じか?
一応、弾き語りとかで日銭は稼いでいたみたいだけど、別に兄妹って訳でもないだろうし今度現れたら関係性も含めて聞いてみるかな? いや、でもやっぱり会いたくないからもう出て来なくても良いや、頼むからそのまま成仏してくれ。
貧乏なのは俺も同じだけど、取り敢えず拠点の目処も立ったし、ネムやアルマに苦労を掛けさせないように使命を果たしつつ、頑張ってお金も稼がないとだな。
そんな気遣いも出来る優しくて健気なネムの事を改めてちゃんと観てみた。
「じぃー……」
ネムの装備は下は丈夫そうなデニム素材のショートパンツで上はノースリーブのニットトップスで首元まで覆っている。
ハーピアの特徴でもある大きな翼の腕をどうやって通しているのかはよく分からないけど、健康的な印象で似合ってる。
着替えるのにも大変そうだけど、お腹の部分は出ているからオヘソが丸見えだし全体的にはかなり露出度は高いので、戦闘するには心許ない感じだ。
とは言え、空も飛ぶようなのであまり重かったり、かさ張る装備は本人が嫌がる可能性もありそうだが……うーん、装備の重量制限はやっぱり厄介だなぁ。
「む~?」
「ン? なんだ、ネムの事を見てるノカ?」
「あ、この視線は、私も前に感じた事があります、ネムちゃんが危険です」
「じぃー……」
髪は薄い色合いの金色で中分けされたミディアムヘアに後ろ髪を三つ編みのように結っていて小さな青いリボンで止めている。
自分で編んだんだろうか? もしそうならネムは手先が器用なのかもしれない。
料理も器用にフォークやナイフを使って食べていたし、翼の先端は普通に人族と変わらない子供らしい小さな手なんだよな。
翼の構造はよく分からないけど、手首から鳥のように拡げられる羽根が連なっていて、普段は折り畳んでるようだ。飛ぶところも後でちゃんと見てみたいな。
それに容姿は可愛らしいクリっとした大きな瞳に、小さくツンとした口元で屈託のない笑顔をよく見せてくれる。その自然な立ち振舞いには愛嬌があり人懐っこい印象で、誰とでも直ぐに打ち解けて仲良くなれるのは才能とも言えるだろう。
まだ幼く、小柄で胸やお尻はまだまだ発展途上の子供だけど、細い腰とスラッとした長細い足が、スタイルの良さを物語っている。その透き通るような白い肌と翼も相まって"天使"のような雰囲気のある美少女だ。
今年でまだ10歳とか言ってたし踊り子としても未熟さは感じるけど将来きっとスゴい美人になるだろう……って!?
そんな観察をしていたら鼻先にネムの顔があり、目が合った。
「うわっ、びっくりした!」
「どうしたのー?」
「え!? いや、なんでもないよ」
「ピヨヒコ、仲間でもあんまり女の子をジロジロ観ると失礼ダゾ?」
「うぇ!? そ、そんなに見てないと思うけど?」
「見られてたよ、もう少しでビンタするところだったー」
「え、あ、ゴメンなさい」
「じとー……」
「何かアルマの視線が怖いんだけど、もしかして俺もこんなねちっこい感じでネムの事を見てたのか? 確かにそれなら失礼だったかも」
「な!?」
「ネム、不快にさせたならゴメンな、装備の話をしてた流れでネムを観ながらどうするか少し考えていたんだが、可愛いかったからそのまま見惚れてしまったけど、今後は気を付けるよ」
「むー、それなら別にいいけど、それよりお部屋とお風呂はー?」
「ああ、そうだな、メアリーをあまり待たせるのも悪いし支度をしてくるよ、装備に関しては後々改めて考えるとするよ」
「……ぷぅ」
「え、何でアルマはそんな頬を膨らませて怒ってるの?」
「私の時は最初はそんな台詞言わなかったじゃないですか」
「え、え?」
「……なんでもありません、私も部屋で準備してきますね」
「ブックルも行こー」
「そうだな、オオ? 何かベッドが2つあるゾ」
「別にゆっくりでも構いませんけど、確かにもう遅い時間ですからね」
「俺も部屋で準備してくるよ、何か騒がしくてゴメンな」
「いえ、見ていて楽しいので大丈夫ですよ、何か気心が知れた仲間って感じですし羨ましいくらいです」
「……そうか?」
とは言っても、ネムとブックルに関しては今日会ったばかりなんだけどな。
でも確かに、3人とも既に大切な仲間だよな、演奏担当の1人は除くけど。
あとそれに仲間といえばもう1人、相棒ともいえる相手がそう言えば居たな。
そんな事を考えつつ、ピヨヒコは自分の個室に入った。
取り敢えず所持金は心許ないが、それでもネムのアウター防具は絶対必要なので背後の相棒に強く念押ししておこう。
すると大丈夫、大丈夫、悪い様にはしないから任せとけ、と心強い感じなのだが何処か面倒くさそうな表情で応えてくれた。
あれ、これもしかして会話は出来なくてもコミュニケーション取れてる?
