第15話 アルマ先生の課外授業
新章開幕です。
◆
目の前には剣を携えた男と、杖を持った女性が居る。
辺りを見渡すとそこは瓦礫が散乱していて、建物からは炎が立ち上ぼり、周囲からは魔物の足音や息づかい、逃げ惑う人々の叫び声に、悲鳴が聞こえてくる。
その事態に恐怖し混乱していると、黒い影が自分の影と重なり覆う。
空を見上げると、そこには大きな黒いドラゴンが居た。
まるでこの空を独占してるかと言わんばかりに、我がもの顔で悠々と飛び廻っている。そしてその龍を携えた魔族が、魔物の大群を率いて……
この国をむちゃくちゃに壊していた。
◆
「勇者様、勇者様」
誰かに呼ばれた。声を掛けられた方を見るとそこには女の人が立っている。
「……あれ?」
「勇者様、大丈夫ですか?」
「あ、アルマか……」
思い出した、自分は勇者だ。そしてここはギルドの宿屋のカウンターの前だ。
目の前には宿屋の女店主が立っている。
「うーん、何か記憶が朧気だけど、そう言えばギルドで受注した討伐クエストに行ったんだっけ?」
「そうですね、大変でしたが無事に魔物を倒しクエストを達成して帰って来る事が出来ました」
「そうだった……」
次第に記憶が明確になってくる。
森の魔女からの依頼で討伐対象の大きな熊の魔物を何とか倒したんだった。
その帰りにお腹が空いて泉で食事をしようと思ったら、今度は巨大なスライムが出現して、死にそうな目に遭ったけど何とか撃退して依頼を達成したんだった。
どちらも強敵だった、思い出すとまた少し身震いがしてくる。
それで無事にギルドまで帰ってきて部屋でアルマに記憶喪失の事を打ち明けたんだった。そのあと時間が飛び、移動して目が覚めて、また意識が遠退いて……
寝た記憶は無いのだが眠気もなく頭はスッキリしてる。
えっと、まだ何かを忘れてる気もするんだけど……?
記憶を整理しているとピヨヒコは身体が勝手に歩きだす。
それに付いてくる仲間のアルマ。これは自分の意思ではなく背後に浮かぶ画面の中からこちらを眺める少女の判断なのだが、今の自分はこの少女に操られている。
背後を見ると画面の少女は何やら楽しそうな表情をしていた。
自分の置かれてる状況を改めて思い出して憂鬱になったが、冒険の再開だ。
「取り敢えずギルドの受付カウンターでクエスト達成の報告をしよう」
「わかりました、それと要らない魔物の素材とかがあれば換金しましょうか、あと今日もクエストとか何処か行く予定なら、その前に忘れずに食事もしましょう」
「お、そうだな……そうしよう」
「ですよ、また肝心なところで空腹状態になったら命に関わりますからね」
「あ、うん、はい、ごめんなさい」
「別に怒ってる訳ではないですけど、あまり無茶しないでくださいね」
「わかった、無茶しない程度に今日も1日頑張ろう」
「了解です」
そう言うとアルマは両手で小さく頑張るぞい、のポーズをする。
なんだろう、昨日よりもアルマがお節介と言うか、積極的に自分の意見を言ってくれてる気がする。嬉しい事だけど、仲間としてそれだけ打ち解けたって事かな?
