第27話 論争バトル
魔本の名付けも決まったが、新たな問題が発生した。
少女は自分のお気に入りの推しキャラの名前を全否定されておこだ。
その怒りを軍師マルクスにぶつけるべく、論争バトルが勃発した。
「そうかそれは失礼した、君は幼くして母親を失い母性に飢えていたのだったね、適任かと思ってアルマをサポートに付かせたが、気に入ってるようで何よりだ」
「なんだと!!」
突如勃発した対マルクス戦。
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三度の敗北を経て、新たな選択肢がアンロックされた。
ピヨヒコは集中して考える事で【思考スキル】を開花させ、発動する。
周囲の情報をシャットアウトするような深い思考の世界にダイブした。
なんのつもりだマルクス、俺が母性に飢えている?
そんな記憶なんてそもそも俺には無いが、わざわざ煽ってきたのには何か意味があるのだろうか? 落ち着け、こう言う時に焦って反論すると、相手の思う壺だ。
既にその挑発に乗って何度かやられてるじゃないか……
? いや、まだ論争は始まってないのか、取り敢えず冷静になろう。
そもそも、どうしてこんな流れになった?
確か魔本の名前がネムの案でブックルに決まって、その後にマルクスが用意してくれた装飾品を使ったら、魔力吸収の問題も解決して安心したと思ったら、戦闘の妨げになる可能性があるなら、ブックルの所持をアルマに任せるのも良いとか言い出して、無理強いするつもりは無かったけど、ブックルに対してまだ不信感があるアルマは拒絶ではないけど、それを承諾するも何処か煮えきらない態度を見せて。
そしたらマルクスが用意してた三冊の魔導書をアルマに渡して、使命を果たすのに役立てろと言われて、アルマは欲しそうだったけど貴重な本だからとそれを遠慮して、そしたら白々しい演技は止めろ、とか唐突に貶めるような発言をしてきて、それを聞いた俺がアルマを擁護する為に反発して、それから何故か女性の趣味の話になって、母性に飢えているならアルマは適任だな、気に入ったなら良かったよ、ガッハッハッ、とか笑い出して……いや、笑ってはいないか。
それで煽られて、論争バトルが勃発した感じか……長いな。
確かにアルマは俺よりも年上だし胸も大きいし、その包容力に母性を感じた事もあるのかもしれないが……それでも解せない
マルクスはアルマの態度に怒ったのだろうか? 確かにブックルの所持と三冊の魔導書に対して、ハッキリしない返答をしていたけど、マルクスには色々と世話になってるようだし遠慮する気持ちも分からなくもないが……しかしわざとこちらを挑発してるようにも感じたのだが……
背後の画面からは何やら、今度こそ勝つぞと云わんばかりのヤる気に満ちた念のようなものも感じる。
自分としては魔王城の突入方法でマルクスに一度敗北はしたけど、今後の為にも友好関係は結びたいし、何とか言いくるめてこの場を収めたいところなのだが……
どうしよう、このままマルクスの挑発に乗るべきなのか?
「どうしたのかね? 反論しないと言うことは事実だと認めるって事かね?」
考え込んでたらマルクスが急かしてきたので、思考スキルを解除して備える。
このまま反論するか、別の選択をするか……少女の意志が伝わり、返答する。
「いや、確かに幼くして両親を失い、魔王や魔族に対する憎しみは感じているが、母性に飢えているかは自分ではよく分からないな、アルマの包容力にもしかしたらそういう”癒し”みたいなものは感じているのかもしれないが……」
「……」
アルマもその隣で話を聞いているが、恥ずかしがったりせずに真剣な様子だ。
「母性に飢えるってなぁに?」
「バブみを感じたいって事だダナ」
「ああ、アルマさんは胸も大きいですからね」
「エマ、同性でもその発言はセクハラよ」
「……っ」
会話を聞いていた周囲も何やらひそひそと話してるようだがここは無視だ。
アルマもその隣で話を聞いているが、なにやらとても恥ずかしそうな様子だ。
「……ふむ、思ったよりも冷静だね」
「最初に出会った時は何かオドオドした態度だったから人見知りする性格なのかなとも思っていたけど、アルマには自分が分からない事も色々と教えて貰ったし戦闘でも何度も助けられた、信頼してるし、一緒に居て安心感も感じている、アルマはもう仲間だ、だから貶めるような発言は止めて欲しい」
「勇者様……」
「そうだな、確かに僕の方も少し言い方が悪かったね、それは謝罪しよう」
