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第17話 2つの腕輪

 アルマ先生に装備のあれこれを教えてもらってまた1つ賢くなった。

 意気揚々と防具を買いに行くが鋼鉄のフルプレートアーマーは重かった。

 それでもお気に入りになりそうな一品を買えたので気分はウキウキだ。


 何とか防具も買えたので武器防具屋の裏にある鍛冶屋を再び訪れてみた。

 先日も見たが工房の炉と金床は火と鉄が交じり打ち合う音で騒々しい。

 職人達も何やら忙しそうに作業している。


「お、どうやらお気に召す防具は買えたようだな?」


 自身も作業をしつつ弟子の指導もしてた親方のガラムが、ピヨヒコの装備を見てそんな事を言ってきた。何を買うかも大体分かっていたような口振りだ。


「ああ、バンデッドメイルってのを買ったが軽くて使いやすいな」

「メイルは魔物の鱗とか使ったのもあるから属性に強い種類もあるし、動きやすいのが特長だな、本格的なアーマーと比べると硬さは見劣りするが」


「魔物の鱗……魚とか?」

「いや、主にリザード系が多いな、魚鱗のもあるにはあるが……それにお前さんの父の英雄様も竜鱗を使ったドラゴンメイルを愛用していたぞ、作るには他にも稀少な鉱石とか素材も必要だがな」


 また1つ、記憶にない父親の事を知った。英雄の称号もだがドラゴン素材の装備といい本当に偉大な冒険者だったようだ。

 そんな凄い父親の息子は、本来はどんな人物だったのだろうか……自分の事なのにその幼い頃の自分がどんな性格で、どんな暮らしをしてたのか、何も分からないなんて何か変な話だが。


「あ、そうだ、魔物の素材と言えば、魔熊とスライムの素材とその魔石を2つ手に入れたんだが、これを使って装備を作れたりもするのか?」

「ふーむ、どれどれ?」


 ピヨヒコはそう言って持っていた素材をガラムに見せた。


「おお、やるじゃねえか大将、ハングリーグリズリーは普段あまり見掛けないから討伐報告とかも滅多に聞かないし、その素材の価値は高いぞ」


 ガラムは受け取った素材を鑑定し見定める。

 どうやら魔熊に群れでいきなり襲われる心配はなさそうだ……


「スライムジェルの方はウチだとちょっと扱えないな、こちらも希少なものだが、この手の素材は薬として使う事もあるから薬師とかの専門職に詳しく聞いてみるといいぞ、それとこの壊れた水の魔石も、どうやら装備の合成素材としては使えない状態だな……だが何か使い道はありそうだから売らずに所持しておく事を推奨するぞい」


 そう言われたのでククリコの店を思い浮かべ、アルマの意見を聞いてみた。


「スライムジェルは美容関連のアイテムに錬成が出来るみたいですよ、スライムの素材はこの辺では流通もあまりないので貴重なのですが、王国のお偉方や貴婦人などにも密かに人気があるようで、なんでも、その、スライムローションの素材にもなるらしいです……」

「スライムローション?」


 そのような話をしたらアルマは何故か恥ずかしそうだった。少し気になったけど魔熊の素材の鑑定が終わったようで、ガラムが口を開く。

 

「ハングリーグリズリーの素材なら装飾品なら作れそうだな、部位や状態によっては武器や防具にしても良いんだが、この爪とこのサイズの魔石なら装飾品が適正だな、使える性能かどうか聞かれたら正直微妙なところだが……作るならよく考えて決めるといいぞ」


 そう言うと性能を提示されたが、オーダーメイドだとやはり値段もそれなりにお高いようだ。買えない値段ではなかったが、どうするかは悩むところだ……


 まあ作るかどうかの決定は、背後に浮かぶ画面の少女の判断次第なんだが……


     ◇

 

「ふーむ……むむむ……」


 どうやら魔熊の爪と土の魔石(小)を素材にすれば装飾品が作れるようだ。

 しかも2つの内、どちらか1つ選ぶ感じになるらしい。


 まず1つが。


【ハングリーリング】 空腹デバフになると攻撃力が倍増する。その代わり空腹による“飢餓状態”に陥り思考力が低下してコマンドを受け付けなくなり、敵に対して通常攻撃しかしなくなる。正気に戻すには料理を食べ、空腹デバフを解除する必要があり、その際も戦闘中は暴走してる本人は行動選択が出来ないので仲間の行動で料理を無理やり食べさせる必要がある。戦闘中以外で空腹になった場合も思考能力が低下する。料理の使用は可能だが、解除するまで時間とともに飢餓による精神的ダメージを受ける。


