第11話 魔物の本懐
第十一話 魔物の本懐
ある日、森のなか、くまさんに、出会った。
ピヨヒコ達は魔女の森でクエストの討伐対象である魔熊と戦闘中だ。
ハングリーグリズリーと呼ばれるその魔物はとても大きなヒグマである。
初めてのボス戦で恐怖もあるが覚悟を持って挑み、先制攻撃に成功した。
「くっ、電撃魔法による連続スタンは無理だったか」
事前に聞いていたが、同じ属性の状態異常は抵抗力が増すらしく効く確率が下がるらしい。しかしまだ詠唱中のアルマの攻撃魔法が控えてる。
あわよくば雷魔法の感電で連続スタンさせて嵌め殺ししようとも思ったが、どうやらそう上手くはいかないようだ。
状況はピヨヒコと魔熊がお互いに向かい合い、少し距離を置いてアルマが魔法で牽制している感じだ。
辺りは倒された木々が散乱して、戦闘の激しさは増し、鬱蒼とした森の空気がざわつく。
「勇者様、延焼に注意を、ファイアボール!」
アルマが魔力を込めた杖から放たれた火の玉が魔熊に向けて弧を描き飛ぶ。
魔熊は炎を嫌がって避けようとするが、突然の火球に戸惑いそのまま当たる。
ゴォアァァ、ウガァァァア! ブンブンブンッ
「アルマは今のうちに魔力の回復を」
「分かりました、勇者様も気を付けて」
アルマは魔力を回復する為にマジックポーションを取り出す。
事前に渡しておいたやつだ。
魔熊は身体を振るわせて抵抗しているがやはり火が弱点のようだ。
延焼はせず火は消えたが、その隙を見逃さずピヨヒコが斬りかかる。
ザシュ!
グルゥゥゥ、ゴラァァ!
斬られた魔熊が痛みも気にせず両手を振り上げ反撃してきたが、ピヨヒコもそれを見極めローリング回避する。
ブォォン!!
振り放たれた爪撃が空を切るが凄い迫力だ。こんなのが直撃したらどうなるのか想像するだけでも恐ろしい。
「くっ、まだ倒れないのかこの魔物は、タフな奴だ」
次のターン、MPを回復したアルマは次の魔法の詠唱を開始する。
ピヨヒコは魔熊に向かって再び剣を斬り付ける。
しかし魔熊はその攻撃を見極め後方に飛び退け後退する。
振り降ろした剣が空を斬り、体勢がよろけ隙を見せる。
油断したと直ぐに身構えるが魔熊は反撃はしないでそのまま距離を取る。
お互いにジリジリと警戒しながら向い合っている。
すると魔熊は突然旋回して、ドタドタと弧を描くように走り出した。
その体躯からは想像できない速さで俊敏に木々の合間を走り回る魔熊。
攻撃を仕掛けてくるタイミングに注目しながら見極めようとする。
しかし魔熊が向かった先は、ピヨヒコではなくアルマの方だった。
先程のファイアボールを脅威に感じた魔熊の敵視を集めてしまったようだ。
アルマは詠唱を済ませて杖を身構えてはいたが、回避行動は取ってない。
「まずい、逃げろ、アルマ!」
「っ!!」
距離を取っていたアルマだったが突然の魔熊の行動に戸惑い、攻撃を避けきれずに襲って来た魔熊の体当たりが直撃して撥ねられる。
ドガッ!!
「アルマ!!」
「くっ、だ、大丈夫です」
肝を冷やしたがどうやら平気なようだ。アルマの方が俺よりレベルも高く、装備してる防具もおそらくは高性能なものなので、その補正もあり耐えられたようだ。
大事がなくて良かったが自分なんて防具はまだ初期装備のものなのに、と考えたら何か少し悲しくなってきた。今度お金が貯まったら防具も良いものを新調したいところだ。
しかし今は戦闘中だ、そんなのは後にして集中しよう。
魔熊に攻撃されたアルマだったが魔法の詠唱は既に終わっていたらしく、構えていた杖に再び魔力が宿る。
「っ、ファイアボール!」
近距離から放たれた火の玉を避けきれず魔熊の顔面に直撃する。
その炎が身体に燃え拡がりハングリーグリズリーは悲鳴を上げる。
グァァァ、ガァァアア!!
