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第13話 魔女の森での決戦

第十三話 魔女の森での決戦


 突如として泉から出現した巨大なスライムと対峙する2人。


 水に濡れた仲間のアルマに向かってスライムの魔の手が迫る。

 身の危険を感じて慌てて逃げるも、敢えなくその触手に捕まってしまった。

 勇者ピヨヒコは果たして拘束された彼女を救い出せるのだろうか。


「アルマ!!」

「……っ」


 スライムから伸びた2本の手のような触手は、アルマの両腕を掴み絡めて、その伸びた腕を徐々に縮めながら自分の方に引き寄せている。


 グムム~♪


 まるで、ぐへへ……とでも言ってるように聞こえたが気のせいだろうか。

 今すぐ助けたいが自分の行動順はスライムの次のアルマの更に後だ。


「大丈夫か、アルマ!?」


 呼び掛けるが返事がない。返事をする余裕がないのかもしれない。

 アルマは触手に抵抗しているのだがその拘束は解けない、スライムは更に複数の触手を体から生やして容赦なく襲い掛かる。

 その姿をまるでタコのような形態に変化させた。8本の触手に四肢を絡み捉えられて身動きが取れないアルマはその身体を持ち上げられる。


「ぐぎぎ……」


 その様子を見ながらピヨヒコは歯痒い気持ちになりつつも次の行動順を待つ。

 即座に助けたかったが、何か不思議な強制力のようなもので動けない。

 これが戦闘における”ルール”なのは分かるけど、選択肢によっては致命的な状況にも成りかねない。


 数多の触手に絡み付かれ身体の自由を奪われたアルマは、濡れた身体も相まって何やら恥ずかしい気分になり頬を少し染めていたが、それでも持っていた杖を離さなかった。


 このまま巨大スライムに全身を取り込まれそうな状況にも関わらずアルマはその詠唱を止めずに続けていたのだ。

 魔法に巻き込まれてもターゲット以外には直接的なダメージは受けない。以前に質問した戦闘のルールを思い出す。


 アルマもそれを理解した上で詠唱を続けている。拘束状態でも雷の魔法を放ては感電の影響は受けるがそのまま抜け出せるはずだ。

 ピヨヒコは冷静に状況を判断して、行動しているアルマのその胆力に感心する。

 

 ム?


 しかしそれに気が付いたスライムはその詠唱を止めさせる為に、その粘液にまみれた触手でアルマの口内を覆う。巨大スライムのその触手で口を塞がれたアルマは苦しそうな表情になり眉をひそめる。


「ん、あぐっ……あっ……ゴボ、ゴボッ」


 液体に顔を覆われて息も儘ならない状態のアルマがじたばたと苦しそうに抗う。

 スライムの拘束行動により詠唱は遮られ行動がキャンセルされる。

 更にスライムは次の行動で、アルマの身体を丸ごとその体内に引っ張りこもうとしている様子だった。


 そこにすかさずピヨヒコが飛びかかりその触手を斬り付ける。


「やめろー!!」


 ズババババッ、と、アルマを掴んでいた触手を切り落とす。

 スライムと触手は切り離されて拘束が解除される。

 分離したスライムの触手の先端は地面で転がり、うねうねっ、と動いてるが次第に溶けてそのまま消失した。


 もしあのままスライムの体内にアルマが取り込まれてたらどうなっていたのか、想像しただけでも恐ろしくなった。


 その場でぐったりと伏しているアルマに駆け寄り様子を伺う。


「アルマ、大丈夫か!?」

「ゲホッゴホッ、だ、大丈夫です、すみません勇者様、ありがとうございます」


 スライムの液体を少し飲み込んだようだがどうやら無事なようだ。


「アルマはなるべくスライムから距離を取って援護に回ってくれ、攻撃は俺が仕掛けるからスライムの動きに警戒しながらまた雷エンチャントの魔法を頼む、体力や魔力がヤバい時は自身の回復を優先してくれ、敵視は俺が引き付ける!」

「は、はい、わかりました」


 雷の魔法は効果的だがスライムに警戒されてるのでまた敵視を集めかねない。

 そう判断してアルマを一旦下がらせようと思ったが、行動順は再びスライムだ。

 体の一部を切り落とされたにも関わらず、何も思わないのか無反応だ。


 ムムー、ボヨン、ボヨン……グミィィン……ピョーーン


「なぁ!?」


 その場で身体を弾ませて思いっ切り跳び跳ねる。近くに寄っていた二人をまとめてその巨体で押し潰そうと、必殺のスライムボディープレスを仕掛けてきた。


「「!!」」


 ――――ズドーーン!! バシャァーン!!