最初に少年に話し掛けた時は全くの無反応だったから、こちらの声は届いてないと思ってたけど、今までの行動の選択を考えると、何らかの方法で会話とかも把握している感じだよな、そもそも向こうの声は聞こえるんだからこっちの声も本当は聞こえているのか? なら何であの少年は俺の質問をガン無視したんだろう……
案外この画面の少女なら、こちらから話し掛ければ応じてくれるのかな?
でもこちらが操られてる手前、余計な対話を試みると必要以上に振り回されそうなので、取り敢えずは必要な時だけ、強く念じて語り掛けるようにするか。
基本的には常にスルーしてる相手だから普段はそんなに気にならないし、画面を認識してないと思われるアルマ達の目の前で少女に話し掛けても変な奴だと思われそうだし。それに今更って感じもあるしなぁ……
部屋を確認すると、ベッドが2つ置いてあり、ハンガーラックの他に机や椅子に大きめの姿見の付いたドレッサー、備え付けの時計まである。それにベッドの上にはメアリーが言っていた【寝巻きのパジャマ】が用意されていた。
これまでは冒険者の服を着てそのまま寝てたけど、至れり尽くせりだな。
部屋を照らす”魔法のカンテラ”も常備されていて、メアリーが気を利かせたのか既に灯されていて部屋は明るい。
ギルドの宿屋でも見たけど、魔道具ってのは本当に便利なものだ。
来客用だけあって全体的に豪華な造りでトイレも各部屋に備え付けてあるけど、どうやら普段は二人部屋で使ってるところを、個室として用意してくれたようだ。
これならネムとブックルもゆっくり羽を伸ばせるだろうし、アルマもここ2日間ギルドの宿屋で、二人部屋を強要させたけど、個室ならゆっくり休めるだろう。
それにしてもさっきは何であんなに怒ってたんだろう? お菓子の件で問い詰めた事をまだ引き摺ってるのか? 昨日と比べてもアルマの様子が少し変な気がするけど、泣きじゃくって幼児退行した影響で、精神が不安定な状態なのだろうか?
食事の時も何か頬を膨らませてリスみたいで少し可愛いとは思ったけど、まさかネムの容姿を褒めたから嫉妬したとかじゃないよな? うーん、女心はよく分からないな、それに何故だかメイドのメアリーもやけに好意的な感じだし……おっと。
あまり待たせるのも悪いし、集中して考えるなら思考スキルを発動しよう。
「そう言えば、意識してなかったけど俺ってこんな顔なんだな……」
お城に来る前にも武器防具の店の試着室に、大きな鏡は置いてあったけど自分の容姿とか特に気にせずに着替えてたな。という事は記憶がなくても潜在意識の中ではこの顔が自分の顔だと認識してたって事か。
自己評価すると可もなく不可もなくと言ったところだ。ククリコや憎きベオルフなど、別格レベルに美少年だったりイケメンな男も見てるから、比べるとどうしても見劣りしてしまうが、まあ平均よりはカッコいいと自己暗示する事にしよう。
よく考えたらマルクスとかこの国の王族とも血は繋がってるけど、顔とか似てるかは自分じゃよく分からないな、髪の色は同じだけど。
記憶の中の両親は美男美女の印象もあるのだが、母親は優しかったけど、父親のジークフルドは一緒に生活してた間の記憶は殆ど無いが、10歳の誕生日の記憶では何となく厳格で怖いイメージもあった気がする。
記憶もなく目覚めて、もしかしたら"ピヨヒコ"という人間に”転生”や”憑依”した全くの別人なのかも、とかも最初は考えてはいたけど、幼い頃の記憶を取り戻して自分が正真正銘ピヨヒコ本人だと実感出来たのは精神的にはかなりの収穫だった。
少なくとも自分が何者であるかの不安は払拭されて無くなったのだ。
いや、でもまだ記憶喪失よりも不可思議な懸念もあるにはあるけど……
うーん、やっぱり思考スキルは集中するからか何か疲れるので解除しよう。
でも折角覚えたんだし、たまにこうして使ってスキルの成長を促すかな。
しかし、何でこんな名前にしたのかは両親に問い詰めたいところだな。
何か名前のセンス的には背後の少女に通ずる感じもあるのだが、もう少しカッコいい感じの名前は思い付かなかったのだろうか……
まあ両親から授かった名前だし、自身の存在を感じられるので受け入れよう。
そんな事を考えながらも身体は勝手に動いて、鎧とマントを脱ぎ終わっていた。背後の少女に操られている理由とかは相変わらず謎だが、思考しながらでも勝手に行動して着替えとか行われるのは、ある意味では便利でもあるよな……
あ、いや、操られてる事を別に受け入れてはいないけど、何かもう慣れたな。
まあ自分で意識して着たり脱いだりくらいなら普通に出来るとは思うけど。
前にもそんな事を考えたので、試しに理性の腕輪を外してみたら普通に外せた。
何だ、装備に関しては自分の意思でも着脱は可能なのか?
