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春夏秋冬の公式企画集

チビとネコ

作者: 大野 錦
掲載日:2020/12/20

 クリスマスをテーマに童話(?)を書いてみました。

 「これのどこがクリスマスなの?」、と思う方は多いでしょうが、とにかくクリスマス童話なのです!

チビとネコ


1


 ここはどこでしょう?

 魔界(まかい)でしょうか?妖精界(ようせいかい)とも、もののけが住(す)むところといっていいかもしれません。

 要(よう)するに私(わたし)たち人間(にんげん)が踏(ふ)み入(い)れることができない異世界(いせかい)だと思(おも)ってください。


 そこには「お館様(おやかたさま)」といわれる老人(ろうじん)と、「くねひと」という異形(いぎょう)の者(もの)たちが住(す)んでいました。

 「くねひと」たちは何百匹(なんびゃくひき)といます。彼(かれ)らはみんな同(おな)じ姿(すがた)をしています。

 まず肌(はだ)は灰色(はいいろ)で、着(き)ているのは布一枚(ぬのいちまい)で、それはさらに濃(こ)い灰色です。

 耳(みみ)は尖(と)がっていて、歯(は)は上下(じょうげ)の犬歯(けんし)が口(くち)をはみ出(だ)すほど、でています。

 そして、きわめつきは頭(あたま)の額(ひたい)に二本(にほん)の角(つの)が生(は)えています。


 「くねひと」は悪魔(あくま)とも鬼(おに)ともいえる姿(すがた)をしているのです。

 彼(かれ)らの役割(やくわり)は毎年(まいとし)の12月(がつ)25日(にち)の夜(よる)までに、「お館様」に私たちの世界(せかい)でやさしい人(ひと)をそれぞれ探(さが)しだし、紹介(しょうかい)することです。

 そして「お館様」がその中(なか)から一番(いちばん)だと思(おも)った人へ、その年(とし)に最高(さいこう)のプレゼントを贈(おく)るのです。


 「くねひと」たちはどうやって私たち人間の世界を見て、やさしい人を探しているのでしょうか?

 それはこの異世界で彼らは、私たちの世界を見(み)ることができるからです。

 「くねひと」たちは朝(あさ)から夜遅(よるおそ)くまで、いえ、彼らは寝(ねむ)ることがないので、ずっと私たちの世界を見ることができるのです。

 ごはんもお水(みず)も取(と)らなくても生(い)きていけます。「くねひと」が悪魔とも鬼ともいわるれのは当然(とうぜん)ですね。


 さて、ここに一匹(いっぴき)の「くねひと」がいました。「くねひと」には私たちの様(よう)な名前(なまえ)がありません。彼は他(た)の「くねひと」から「チビ」と呼(よ)ばれていました。

 それは彼が「くねひと」たちの中で一番(いちばん)のチビだからです。

 このように「くねひと」たちは自分(じぶん)たちを区別(くべつ)するために、いろいろな呼(よ)び名(な)で言(い)いあっていました。

 単(たん)に大(おお)きければ「デカ」。耳の尖がりが特(とく)にすごいのは「みみ」。顔(かお)にホクロがあるものは「ホクロ」といった具合(ぐあい)です。

 

 チビは毎年(まいとし)、私たちの世界で一番のやさしい人を選(えら)ぶのに失敗(しっぱい)しています。

 どんなに探しても見つけられず、「お館様」に紹介することすらできないのです。

「おい、チビ。お前(まえ)はどんなにがんばっても無理(むり)なんだから、そこをどけ」

 ほかの「くねひと」がチビが見ていた水(みず)たまりから、チビをヒョイと、どけてしまいました。

 この水たまりに私たちの世界が映(うつ)っているのです。


2


「あ~あ。今年(ことし)もダメかぁ。どうやったらやさしい人って見つけられるんだろう?」

 チビは早(はや)くもあきらめかけていました。

「見ているだけだから、見つけられないのかなぁ。やっぱり直接(ちょくせつ)人間の世界に行(い)ってみるのがいいんじゃないのか?」

 そう思ったチビですが、それはあまりいい方法(ほうほう)ではありません。

 なぜなら、「くねひと」は私たちの世界へ行くことはできますが、その姿を私たちは見ることができず、その声(こえ)も私たちは聞(き)くこともできず、何(なに)より彼らは私たちに触(ふ)れることもできません。

