第31話 名刺交換システム
アルマの説得に成功して、唐突に始まった攻防戦クエストの説明。
本来の目的であった筈なのに、予想外のタイミングで少し戸惑った。
そしてマルクスから渡された一枚のカード。
「仲間?」
「ああ、魔王を倒す為には君の成長は必要不可欠だけど、それを支える仲間の力も必要だ、それに数多のクエストに挑むにしても、君達だけだと心許ないからね」
「オイオイ、俺様も居るゾ」
「ネムもちゃんと戦えるぞー」
「ああ、そうだったね、でもブックル君に関しては冒険の書として扱われると思うからパーティー制限には含まれないんじゃないかな、その見た目だと冒険者ギルドに登録する事も流石に無理だしね」
「ガーン、オ、俺様は真の仲間じゃなかっタのか!?」
「いや、そんな事はないよ、冒険の書と言うアイテムとして扱われるから戦闘中にネム君が使用する事でブックル君が支援する事は出来るはずだよ」
「ネムがブックルを使うの?」
「俺様はネムに使われるのか?」
「つまりネムの行動ターンを使うことでブックルが戦える感じか?」
「魔法の力を宿した武具やアイテムなどは戦闘中に使う事で特殊な効果を発揮する物もあるからね、投擲アイテムなんかも一応それに含まれるね」
「なるほど、投擲アイテムなら前に一度使った事はあるけどブックルもそれに該当する感じか」
「ウーン? そう言えばアイリンと一緒に冒険してた時もそんな感じだったような気もスルが、いや、でも確か……? 何だっけ、ダメだ、思い出せない」
「ブックルも記憶喪失~?」
「何が出来るかはまだよく分からないけど、ブックルには冒険の書としての使命があるんだから無理して戦闘に参加する必要はないけどな」
「ウ~ン? ナンカこう、スゴい活躍してた気もするんダが……」
「ブックルはネムが守るから安心していいよ?」
「グヌヌ……デモ危ない時は俺様も出来る事で支援スルゾ、魔物の特性や弱点とかは頭に入ってるから、情報支援は出来るしな」
「あ、ああ、そうだな敵の情報を制すればそれは勝利にも繋がるし、会話だけなら行動ターンには含まれないから頼りにしてるよ」
「オオ、任せろ!」
その辺はアルマが居れば何とかなるとも思ったが意気込んでいるブックルを落ち込ませる事もないので黙ってよう、それにネムを戦わせるのは少し心配だったけどブックルが一緒に居るなら少しは安心も出来るしな。
アイリンがどんな勇者だったのかは分からないけど、本の身でありながら魔王を封印するまで一緒に冒険したなら、それなりに頼りにはなるだろう。
「それと気になってたんだが、パーティー制限ってなんの事だ?」
「戦闘の際にはパーティー人数がギルドで定められていてね、バランスを重視して5人が適正だと推奨されているね」
「人数が少ないと危険なのは分かるけど、大人数ならそれだけ手数も増えるし有利に戦えるんじゃないのか?」
「いや、あまり多すぎても混戦して余計に危険な事もあるのだよ、以前にドラゴンに大人数で挑んだ事もあるのだが全体攻撃のブレスで悲惨な事になったからね」
「そう言えばあの巨大スライムも全体攻撃をしてたっけ、確かに回復薬とかもそれだけ必要になるし、行動順とかでも混乱しそうだな」
「それに経験値を得るにもあまり人数が多いと分割されて成長が遅れるからね」
「分割?」
「ああ、魔物を倒すと経験値を得てレベルアップする事が出来るのだが、経験値はパーティー人数で均等に振り分けられるのだよ」
「つまり1人で挑んで倒せばそれだけ貰える経験値も多い感じなのか」
「まあソロで魔物に挑むのは推奨しないけどそうなるね、それも考慮してギルドではパーティー人数は3人から5人が適正だと推奨してるね」
「一応3人居るから大丈夫だとは思うけど、でも確かに盾士や回復術士が居れば、安定して戦えそうだし戦闘も楽になる気はするな」
「まあ絶対に5人にする必要はないが、洞窟などの狭いダンジョンとかだと人数が少ない方が動きやすいし、敵が強い場合は逃げるのにも少人数の方が統率が取れて有利だね、意思の疎通もし易いし良し悪しだね」
「言われてみれば確かにそうかも……」