でも背後の少女にバレたらまた付け直される気もするので一応着けておくか。
どのみち脱衣場で脱ぐとは思うけど、戦闘でいざとなった時は自分で判断して、メイン武器とサブ武器の切り替えくらいはするかな。
巨大スライムと戦った時は鋼のダガーに切り替えたけど、あれは自分の判断なのか画面の少女の指示なのか、何とも言えなかったけど。
それにアイテムを収納する”ストレージ”は画面の少女に管理されているから戦闘以外にもポーションとか回復の判断は任せるしかないし。
少女の選択した行動が自分の意識と”リンク”する感覚があるから、何処から何処まで操られて行動してるのか、イマイチ分からなかったりもするんだよなぁ……
流石に今こうして考えてる思考は自分の意思によるものだとは思うけど、行動が制限されて体の自由が効かないからか、そのぶん頭で思考する事は多い気はする。
でも、それって逆に考えたら……、
「……ハァ」
少し嫌な事を考えてしまい、ピヨヒコは溜め息を吐いて忘れる事にした。
脱いだバンデッドメイルと冒険者のマントはそのままストレージに収納された。それなら風呂場の脱衣場で脱げばいいんじゃね? と思ったがこれも背後の少女の判断なので仕方ない。と言うか、他の2人もアイテムボックスがあれば別に荷物を部屋に置く必要はないし、そのままお風呂に直行でも良い気がするんだけど?
あ、でもお風呂を上がるタイミングとかも別々にはなりそうだし風呂場に着いたら後は各自で部屋に戻って来て、そのまま就寝する感じにした方が良いかも。
それだったら先に部屋を案内して貰った方が良いな、成る程、気が利いてる。
あと個室にはトイレもあるようなので、ついでに済ませておくかな……
ジャー……
あ、そうか、図書室で結構長い時間、説明を聞いてたから用を足す意味でも先に部屋に案内してくれたのかも。納得した、流石は優秀なメイドさんだ。
部屋を出ると既にネムとブックルは自分達の部屋の前で待っていた。
手荷物もないし時間も掛からないのだろう。
マルクスから貰ったアイテムポーチもそのまま腰に付けている状態だ。
「お待たせ、アルマはまだみたいだな」
「フカフカなベッドだッタナ、2つも置いてあったし、贅沢だゼ」
「そうだな、てかブックルはそのまま脱衣場で待機する予定なのか?」
「いや、おそらく湯気でも湿気るから脱衣場に入る前にネムのポーチに入るゾ」
「そうなの? わかったー」
だったらブックルは部屋で待機してれば良いんじゃね? そう思ったが仲間外れと思われそうだし、ネムもその辺は気遣いそうなのでその提案をするのは止めた。
「それにネムやアルマも、風呂に入るナラ脱衣場で服を脱ぐだろうし、俺様は本だから別に裸を見ても何とも思わナイが、アルマは流石に嫌がるだろうシナ」
「ん、ネムは別に良いけど、ブックルがそう言うならそうするね」
「俺もその辺はどうするのか少し気になってはいたけど、ブックルって喋り方とか人格的には男性の印象だけど、性欲とかは感じないのか?」
「五感はあるケド、女の裸とかそういう行為とか見ても別に興奮はしないナ」
「そうなのか? 魔物の中にはゴキブリンみたく性欲旺盛なやつも居るとは聞いたから、ブックルもそういう感覚はあると思ってた」
「あんな奴等と一緒にしないで欲しいガ、それにおっきするモノもないカラナ」
「おっきするマモノ?」
「ゲフンゲフン、そうか、まあ本だしな」
「性欲はなくても下ネタとかは出来るからピヨヒコがナニかそう言うので悩んだりシテルなら俺様で良ければ相談にはノルゾ? アイリンの時も恋愛とか色事とかで何回か悩んでたからな……女の子同士でそういう行為をしても良いのか、とか」