再び延焼を消そうと、もがき身体を地面に擦り付けて抗っている。
そうはさせまいとピヨヒコが行動する。
手をかざすとそこに収納されていた”ガラスの容器”が現れた。
それを掴み、魔熊に向かって投げつける。その中には何か液体が入っていた。
パリンッ、ボゥッ
まだ身体に炎を纏ってた魔熊にそのビンが当たり割れる。すると、それと同時にその炎が更に荒々しく燃え盛る。
ブワァァァ、ギャァ!? ウガァ、ウガァアアァァ!!
炎に包まれてもがき苦しむ魔熊。身体を振り回し抵抗するが激しく延焼する。
予想外の出来事に魔熊は熱さでけたたましい咆哮をあげる。
アルマもそれを確認して次の魔法の詠唱を始める。
「やったか!?」
ピヨヒコはそんな発言をした。
その液体は骨肉屋サンパロスで購入した料理用の"油"だった。
属性の関係性で威力が増減する話を聞いた時に、火に油をくべれば効果が上がると考えたので、ククリコの店で購入したガラスの容器にその油を詰めて組み合わせて用意したのだが、火が弱点特性らしく思った通り有効そうだ。効果は抜群だ!
周りに倒木してた若い木々にも延焼して魔熊の姿が火と煙に隠れる。
魔熊の行動ターンだが動きはまだ見せない。
そんな様子を警戒しつつ見ていたが、燃え盛る炎の中から呻き声をあげながらもハングリーグリズリーが突進して来て強烈な爪撃を繰り出してきた。
グガァァ、ザシュッ
油断してた訳ではないが、煙が目隠しになり避けきれず痛恨の一撃が直撃する。
「ガフッ、グハァァ!!」
その攻撃は凄まじい威力で体力の半分以上も一気に削られた気がした。
痛みで意識を刈り取られそうになるがなんとか気合いでそれに耐える。
アルマはこんな強烈な攻撃を食らってあんなに平然としてたのか!?
現状での実力差みたいなものを改めて実感して再び悲しくなるピヨヒコ。
「大丈夫ですか、勇者様!」
「ゲホゴホ、だ、大丈夫だ、それよりも頼む」
そう言うとアルマは詠唱を済ませてた魔法をピヨヒコに向かって放つ。
「剣よその刄に炎を宿せ、ファイアーエンチャント!」
魔法のエフェクトと共に剣が炎の熱を纏う。
ピヨヒコが持っていた武器に魔法の力が付与される。
アルマが唱えたこの支援魔法は武器に魔法の属性を付与して、次の一撃の威力を増加させるらしい。再び魔法による追撃も考えたが、あまり1人が集中攻撃をすると敵視が偏るらしいので状況によって属性付与の魔法を事前に頼んでおいたのだ。
周囲を見ると延焼してた木々の炎も燃え広がる事はなく既に消えて燻っていた。
さっきの爪撃で大ダメージを負ったから先にポーションで回復しようとも考えたがハングリーグリズリーの方も延焼による蓄積ダメージもあり、既に瀕死の状態なようで動きが鈍い。身体からは黒い靄が溢れ噴き出している。
グルルルルゥゥ……
しかしその目は怯える事はなくこちらを見据えて唸り声を上げている。
まるでこの戦いに誇りをもって挑んでいたような、そんな揺るがぬ”信念”を内に秘めていた。視線が合いそれに応えるようにピヨヒコは持っていた武器を構える。
目の前で対峙する一人と一匹。
構えた腕に力を込めて、渾身の一撃を魔熊に降り下ろす。
「これで終わりだぁ!!」
ザンッ!! ガァァアァァァッ!!
ハングリーグリズリーが断末魔を叫る。それと同時に身体が焼け消滅する。
凄惨な最後なのだが、その表情は何処か穏やかで、満足げな様子だった……
流れる沈黙。アルマも傍らでその様子を黙って見ていた。
「ふー……」
無事に魔物に勝利したピヨヒコ達は安堵した。
「……よかった、何とか無事に勝てた」
「はい、作戦も上手くいきましたし勝てて良かったです」
テレテレッテレッテレテー♪
戦闘の余韻を残した静寂を打ち破るようにファンファーレが流れてきた。
これはレベルアップの時の音だったような? 先程レベルは"3"になったばかりだが倒した魔熊はかなり強かったから、それだけ経験値も多かったのだろうか?