「その辺は臨機応変に対応すれば良いと思うけど、パーティーの人数を考えるのも大事だが君の場合は先に説明したように魔王軍との攻防戦もあるから、その為にも仲間を集めて共に成長する必要があるがね、それに仲間が多ければそれだけ状況に応じたパーティー編成も出来て、戦略の幅も広がるからね」
「ふーむ、それとこの冒険者の名刺? が関係してる感じか?」
「察しがよくて助かるよ、その”ネームレスカード”を認証してからギルドに渡せば君を勇者として認めた冒険者が仲間になってくれるんだよ、実際に試してみるのが手っ取り早いとは思うが、それ一枚で仲間が1人増えると考えれば良いよ」
「仲間が1人増える? こんなカード一枚で!?」
「とは言ってもパーティー人数は限られているから、今の状態だとそんなに闇雲に仲間を増やさない方が良いとは思うけどね」
「ところでこれはどうやって使うものなんだ? 見た感じ何も書いてない只の白いカードなんだが、認証するとか言っていたけど?」
「それは君の名刺になる元だよ、魔力を込める事で【ネームドカード】として認証されるから試してみるといい」
「ブックルと波長を合わせて光らせた時みたいな感じでやれば良いのかな? 試しても良いならやってみるけど、どれどれ……」
ネームレスカードに魔力を込めるとそれに呼応しネームドカードに変化した。
その場に居た一同がその様子に注目する。
「お、何か書いてあるな、これが俺の冒険者の名刺になるのか」
「名刺はその所持者の簡単なプロフィールにもなってるね」
「ふーむ?」
「何て書いてあるのー?」
その名刺には【見習い勇者もどき、盗賊ピヨピコ参上!】と書かれていた。
「ふぁ!?」
「勇者様どうしました……あっ」
「俺様、参上ー」
「おー♪」
「何か個性的なプロフィールですねー」
「か、可愛い……」
「個性的と言うか、何か子供っぽい感じですよね」
「まぁ、気にするな……ブフ、と、とにかくそのカードをギルドに提出する事で、君の仲間になっても良いと思っている支援者と名刺交換をする事が出来るのだよ、無くさないように大切に扱いたまえ……フフッ」
油断していたら全員に見られた、非常に不服で納得いかないプロフィールだが、多少なり心当たりもあるのでピヨヒコはその屈辱に耐えた。
てかこれ自分の魔力に呼応して認証するって事は自分で決めた感じなの?
潜在意識の中では自分でもそう思って名刺の内容が反映されたって事か!?
俺自身の自己評価が何か低くない? 見習いはまだしも勇者もどきって!?
てか"参上"ってなに? 怪盗でも気取ってるのか!?
そもそも名前が違う、ネムに愛称で呼ばれてるけど俺はピヨピコじゃない!
反論や異議を唱えても時間の無駄だろうし取り敢えず話を進める事にした。
「ぐぬぬ……名刺交換?」
「そのカードを冒険者ギルドの受付嬢に渡せば詳しく説明はしてくれるけど、簡単に説明すると仲間に出来る人物名簿から1人選ばれて、そのカードと相手のカードを交換する事で交渉成立する感じだね」
「交渉?」
「相手のネームドカードを持っていると仲間として迎え入れる事が出来るんだよ、ギルド冒険者の間ではこれを【名刺交換システム】と読んでいるね」
「ふーむ、何かややこしくてよく分からないけど、その人物と直接会って名刺交換する訳じゃないのか? それにこのプロフィールを見ず知らずの相手に見られるのは抵抗感があって嫌なんだが……」
「ネームドカードの内容に関しては君の活躍次第で一度作って交換したカードでも内容が更新されるから、まあ気にしなくても大丈夫だよ」
「そうか、それなら良いけど……いや、良くはないが」
「それに今の君のその実績でも仲間になっても良いと思える冒険者が名簿には記載されるからね、中には名簿に登録だけして”条件”を提示する人物も居るが、その辺はギルドで詳しく聞くと良い」
「その名簿ってのはこっちで確認して相手を選んで名刺交換する事は出来るの?」
「確認は出来るが、残念ながらそこはランダムで決めさせて貰うよ」
「えぇ!? 勇者の支援者なのに自分で選べないの!?」
「うーん、例えば凄腕のベテラン剣士と、初心者の冒険者が名簿に載っていたとして、君ならどちらを選ぶかね?」
「そりゃあ強い方が頼りにもなるし、凄腕のベテラン剣士の方だとは思うけど」