 その予想外の攻撃に、倒れていたアルマはもちろんの事ピヨヒコも反応する事が出来ずに、その巨大な身体に二人とも押し潰された。


     ◇


「これは……ちょっと、酷しいかも……」


 テレビの画面を眺めながらゲームを操作してた桜子はそんな言葉を呟いた。


 最初は余裕だと思っていたスライムが自分の想像以上の強敵で、踏み潰しの範囲攻撃をまともに食らって一気に大ピンチに陥った。

 その一撃でピヨヒコは既に瀕死状態だし、仲間のアルマに関しては……


「いやこれ範囲プレスの威力がキツすぎるんだけど?」


 再びプレスで追撃されたら今のレベルじゃ倒せる気がしない。

 森の泉で料理するのがフラグになって突発的にイベントが発生したんだとは思うけど、何か隠しボス的な感じだし現状だと勝てないようなバランス調整なのか?


「もしかして負けイベントやターン経過でイベントが発生する感じなんじゃ……」


 桜子はそんな淡い期待をする。しかし焦りつつもまだ負けてはいないので、自分に出来る最善の行動を選択する事にした。


     ◇


「ぐぅぅ……」


 意識が朦朧(もうろう)とするも、ピヨヒコは何とか気合いで正気を保ち体勢を整える。どうやら大ダメージによる気絶判定が起きたらしい。


 状況を確認すると目の前には依然として巨大なスライムがプヨプヨと揺れている。直ぐに周囲を確認してアルマを探すと、側で横たわり倒れてそのまま地に伏せていた。様子を見ると意識がないようで、その場でピクリとも動かない。


「アルマ!!」


 呼び掛けて安否を確認するが反応がない。

 スライムのプレス攻撃で気絶したのだろうか!? 自身の体力もとても万全とは言えずに、さっきの押し潰し攻撃だけで体力の殆どが削られた気がする。


 状況は絶対絶命の大ピンチだ……


 ふと背後を見てみると、画面の少女も何やら重たい表情をしている。

 取り敢えずスライムの意識をこちらに引き付けてアルマから引き離し、手持ちのヒールポーションを使う事にした。


 アルマの事は心配だが、今は自分に出来る事をするしかない。


 ムムーー〜?


「ほらこっちだ、おたんこなす、バーカ、バーカ!!」


 体裁など構ってられないピヨヒコは無我夢中でスライムを誘導する。


 スライムはピヨヒコとアルマを見比べてどう行動するか、フヨフヨと考えてるような仕草をするが、動かないアルマよりも不思議な動きをしているピヨヒコに興味を持った様でこちらにその触手を伸ばしてくる。どうやらまたしても拘束行動を仕掛けてくるようだ。


「くそっ、またその触手か!」


 伸びた2本の触手を掻い潜るが、先程のダメージも完全には癒えてないのか身体がいつもよりも動かない、敢えなくピヨヒコはその触手に捕まった。


「は、離せぇ、このー!!」


 ムフフン~ー♪


 抵抗するが拘束は解けずに更に増えた触手に絡まれる。まるでイソギンチャクのような形態になり、そしてスライムはその数多の触手で……


 こちょこちょこちょこちょ、ピヨヒコの身体をくすぐり始めた。


「なぁ!? やめ、やめろぉぉ、あひゃ、あひゃひゃひゃ」


 巨大スライムはなにか愉しげにピヨヒコの身体を触手で弄ぶ。水撃や押し潰しなどの強烈な攻撃もされたが、やはりこのスライムからはあまり悪意みたいなものは感じない。スライムとはこういうものなのだろうか?


 笑いを必死に堪えながらそんな事を考えた。するとスライムの行動が終わったのか拘束からの擽りは一旦止まった。しかし拘束はされたままだ。


「ぜぇ、ぜぇ……」


 次はアルマの行動順なのだが、さっきの押し潰しのダメージでまだ意識が戻らないのか、そのまま微動だにしない。


「ま、まさか……」


 嫌な予感が過るが拘束されてどうにも出来ない。

 そして自分の行動なのだが、束縛された状態で持っていた剣を何とか振り回すが焦りもあり、巧く触手を斬る事は出来なかった。


 そしてスライムは、ピヨヒコの身体を無慈悲にその巨体に呑み込む。


「がはっ、ガッ!! ……ガボ、ガボッ、ゴボゴボッ」


 巨大スライムの体内で息が出来ずに苦しむピヨヒコ。徐々にその体力を奪われる。足掻きながらも周囲の状況を確認すると、そのスライムの体内の中心には何か青く輝く核のようなモノがあった……これは、魔石か……?