「ふぁ!?」
ガチャ……
「すみません、お待たせしました、どうかしました?」
「ゲフンゲフン、いや、何でもないよ」
目の前の部屋のドアからアルマが出てきたので咄嗟に誤魔化した。
アルマもこの手の話題はおそらく苦手だとは思うしな。
アルマの格好を見ると、着ていたローブと帽子は外して、インナーのゆったりとした感じのリネンのワンピースだけの状態だ。でも着替えとか入っていると思われる魔法の鞄はそのまま肩に掛けていた。
それに杖は持ってないので、ローブと一緒に個室に置いてきたのかもしれない。
ギルドの宿屋でもインナーのみの格好は何度か観たけど、腰周りとか体のラインはそんなに目立たないが、胸の大きさはローブを装備していた時よりも強調されるので目のやり場には少し困る。
もう謎の怒りも治まっているようなので、取り敢えず邪な視線を向けないように気を付けよう。
「じぃー……」
「え、なに? 顔に何か付いてる?」
「あ、いえ、なんでもないです」
「?」
特に怒ってはいないけど何故か逆にアルマに見られた。こっそり胸に視線を向けていたのがバレたのかと思い、焦ったけど違うようだ……何か品定めされた?
「コホン、それと勇者様、1つ確認なのですが」
「え、確認? 何かなメアリー?」
「マルクス様から明日のお昼過ぎまで部屋を自由に使って構わないと申し付けられていますが、朝のご予定はどうなさいます?」
「ああ、そう言えば昼まで寝てても良いとか言われたっけ……うーん、流石にその前に起きるとは思うけど、疲れも溜まってるからご厚意に甘えて昼頃までゆっくりさせて貰おうかな、お城の中ももう少し見て回りたいし」
「分かりました、朝食も用意はしますので一応8:00頃に各部屋に声は掛けますが、もし寝ているようならそのまま起こさないようにしておきますので、ゆっくり休んで疲れを取ってください」
「ああ、ありがとうメアリー、アルマとネムもそんな感じで、お城を発つのは昼頃でもいいか?」
「私はそれで大丈夫ですよ、早く起きたらお城のお庭でも見て回りますね」
「お庭ー?」
「お城の敷地内に立派な庭園とかもあるんですよ、それに先程まで居た図書室にもまだまだ色々な本はありますから、ネムちゃんも興味があれば一緒に回ります?」
「いいの? わーい♪」
「それじゃあ、メアリーそう言う事でお願いするよ」
「承知いたしました、それではお風呂の方に案内致しますね」
と言ってもベットで寝たらそのまま時間が飛ぶだろうし、寝た気分にはならないとは思うけど、まあそれでも眠気や疲れは何故か取れるし慣れるしかないか……
「おっ風呂、おっ風呂~♪」
「そう言えばアイリンもお風呂は好きだった気がスルな」
「そうなのか?」
「俺様は風呂場には入らなかったガ、よく風呂でキャッキャウフフしてたぞ」
「そ、そうか……」
それ多分1人じゃないよね? もしかしなくても2人は居るよね?
百合の賢者が仲間に居たとは聞いたけど、どうやらこの勇者様も本当に満更ではなかったようだ。他にも仲間が居たらしいけど、過去の冒険の書にはどんな内容が記されたのだろうか? まさかそういう行為とかは流石に載らないとは思うけど。
◇
「いや、そもそもそういう行為がイベントで発生すると困るんだけど?」
桜子はピヨヒコと同じ事を考えて、思考を読んだかのように返答した。
これ、やっぱり油断が出来ないゲームだな。この後のイベントも選択肢次第ではどんな展開になるか予想つかないし、一応さっきの個室でセーブは済ませたけど。
あまり破廉恥で如何わしい展開になるようなら強行手段を行使するよ?