「まあそうだろう、でもその場合、選ばれなかった初心者の冒険者はどう思うだろうか? 勇者と共に魔王を倒す助けになりたいと自分で決めて名簿に名前を載せて名刺をギルドに預けたのに相手にもされずにそのまま放置だ」
「う、そう言われると確かに心苦しいが……」
「もちろん強いベテラン剣士の方が戦闘でも役に立つだろう、しかしその初心者の冒険者だって君と同じでまだまだ成長の途中と考えればどうだろう?」
「確かに、スタートラインは皆同じだし、俺もまだ初心者みたいなものだけど」
「もしかしたら成長次第ではその初心者の冒険者もベテラン剣士と同じかそれ以上に強くなり活躍する可能性もあるだろう、どんな人物でも成長すればいずれは横並びだ、それも踏まえて公平を期す為にも支援者の選別はランダムで選出する仕様にしているのだよ、納得してくれたかね?」
「確かに、誰しも成長すれば強くはなるよな、そう言われると納得は出来るけど」
「ちなみに勇者の支援者はレアリティで分けられていて、ギルドに登録されている初心者の冒険者は星2、一般の冒険者は星3、二つ名持ちの冒険者は星4、凄腕の一流の冒険者は星5、更には仲間になり交流して”絆”を深める事で、いずれは最高レアの星6として昇格される事もあるから覚えておきたまえ」
「えぇ!? 成長したら横並びとか言っておいて星で差別してるの!?」
「そこはその冒険者の実力や実績も考慮しているから当然だね、初心者の冒険者と一流の冒険者を同じ扱いには流石に出来ないよ、それに個人の才覚や、資質も当然あるからね、君を納得させる為にいずれは横並びだとは言ったが、実際はそんな訳ないだろう? 世の中とは所詮は弱肉強食、実力主義の世界なのだよ」
「いや、それはそうかもだけど……」
「それとランダム選出と言っても均等な確率ではないからね? レアリティが高い冒険者はそれだけ実績もあり人気も高くて他にもする事が多い、名簿に名前が載り認められたとしても仲間として選ばれにくいから、そのつもりでいたまえ」
「えぇ!? 排出率とかもあるの!?」
「それに君が勇者として活躍すればそれだけ支援者も増えていくから日々の精進を欠かさない事だね、もちろん悪行三昧の勇者になんて誰も付いていこうとは思わないからその辺も注意したまえ、正直今の君の評価はかなり悪いからね?」
「うう、言い返したいが、心当たりもあるから言い返せない……」
「クエストなどを通して君と直接交流して人柄とかを認められればカルマには関係なく支援者になってくれる事もあるだろうが、普段からなるべく勇者らしい行動を心掛ける事を推奨するよ」
「カルマ?」
「冒険者として、いや人としての徳の事だね、要は善人か悪人かで"天秤"がどちらかに傾く感じだよ、それにより関わってくる人間関係もまた変わってくるだろう」
「……確かにそうかも」
それに勇者らしい行動か、ギルドの受付のお姉さんにも言われたけど平然と盗みを働く勇者なんて確かに誰からも信用されないよな……
でもあの漁り行為に関しては俺の意思ではないのだが。
「君がもし悪行を重ねて犯罪者と関わる事になり、国に仇為すような存在になるならば、もちろん我々としてもそれ相応の手段と対応は取らせてもらうが……あまり期待を裏切るような真似をしないと信じているよ」
「な、成る程、それもそうだな、肝に命じておくよ」
「その時は勇者として君に称号を与えた我々の目が曇ってた事にもなるけどね……スキルを磨く為の漁り行為に関して僕は咎めるつもりはないけど、それこそ野盗やならず者のように、無秩序に荷馬車を襲い金品を強奪したりか弱い女性に乱暴するような真似をするなら冒険者ギルドの登録を抹消して犯罪者として扱うし、全力で君を排除させて貰うよ」
「分かった、それは絶対にないと誓うよ、もしそんな事になったら勇者の称号を剥奪して投獄して処罰してくれても構わない!」
「伯父の立場として君の事はこれでも見てきたつもりだから信じてはいるがね……君は亡き父上の顔に泥を塗るような愚か者ではないよ」
「ああ、信じてくれてありがとう」
マルクスに信じて貰えるのは嬉しいが行動の決定権は背後の画面の少女に委ねられている。でももしそうなった場合は俺も全力で抗おう。まあこの少女に関してはこれでも多少なり信用はしているので大丈夫だとは信じたいが……大丈夫だよね?