少しウキウキしながらピヨヒコは自分のギルドカードを確認した。
「あれ? 3のままだ?」
カードを確認したがレベルは変わらず“3”のままだった。
この効果音はレベルとは関係ないのか? そう疑問に感じていたら側に来ていたアルマが少し申し訳なさそうに答えた。
「あの、私のレベルが上がって9になったみたいです」
「え? そ、そうか、おめでとう」
「あ、あの、ありがとうございます」
何となく気まずい空気になったけど、パーティーの仲間のレベルが上がって戦力が増えるのは望ましい事だ。また実力に差が開いたけど自分もいつかもっと強くなれる日がきっと来るさ……と、前向きに考える事にした。
倒した魔熊から【魔熊の爪】と【大きな熊肉の塊】をドロップした。
毛皮はどうやら延焼状態の影響もあったのか落とさなかったようだ。
それにもう1つ、小振りだが【土の魔石(小)】を手に入れた。
「お、これが話に聞く魔石か、なんか黄色くて綺麗だな」
「魔石はその大きさによっては美術品としての価値もありますからね、あまり良い趣味ではないと思いますけど……」
アルマに聞いたら魔石はどうやら魔物の種類や強さによってもその形や大きさ、属性の性質もによって色合い違うようで、その輝きや深い色合いによって美術品としての価値も更に上がるらしい。
特定の魔物の討伐をギルドで依頼して、その魔石をコレクションする貴族や富豪などコレクターも居るようだ。確かに宝石みたいで綺麗ではあるけど、魔石の為に無闇に魔物を殺し、活用するでもなく観賞用にするのは流石に悪趣味だとは感じた。
「ふーむ、取り敢えず使い道はまだ決まってはいないけど持っていて損はないな、もし資金が足りなければギルドとかで売れば金策にもなりそうだし」
「そうですね、自分で活用するなら鍛冶屋に持っていっても良いですし、使い方は自由に決めてくださいね」
「ああ、わかった、それに何か魔狼の素材もまだ残ってるみたいだし放置するのも勿体ないから回収させて貰うとするか」
辺りを観ると何故か魔熊が倒して、食べ残したウォーキングウルフの素材も幾つかそのまま残っていた。
何か横取りしたみたいで何となく申し訳ない気分にもなったけど、有り難く活用させてもらう事にする。これ状況によっては擦りつけ行為とかも出来る感じか?
それにしてもハングリーグリズリーは強敵だった。
普通に探索フィールドでも複数同時に出現するようならとてもじゃないが勝てる気がしない。そんな状況にもしなった場合は即座に逃げよう。あんな爪撃は何度も耐えられそうにない。
戦闘を振り返り魔熊の痛烈な一撃を食らって意識が飛びそうになった事を伝えたところ、それは気絶の判定だったらしい。
どうやら状態異常の他にも敵から予想以上の大ダメージを受けて意識を失うと、一定時間、気絶状態に陥るらしい。戦闘中に気絶したらヤバいので気を付けよう。
それにマタンゴの胞子のように睡眠や錯乱状態になる事もあるし、他にも麻痺や毒の攻撃をしてくる敵も居るようだ。
ガサゴソ、ピョーン、ガブリ!
「あ、痛っ!?」
「勇者様!?」
そんな会話をしてたら突然飛び出して来た蛇の魔物に噛まれ毒を喰らった。
単体だったらしく倒すのは問題なかったのだが、気を付けようと気を引き締めてた矢先にこれか……
手持ちに拾った毒消しのハーブがあったので何とか事なきを得た。
油断してたけどかなり驚いた。
「うーん、敵から不意討ちをくらう事もあるんだな……」
「そうですね、探索中に敵に気が付かない場合、敵の先制攻撃を受けますし回避も不可能ですから、今の“ハイドラスネーク”は隠密行動に長けて毒もあるので注意が必要です」
「集団で襲われたら結構危険かもな、毒も回復手段がなかったらヤバかったし……魔熊との戦闘後で油断してたとは言え、気を付けないとだなぁ」
クエストの内容によっては状態異常の回復アイテムもいろと必要になりそうだし今度ククリコのお店で見掛けたら、それらも幾つか常備しておきたいところだ。
そんなことを考えながら来た道をアルマと引き返していたのだが、途中で何か力が抜ける感覚が訪れた。ま、まさかまだ蛇の毒の影響が残ってたのか!?