「……いえ、そんな、私の方こそすみませんでした」
「マルクスはアルマに対して怒っていたのか?」
「ふむ、怒るとは?」
「いや、ブックルの所有者に指定した時に魔物のような姿の魔本に対して抵抗感を感じていたアルマの態度を見て、三冊の魔導書を条件にしてその役目を強要しようとしてた風にも少し感じたんだけど、その魔導書に対しても遠慮していたからそれに対して怒ったのかなと……」
「確かにあの時アルマは、勇者様がそう言うなら、と自分の意見を圧し殺して君の指示になら従う、と言った態度だったから、それは少し不快には感じたがね」
「……っ」
「動き出したブックル君の魔物のような姿に戸惑っていたのは僕も感じてたけど、仲間なら自分の意見を述べてどう解決するか決めれば良いとは思うよ、そうしないと何れはパーティー内での歪みや不満、誤解とか不和にも繋がるからね」
「うーん、確かに言われてみればそうかもしれないが……」
「それに魔導書に関しては最初から渡そうと思って用意したが、あのタイミングで言い出したから交換条件と思われたのかもしれないけど、別に僕はそんなつもりは微塵もなかったよ」
「え、そうなのか?」
「僕はちゃんと仲間内でどうするか決めれば良いとは言ったはずだよ? それに、ブックル君の管理に関してはアルマよりもネム君の方が適任なんじゃないかな?」
「ネムが適任?」
「ああ、既にブックル君とも打ち解けているようだし、防御魔法が付与されたその装飾品は本だけではなく装備してる所有者にも恩恵があるから、ハーピアも火には弱い種族なので、まだ幼いネム君を多少なり守る事も出来るだろう」
「そうなのか? 確かにそれなら不安な要素も緩和されて俺も安心だけど……ネムはそれでも良いのか?」
「うん、好きな時に本も読めるしネムは大丈夫だよ」
「俺様は別に誰が持っても構わないケドなー」
「……でもムカついたら燃やすかも?」
「ヴァ!?」
「冗談だよ♪」
いや、だから目が本気なんだけど……
「マ、まあ俺様も飛べるし自分の身ぐらい自分で守れるから、そんなネムの世話にならないとは思うケドナ、寧ろ俺様がネムを守ってヤるぜ!」
「むー、ネムはちゃんと戦えるよー」
「そ、そうか、それならネムに任せるけど、アルマもそれで良いか?」
「はい、大丈夫です……」
「話は纏まったようだね、それじゃあ後はこの三冊の魔導書も改めてちゃんと受け取って欲しいところだね」
「……」
そう言われてアルマは再び口籠る。
「その三冊の魔導書に対して遠慮した態度も見せたから、それであんな煽るような発言をしたのかと思ったんだが」
「まあ確かに、それはあるね」
「……っ」
「てかあれはやり過ぎだと感じたが、まるで餌付けされてるようだったし」
「……っ!?」
ピヨヒコにそう指摘されてアルマはとても恥ずかしい気持ちになった。
「アルマはどうも幼い頃から自分を御して遠慮しがちな性格だったからね、しかし使命を果たすのに必要な力を前にして、それを本人が求めているにも関わらず遠慮されたから僕としては多少強引にでも渡さないととは思った感じだよ、だから別にその事に対して、憤ってはいないからそこは勘違いしないで欲しいがね」
「……アルマはどうしたい?」
「……私は、自分の使命を果たす為の力が欲しいです、先日の戦闘でも私がもっとしっかりしていれば、あそこまで苦戦する事もなかったので……」
「いや、それは俺も同じだから、アルマがそんな責任を感じる必要はないよ」
「それに貴重な魔導書を前にして、確かに欲しい気持ちはありましたけど、こんな未熟な私が貰ってもいいのかと感じて遠慮してしまいました、その態度がマルクス様の気分を害してたとは思いませんでした……ごめんなさい」
「アルマ……」
「ふむ、どうやら君達は少し気負い過ぎているようだね、ピヨヒコ君に関しては以前よりも”憑き物”が落ちたような感じもしたから、アルマと出会った事でお互いに良い影響を与えているとも思っていたのだが……」
「憑き物?」
「勇者としての責務、天啓で与えられた使命に対して責任を感じる事も確かに大事だが、別にそこまでプレッシャーを感じる必要はない、これまでにも何度か伝えたが自分達のペースで成長するといいよ、魔王軍の侵攻は脅威だが、そこは僕達大人も居るから心配しなくて構わない、だから焦らずにクエストを進めて欲しい」
マルクスはそんな事を言った。
疑問を感じたのでピヨヒコは集中して、再び”思考スキル”を発動した。
確かに、勇者としての使命感は感じているが、俺は焦っていたのだろうか?