そのままギルドカウンターに向かい報告したら何やら追加報酬まで貰えた。
元々の報酬は1.500ゴルドだったのだが、何故か2.500ゴルドも貰えた。
登録した時にお世話になった、ちょっとおっちょこちょいの眼鏡の受付嬢さんに詳しい事情を聞いてみた。
「それは迷惑料だそうですよ」
「迷惑料?」
「えっとですね……」
そう言うと受付嬢さんはピヨヒコに近寄って小声で詳細を教えてくれた。
「ごにょごにょ……との事です」
「ふむふむ」
なんでも、今回のクエストの依頼人である森に住む魔女が、実はあの泉で会った巨大なスライムの元々の飼い主だったらしい。
ポーション作り以外にも王国からの依頼で、魔石や魔物の生態などの研究を密かに行っていたのだが、スライムの増殖実験をしていたらその内の一匹がはぐれてしまったらしく探したけど結局見付からなくて、そのまま放置していたそうだ。
それが野生化してあの泉に棲み付き、突然変異であれだけ巨大になったようだ。どうやら同じ魔物でも環境や個体差によって性質に変化があるらしい。
それにハングリーグリズリーとの戦闘の時も使い魔を使役して、遠くから様子を見ていたようで、その流れで行方不明だったスライムの発見に至ったとの事だ。
「……それって俺たちがそのスライムを倒しちゃったけど問題ないの?」
あの愛嬌のある立ち振る舞いがその魔女に懐ついていたとかの理由だった場合、仕方なかったとは言え、討伐した事に対して罪悪感とかも多少なりあるのだが。
「その辺は大丈夫みたいですよ、スライムは元々が一個体から分裂で仲間を増やすそうなので親個体は別に居るらしく、出来ればその大型のスライムも無傷で確保はしたかったようですが、状況が状況だと言ってたので、寧ろこちらの不備で怪我をさせてしまい申し訳なかったとの事です、それも兼ねての追加報酬ですね」
どうやら問題ないらしい。
「まああまりおおっぴらに言えない研究なので、その魔女さんの研究に関しては、強制ではありませんがなるべく口外しないようにお願いしますね」
「あい、わかった」
魔王から世界を救う為に冒険者を募ってる王国が内緒で魔物の研究や実験をしてるとか、非難もあるようであまり広められないらしい。魔石の研究や魔導具として活用するのは国民の生活の支えになるとかで問題ないようなのだが……
魔物の肉を主食にしてるのに研究に対する倫理観の問題とかあるのだろうか?
魔物とは言え生き物なので分からなくもないけど、研究者も色々と大変だな。
思わぬ展開で森の魔女の秘密が1つ明らかになった。
「よし、取り敢えずクエスト完了だ」
「そのまま他の依頼クエストを達成して行けば、ギルドの判断でもっと報酬が高い高ランクのクエストも掲示板に貼り出されるので頑張ってくださいね」
自分たちのランクに合わせてクエストが貼り出される? 何か腑に落ちないけど気にせず魔狼の素材も換金する事にした。
魔熊とスライムの素材や魔石は、使い道がありそうなので売らなかった。
ちなみに依頼クエストの報酬で魔女お手製ポーション類も貰えたのだが、こちらもお詫びの気持ちなのか、高価なハイポーション二本を含めてヒールポーションやマジックポーションなど、思ったよりも多く貰えた。
昨日の今日でこんなに早くギルドと情報共有して追加報酬まで用意したものだと驚くが、それだけあの森の魔女はスゴい人物って事なんだろうか……
後でククリコの店でも補充するつもりだったけど、備えあれば憂いなしだ。
「さて、取り敢えずの用は済んだけど後はどうしよう」
「それなら先ずはご飯にしますか、軽食とかでも食べておけば腹持ちも違うので」
「そ、そうですね」
アルマに促されてギルド酒場で食事にする事にした。昨日の空腹でお腹が鳴ったのがそんなに恥ずかしかったのだろうか、ここは大人しく従っておこう。
個人的には夜に寝た記憶もなく、時間が飛んで食事の間隔的にもそんなに空いてはいないのだが、お腹の空き具合はそこそこ減ってたから問題ない。
「モクモク、うーん、美味し」
頼んだ料理は肉屋で加工した魔豚のハムと新鮮なサラダが挟まったサンドイッチと卵を溶いた野菜スープ、それと魔牛の乳から絞って加工したミルクだ。