「ぐぅ、あれ? 何か変だ、身体に力が入らないんだが……」
するとアルマはこう言う。
「えっと、勇者様、それは多分お腹が空いて空腹状態になってるのかと」
「空腹状態?」
「……はい」
どうやら食事を摂らないと空腹状態になり、攻撃力と精神力、素早さと回避率にデバフと呼ばれるペナルティが掛かるようだ。
つい先日も同じ説明を受けたはずなのだが、何故か失念していた。
アルマが言うには食事によってバフも掛かるので、出来たらギルドでクエストを受注した際には合わせて食べるのが良いようだ。
そう言えばクエストに出発する時も何か云いたげな態度だったけど、おそらくはその進言をするかどうかで悩んでたのかもしれない。
そんなの悩まずに教えてくれれば良かったのだが、自分の意思とは関係なく身体が勝手に森に向かってたから、アルマもそれに合わせてくれたみたいだ。
思い出しかのように背後の画面の中の少女を覗いてみると、何か悪ぶれた様子もない良い笑顔をしていたのでピヨヒコは怪訝な顔になり気分がげんなりした。
そう言えば途中で例の少年らしき人影も見えたのだが、今見ると居ないようだ。
と言うか食事の管理も基本的にはこの少女の判断次第なんだから、その辺は確りしてくれないと困るんだが。もし空腹状態でハングリーグリズリーに挑んでたらと考えたら背筋がゾッとする。
「アルマの方はまだ大丈夫なのか?」
「私はまだ大丈夫ですね、種族や体格、戦闘での行動とかによっても変動はする様なので、人によって差異もあるようです」
細かい事は分からないが空腹状態が継続するのは不味いので、町に引き返す前に食事をする事にしよう。場所は薬草を採取した森の泉の辺りだ。
あの辺は他よりも拓けた場所で魔物も居なかったので多分大丈夫だろう。
途中でまた魔物に襲われても困るので、戦闘で減った体力や魔力はポーションで回復はしたが、道中は魔狼とも遭遇する事なく泉の付近まで帰ってこれた。
無事に泉まで到着したのでピヨヒコは周辺を警戒しながらも町で購入した食材や調理器具や食器を出して支度をする。辺りを見渡せる広さだし小休止するには丁度いい場所だ。
「あれ、アルマは何処に行った?」
火をくべる小枝でも探しに行ったのか姿が見えなかったが、この泉の周辺には魔物も居ないし、もし魔物と遭遇してもそんな遠くには行ってないとは思う。
それに俺よりレベルも高く装備も充実してるので問題ないとは思うけど、と言うか本当に背後の少女の束縛とか制限とかなく自由に動けるんだな、何か羨ましい。
「出来たら何か一言でも言って欲しかったな」
どうせ俺なんていまだに初期の防具しか持ってないしレベルもまだ低いし、魔法どころか固有スキルも武器の技スキルも職業スキルすらまだ使えないけどさ……
「……」
それに剣での攻撃より魔法の威力の方が強かったから魔熊の敵視を維持できずにアルマを危険な目に合わせてしまった。俺がもっと強ければ、敵視もそのまま引き付けていられたかもしれない。戦闘におけるヘイト管理の難しさを実感した。
「……グスン」
またくよくよといじけていたら茂みからアルマが帰ってきた。心配はしてたので無事で良かった。
両手には小枝を持っていたのでやはり探しに行っていたようだ。
俺は料理なんて作ったこともないがアルマの方は作れるらしい。
料理を覚えたい気持ちはあるけど、失敗しても嫌なのでここは素直にアルマに任せる事にした。
骨肉屋で購入した瓶に入った新鮮な水もあるので飲み水以外にも料理に使ったり魔熊との戦闘で汚れた手を洗ったりにも使える。
泉の水も見た感じは綺麗だけど、生水を飲み水にするには抵抗があるので止めておこう。それこそ水属性の魔法でもあるなら飲料水に使ったりも出来そうだけど、アルマに後で聞いてみるかな。
簡易調理セットに小枝と薪を撒き火をくべる、そこに鍋を吊る。火を付けるのにアルマが魔法を使用していたから、こう言う場面でも便利だなと感じた。
メニューは肉屋で購入した干し肉と、野菜を煮込んだスープだな。
それと道中で手に入れた”マイコニッドの茸”も入れるようだ。
あの柔らかい感触を思い出しつつ、その食感を楽しみにしながら料理が出来るのを待つ。
ぐるぐるグルグル……
……何かアルマが鍋に怨みを込めるように混ぜてるのが少し気になるんだけど、まるで悪い魔女が大釜で秘密の調合でもしているような光景だ。
料理とはそう言うものなのかもしれないが、きっと美味しくなる魔法でも掛けているのだろう。いや、何かやっぱり少し怒気を感じるし怖いんだけど!?