 なんだこの性能、呪いのアクセサリー? 要はバーサク状態になる感じか。

 でも飢餓状態? 精神的ダメージってなに? やんわりした説明はやめて。


 もう1つが。


【理性の腕輪】敵が使う精神攻撃に対して抵抗力を高める。確定で防ぐ訳ではないが混乱状態や魅了状態など、厄介な状態異常を防ぐ手段としては効果的。


 こっちは分かりやすくてシンプルな説明だな。

 値段はどちらも1.200ゴルドだそうだ。


 土の魔石(小)は他にも有用的な使い道もありそうだし、どっちの装飾品も尖った性能で使い勝手は微妙そうなんだよな……理性の腕輪の方も確定で防げるなら即決なんだけど、そんな頻繁に食らう状態異常でもなさそうだし。


 うーん、しかし買おうと思えば買えるし、状況によってはどっちも便利そうでもあるな。あ、でもこれもしかしてあれか……それならコッチかな。


「……よし、決めた!」


 桜子はどうやら購入する事に決めたようだ。


     ◇


「おお、本当に買うのか? よし分かった、そっちの腕輪だな、ちょっと待っていろ、直ぐに準備をするぞい」


 そう言うとガラムは、魔熊の素材と代金を受け取って工房の方に向かった。


 ピヨヒコとしては正直1.200ゴルドあれば、他にも色々と買えそうだし、必要になったらその時でも良いとは思うのだが、装備が増えるのは戦闘でそれだけ有利にもなるし別に悪い事ではないか……そう無理やり納得する事にした。


 アルマの方も見てみたが、特に異論や反論はないようだ。

 こちらの決定には基本的には素直に従ってくれるけど、反論があれば自分の意見とかもちゃんと伝えてはくれるので信頼は厚い。


 カンカン、コンコン、ゴォォ、カンカンカン、テレテッテレー♪


 何やら効果音とともにガラムが戻ってきた。何か伝え忘れた事でもあったのだろうか、そう言えば制作にどのくらい時間が掛かるかとかも聞いてなかったな。


「おう、出来たぞ、持っていけ!」

「え……え?」


 困惑するピヨヒコ。受け取った装飾品を見ると確かに頼んだ腕輪だった。


「どうした? そんな狐につままれたような顔をして?」

「いや、いやいや、もう出来たの!? 速いよ、速くない?」


「ガハハ、おうよ、仕事は速いが手抜きとかはないから安心して使えよ!」

「ああ、ありがとう」


 熊の爪を腕輪に形成して加工して魔石と組み合わせるとか、そんな簡単に出来るものなのだろうか? 釈然としないのだが、アルマの反応を見ても特に何も言ってこないし、今までも不思議な事は色々とあったのでこう言うものなんだと納得するしかないようだ。


 きっとガラム親方は想像以上にスゴい名匠なんだろう。


 ピヨヒコは受け取った腕輪を装備した。冒険者のマントと合わせても、まだ2枠装飾品の装備は可能だ。アルマの方も隠者の指輪と魔法の鞄を装備してるけどまだ枠は空いているので、後程また何か手に入れたら性能で振り分けて装備しよう。


「魔物の素材によっては武器や防具も含めて色々と作れるからまた何か珍しい素材でも手に入れたら頼ってくれよな」

「ああ、いつかきっとドラゴンを退治して魔石や鱗も持ってくるよ」


「おお、その粋だ、頑張れよ!」


 用事も済んで鍛冶屋を後にしようと思ったのだが、ふと気になった事があったのでガラムに質問してみた。


「あ、そう言えば、えっと、父親が使っていた形見の錆びた剣は手元にあるけど、そのドラゴンメイルは今は何処かにあるのか? 魔王軍との戦いで壊れたとか?」

「ああ、それがなぁ……」


 ガラムの話だと、どうやら英雄ジークフルドが使ってたドラゴンメイルは現在、この王国が保有しているらしい。何でもお城には宝物庫があり、そこで宝具の1つとして後生大事に保管されてるようだ。


 宝物庫と言われて、最初に城の宝箱を漁った時の事を思い出して少し焦ったが、そんな防具は見た記憶はなかったので、何処か別の場所に保管してあるのだろうか……そもそもあの隠し部屋は、薬草とかの消耗品くらいしか入ってなかったから実は備蓄庫とかだったのかも知れない。


 もう一つの形見、ドラゴンメイルの所在も分かったので一応覚えておこう。


「装備なんざぁ使ってなんぼだろうになぁ」


 ガラムは何か思うところがあるようで感慨深い表情をしながらそう言った。


「ああ、そうだよな」


 そう言ってピヨヒコも持っていた剣を何となく手に構えて見てみた。

 店で買った鋼のショートソードでも使っていると愛着が沸くものだな。


「おっと、勇者の旦那よ、ちょいっとその武器も見せてくれねえか?」

「ふむ?」


 そう言われたので素直に渡す。


「むぅ、まだ大丈夫だが昨日今日で予想以上に酷使してるみたいだな、刃こぼれを研ぐからちょいと待っててくれ」


 そう言うとガラムは再び工房の方に向かって行った。


 シャンシャカシャカシャカ、シャンシャシャシャン♪


 そう言えば鋼のダガーを貰った時に一緒に砥石も貰ったけど、まだ一度も使ってなかった。記憶をなくして武器の手入れとかそこまで気を使う余裕もなかったけど自分の命を預ける武器や防具くらいはちゃんとメンテナンスしないとだな。