厚切りのハムは食べごたえもあり、とても美味しくミルクともスゴく合う。
「この世界の肉は魔物の肉を指すと聞いたけど、この卵や牛乳もその恩恵なの?」
少し気になったので聞いてみたらアルマ先生の授業が始まった。
「そうなりますね、魔物の存在は脅威ですがそれと同時に国を支える糧にもなりますから、乳製品やその加工物も基本的には魔物の食材ですよ」
「うーん? でも魔王がその魔物を生み出してるんだよな? 昨日も少し疑問には思ったけど何か怖くて聞けなかったんだけど、その、魔王を倒したら肉とかの供給が止まってしまうんじゃないのか?」
「え?」
「……え!?」
まるでその問題を考慮してなかったかのような反応をされて焦るピヨヒコ。
「いえ、国はその辺もちゃんと考えてるようですよ、先程もギルドのカウンターで話に出ましたけど魔物の研究も密かにしていますので、私もそこまで詳しくは知りませんが、大丈夫です」
「そ、そうか、なんか分かってなかったような反応されて焦ったけど、大丈夫なら良かった」
「まあ絶対とは言い切れませんが、多分、おそらく問題ないとは思います」
「え、どっちなの!?」
「魔王が魔物を生み出して使役しているのは過去の文献からも間違いないので影響が全くないって事はないのですが、それでも倒さなければならない相手なので」
「確かにそうだが、もしかして魔物を家畜として増やしてたりもするのか? この牛乳とか、卵とかも普通に供給されてるみたいだけど」
「いえ、卵や牛乳に関しては家畜としてではないですが、その対象の魔物の生息域などを調査して管理し、食材クエストとして冒険者に依頼を出して食材を調達してるみたいですよ」
「食材クエスト?」
どうやら掲示板の依頼には”食材採集ツアー”なるものが色々とあるらしい。
それにより指定された魔物を狩ってその肉を調達したり、魔鶏の大群を誘いだしその間に卵を回収したり、暴れる魔牛を押さえ込み無理やりそのお乳を絞ったりもするそうだ。
何か最後のだけ少し卑猥な感じにも聞こえるが、闘牛のような危険な魔物の場合こちらも命懸けになりそうだな。
「種類にもよりますが報酬もそこそこ良いので金策にはなりますよ、倒しても手に入れたお肉などの食材や素材は依頼者に提供しないとダメですが」
「魔物だし気性によっては暴れるから家畜として繁殖させたりは難しい感じか」
「私も食材クエストはした事はあまりないですが、搾乳のクエストはなんでも男性冒険者に人気とか、そんな話は聞いた事はありますね」
「そうなのか……確かに甘くてスゴく美味しいミルクだよな、まあ危険を伴うだろうし女性よりも体格の良い男の方が適正なのかもな、赤いマントをなびかせて突進してくる暴れ魔牛を華麗に避けつつ、追い込んだりしたら何かカッコ良さそう」
「赤? 乳牛ではありませんが"ブルーバイソン"と言う名前の魔牛なら居ますね、赤色じゃなくて青い色を見ると興奮して襲ってくる特性のようですが、肉も美味しいので、こちらもギルド掲示板に食材クエストがあると思いますよ」
「あ、そうなんだ、何となく赤い色に反応するイメージがあるんだけど違ったか」
「その辺は魔物の性質にもよるんですよね、中には大人しい魔物も居るので家畜と言うか、魔物を手懐けて生活の共にしてたりはしますね」
「つまりペットにしたりもしてるって事? 確かにファーラビットとかは愛らしくて可愛いし癒される感じだけど」
「一部の貴族の間では愛玩目的でファーラビットを飼育したりもしてるようですがそれよりも移動の手段で使う事が大きいですね」
「移動?」
「魔馬とかがそうなりますね、比較的おとなしい性質の種類も居るので、荷馬車や乗合の馬車として町から町に移動する手段として活用してます」
「前に荷馬車は見掛けたけど、あの馬も魔物だったのか、気が付かなかった」
「魔物の扱いに長けた専門家もこの国には居るんですよ」
「ふむふむ」
「それと家畜にするにしても魔物によっては繁殖機能が備わってない種類も居るので、難しかったりはします」
「そうなのか?」