それと個室で主人公の思考がまたメッセージで流れて来たけど、記憶喪失の事でピヨヒコ自身も思った以上に色々と考えてはいたようだ。まあこんな状況だと確かに不安になるとは思うけど、てか転生とか憑依とか、なかなか発想が達者だな。
まあ気持ちは分かるけど、私がもし同じ境遇なら心が折れるかもしれないし。
故郷を滅ぼされて両親を魔族に殺されて記憶を無くして更にはプレイヤーを認識して操られている実感がある設定みたいだし、いや言葉にするとてんこ盛りだな。
ゲームの設定とは言えRPGの主人公としてはピヨヒコも不遇な感じはあるね。
不幸な生い立ちの主人公なんて探せば他にもいくらでも居そうではあるけど。
でも何だかんだと可愛い女の子にも囲まれてるしハーレム系の主人公にも見えるけど、まあガチャの内容次第では私の"趣味趣向"が反映された男性キャラがメインで構成されたパーティーになる可能性もあるから、今の内に楽しむと良いわ。
そう言えばこの後のお風呂とかも細かく描写とかされるならもしかして……
いや別にゲームなんだし私がそんなに意識する事じゃないけど間違えても入浴中に後ろを振り向かないでよ!?
ちゃんと前は隠してね? 私はこれでもまだ中学二年生の女子なんだからな。
思春期、真っ只中の女子に変なモノとか晒してトラウマを植え付けないでよ?
そっちの念が伝わるなら、こちらの念もちゃんと読んで行動してよね!?
と言うかネムの言ってた"おっきするマモノ"ってもしかしてアレか、あのゲームに出てくるご立派様の事か? まさか似たような感じの魔物がこのゲームでも出たりはしないでしょうね。ダメだよ? 色々と危険だからね!?
それに何度も言ってるけど私は別にエッチな感じの展開なんて望んでないから、アルマやネムの入浴シーンの描写とか、お色気ハプニングとかの絡みも別に必要ないから本当に頼むよ? まさかそのお風呂って混浴とかじゃないでしょうね?
「……ハァ」
ゲームのキャラクターに向かって何を本気になっているんだろう私は。
それとネムの装備もそうだけど名刺交換システムでも仲間が増えるなら装備とか整えるのにも相応の資金は必要になりそうだし、拠点を貰えるにしても何か改築とか模様替えの要素とかもあるみたいだし、かなりお金は掛かりそうだ。
おまけに建国祭イベントでオークションがあるとも言ってたから全くお金が足りないんだけど、これおそらく重要なアイテムとかも出品されるよね?
ぶっちゃけ消息不明になっている魔王討伐するのに必要な”土の魔石”が手に入る関連イベントとかだよね?
魔石のコレクターが居るとかの情報もあったし、多分確定だとは思ってるけど。
オークションに参加する為にも何か楽してお金を稼ぐ方法とかある感じかな?
レベル上げの為に戦闘で経験値を貯めるなら別に問題ないけど、ゲームのお金を稼ぐ為に時間を掛けて行動するのは、正直モチベーションが下がりそうだなぁ……
取り敢えず拠点を手に入れてからの話だけど、他にもしたい事は色々とあるし。
◇
「もうすっかり夜だな」
「そうですね、月明かりもあるのでそこまで暗くはないですが」
メアリーに案内されてお城の一階の正面の入り口とは逆の裏口の扉から出ると、屋根の掛かった長い渡り廊下に出た。ここも造りは大理石で豪華だ。
城内の外の様子もそのまま見えるが、どうやら目的地の風呂場はこの先の離れにあるようで入城前にも見掛けた庭園とかも見えるが時間は既に22:00頃だ。
「ネム、眠くはないのか?」
「んー? まだ大丈夫だよー」
「そうか、それなら良いけど無理するなよ? 何か空腹デバフの時もギリギリまで我慢していた感じだったしツラい時はちゃんと伝えてくれよ」
「むー……、わかったー」
やっぱり眠いのも少し我慢してるのかもしれない。