 そんな事を考えてたらいつの間にかガラム親方が目の前に立っていた。


「うわ、ビックリした!」

「ほれ、出来たぞ、剣とか刄が付いてる武器には切れ味があるからずっとそのまま使ってると威力もだんだん落ちてくるから気を付けるんだぞ、砥石があれば自分で研磨する事も出来るから小まめにメンテナンスするといいぞい」


「いや、だから速い、速いよね?」

「ガハハハ、細かいことを気にすると禿げるぞ!」


「あ、ああ、今後は武器にも気を遣うとするよ」


 疑問に思うだけ無駄なようなので受け入れる事にした。武器の研磨の代金は特に何も言われなかったので、これもサービスしてくれるようだ。


 ガラム親方の硬く割れた太っ腹を見つつ感謝の念を送る。


「貰った鋼のダガーも使ってみたが刀身は短いが軽くて扱いやすいな、スライムと戦った時はこの武器のお陰で助かったよ、ありがとな」

「おうおう、良いってことよ、役に立ってるなら良かったぞい」


 ダガーを貰った事も思い出したので然り気無くお礼を伝えた。

 装備は使って役立てて、なんぼだよなとピヨヒコも改めてそう感じた。 

 冒険者の為に汗水流して武具を作っている職人達にも感謝の念を送る。


「それにしてもここの職人達はずいぶん忙しそうにしてるよな、冒険者も多いからそれだけ仕事や作業量も多いとは思うが」

「ああ、そりゃもうじき、この王国の建国祭もあるからな、色々と物要りで忙しいんだ、国に献上しないといけない武具も作らないといかんからな」


「建国祭?」


 どうやら近々この王国、グランバニラの建国祭があり、国民総出で色々と準備を進めているようだ。親方のガラムも王に献上する宝具となる特別な武具を作っているようで、貴重なアダマンタイトの鉱石を使用しているらしい。


 詳しい事はよく分からないが、あまり長居して作業の邪魔しても悪いから挨拶を済ませて鍛冶屋を後にする事にした。別れ際にドワーフ族の古代の科学や機械の事も気になってたのを思い出したが、長話になりそうなので今回は聞くのは止めた。


「それじゃあな、また何か用があれば来るといいぞ」

「ああ、そうするよ、ありがとう」


 ガラムと別れたピヨヒコとアルマは、ククリコの店の方に歩き出した。


     ◇


「建国祭か、何か知らん間にイベント発生してる感じかな?」


 時間の経過による暦の概念まであるみたいだしそれに関連した感じなのかも?

 そんな事を考えた桜子はそのまま近くにあるククリコの店に向かった。


 魔女の依頼クエストの報酬でポーション類はいくつか貰ったが、ボスとの戦闘で思ったより回復アイテムを消耗したので、用心して追加でもう少し購入する為だ。


 ゲーム内の時間的には昼前だったのだが、店には他の客も多く、ククリコは忙しそうだった。ピヨヒコが剣の技スキルを覚えたのでスタミナポーションと状態異常を治療するハーブ類も幾つか買った。


 一息付いて、スライム素材の事をククリコに聞いたら調合台で作ってくれた。

 そしたら店に居合わせてたミランダと言う名の貴婦人にそのスライムローションを売る事になったのだが、おかげで2.000ゴルドほど儲かった。


 どうやら夜の営みとかで使うアイテムのようで、その後も少し大人な感じの会話をして、エルフの秘薬とやらで一悶着あって、なんやかんやと色々あったのだが、それらも何とか収束して、落ち着いたのでククリコの店を後にした。


 桜子はその会話イベントを終えてやっと終わったかと安堵した。


 お色気要素のあるかなり刺激的な内容だったのだが、長いので詳細は割愛する。

 と言うか、ここには載せられないような展開になったので全てカットだ。


「……いや、エロゲー展開なんて別にこのゲームに求めてないんだけど!?」


 そんな感想を言う桜子は、気晴らしにメインクエストを進める事にした。


     ◇

おまけ回【17.5話 スライムローション】はR18展開になったので投稿は未定です。

もしかしたらいつか(ノクターン)の方に載せるかもです。

内容に関しては飛ばしてもストーリーにはそこまで影響しないのでご了承ください。


追記 ノクターンノベルスの方に投稿しました。

一応R18指定なので、読む場合は自己判断でお願い致します。

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