 要(よう)するに、「くねひと」は幽霊(ゆうれい)のような存在(そんざい)なのです。


 ですが、チビは決意(けつい)して、私たちの世界へ行くことに決(き)めました。

 私たちの世界が映る水たまりは他(ほか)にも多(おお)くあり、チビはその中の一つに入(はい)って行きました。

 そうすると、彼らは私たちの世界へ来(く)ることができるのです。


 チビはある人間の街(まち)にやってきました。もちろん彼は誰(だれ)からも気(き)づかれません。

 この日(ひ)は、十二月(じゅうにがつ)の十日(とおか)でした。

 チビがやってきた街はけっこう大きいです。道路(どうろ)はたくさんの車(くるま)が走(はし)り、そのわきの歩道(ほどう)も多(おお)くの人が行きかっています。

 人間の居住用(きょじゅうよう)のいくつもの高(たか)く大きな建物(たてもの)が並(なら)び、コンビニやバス停(てい)がたくさんあり、電車(でんしゃ)がとまる駅(えき)には、何本(なんぼん)もの線路(せんろ)が伸(の)びていました。

 あまりにも人が多すぎて、やさしい人を探すのが逆(ぎゃく)にむずかしいことにチビは気づき、やって来(き)たことに後悔(こうかい)しました。


3


 チビがしかたなく、とぼとぼ歩(ある)いていると、少(すこ)し広(ひろ)い草地(くさち)がありました。私たちの世界に彼らは触れることができないので、正(ただ)しくは少(すこ)し宙(ちゅう)をフワフワ浮(う)いて歩いています。

 街の緑地公園(りょくちこうえん)です。人が少(すく)なかったので、チビはここに入って行きました。

「み~」

 何(なに)か声(こえ)がします。

「み~み~」

 チビはその声の方向(ほうこう)を見(み)ると、箱(はこ)の中(なか)に入(はい)った子猫(こねこ)がチビを見(み)つめて鳴(な)いているではありませんか。

「お前、おれのことが見(み)えるのか?」

「みゅう…」

 チビはそっと手(て)を出(だ)し子猫を抱(だ)こうとしました。

 なんとありえないことに、チビは子猫を抱くことができました。幽霊ともいえる「くねひと」はこの世界のものを触(さわ)ることができないはずなのに!

 あわてて、チビは子猫を箱に戻(もど)しました。

 そうです。もし人がいたら、子猫が宙(ちゅう)に浮(う)いてるように見えたでしょう。


「なんなんだお前。おれのことが見えてるようだし、何で触れるんだ?」

「み~」

「おなかがすいてるのか?おれたちはおなかがすくということがないから、どうしたらいいか分(わ)からないな」

 箱には「拾(ひろ)って下(くだ)さい」とありましたが、チビはその字(じ)が読(よ)めません。

 チビは困(こま)りました。食べ物(たべもの)を持(も)ってこようにも、「くねひと」は私たちの世界のものをつかむことができません。

 かといって、この子猫を食べ物があるところに連(つ)れて行くのは、「猫が宙に浮いてる!」、と大騒(おおさわ)ぎになります。

「夜(よる)になったら、人が少なくなるから、そうしたらお前を食べ物のあるところへ連(つ)れて行こう」

 チビは深夜(しんや)になるのを子猫のそばで待(ま)つことにしました。


4


 チビは深夜になると子猫を連れて食べ物があるところを探(さが)しましたが、猫が何(なに)を食べるのかよく分からないので、結局(けっきょく)あきらめて、元(もと)のところへ戻(もど)りました。