訳も分からずにこの世界で目が覚めて、操られながらも勇者としての使命を果たそうとはしているが、正直この状況に翻弄されて、与えられた使命に対しての焦りやプレッシャーなどは今のところ特には感じていないのだが……
寧ろ”天啓”とか言う、訳の分からないものに対して不信感すらあるぞ?
記憶をなくす前のピヨヒコはそんなに余裕がない青年だったのだろうか?
アルマに関しても自分と同じで何かしら使命を感じてるようだけど、今の会話の感じたと、確かに責任感とかプレッシャーとかもありそうだ。
これまで聞いた話や、思い出した幼い時の記憶には魔族や魔物に対して、確かに恐怖や憤りも感じてはいるけど、天啓を受けた幼子のピヨヒコ少年は勇者としての使命感や、両親の敵討ちとかも考えて思い詰めていたのだろうか?
本来の俺はどんな性格だったんだろう。もし完全に記憶を取り戻した時、自分はどんな性格になるんだろう? 記憶を失う前の本来の性格が反映されるのか?
それとも今の性格が継続するのか? もし元の性格に戻った場合は、天啓による勇者の使命感とか、重圧も今以上に感じて、魔王や魔族、魔物に対して強い怒りや恨みの念も懐くのだろうか?
しかし、外の街道とか歩いた感じだと魔物とかも全然見ないから、何となく平和なイメージもあるんだけど……運良く遭遇してないだけなのかもしれないが。
それにまさかあんな見える範囲に浮かぶ島が”魔王城”だとは思わなかったけど、そもそも魔王軍はどうやってあんな空の上から攻めてくるんだ? 飛べるのか?
あ、でもダンジョンとかからも魔物が生まれると言ってたし魔王城から出なくてもなんとでもなるのか、魔王に従える4人の幹部や、それに魔族も居るし……
そう言えば、魔王城の突入方法は外したがドワーフの失われた技術とかもいつかお目にかかる機会もあるのだろうか? 機械だけに、科学の力も何かすごく強そうだよな、遠距離から一方的に攻撃出来る武器とかあれば便利そうだよなぁ……
「なんと言うか君は思ったよりも思慮深いと言うか、色々と考えているようだね、少し驚いたが感心するよ、しかし無駄な思考も多いようだが……」
「……え? あ、いや別に、俺はそんな事はないと思うが?」
あ、そう言えばこの男は何やら心を読む力を持っているんだった。
ピヨヒコは再びマルクスに声を掛けられて思考スキルが解除された。
集中したら何か疲れた。物事を考えるのには便利だが程々にしよう。
「はぁ……」
「疲れてるようだが大丈夫かね?」
「いや、大丈夫だ、それより……」
「ふむ?」
「気になっていたんだがマルクスはその……心を読める固有スキルでも持っているのか? 自分の”手札”を見せたくないなら別に答えなくても構わないけど」
「……いや、僕のこれは固有スキルではなくて、相手の表情や仕草から感情を読み取る“コールドリーディング”と呼ばれる技法だね、経験則から導きだして推測してるだけだから、まあただの予測と勘だね」
「そうなのか? 何かエスパーのように何度か心を読まれたような、的確な発言をされたから少し不気味にも感じていたんだが」
「もし相手の心を読めるなら愛した女性を悲しませる事もきっとなかっただろうね、そんな固有スキルがあったら是非とも欲しいものだよ……」
「え、あ、ああ、何か変な事を聞いてすまなかった」
「ゴホン、僕の方こそ失礼した、ちょっと過去の思い出に浸っていたようだ」
「現在進行形で他に悲しませてる女性が居るのはどうかと思いますけどね」
「!?」
秘書のシルビアが再びメスのように鋭い一言をマルクスの喉元に突きつける。
マルクスも流石にまた口論はしたくないようで咄嗟に話しを誤魔化す。
「と、取り敢えずこの三冊の魔導書は君に預けるから是非役に立てて欲しい」
「……分かりました、今の私ではまだ扱いきれないですが、いつかこの魔導書を、使命を果たす為……いえ、自分の成長の為に有効活用したいと思います」
「そうだね、まだまだ先は長いが2人にはお互いを支え合い頑張って欲しい」
「あ、ああ、色々と気を使ってくれてありがとう」
そう言うとアルマは三冊の魔導書を受け取り、自分の持つ魔法の鞄にしまった。
ネムとブックルも茶番がようやく終わったか、と安心したようだ。
少し絞まらないオチだったが、取り敢えずこの論争はこうして幕を閉じた。
◇
「……なんか、爆弾発言が出たな」
三度目の“ループ”で、何とかマルクスとの論争を終えた桜子は戸惑っていた。
主人公がよく分からない"思考スキル"とか言うのを勝手に発動したのだ。
しかも発動中はゲーム画面の端に”思考中”のアイコンまで出てきたし、何これ?