そう思い強く念を込めつつ背後の少女を見てみると、何かテンションが高そうな感じで、私に任せろ、悪いようにはしないから、とでも言わん感じの頼もしい顔をしていた。
いや、本当に大丈夫か? ダメだぞ? 外道のような行動はするなよ!?
「それに一度名簿に載ってしまえばカルマに変動があっても名簿から除外されたりしないからそれも一応覚えておくといいよ、とは言っても個人の好感度には影響はあるから、盗賊スキルの修行だとしてもなるべく控える事を推奨するけどね、取り敢えずあれだ、スルならとにかく見付からないようにコソコソとやりたまえ」
「濁してたのに結局言うんだな、泥棒騒ぎで懲りたから流石に控えると思うけど」
「盗賊のスキルポイントは訓練や戦闘で上げる事も可能ではあるのだがね……」
「それと気になったんだけど、仲間になる人物と出会って、交流して気に入られて相手がパーティーに加入する事を望んだ場合はそのまま名刺交換しないで迎える事は可能なのか? アルマは国のサポートとして派遣したからまだしもネムはそんな感じだったし」
「基本的にはギルドを通してもらう必要はあるけど場合によってはそれもあるね、一般的な冒険者がパーティーを組む時はそんな感じだし、君の場合は勇者としての立場があるから、公平を期す為にも”名簿”で募ってこんな形にはしているが」
「ふむふむ?」
「と言うのも、その人物の素性などギルドで把握する必要があるのでパーティーを組むには、冒険者ギルドに登録するよう国で義務付けられてはいるのだよ、先程も話したカルマにも関係するが、犯罪者や極悪人を冒険者として認める訳にはいかないからね、なので誰が仲間になったとしてもそこは安心していいよ」
「そうなのか? あれ、でもそれならアルマやネムもギルドに既に登録してる事になるのか? でもそんな名刺なんて交換した覚えはないんだけど?」
「えっと、勇者様、確かに交換はしてないですが、名刺は初めて会った時にお渡し致しましたよ、それに私も冒険者ギルドには登録してますね」
「ネムも登録してるし、名刺は渡したよー」
「あぇ!? そ、そうだっけ!?」
「あげたよー」
そうだっただろうか? 記憶を思い返してもそんなもの貰ってないような?
知らぬ間に貰っていたのかも? アイテムは直ぐにストレージに収納されるから意識しない内に背後の画面の少女が管理してたのだろうか?
いや待てよ、そう言われると確かに、アルマと最初に話した時に何か手渡されたような。それに最初に会った時はずっと噴水広場の辺りで佇んで居たけど、あれはもしかして仲間としてパーティーを組む為に俺がギルドで登録するのを待っていたのだろうか? それならあの場から動かなかったのも納得は出来るな。
「本来ならお互いの名刺を交換して成立するものなのだが、この2人に関しては君も仲間として既に認めているようだし、ネム君もギルドに加入しているなら問題はないだろう、まあ名刺を交換する事でのメリットもあるが……」
「そうか、それとこの"ネームレスカード"ってのはどうやったら手に入るんだ? 冒険者ギルドで名簿の中から選ばれて交換するのは分かったけど、何処かで売ってたりもするのか?」
「いや、クエストの報酬とかで手に入ったりはするが、一般の店で購入は出来ないね、勇者として君の実績次第で貰える事もあるようだが、取り敢えず冒険を続けていれば自然と手に入る機会はあるので、そう覚えておきたまえ」
「何かいきなり説明がやんわりしてない? 今までのは何となく納得出来たけど、実績で貰えるって、一体誰がくれるんだ?」
「むぅ、あんまり細かい事を気にし過ぎると女性に嫌われるよ? それでアルマの事も追い込んだんだから君も少しは反省したまえ、それに仲間が増えるという事はそれだけ人間関係も複雑に絡んでくると言う事だからね、パーティーのリーダーになるのだからその辺も気を遣いたまえ、それにあまりしつこい詮索は信用をなくすからそれにも配慮し気を付けたまえ、君はそう言う傾向もあるからね、もっと柔軟に物事を考える様に心掛けたまえ、分かったかね?」
「えぇ……」
何か畳み掛けるように注意されたけど、今までも理解し難い現象は色々と起きてるしそう言うものなんだろう。それにマルクスにも分からないのかもしれないし、名刺やアイテムの管理、選択は結局のところ背後の少女がしてるのだから任せるしかない。
マルクスの説明に困惑していると、その話を聞いていたブックルが答えた。
「ツマリ俺様のページが増えればその対価で貰える感じダナ」
「え、そうなのか?」
「アイリンの時はそんなシステムは無かったとは思うが、多分そんな気がスルぞ」
「うーん、やっぱり何か理解し難いのだが、そう言うものなんだな」
「取り敢えず仲間に関しての説明はこんなところだね」
「ああ、色々と教えてくれてありがとう、それと1つ気になったんだが……」
「なんだね?」
「これって勇者として認められれば、もしかしてマルクスも名簿に名前が載ったりもするのか?」
「!!」
するとマルクスは、面白い事を言うねぇ、僕を認めさせる? ふむ、出来るものならやってみたまえ、因みに僕は当然だがレアリティは星5だよ。
まあ攻防戦クエストでもし全ての領土を取り戻す事が出来たら僕も流石に君の事を認めざるを得ないけどね、ふふ、楽しみにしているよ、精々頑張りたまえ。
とでも云わんばかりの、不適な笑みを見せた。
ピヨヒコはその笑顔の意図を汲み取り、今度こそギャフンと言わせてやる!!