「生物と言っても魔王がその力で作り出した魔物なので、特性も様々なんですよ、スライムみたいに分裂して増えるタイプも居ますが、それに……」
「それに?」
「魔物は基本的には寿命が無いらしいです」
「え、そうなのか?」
「魔力の供給が止まると活動停止してしまいますが、魔力の源である魔素は大気中にも多く含まれているので、それを吸収する事で魔物はあまり食事の必要がないとは言われているんですよ、まあ中にはハングリーグリズリーのような特性の魔物も居ますが」
「そっか、でもそれだと魔物が増え過ぎたり、その逆で狩りすぎて減りすぎたりもしそうだな」
「その辺の問題も大丈夫らしく、どうやら魔王がちゃんと魔物を管理して数の調整とかもしてるようなんですよね」
「そ、そうなのか? ただ闇雲に生み出してそのまま放置してるのかと思った」
「大体そんな感じですね」
「ふむ、成る程な、勉強になった、教えてくれてありがとう」
「いえいえ、私が教えられる事なら、気になる事があるなら聞いてくださいね」
「そうするよ、ありがとうアルマ先生」
先生と呼んだらアルマは何だかすごく嬉しそうな顔をしていた。
そんな話をしつつ魔物に感謝しながら一緒に食事を楽しんだ。
~♪
夜の酒場とはまた違い、朝の雰囲気に合った穏やかな曲調の音楽が聞こえる。
もう慣れたから意識しないと気が付かない感じにはなっているがこの演奏も何処からか自然に聞こえてくるのだか、原理が分からない不思議な現象だ。
食事も可能なのでギルド酒場は朝から冒険者達で賑わっていた。
こんな時間からお酒を飲んでいる冒険者も居るようだが、酔った状態でクエストに行くのだろうか?
そんな疑問を抱いたので聞いてみたらアルマ先生の次の授業が始まった。
「お酒にはバフ効果の強いものもあるので使い方によっては有利に戦えますよ」
「バフ?」
どうやら空腹状態のデバフはステータスが下がるのだが、食事によるバフにより能力が上がるようだ。一時的に攻撃力などのステータスを上げたり、自然回復力を向上させたりと色々あり、料理の種類によって効果も様々なようだ。
そう言われると確かに、食事をした後はほんのり身体が熱を帯びて、何か調子も良い気がする。
「その代わりお酒をあまり飲み過ぎると泥酔状態になってしまいますけどね」
【泥酔状態】になると思考力が低下して回避や攻撃の精度が下がるようだ。
「ふむふむ、でも一時的にでも強くなれるならお酒の力を上手く使うのもありかもだな、適量なら泥酔状態にはならないだろうし」
「この国の法律でお酒は二十歳にならないと飲めないですけど」
「え、そうなの?」
「ええ、ダメですよ」
キッパリとそう言われたので反論はしなかった。
「お酒以外でも料理によるバフもあるので、勇者様は食事をちゃんと毎日食べて、健康管理をしっかりしてくださいね、魔王を倒すにも身体が資本なんですから」
「……なんかアルマはお母さんみたいだな」
「コホンッ」
そう言うとアルマは咳払いをした。あまり嬉しくはないようだ。
「それと昨日の戦闘で私が使った武器に各属性を付与する魔法も一種のバフですね正式名称はエンチャントウェポンと言いますが」
魔熊やスライムと戦った時も属性の有用性は実感したが相手の弱点を理解してるとしてないとでは戦闘での有利性も変わってくるし、やっぱり情報は重要だな。
「ふーむ、俺もいつか大人になればお酒も飲む機会もあるかな、と言うか、記憶がないから自分の今の年齢もよく分からないのだが……」
「勇者様は今年で16ですよ」
「えぇ、そうなの!?」
「ですね、16歳の誕生日を迎えたので勇者としての称号と魔王討伐の任命をこの国の王から与えられたので、私も詳しい経緯は分かりませんが、なんでも勇者様のお父上のジークフルド様とこの国の王様との間にそんな盟約があったらしいです」
「ふーむ、まあ冒険を続けていけば詳しい事もいつか分かるのかな、そもそも記憶を失った理由とかもよく分からないし」
「勇者様とジークフルド様は元々はこの国ではなく隣国の出身とは聞きましたけど……、」