「そうだ!こいつを助(たす)けてくれる人はやさしい人だ。こいつを助けた人をお館様に紹介しよう!」

 チビをそう思い付き(おもいつき)、子猫のそばでじっとしていることにしました。


 何日(なんにち)たっても子猫を助けてくれる人間は見つかりません。

 ある日(ひ)、人間の親子(おやこ)が子猫を見つけました。チビは「この人たちだ!」、と興奮(こうふん)します。

「お母(かあ)さん。この子(こ)をつれていってもいい?」

「駄目(だめ)よ。ウチのマンションはペット禁止(きんし)だし、それに見たところ病気(びょうき)なんじゃないかしら。だから捨(す)てられたのよ」

 親子は持(も)っていたパンをちぎり、子猫の箱の中にやり、去(さ)って行きました。

「お前、病気なのか?そういえばなんか元気(げんき)がないな。おれはよく分からないけど、今はとても寒(さむ)いんだろう」

 十二月も二十日を過(す)ぎています。チビが見るところ、人間はとても多(おお)くの服(ふく)を重(かさ)ね着(き)て、吐(は)く息(いき)は白(しろ)いです。


 子猫はしだいに弱(よわ)っていきました。体(からだ)を丸(まる)めたまま動(うご)こうとしません。

「おい、だいじょうぶか。食べ物が欲(ほ)しいのか?」

「み~…」

「寒いのがつらいのか?」

「…」

 子猫はチビの声の反応(はんのう)を次第(しだい)にしなくなりました。


 十二月二十五日の夜。この日は特(とく)に寒く。雪(ゆき)が降ってきました。

 チビは子猫が入っている箱の上に覆(おお)いかぶさりました。

 チビは子猫を触れますが、雪はチビの体(からだ)を通(とお)りすぎ、箱の中に積(つ)もっていきます。

 そして子猫はカタカタとふるえ、次第(しだい)にその動(うご)きが止まりかけ、チビが声をかけても子猫は完全(かんぜん)に反応しなくなりました。

「そうだ!おれはお前をつかむことができる。もうやさしい人探(ひとさが)しはやめだ。いっしょにおれの住(す)むところに行こう!」


5


 チビは異世界に戻(もど)りました。子猫はいません。

「何(なん)で?この手でしっかりと抱(だ)いていたはずなのに!」

「チビさん」

 チビは後(うし)ろから、声をかけられました。

「誰(だれ)だ。お前は?」

「ぼくですよ。ずっと守(まも)ってくれてありがとう」

 その「くねひと」はチビよりも小(ちい)さくて、特(とく)に尖った耳が猫のような形(かたち)をしていました。

「お前はあのネコか?」

「そうです」

「じゃあ、お前はネコだな」

 新(あたら)しい「くねひと」は「ネコ」と呼ばれるようになりました。

「でも、おれよりチビのくせに、おれをチビ呼ばわりするのは、なんか気(き)に食(く)わないな」


「ガラ~ン!ゴロ~ン!」

「お館様(おやかたさま)が今年(ことし)の一番(いちばん)のやさしい人探しを決定(けってい)するぞ~!」

 ひときわ大きな「くねひと」が鐘(かね)を鳴(な)らして、お館様の前(まえ)に「くねひと」たちの集合(しゅうごう)を告(つ)げました。


 お館様は長(なが)い白(しろ)いひげと白い衣装(いしょう)を着た人間のような老人です。

「では、今年の最(もっと)もやさしい人を、儂(わし)に紹介(しょうかい)せよ」

 「くねひと」たちはいろいろと紹介していきます。

 チビの番(ばん)になりましたが、チビは今年もまた誰(だれ)も見つけられず、他(ほか)の「くねひと」たちから笑(わら)われています。

「チビよ。お前はやさしい人を見つけることが、本当(ほんとう)にできないな」

 お館様はチビに呆(あき)れているようです。

「だが、お前はやさしい心(こころ)を持(も)っている。故(ゆえ)に今年の一番のやさしいものはチビとする」

「お館様!それではプレゼントはどうなるんですか?」

「お前の隣(となり)にいるだろう。ネコだよ」

 チビは隣の猫のような耳をした「くねひと」を見つめました。

「チビさん。来年(らいねん)はいっしょにがんばってやさしい人を見つけようね」

 チビは大喜(おおよろこ)びして、「くねひと」となったこの子猫といっしょに、今日も水たまりで私たちの世界を覗(のぞ)きこみ、やさしい人を探しています。


おわり

 Ihr Lieben ,


 von ganzem Herzen wünsche ich euch frohe Weihnachten

 und dann im nächsten Jahr viel Glück!


 今年は本当に色々ありましたね。

 来年は明るいことが一つでも多くある様に願っています!


【読んで下さった方へ】

・レビュー、ブクマされると大変うれしいです。お星さまは一つでも、ないよりかはうれしいです(もちろん「いいね」も)。

・感想もどしどしお願いします(なるべく返信するよう努力はします)。

・誤字脱字や表現のおかしなところの指摘も歓迎です。

・下のリンクには今まで書いたものをシリーズとしてまとめていますので、お時間がある方はご一読よろしくお願いいたします。

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【短編、その他】

【春夏秋冬の公式企画集】

【大海の騎兵隊(本編と外伝)】

【江戸怪奇譚集】
― 新着の感想 ―
なるほど、この流れからの、2024年にサンタクロースをみつけるんですね。 逆順で読んだのですが、この作品は、こっちの順番で読んだほうが、楽しいかもしれないって思いました。 正しい順番で読んでないの…
[一言] こねこちゃん幸せそうで良かったです。 これからは2人でコンビですね!
2023/04/26 21:06 退会済み
管理
[良い点]  「くねひと」は、造語かと思ったのですが、  クリスマスの話なら  黒いサンタクロースのことですかね?  黒いサンタクロースの存在は知りませんでした! [一言]  実際の黒いサンタクロース…
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