今までこの主人公は、何か本当に考えながら思った事を話してる気がするほど、リアルな会話をするなと感じてはいたけど、メッセージウィンドウには喋っている内容しか流れてなかったのだが……
その思考スキル中は主人公が考えてる事も文字として画面に流れて来たのだ。
てかこの主人公は普段からこんなに色々な事を考えながら冒険してるの?
と思うくらい、メッセージの量が増えて戸惑ったんだけど、これまでの経緯までわざわざ整理してたから、思わずボタンを連打して流し読みしてしまったわ。
あ、でも確か前にも似た様なことがあったっけ、魔女の森で熊のボスと戦う前に同じ様に思考中のアイコンが出て来てメッセージで、油瓶の作成を促されたっけ?
それにククリコのお店でも何か欲しい商品をメッセージで伝えて事があったな。
あの時はただのチュートリアル的な説明とかだと思ってたけど。
決められた台詞だとしても思考している事まで読ませるRPGは珍しいな……
漫画とかなら分からなくもないけれど、何か主人公がこのゲームの世界で本当に生きているみたいに発言をしていて、少し不気味にすら感じたのだが……
そしたら後半での、思考スキル中に爆弾発言とも言えるセリフが出てきた。
【この世界で目覚めて"操られながら"も勇者としての使命を果たす】
このゲームの主人公は確かにそう思考したのだ、いや、操られながらって何?
え、もしかしてこの主人公は【プレイヤー】である"私"の存在を感じながら操られている事を”実感”しながら勇者をしている"設定”なの?
キャラがゲームの内容を説明をするメタなゲームなら色々とあるけど、主人公が操られている事を認識して、それをストーリーに組み込むRPGとか、聞いた事がないんだけど、何なのこのゲーム!? 斬新な設定として受け入れれば良いの!?
それに弟もネット検索したら、このゲームの情報とか出てこなかったとは言ってたけど、私は面倒なので調べたりしてなかった。
そもそも攻略サイトでネタバレや評価とかで、先入観を植え付けられるのが嫌なので、敢えて避けてるくらいったし。でも確かに不思議なゲームだとは感じてた。
唐突に全く違うジャンルになったかのような展開にもなるし。
ククリコのお店で、エロゲーみたいな展開になったのにも戸惑ったけど、さっきの論争バトルは、まるで”某裁判ゲーム”みたいなノリだった。
バトル中はマルクスの発言に対して反論を選択して、適正な発言を選ばないと、どんどん劣勢になっていく仕様なんだけど、この図書館を訪れてからのそれまでの会話の流れもちゃんと理解していないと難しいレベルの難易度だったし。
選択肢を何度か間違えて、マルクスに追い込まれ”ゲームオーバー”になったかと思ったら、まさかループして論争バトルの冒頭から繰り返すとは思わなかった。
しかもループが前提なようで、後から選べる選択肢がいくつか増えたのだ。
それにより、主人公が思考スキルを開花して、発動して敢えて論争を避ける事で正解のルートに入ったみたいだけど、それによりさっきの爆弾発言が飛び出した。
いや、なんなのこの展開は?
論争バトルはそこそこ面白かったけど、二回目のループでマルクスを追い込んで勝利を確信したと思ったら、秘書の女が乱入して来て、マルクスを凌駕する圧倒的な弁護力と容赦ない連続口撃を駆使して正直ビビったわ。あんなのに勝てるか!!
でも何だかんだ言っても、あの秘書はマルクスの事を愛しているようだ。
自分以外の他の女性に色目を使っているのが許せないらしい、私も女だけど嫉妬は怖いと感じた。
ストーリーの続きも気になるし会話パートも楽しいけど、このゲームに対して、不思議な魅力と同時に、訳の分からない不気味さも感じる。
まあプレイヤーの存在を認識してる設定だとしても、この主人公が直接こちらに話し掛けたりはして来ないし、フレイバー的な要素なのかも知れないけど……
記憶喪失って設定だから、それに合わせてこんな突飛な設定にしてるのかも?