「そ、そうなのか、何か自分の事なのにどんどん新事実が明らかになっていくな、あ、そう言えば自分の年齢は分かったけど、アルマは今はいくつなの?」
「ゴホンッ」
何気なく気になったので自然と聞いてしまったが、また咳払いされた。見た目は全然若いけど、今の反応だと少なくとも自分よりは歳上なようだ。
「あ、ゴメン、女性に年齢を聞くなんて失礼だったか」
何やら口籠ったのでやはり教えるのに抵抗はあるようだ。まあ詳しい年齢を知らなくても仲間には違いないし、別に冒険の支障にはならないか。
「いえ、その……私は今年で38です」
「ブフォ!?」
アルマの突然のカミングアウトにピヨヒコは飲んでいたミルクを吹き出しそうになった。戸惑い、焦り、動揺するがそれを悟られないようにピヨヒコは振る舞う。
「そそそ、そ、そうなのか……それはあの、その……」
「いや、嘘ですよ、本当は今年で18です」
どうやらちょっとした悪戯心でからかわれたようだ。
「何だ、俺とそこまで変わらないじゃないか、ククリコとか見た目は幼くても自分よりも年上と言ってたから、アルマも本当は見た目以上に上なのかと焦ったわ」
「エルフは長寿な種族で500年以上も生きると言われてますからね」
「え、500年!?」
「ある程度、身体が成長するとその容姿のまま変わらずそのまま長い時間その姿で生活して寿命に合わせて死期が迫ると次第に老いるらしいです、私もククリカ先生から聞いた話や、書物とかで読んだだけなのでそこまで詳しくは知りませんが」
「ククリカ先生? ああ、昨日会ったククリコのお姉さんの事か」
「ですね、魔法の扱い方とか他にも色々な事を教えてくれて、子供の頃からお世話になっています、ククリコはまだ見た目も幼い印象ですがククリカ先生の方は成人した立派な大人の女性ですよ」
どうやらアルマが魔法や魔物の知識など、博識なのはそのククリカ先生に習った影響も大きいようだ。エルフの寿命には驚いたがこの国に居るならいつか会う機会もありそうだ。なにやら自分の父親の事も色々と知ってるみたいだしな。
アルマの事を先生と呼んだら喜んでいたのは、先生に対して憧れとかあったから自分もそう呼ばれて嬉しかったのかもしれない。
お母さんと呼んだら嫌がったのに、女性の気持ちはよく分からない。
それとエルフは他種族よりもその見た目も種族を通して美しいようだ。
「そう言えばククリコも透明感のある美形だったけど、見た目が中性的な印象だったから性別がよく分からなかったな、男性にも見えたけど……女の子?」
ククリコのぷにぷにと触り心地の良い長い耳の感触を思い出しつつ聞いてみた。
あの時折ピクッ、と動く尖った耳は何故か分からないが、強く心が牽かれる。
「……いえ、ククリコは男の子ですよ」
「そ、そうか」
どうやら男性らしい。いや、別にガッカリなんてしてないけど。
「エルフ族は寿命の違いもあるので基本的には他種族とはあまり関わらずに、里でひっそり過ごすらしいですが、魔術や精霊術にも詳しく、森で過ごして狩りとかをしつつ生活しているので弓の扱い方も種族として長けているようです」
「ふむふむ、精霊なんてのもいるのか? それに弓があれば遠距離からでも攻撃が可能だし巧く使えれば便利そうだな」
種族として違いも多種多様で、特性とかも様々なようだ。
鍛冶屋であったドワーフ族は大の酒好きな種族らしく、美味い酒を求めて各地を冒険している猛者まで居るとか、そう言えば夜の酒場ではドワーフと思われる職人や冒険者も多く見掛けた気がする。
と言うかそこら辺にも朝から酒盛りしてるドワーフが何人か居るな。
ギルド酒場の他の席を見たら、角の奥のテーブルに何時もの女盗賊のお姉さんが相変わらず居たのだが、目があったので軽く会釈したら相手も返してくれた。
盗賊の印象が強いけど普通に美人なお姉さんなんだよな。露出度の高い服も着てるのでセクシーな印象だ。盗賊を生業にするつもりはないが、こちらから話し掛ければもっとお近づきになれるのかもしれない……
そんな下心を出していたら、アルマに少し冷たい視線で見られた。
「いや、ちょっと知ってる相手だったから挨拶しただけで、別に下心とかで見てた訳ではないからね?」