と、心の中で強く意気込んだ。
◇
「……要はこれ、ガチャ要素だよね?」
メニューの項目にいきなり【仲間リスト】と【カルマの天秤】が出現した。
以前にログインした時に貰った”ネームレスカード”の説明がされたから解禁した感じかな? と言うかガチャか、正直そこまで好きなシステムではないのだが。
最初は少しテンション上がったけど、それにカルマ値とかもあるみたいだし。
それと何か主人公に外道には堕ちるなよ、絶対だぞ? 絶対だからな? と強く念を押されたんだけど、何それ振り? 押すなよ、押すなよ、的なやつ?
「うーん、やっぱりこの主人公はプレイヤーの事を認識してる感じだよなぁ……」
まあクリアは目指したいしそんな悪人ルートに進むつもりはないけど。
と言うかその説明があったって事は本当にやろうと思えば極悪人みたいな真似も出来たり、それに合わせた関連イベントとかも発生する感じなのかな?
もしかして王国が敵側になって、魔王軍に加入するルートとかもあったりして。
セーブ枠が1つしかないゲームでそんな仕様だと周回要素があったとしても全てのイベントを回収は難しいそうなんだけど、犯罪者に堕ちて”投獄バッドエンド”とかもあったりするのか?
まあ深く考えるのは止めにしたから悩まずにゲームを楽しむけど。
でもやっぱり、ちょっと不思議と言うか、変なゲームだなぁ……
それにアルマとネム、それにベオルフの名刺は仲間に加入した時に確かに貰ったんだけど、何か仲間リストを確認すると3/51とか書かれてるんだけど。
いや、嘘でしょ!?
職業の数が多いのもこれで納得は出来たけどパーティー制限が5人までなのに、こんなにたくさん仲間が増えても、どうするんだコイツらって感じなのだが……
あ、でも何か仲間が煩悩の数くらい多いRPGとかも一応あるんだっけ?
攻防戦クエストの為にも必要って事は、最低でも2パーティくらいは仲間を集めて育てないといけない感じなのかな? これだけ人数が多いと仲間になっても全部を育てる余裕なんて無いし、どのみち無理だと思うけど……
それにしても総勢51人って、ガチャにしても多い気がするけど、キャラ被りしないで一度名刺交換して仲間になったら名簿からは除外される感じなのか?
てことは貰えるネームレスカードの数も最大でそれくらいって事か……
てかこれって最初から主人公の”ネームドカード”って扱いじゃダメなの?