「アルマ、悪いけどお風呂もだけど部屋に戻るまでネムの事を頼む、俺もなるべく気にはするけど」
「わかりました」
「オオ、俺様も居るから心配するな」
「そうか、なら任せるけど」
「もう、ネムは子供じゃないから大丈夫だよー」
「そ、そうか、何か気を使い過ぎたかもしれないな、子供扱いしてゴメン」
そうは言っても見た目はどう見てもまだ10歳の子供だし心配にはなるが。
ハーピアの種族の事はよく分からないけど、ネムは子供扱いされるのは嫌みたいだから、なるべく気を付けよう。
外にも巡回中の兵士が何人かは居るようだが、こんな時間までお勤めご苦労様と言いたい。外灯も付いてるのでそこまで怖い雰囲気はないけど、外の冷たい空気が肌に当たり心地よい。何と言うか、スゴい夜って感じだ。
「その大きな"お風呂"ってのはお城の外にある感じなのか?」
「そうですね、渡り廊下で地続きの場所ですが、普段は王族関係者やお客様とかが使用している感じですね」
「そうなんだ? あれ、それだと見廻りの衛兵とか、お城に勤めてる人、それこそメアリーとかはお風呂はどうしてるの? お湯で身体を拭く感じ?」
「いえ、お城の衛兵や給仕が寝泊まりする宿舎がこの敷地にあって、そこに浴室がありますので浴槽ではなくシャワー室みたいな感じですけど、男女で宿舎は分かれてるので、私も普段はそこを使ってますね」
「そうなのか、お風呂は準備とかも大変だし贅沢とは聞いたけど、お城勤めの人達が休める宿舎もちゃんとあるんだな」
「三階にある王様やお妃様、それこそマルクス様とかの王族の部屋にはちゃんとした浴槽付きの浴室も設置されてはいますけどね」
「あれ、それなら今向かってるお風呂は普段はあまり使われてない感じ?」
「いえ、離れのお風呂は大浴場になりますので個室よりも広くて、サウナも完備されてるので需要はありますよ、騎士団長様は遠征帰りとかだと部下を大勢引き連れて労ったりもしてますし、それと来客も多いので何かと利用はしてはいますね」
「ふむふむ……そう言えば第一王子様がこの国の騎士団長様なんだっけ? 王様の後継者としていずれ王になる立場だと思うけど、自ら率先して兵を率いて魔王軍と戦うなんて勇ましいな」
「ええ、そうですね、ギルドの冒険者も含めてもこの国で五本の指に入るくらいにはお強い方ですから、それにマルクス様もですが王族が自ら指揮を取るので民からの信望も厚いですね、それと騎士団長様は指揮だけではなく自ら強い魔物に対峙したりもしますからね、それだけ生傷も絶えないのですが、本当に尊敬できるスゴいお方です」
「そ、そうか、図書室に入る前に少し見掛けて会釈はしたけど、何か寡黙で厳格な印象はあったかも」
「私も直接お話する機会は少ないですけど、寡黙な印象は確かにありますが優しいお方ですよ、まあ私よりアルマさんの方が接する機会は多いと思いますが」
「え、そうなんだ?」
「そうですね、でも私もそこまで喋る機会はありませんけど……」
「そう言えばマルクスもアルマの事は幼い頃からよく知っていたとは言ってたな、勇者のサポートの選考でも自分が選んだとも言ってたし、それに気を遣って冒険の餞別にお菓――」
「……」
「あ、いや、それにエマさんもアルマの事は優秀な魔術師だと褒めてたし、王族からもそれだけ一目置かれてるって事だな、俺も記憶を無くす前はその騎士団長様とお互い知っている間柄みたいだし、マルクスみたいに直接話す機会もいつかあるかもしれないな、とにかく凄い人物なのは分かったよ」
ぐぬぬ、話題が出たからメアリーから第一王子の名前を引き出そうと思ったけど肝心の名前を言わなかったし、しかもアルマの地雷を踏み抜いてまた落ち込んだ顔をさせてしまった。
沈黙されるのがある意味一番しんどいな。ズズズーン……