「ぐー……」
そんな感情とは裏腹に腹の虫がまだかまだかと泣き響いていた。
自分はなにもせず待ってるだけなので少し気まずくなる。
「もう少しで出来るので、もうちょっと待っててくださいね~」
そんなピヨヒコを見てアルマは子供を宥めるように穏やかな声を掛ける。
すごい優しい。悪い魔女なんて思ってゴメンなさい。
まだ日は暮れてはいないが、泉は徐々に黄昏の光を反射している。
そろそろ夕方頃になるようだ。
食事を済ませて町に向かえば夜までには帰られそうではあるが、寝た記憶がなく時間が飛んだからか、いまいち時間の感覚や、腹の空き具合が掴めてなかった。
「昨日食べたファーラビットの兎肉シチューも美味しかったけど、他にも美味しい料理があるなら食べてみたいな、自分でもいつか作れるようになりたいかも」
「前に戦ったファングボアの肉もそんな脂っこくなくて美味しいですよ、それとこの近辺だと、ストーンポークって魔物の肉も多く流通してますね」
「ストーンポーク?」
アルマに話を聞くとこの近くの鉱山に生息する身体に石を纏った豚の魔物が居るようで、そしてどうやらこの世界では肉と言えば魔物の肉の事を示すらしい。
魔物を生み出してると云われる魔王を討伐したら、肉とかの食材はどう確保するのだろう? ピヨヒコはそう思ったが何となく聞きづらかったので止めた。
それに肉以外にもこの城の周辺の村や、城の周囲では農業により野菜や穀物など作物とかも作ってるようだし、それに薬草や果実のように時間経過でまた採れるのもあるとは聞いたので、魔王を倒し平和になれば、多分どうにでもなるのだろう。
森の魔女は魔物の研究とかしてるとも言ってたし、もしかしたら魔兎など家畜として飼育してるのかもしれない……もしそうなら何か魔物に対しても少し可哀想な気持ちにはなってはくるが、生きる為には犠牲は必要なのだとも思った。
そんな事を考えながら、アルマとまったりとした時間を過ごす。
アルマも無事に受注したクエストをクリア出来たので安心したのか笑顔だ。
「指定された魔物は倒したけどそれは依頼主にはちゃんと伝わるのかな?」
「はい、その辺は問題ないですよ、指定されたクエストをクリアすれば、ギルドに報告した時に報酬は貰えますので、成果の内容次第では報酬の上乗せとか場合によっては削減もありますが」
何か少し疑問もあるが、クエストとはそういうものらしい。
ぐつくつと干し肉の味が蕩けた野菜と絡み合ってスープが煮えている。辺りには次第に美味しそうな匂いが立ち込めてきた。
じゅるり……
空腹に耐えつつ料理の完成を待ちながら泉に目を向けてみる。
「あ、そう言えば、アルマの魔法で雷と火と氷の魔法は見たけど水の属性魔法もあるの? 属性の関係性の説明だと水は氷や雷の威力とも関わるみたいだけど」
「水の魔法もありますけど私は適性がないので、扱える魔法属性は四種ですね」
どうやら魔法を使うには属性の適性があるようで、水の属性は回復術師と喚ばれる支援職の方が得意らしい。水と氷だと同じようにも感じたが、熱を操る特性なようで、炎と氷の方が属性的には似た関係性なんだとか。
他にも土や風の基本属性に、光や闇などの稀な属性もあるようだ。
そして属性とは関係ない錬成魔法、結界魔法、空間魔法、重力魔法、なんてのも色々とあるらしい。
そう言えば街に設置されていたワープポットやアルマの持つ魔法の鞄もそれらを応用した技術だとも聞いたっけ。
そんな会話もしてたら料理も完成したようだ。
「さあ、料理が出来ましたので、食べましょうか」
出来上がったスープを木の器によそい取り分けてアルマがそう言う。
「わーい」
と、何か様子が変だ、泉の水が振動し様子を見ると波紋を拡げていた。
「な、なんだあれ?」
ズモモモモモ……
そしてその波紋の中心からゆっくりと、巨大で半透明な謎の物体が盛り上がり徐々にその形を形成していく。
ドンドコドドンコ、ドンドドン、パフ♪
それと同時に何かリズミカルな感じの楽曲が流れてきた。
どうやらこれも戦闘曲のようだ。武器を持ち警戒する。
ムゥーーー♪
その音楽に合わせるように躍動しながら魔物が現れる。
その半透明な流動体の正体は、巨大なスライムだった。