もしかしたらゲーム内でまだ登場していない、主人公に付きまとうナビ的な妖精とか、取り憑いている悪魔的な存在が居て、そいつに操られてる感じなのかもしれないし、それならそれで、ネタ隠し的なインパクトもあるし面白そうだけど……
あ、でも何かたまにこっちを振り向いて不満とか言いたげな表情をしていたり、こちらの様子を伺ってるようにじっと見ている気もする。
弟の話だと放置状態のランダム行動でそう言う仕草をするとか言ってたけど……ま、まあ気のせいだよね。
あ、それと前にもあったけど、さっきも何か、そろそろ腹が空きそうだから空腹デバフになる前にアイテムボックスの食べ物を使って欲しい。的な要求メッセージが流れて来たんだっけ……そう言えばこれも思考中のアイコンが出ていたような?
ま、まあ単なるゲームの仕様だよね。
空腹ゲージは何故かキャラのステータス画面で確認が出来ないクソ仕様だから、それを補う為の”要求メッセージ”なんだと思っていたけど、もしかして思考しつつ必要なものを、この主人公がプレイヤーに求めてきたりもする感じな?
実は高度なAIでも搭載されていて、自分で思考して会話してたりするとか?
最新鋭の技術なら可能なのかもしれないけど、ゲームにそんなの搭載するか?
そもそも思考スキル中に流れた”操られている“って発言に私が気が付いただけでゲーム内で何の説明もされてないんだから、推測だけしたって分かる訳がない。
「はぁ……何か私までこの主人公みたいに色々と思考してるな」
取り敢えずゲームには違いないんだし楽しく遊べばいいや、なるべく変な行動はしないよう気を付けるとして、考えても分からない事をグダグダ悩むのは止めだ。
桜子は持ち前の”ポジティブ思考”で深く考えるのは止めた。
「さーて、もう少しこのまま遊ぼうかな、ストーリーの続きも気になるし」
と言うか全然、攻防戦クエストの説明にならないんだけど。
ゲームの時間の進み方はよく分からないけど、もう夕飯時でしょ?
何か王国が勇者に対して支援出来る事の説明ときもあるみたいだけど、アルマが貰った三冊の魔導書がそれになるのかな?
魔術士の”スキルツリー”を進めると、上位の属性魔法の解放も選べるけど、まだ中位すら解放してないんだけど……スキルを獲得してから”魔導書”を消費する事で魔法を覚えるみたいだけど、正直このタイミングで貰ってもあんまり意味ないぞ?
それに他にも欲しいスキルがあるから取り敢えずそっちを優先するのにポイントは貯めてたけど【MP消費半減】何て便利なスキルもあるから色々目移りするわ。
まあ主人公と違って戦闘で魔法を使えばポイントが徐々に加算されていくけど。
ピヨヒコの方も弟が集めた盗賊の職業ポイントが結構貯まってるけど、二刀流が使用可能になる【二刀の心得】が便利そうだから、まだ使わずに貯めていた。
でもこの流れだと、貯めたポイントは他に有効活用する事にもなりそうだ。
マルクスの話だとバレずに漁り行為を行えば好感度を下げずに盗賊のポイントも貯められるみたいだから、タイミングがあれば後でまた貯める予定だけど……
仲間が一緒に連れてる状態だとちょっと無理そうなんだよな、見られるとアルマやネムの好感度にも影響はありそうだし……さて、どうしたものか。
◇
休憩中に突如動き出した魔物図鑑と名付け、マルクスとの論争バトルも落ち着いたけど本来の目的がまだなんだよな……
時間は既に19時を回っている。何か思ったよりは過ぎてない気もするけど。
流石にこれ以上は余計な事が起きないと思いたいが……それにしてもクエストにも行ってないのに、お城で目覚めてからこの3日間で一番疲れた気がする。
そんな事を考えていたら、マルクスが口を開く。
「何か想定外の事が起きて寄り道してしまったね、予定だと残りの説明を済ませてから別室で食事を振るまって、風呂に入ってもらい個室でゆっくり休んで貰う予定だったのだが……」
「まあ仕方ないけどな、あんなの誰も予想も出来なかったし」
「俺様はあんなの扱いか? コッチだって寝てたのを突然起こされて戸惑ったゾ、久し振りに目覚めたから思わずハシャイじまったケド」
「まだ眠いのー?」
「いや、今は寧ろ眠くないな、本だから基本的には寝ないでも平気ナンダ」
「俺の魔力も結構吸われたからな……おかげで何か力が入らない気がするよ」
「勇者様、それはもしかして――」
グゥ~……
と、その瞬間、お腹の虫の泣く悲鳴が聞こえてきた。