騎士団長様の名前に関しては、また誰かに聞く機会や自力で思い出す事もきっとあるだろうから取り敢えず話題を変えよう。
「もう遅い時間だけど、その大浴場には他に入ってる人とかは居ないのか?」
「時間帯は調整していますので、他の来客と鉢合わせする事はありませんよ」
「そっか、それなら人目を気にせずにゆっくりお湯に浸かれそうだな、俺もお風呂は好きだから楽しみだ」
「あ、でもマルクス様のご厚意で図書室に一緒に居た、私達3人は今日は使用しても構わないと言われましたので、もしかしたらエマさんは図書室の整理が終わったらそのまま浴場に来るかもしれませんが」
「そうなんだ? まあ女風呂なら俺には関係ないけどな、アルマとも知り合いなら別に問題はないとは思うし」
「そうですね、エマさんなら別に私も平気ですけど……」
「そう言えば、秘書のシルビアさんはあのままマルクスに付いて行ったけど、後でそのお風呂を利用する感じなのか? 何か少し酔ってたみたいだけど」
「いえ、シルビアさんは多分……コホン、まあそうですね、折角の機会なので後で入るとは思いますよ、マルクス様の秘書なので色々と忙しいとは思いますけど」
「そうか、メアリーもそのまま一緒に入浴する感じ?」
「いえ、私も後で入りますけど、案内役なので今は入りませんよ、でももし勇者様が必要でしたらお背中でもお流し致しますけど、どうします?」
「ふぇ!?」
「え!? あ、いや俺は大丈夫、それより一緒に入っても良いならネムの方に付いてくれないか? 少し眠たそうにも見えるし、大きな湯船ではしゃぐと危険もありそうだから、アルマも居るけどメアリーが一緒なら安心だしな」
「……そうですか、勇者様がそう仰るならそうしますけど」
「ネムもそれでいいか? なんかその服とかも脱ぐのが大変そうだけど」
と言うか翼よりも服の腕を通す隙間の方が狭く見えるんだけど、どうやってそれ着てるの? ニット素材なら伸縮性もあるのか?
脱ぐところを見たいとは流石に言えないけど、何か少し気になるんだけど。
「ん〜、別に1人でも大丈夫だけど、メアリーやエマも一緒に入るならそっちの方が楽しそうかも?」
「そうか、それとお風呂を上がるタイミングは俺に合わせる必要は無いから、もし俺の方が長風呂でも待たずにそのまま部屋に戻って休む感じで頼むよ、道も地続きだから迷う事はなさそうだし」
「分かりました、私もそれで構わないですけど、ネムちゃんに合わせますね」
「助かるよ、それに少し肌寒いから待ってると湯冷めする可能性もあるしな」
「ネムも別にそれでいいよー」
「なんかメアリーの今の口振りだと俺が上がるまで待っててくれそうだったから、折角の機会だしメアリーも肩までお湯に浸かってゆっくり温まれば良いよ、俺の方もサウナとかあるなら試してみたいし、大きなお風呂を独占出来るなら、ゆっくり湯船に浸かって長風呂するかもしれないしな」
「……勇者様は優しいですね、私なんかの為にありがとうございます」
「ええ? いや別に普通の事を言ったつもりなんだけど?」
と言うよりも背後の少女の決定でもあるのだが。
俺も流石に断るつもりだったけど、メアリーの提案に対して速攻で『いいえ』が選ばれた気がする。まあネム達と一緒にお風呂に入る提案は俺が考えた事だけど。
少女としてもこの手の色仕掛け的なお誘いには抵抗感とかはあるのだろう。
それにお昼にもそんな感じの騒動があったしな。
俺としては冒険の支障にならないなら別にどっちでも良いんだけどな。
マルクスほど女誑しの最低な屑野郎じゃないけど、魅力的な若い女性から積極的に誘われたら悪い気はしないし、それに自制はするが人並みには性欲もあるしな。
と言うか、何故か既視感がある質問だった気がするんだけど?
もし少女が『はい』を選んでいたらメアリーは男風呂に入ってたのか?