名刺のプロフィールに関してはメニュー画面から、選択可能な文章を選んで組み合わせて変更する事も可能なようだ。
実績や称号、職業などでも選べる単語が増えるみたいだけど”見習い勇者もどき盗賊ピヨピコ参上!”は最初から勝手に書かれていた。
まあ面白いから暫くこのままで良いか、何かちょっと違和感もあるけど。
それにしても仲間の数はやっぱり多いな。自分でキャラクターメイクとか出来るRPGもあるけど、この名刺交換システムの説明だと予め決められた設定のキャラがランダムで選ばれるみたいだけど。しかし名刺って、何か会社員みたいだな。
ガチャ要素があって仲間キャラが多いなら”ハズレ枠”とかも居るのかも。
でも星2キャラが初心者の冒険者って事は、得意武器や職業とかの選択も自由に選べる感じなら、成長次第では星3キャラよりも使い勝手が良いかもしれない。
それに星5の凄腕の一流の冒険者の他にも、主人公と交流する事でレアリティが上がるとかの説明もあったので、星2からでも育てればいつか星6になるらしい。
メニュー画面の仲間リストで確認したらアルマもネムも星3の扱いだったけど、
交流イベントとかもあるようなので、それにより絆を深める事が出来るようだ。
プロフィール画面からキャラのモデリングや、モーションなどもカメラを回して観れたりもするのだが、カメラをローアングルから覗くことは出来なかった。
別に下から色々と視たい訳ではないけど、それにしてもリアルな作り込みだな。
しかもキャラをタップすると、それに合わせた反応もするので面白い仕様だ。
あと何故かベオルフだけは星1なんだけど? 演奏担当だからか?
まだ戦闘は試してないけどやっぱり非戦闘員なのかな。それでもパーティー枠は1つ使うみたいだけど、同行させてないと戦闘中の曲が無音になったりするの?
仲間リストでキャラの説明や名刺のプロフ、性能とかも確認は出来るんだけど、キャラ別に好感度とかもやっぱりあるようで隠された秘密のプロフィールがあって関連イベントをクリアしたり、戦闘で絆を深めるとアンロックされるみたいだ。
それによりそのキャラの性能も向上する。
その辺はソシャゲとかでもよくあるけど、51人全員に個別で交流イベントとかある感じなのかな? そこは流石にメイン関連のキャラだけだとは思うけど。
それに関連キャラと言えば、何故かブックルは仲間リストに載ってないんだけどアイテム扱いとか言われてたし、ギルドにも登録してないから別枠扱いなのかな。
いやでも、もしかしたらシナリオを進めれば仲間リストにいつか載るのかも? 人数も51とか言う中途半端な数だし、人格を移された魔本が本来の姿を取り戻して”隠しキャラ枠”として迎える感じならそれはそれで面白そうだけど。
しかしこれだけ人数が多いなら、おそらくは今まで交流したあの人や、この人も仲間に出来るのかもしれない。
何か強そうな二刀流の可愛いらしいメイドキャラまで登場したし、さっきの会話の口振りだとマルクスも攻防戦クエストを攻略したら名簿に載る感じなんだろう。
てかお前まで唐突に思考メッセージを飛ばして喋りかけて来るな!
まあ魔王を倒すのに必須じゃないなら面倒だし、全ての領土を取り戻さないまま魔王城に突入するとは思うけど。要は4つの魔石を手に入れて”ゲート”が使えればいいんだし。それに私は別にそこまで強キャラや、人権キャラ重視って訳ではないから個性や見た目を尊重して、星2のキャラでも推しになりそうなら育てるぞ。
ガチャは別に好きではないけど、仲間の名簿は早くギルドで確認したいな。
無名の一般枠の新規キャラでも、どんな仲間が集まるのか今から楽しみだ。
「素敵な仲間が増えたらいいなー♪」
それに勇者の実績や”カルマ”の変動でも名簿に載るキャラが増えるみたいだし、ご丁寧に一度でも名簿に載ったキャラは消えないと言ってたから、もしかしなくても悪事を働いて、悪名が広がる事でそれに関連したイベントが発生したり、それに関係するキャラが登場して仲間になったりもするよね?
カルマの天秤を確認すると現在は、3:7で悪人寄りなんだけど、犯罪者に堕ちると9とか10になる可能性はあるから、もう一段階くらいなら漁り行為とかでも下げられそうだし、試してみるなら好感度が下がっている今がチャンスだよな……
まあ別に仲間のコンプを目指してる訳でもないし無理して下げなくても構わないけど、全員仲間にするなんて正直面倒だし、周回プレイでもしないと無理そうだ。
「……うーん、何か私もこの主人公の思考スキルみたいにまた色々と考えてるな」
でも何となく”誰か”に説明しないとって気分になったのだ。
取り敢えずまだ何か説明はあるみたいだし続きを遊ぶかな。
◇
画面の少女が何やら悩みながら背後でぶつくさ言っている声が聞こえるが、食後のティータイムも終わりを迎えようとしている。
アルマも美味しいケーキを2つ完食したのですっかり機嫌も直り満足そうだ。
泣き出した時はどうしようかと思ったけど、いつものアルマに戻って良かった。
ネムとブックルもすっかり仲良しになった。
何か変なポーズをして変身、とかジュワッチ、とか言って2人で遊んでいる。
司書のエマさんもその様子を見て、幸せそうに顔を緩めていた。
秘書のシルビアは少し顔が赤く頬を染め何やら艶っぽい印象なんだけど、夕食で結構ワインも飲んでいたみたいだから、酔っぱらってしまったのだろうか?