「いえ、別に私は何も言ってませんけど」
そう言いつつもやはりどこかその視線は冷たい。気まずい空気になる前に他にも気になった事があったので、それもアルマ”先生”に聞いてみた。
「なんでしょうか、勇者様?」
「えっと、そう言えばドワーフ族って女性も居るのか?」
先生を強調したらアルマは機嫌を直して応えてくれた。
「もちろん女性のドワーフも居ますよ、種族特性で比較的に小柄な印象ですけど、男性のドワーフと同じく力が強いですね、でも筋肉質なだけで見た目は人族の女性とそこまで変わりませんが」
「そうなんだ、それなら夜の酒場とかで、もしかしたら見てたのかも知れないな、何となくドワーフって男しか居ないイメージもあったんだけど」
「それだと種を残せませんし、そんな事はありませんよ」
「エルフとかは逆に女性が多いイメージもあるな、なんでか分からないけど」
「それはおそらく、特性的に性別のイメージが際立ってるのかもですね、エルフの男性は女性と見間違えるくらい美形な印象ですし」
「ああ、確かにそうなのかも、ククリコも美少年だったしな」
「私も会ったことはありませんがエルフ族から更に進化した上位種族のハイエルフや、派生したダークエルフと呼ばれる種族も居るみたいです、先生やククリコから聞いた程度の情報なんですが」
「ふーむ、何か同じ種族でも色々と居るんだな、ネプト族? にも人魚とか蛙とかの形態の派生した種族が居るみたいだし」
「派生で言うなら魔族も一応そうですね」
「え、そうなの?」
「特徴的には魔力の媒体になる角が生えている種族が多いですが、中には獣のような見た目の魔族も居ますね、ワーウルフとも呼ばれるコボルト族とかが有名ですが、括り的には魔族にはなるんですよ、獣の特性を有した”獣人”はこの国にも何人かは居ますね」
「ふむふむ獣人か、このギルド酒場や城下町だとあまり見た記憶はないけどそんな種族も居るんだな」
「魔族と言う事でやっぱり肩身が狭いので、この国だとあまり待遇は良くはないんですけど、それでも商売とかしてる魔族も居ますので、まあ色々ですね」
「成る程……」
「それと話は戻りますがドワーフ族と言えば、その高い技術力で過去には”科学”と呼ばれる魔法とは対極の力で繁栄したとも聞きますね、昔はドワーフの王が統治する大国もあったらしいです」
「科学?」
「書物で読んだ知識なんですが、”機械”と呼ばれる便利なものを作って生活を豊かにしていたとか」
「機械?」
「その科学文明も魔王軍の侵攻により王国ごと壊滅して、今では廃れてその技術も大半が失われたらしく、ロストテクノロジーになっているようなのですが……」
「ふむふむ、失われた科学か」
「古い遺跡とかでそのドワーフの遺産とかも見つかる事があるとかないとか」
「ドワーフ族にその機械の技術とかは伝わってないのかな?」
「どうなんでしょう? もう300年以上前の話ですから、それにこの国にはそのような便利な機械を扱うドワーフは居ないようなのでおそらくは伝えられてないのかもですが、あ、でも何かドワーフ族ではありませんが貴族の中には発明家を名乗る変わり者も居るとは聞いた事はありますね」
「発明家? そんなのも居るのか」
「噂程度なので私も直接会った事はないですけどね」
「ふむふむ、でもそのドワーフの科学技術があれば、機械とやらで空を飛べたりとかも出来そうなんだけどなぁ」
「この世界には魔法がありますから、便利なのには代わりないですけどね」
「ふーむ、まあそうだよな、魔法もスゴく便利だし、対極する2つの技術が同時に繁栄するのは案外難しかったりもするのかもな」
アルマとそんな会話をしつつ食事も済んだので、ギルドを後にする事にした。
聞き飛ばしてたけど、魔王ってもしかして300年も前から存在してるの?
それに確か復活したとかの話も聞いたのでその辺も気になるところだけど……
また質問責めするのも何か申し訳ないのでタイミングがあれば聞いてみるかな。
ギルドを出て、その足で向かった先は先日も訪れた職人区の鍛冶屋だった。
不定期ですがマイペースに投稿してく予定です。