もしかして裸で? ゴクリッ
「じぃ……」
「な、何だろうかアルマさん? そんなにジロジロ見ないでくださいよ」
そんな邪な事を妄想をしてたらアルマがまた何か言いたげな視線でこちらを見て来たので思わず丁寧語になったわ……と、それにどうやら目的地に着いたようだ。
お城を囲う城壁の左側の奥に位置していて建物が城壁に面しているようだ。
外見は木造造りで昔ながらの銭湯っぽい印象なのだが、入り口は男女で分かれていて女湯は左で、男湯は右、赤と青の暖簾がいかにも風呂場といった雰囲気だ。
城の洋風な雰囲気からてっきりテルマエ・ロマエのようなのを想像していたけど何か和風って感じだ。記憶は無いのだが何故かそんな知識はあるんだよな。
もしかしたら城下町にある大衆浴場もこんな感じで、幼い頃に父親にでも連れられて利用していて、その知識が一般教養として備わっているのかも知れない。
「勇者様、着きましたよ、それにお風呂に入るならその前に身体をこちらに向けてください、ネムちゃんとブックルさんも必要なら一緒に」
「え、アルマ、何かするの?」
「勇者様とネムちゃんは一張羅ですから、お風呂に入る前に風魔法で先に服を綺麗にしますよ、そうすれば入浴後に同じ服を着ても不衛生ではないですし、不快感もそんなにないと思いますから」
「ああ、例の洗浄の魔法のやつか、確かにそれは助かるかも」
「お、俺様も良いのか」
「ネムもー?」
「大丈夫ですよ、今日は魔力もそんな使ってないので皆まとめてでもいけますし、メアリーも必要なら一緒にどうぞ」
「でもアルマ、その格好だと……と言うか杖は?」
「ちゃんと持ってきてますよ」
「え、そうなの?」
そう言うとアルマは肩に掛けてた魔法の鞄から杖を取り出した。
部屋に置いて来たと思っていたけど、どうやら収納していたようだ。
そしてその杖をインナー装備の上から太ももで挟んで、風でスカートが捲れないようにした。魔女が箒に股がっている感じだけど、何かそれはそれで少し如何わしい感じにも思えるのだが、何も言わずに黙って見届けよう。じぃー……
「撫風よ、その慈しみで穢れを落とせ、エアロクリーナー」
ブワァァワァァァ……
詠唱の後に魔法が発動する。皮膚を撫でる爽快な風が身体に纏い、衣類に付いた汚れなどが落とされていく感覚がある。風の力だけでそんな綺麗になるのかと疑問には感じるけど、魔法なので何か不思議な効果があるのかもしれない。
「ふぅ、やっぱり何かスッキリするな」
「確かに、俺様もページに張り付いた生クリームの汚れが落ちてる気がするゾ」
「おー♪」
「スカートだと風ではためくからそれが欠点ですよね、手で押さえていれば問題はないですけど」
「ちょ、ちょっとメアリー!? そう思うなら手でちゃんとスカートを押さえててください、みえ、見えちゃってますよ!?」
「むむ?」
アルマがそんな事を言ったので条件反射でメアリーの方を向くピヨヒコ。
「ブックルさん!」
「オオ、任せろ!」
バサッ
「ブボッ、ま、前が見えない、おのれブックル、邪魔を!!」
「何を当たり前のように見ようとしてるんですか、ダメですよ!」
「フフ、やっぱり楽しそうなパーティーですよね」
「アルマ、風魔法ってすごいねー♪」
こうして和やかに話をしつつも大浴場までたどり着いた。ここまで何か長かった気もするが、取り敢えず温かいお湯にゆっくり浸かれそうだ。
「それジャあ俺様は湿気ると困るしネムのポーチに避難するゼ、風呂から上がった後か部屋に戻ったら取り出してクレ」
「ん、わかったー」
「イクゾ、構えろネム!」
「ばっちこーい!」
「トリャァァア!」
「ストらーーいく♪」
パヒューーン!!
そして何時もの儀式でブックルは事前に言っていた通り脱衣場に入る前にネムのアイテムポーチの中に入った。
その事はアルマもやはり懸念していたようで、その様子を見て安堵した。
ブックルは本で魔物みたいな見た目だけど、気遣いが出来る立派な紳士だな。
アルマも最初に比べると、ネムやブックルとも打ち解けたようで良かった。
◇
「うーむ、やっぱりハニートラップ的な選択肢もあったか……」
用心はしてたけど、でもどうしよう、もし『はい』を選んでいたらどんな展開になるのかは気になるけど会話が長いからリセットしてまで繰り返し同じ台詞は聞きたくはないし、一応ここでまたセーブはしておくかな。
流石に混浴ではないみたいで良かったけど、まだまだ油断は出来ない。と言うかそのまま直ぐにお風呂イベントなのかと思ったら違ったし。
無駄な話にも思える会話も意外と伏線とかだったりはするし、ボイスも付いてるからからあまり読み飛したくないしなぁ……
まあ取り敢えず後はお風呂に入って部屋で休めば、この長かった訪問イベントも終わりだな……とは思ってないけどね。
まだまだお楽しみはこれからだよ、フッフッフ。
◇