『ぐぅ、このっ』


 スライムに取り込まれて意識が朦朧としていたが、なんとか剣を振りその魔石を狙ってみる。しかしスライムのゼリー状の体内は、装備してた鋼のショートソードでは長さがある為か、粘性のある水の抵抗力に阻まれて巧く振れなかった。


 ムフー~?


 スライムは体内から斬られた事に異変を感じたのか、身体の中の水分を流動させてピヨヒコの身体を押し潰すようにお腹を引っ込めて力を込める。

 悪意こそないがその行動は今の体力が減ったピヨヒコを無慈悲にとどめを刺すに至る攻撃だった。


 ギュムゥゥゥ……


『カハッ、ゴボボボッ……』


 抵抗も出来ないピヨヒコはその圧撃を食らう。

 呼吸も儘ならず、残った体力も更に削られ……


 そして、だんだんと、意識が遠退き……


 そのまま視界は闇に覆われ――


「サンダーボルト!!」


 その瞬間、スライムの身体を雷撃が貫く。


 ムギァャァーー!!!「アババババーーッ!!?」


 気絶状態から復帰したアルマが自身の体力も回復しないで直ぐに状況を確認して即座に事態を把握してスライムに対してサンダーボルトを解き放った。その電流で巨大スライムの身体が再びビリビリと弾けて、スタン状態になる。


 ムビビビィィー!!「ぐべっ」


 ピヨヒコは命からがらスライムの体内から吐き出された。

 電流が気付け代わりになったのか意識もハッキリしてるようだ。


「ゲホッゴホッ……た、助かった、ありがとうアルマ」

「すみません勇者様、気絶してたようです」


「だ、大丈夫だ、それより距離をとって体力を回復してくれ」

「わかりました、勇者様も無理しないで回復を」


「ああ、それに、少しだが勝機も見えたぞ!」

「勝機?」


 スライムの方を見ると今の電流で再び感電したようで痺れている。


「アルマ、俺に考えがある、協力してくれ!」

「はい、私に出来ることなら!」


 思い付いた作戦をアルマに伝えてからお互いにヒールポーションを使い次の行動に備える。そして持っていたバックラーは邪魔になるので収納した。


 体力は万全な状態ではないが、スタンから立ち直ったスライムが動き出す。

 対峙する二人と一匹。これが最後の攻防になりそうだ。


 アルマはスライムから距離を取り、魔法の詠唱を始める。


 ムムゥ―……


 何度となく電撃にやられたのでスライムは警戒しアルマに視線を向ける。

 しかし、そこに何やら美味しそうな匂いがしてくる。


 ムム? 


 スライムは辺りを見回す。そしてその視線の先には……


 アルマが食べずに鞄に収納していた“干し肉と野菜の茸スープ”が入った木の器を手に持って、見せびらかす様に【挑発行動】をしているピヨヒコがそこに居た。


 受け渡しだけなら行動ターンには入らないのでアルマから受け取ったものだ。


「ほれほれ、どうだぁ、とても美味しそうなスープだぞぉ、欲しいかぁ~」


 ムム~ーー♪


 巨大スライムはアルマの事など忘れピヨヒコの方にその触手を伸ばす。


「来た、思った通り拘束行動だ!」


 先程ヒールポーションを使った時も呼び掛けてスライムを誘導したが、どうやらアイテムやスキルを使って明らかな“挑発行動”をした場合、効果が増加する変わりに自分の行動扱いになるようだ。


 盾士には敵視を集める挑発スキルもあるようだが、呼び鈴みたいなアイテムがあれば敵視を集めやすそうだ。そう言えばククリコの店には魔物寄せのお香みたいなハーブも売ってた気がする。


 全体の敵視の管理をもっとちゃんと出来れば戦闘もより有利に運べそうだ。

 そんな事を考えていたら、スライムの触手にあえなく捕まってしまった。


 ガシッ


「うわあ、しまったー、このままだとまた取り込まれてしまうー」


 ムムー♪


 拘束が成功して喜ぶスライム。しかしここまでは作戦通りだ。自分から捕まる為に敢えてスライムの行動を誘導した結果なのだ。まるで大根のような演技だったがピヨヒコは得意げに不適な笑みを見せる。