強くて可愛い印象の優秀なメイドのメアリーは普段と変わらない様子だ。
見ていたら視線が合ったが、またこちらを優しい笑顔で見返してきた。
不意打ちだったので少し、ドキッ、としたが悟られないように平静を保つ。
と言うかこれもしかしてメアリーに惚れられたのか? 何かしたっけ?
別にそんなに気に入られる事とかしてないと思うけど、まあ悪い気はしないが、デレデレするとアルマの視線が何故か怖いし、あまり浮わついた気分で冒険をするつもりは無いんだけど、何か本当に人間関係でパーティーのリーダーとしての資質とかは問われそうだ。
マルクスが言ったように肝に命じておこう。
「さて、魔王に関する情報は大体これで終わりだが、君にはまだ渡すものがある、取って置きのモノを用意したのでプレゼントしようじゃないか」
「プレゼント?」
「ああ、仲間を増やしてもずっとギルドの宿屋で生活する訳にもいかないだろ? そう、君には冒険の基盤になる拠点をプレゼントしようじゃないか」
「ええ、アジト? じゃなかった、ホーム!?」
「そう言ってもちょっとした曰く付きの物件なのだがね、王国管理区の郊外に今は使われてない屋敷があるのだがそこを君に進呈しよう、少し古い屋敷なのだが住むには問題ないよ、修繕や改築するならそれ相応のお金は掛かるがね」
「ふむふむ、古くても住居を持てるなら嬉しいけど……曰く付きとは?」
「ふぅむ、どうやらこの屋敷には"幽霊"が出るようでね」
「え、幽霊? 魔物じゃなくて? と言うかそれ住むには問題あるよね!?」
「勿体ないお化け~?」
「!」
ネムがそんな事を言うと、アルマが再びその言葉に反応した。
「いや、確かにゴースト系の魔物は居るがどうにも詳しい詳細は分からなくてね、以前にここに住んでいた旧貴族が関係しているのかもしれないが、今までも何度かこの屋敷に買い手は付いたのだが、夜に女の幽霊を見たとか、動く人形に襲われたとか、寝ていたら耳元で囁きかける声を聞いたとか、そんなこんなで結局もて余していてね」
「えぇ、そんな訳あり物件を宛がわれても俺も困るんだが……」
「まぁまぁ、そう言わずに、それともこれからもずっとギルドの宿屋で寝泊まりするかね? ちなみに厨房や浴室も完備されているし、二階もあるから部屋数はそれ相応にあるよ、男女個別の大部屋もあるし書斎にも使える専用の個室もあるね」
「あ、やっぱり欲しいです」
お風呂と言われてピヨヒコはその話に食い付いた、断る理由がない。
「素直なのは君の美徳だね、それなら【特務クエスト】として、この屋敷の調査を僕の方から依頼するのでギルドで受注出来るよう手配しておくよ、もし問題が解決したらそのままその屋敷を拠点として使っても構わない、まあその幽霊と同居するなら別に解決しないまま住んでも構わないがね、屋敷の鍵や権利書はギルドの方に一緒に預けておくので、好きなタイミングで受注するといいよ」
「幽霊と一緒に住むのは嫌だけど”特務クエスト”か、報酬を考えたら破格だし悪くはないな、でも本当に良いのか?」
「もちろんだよ、これから仲間も増えるなら安定した住居は必要になるし、そうだな、もし解決したらその拠点に専用のワープポットも1つ付けよう」
「それはスゴく助かるけど、何か本当に貰ってばかりで悪い気がするんだが」
「どのみち何年も使ってなかった物件だからね、買い手も居なくて国で管理していたのだが、役に立つならその屋敷も喜ぶだろう」
「屋敷が喜ぶ?」
前にガラム親方が言っていた武具は使ってこそって感じの意味かな?