 そんな様子を見ていたアルマは心配しつつも何とも言えない気分になったのだが本人が満足しているなら別に構わないだろうと目を背ける。


「よし、頼むアルマ」

「わ、分かりました」


 巨大スライムはピヨヒコを拘束して触手を収縮させる。

 ピヨヒコの手からスープを奪い取り、それを食して満足そうな様子だ。


 ムグムグ〜♪


 また拘束されながらくすぐり攻撃でもされたらどうしようかとも思ったが、料理に興味が惹き付けられていて助かった。

 スライムは食事を終えて、更に次の行動で再びピヨヒコを体内に取り込むつもりのようだ。


 そこに詠唱を終えていたアルマが魔法を発動する。


「雷よ剣に力を宿せ、サンダーエンチャント!」


 ピヨヒコは拘束されながらも右手を掲げて武器に雷の魔力を宿す。


 アルマは更に次の魔法の詠唱を開始する。

 再び魔力も減り、そろそろ尽きそうだがそれでも構わず詠唱を続ける。

 杖にありったけの魔力を込めるとその杖の先端が眩い光を灯す。


 ム〜?


 アルマの魔法を見て視線を向けるスライム。


「く、どうした、触手なんか捨ててかかってこいよ!!」


 アルマに再び敵視が向くのを懸念して無茶苦茶な挑発をして呼び掛けたのだが、雷のエンチャントの武器にはそこまで警戒心は見せてはいないようだ


 ピヨヒコは拘束されながらも覚悟を決めて、取った次の行動は【待機】だ。


 ムム? ズモモモーー……


 それと同時にスライムがピヨヒコの体をその体内に引き込もうと行動する。

 そのタイミングに合わせて大きく息を吸い、体内に空気をためる。


 アルマも詠唱を終えるが、そのまま行動待機して攻撃の機会を伺う。


 スライムがその体躯にピヨヒコを取り込んだ瞬間、手に持ってた武器の電流が、その濡れた巨体に伝わり放電し、スライムの身体がビリビリと痺れる。


 ムビビビ!?


 その体内に沈んだ湿潤状態のピヨヒコにも感電の影響はかなりあるが、覚悟していたので気合いでそれに耐える。電流による巻き込まれのダメージは特にない。


 そして、その手に持っていたのは【鋼のダガー】だ。


 鍛冶屋でガラムから貰ったものだが、サブウェポンとして装備していたので武器の切り替えに行動ターンは必要ない。この短剣ならスライムの体内でもゼリー状の粘水の抵抗をそこまで受けずに扱える。


 そして狙うのはもちろん、スライムの力の源と思われる“魔石”だ。


 電流が走りそれに抵抗したスライムが激しく暴れだす。

 それでもピヨヒコは魔石を捉えて一点集中する。


 そして、雷の力を宿したダガーの切っ先を、渾身の力でその魔石に穿(うが)つ!!


 ガキィィン!


 スライムの魔石に刃の切っ先が見事に当たる。それでも割るには至らない。


『ぐっ、これでもまだダメか!』


 ムギャァー!!?


 魔力の源の結晶を攻撃されて悶え暴れ回る巨大スライム。

 弱点によるクリティカル効果も重なり、効果は絶大だ。その巨体からは黒い靄が溢れている。

 それと同時に待機していたアルマが更に追い討ちをかける。


「雷よ、我が敵を打ち砕け、サンダーボルト!!」


 もしピヨヒコが魔石の攻撃に失敗した場合に備えて、詠唱を終えたまま待機していたので、それによりスライムよりも先に行動する事が出来た。

 追撃を合わせる事でピヨヒコがスライムに反撃される前に体内から脱出する算段だったのだ。


 雷鳴が轟き、アルマの放った電撃がスライムに炸裂した。タイミングを合わせたのでピヨヒコのダガーの切っ先は、まだスライムの魔石を捉えている。

 体内を走る電流がその鋼のダガーに共鳴して稲光を放つ、それと同時に――


 パリンッ


 と、音を立ててスライムの魔石は真っ二つに割れた。


 ムキュゥーー~ー……


 スライムは断末魔をあげて黒い靄を噴き出す。

 その場に吐き出されるピヨヒコ。直ぐに身構えて身体を起こすが……


 ポンッ!!


 と、体内の魔石が割れたからか、形を保てずにその巨体が膨らみ爆散する。

 スライムの体内の水分がまるで雨のように降り注ぐ。


 ザァァァ……


 そしてそのまま、巨大スライムは消滅した。


裏話


本当は敗北ルートに突入して、森の魔女に助けられ館で目覚める分岐を

想定していたけど、戦闘の流れで見事スライムに勝利したので森の魔女の

登場シーンは全カットされて、そのまま謎の引き篭もりキャラになった。

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