何か独特な表現だけど、マルクスは詩的な事も言えるんだな。
「まあそう言ってもクエストを解決できたらの話だけどね、他にしたいクエストがあれば後回しにしても構わないし修繕や改築、模様替えなどの詳しい話に関しては拠点として設立したら、改めて説明するようギルドに手配しておくよ」
「そうか、分かった、ありがとう」
「それと”特務クエスト”だが、実はもう1つあるのだよ」
「ええ? まだあるの!?」
「こっちはパーティーのレベル上げに必要な感じだけどね」
「レベル上げ?」
「この近辺なのだが、我々が制圧して管理してるダンジョンが1つあってね」
「ダンジョン?」
「元々は魔王が作ったものなのだが、入り口から魔物が出てこないように徹底して管理して見込みのある冒険者を育てるのに活用してるのだよ、最下層までの調査も済んでるので、どんな魔物が居るかは把握してるし、そこまで警戒しなくても挑めるのだが、勇者としての経験を積むのには丁度良い難易度だから、そこを利用する許可を与えようと思ってね」
「へぇ、そんな便利なダンジョンがあるのか」
「魔女の森でのクエストをクリア出来たならおそらく大丈夫だろう、こちらも特務クエストとしてギルドに伝えておくので受注したいタイミングで受けると良いよ、それに調査し攻略済みとは言っても宝箱がリポップされて発見される事もあるようだからレベル上げ以外でもやりがいはあると思うよ」
「そうか、分かった、準備次第だけどいつか挑んでみるとするよ」
「まあそのダンジョンだとネム君は特性を生かせない可能性もあるから、出来たら拠点を手に入れてから適切な編成を組んで挑むのが良いとは思うけどね」
「そう言えば仲間にして迎え入れたとして、5人以上になった場合ってどうするんだ? ネムがそのダンジョンに向いてないなら、ギルドで留守番する感じか?」
「ネムはお留守番?」
「狭いとこが苦手ならそうなるかな」
「むー、飛べないところ苦手だけど1人は嫌だー」
「安心しろネム、俺様が一緒だぞ」
「ふむ、まあ拠点があればそこに待機する感じにはなるね、待機中でも出来る事はあるのだが、その辺の説明も拠点を手に入れた時にするよ」
「ああ、分かった」
「それと君が管理している仲間の名刺があれば、用事が無い時はギルドで一時的にパーティの離脱も出来るからその間は仲間も自由に行動するが、ネム君に関しては君が保護者ならちゃんと責任をもってどうするか決める必要はあるね」
「そうか、でもネムを離脱なんてさせないから大丈夫だよ、もしネムを連れてそのダンジョンに挑むのが厳しいなら先に拠点の方のクエストを受注するとは思うし」
「そうか、それなら良いが、長くはなったがこちらが支援出来る事はこんなところだね、この後は君達にはそれぞれ一階の個室に案内してからお風呂に入ってもらいその後はゆっくり部屋で休んで貰う予定だよ」
「わーい、お風呂~♪」
「ネムはお風呂好きなのか?」
「温かいお湯は好きだよー」
「そうか、あ、でもブックルは本だから風呂には入れないよな?」
「アア、お湯にナンカに浸かったらページが濡れてふやけてしまうゼ」
「手荷物は個室に案内した際に置いてきても盗まれる心配などはないが、脱衣場で待機して貰うかネム君のアイテムポーチに入っていても大丈夫だとは思うけどね、ネム君のポーチなら体感時間もそんなに変わらないとは思うし」
「オオ、そうだな、ならソウするカナ、異空間は何か落ち着くし、取り出されない恐怖がないなら安全でもあるしな」
「ポッケ入るー?」
「いや、まだいいけどな、寝る部屋とかも見てみたいし取り敢えずはバインダーに収まって大人しくしてるゼ」
女湯の脱衣場に連れてくようだがブックルは性別的にはどうなるんだろう?
見た目は本だけど、一人称は俺様だし人格は男なのか? と言うか何で俺様?
今さら過ぎる疑問なのだが、まあブックルなら害はないとは思うけど。
もし変な事をしたらネムに容赦なく燃やされるだろうし、大丈夫かな。
「それでは、お部屋に案内しますね」
「ああ、頼むよメアリー君、僕はこの後まだやる事もあるから、そろそろ引き上げさせてもらうけど、ゆっくりしていくと良い」
「ああ、本当に色々とありがとう」
最初は魔王の情報を聞きに来ただけだったのだが、予想以上にマルクスは色々と支援してくれてピヨヒコは心からの感謝を伝えた。
「それと最後に、君の失われた"記憶"に関してだが……」
しかしマルクスはその感謝の気持ちを掻き消すような発言を唐突にしてきた。
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